保育士は激務・薄給で知られており、現役の保育士の多くが離職を検討しているのが実情です。
保育士の方の人柄や能力は、転職市場で高く評価されており、保育士・元保育士に対する求人ニーズは十分にあります。転職エージェントを活用して、ワークライフバランスを改善できるような転職を成功させましょう。

保育士を辞めたいと思っている人は全体の2割程度
引用:平成30年度東京都保育士実態調査結果(報告書) 調査結果の概要 14頁|東京都福祉保健局
上記のグラフは、2018年に東京都が保育士を対象として行った、今後も保育士として働き続けたいかどうかに関する調査結果を表しています。
これに対して、「今後は保育士を辞め、保育士以外の職種で働きたい」という方は全体の20.3%、「今後は保育士を辞め、働かないつもりだ」という方は全体の2.1%となっています。
つまり、全体の22.4%が保育士からの離職を考えており、その中でも保育士以外の職種へ転職したいと考えている方が多数を占めているという結果になりました。
保育士を辞めたいと思う主な理由
引用:平成30年度東京都保育士実態調査結果(報告書) 調査結果の概要 16頁|東京都福祉保健局
上記のグラフは、保育士を辞めたいと考えている22.4%の方が、なぜ保育士を辞めたいと考えているのかを回答したアンケート結果を示しています。
給料が安い
引用:平成30年度東京都保育士実態調査結果(報告書) 調査結果の概要 11頁|東京都福祉保健局
保育士は一般的に、激務・薄給というイメージが広まっています。
上記のアンケート結果によると、保育士全体の平均年収は232.4万円となっており、正規職員に絞っても290.4万円です。
給与・賞与等の満足度に関するアンケート結果でも、「やや不満」「不満」「非常に不満」と回答した保育士が全体の57.9%を占めており、給与面での満足度が非常に低い状況が窺えます。
仕事に見合った待遇を受けられていないという不満感が、保育士からの離職を検討することに繋がっているようです。
仕事量が多い
保育士の方は、1人当たり何人も幼い子どもの面倒を見なければならないので、気が休まる暇がありません。
その一方で、保護者向けの連絡書面の作成やイベントの準備など、それ以外の雑務もたくさん抱えています。
労働時間が長い
仕事量が多いことに関連して、保育士の方の労働時間は長くなる傾向にあります。
延長保育への対応も必要となり、月々の残業時間がかなりの水準に上るケースも多いです。
労働時間が長いと、なかなかプライベートの時間が取れないため、保育士を離職したいと考える方が増えています。
職場の人間関係
保育士は、同じクラスを担当する同僚の保育士との間で、密にコミュニケーションをとって仕事をしなければなりません。
そのため、もし同僚の保育士との関係性が悪化すると、仕事上のストレスは飛躍的に増大してしまいます。
子どもの前では仲の悪さを見せるわけにはいかないので、ますます職場での人間関係を理由とするストレスが負担となり、保育士からの離職を検討する方もいらっしゃいます。
他業種への興味
新しいことを経験したい、日々の生活に刺激を求めたいという積極的な気持ちから、保育士以外の他業種への転職を目指す方も一定数いらっしゃるようです。
職業適性に対する不安
子どもは保育士の予想どおりに行動するとは限らないので、日々の仕事の中でもどかしさを感じることもあるかもしれません。
必ずしも保育士の方の責任ではないものの、子どもが言うことを聴いてくれないようなことが続くと、「保育士に向いていないのではないか」と考えてしまう方もいらっしゃるようです。
保護者対応の大変さ
子どもに対する思いの強さのあまり、保育士に対して過剰な要求を行う保護者も、ごく一部ですが存在します。
その結果として、対人的なストレスの少ない業種に転職したいと考える人も、一定数いらっしゃいます。
子育て・家事
保育士は労働時間が長いことから、子育てや家事との両立は非常に大変です。
仕事よりも家庭を重視したいという思いが強くなってくると、必然的に激務の保育士を続けることは難しくなってしまいます。
その結果、より負担の少ない仕事への転職を目指す方も多いようです。
健康上の理由
保育士は一日中子どもの面倒を見るため、かなりの体力が要求されます。
そのため持病が悪化したり、年齢が積み重なってきたりすると、保育士の仕事が体力的にきついと感じる方が出てくるのは当然と言えるでしょう。
妊娠・出産
保育士は女性が大半を占めている現状があるため、妊娠・出産は、保育現場にとって避けては通れない問題です。
特に保育士の間では、保育現場に穴を開けられないからという理由で、妊娠・出産をしづらいという声も数多く聞かれます。
保育士自身のライフプランや家族計画を考えた際に、妊娠・出産のハードルが高い保育士を辞めるという選択肢が出てくるのは、自然な流れと言えるでしょう。
保育士を辞めることの主なメリット
仕事としての保育士のネックとなるのは、やはり激務・薄給である点です。
そのため、保育士を辞めることにより、待遇やワークライフバランスの改善が期待できます。
収入アップが期待できる
前述のとおり、保育士の年収水準は、決して高額であるとは言えません。
その一方で、保育士・元保育士向けの転職ニーズは根強く存在するため、比較的転職は容易な傾向にあります。
保育現場よりも高待遇を用意できる職場もたくさんありますので、転職によって収入をアップさせられる可能性は大いにあるでしょう。
自分の時間・家族との時間を確保できる
保育士は全体的に労働時間が長く、なかなか自分の時間や家族との時間を確保することができません。
これに対して一般企業では、近年の働き方改革の影響もあって、労働時間が厳格に管理される職場も増えてきています。
それに伴い、原則定時で退社できるホワイト企業も増加傾向にあり、ワークライフバランスの実現を目指して転職するには非常に良い環境です。
働き方についての希望を伝えて、それを受け入れてくれる企業に転職すれば、転職前よりも自分の時間や家族との時間を確保しやすくなるでしょう。
精神的な疲れを回復できる
保育士は、仕事の中で気を休める暇がないため、精神的なストレスが慢性化してしまいがちです。
日々の仕事に追われていると、なかなか精神的な疲れを癒すタイミングはやってきません。
仕事上でどの程度のストレスがかかってくるかは、業種や職場によって大きく異なります。
保育士に比べると、負担が少ない業種や職場はたくさんあるので、転職によって精神的な疲れをリセットするのも有力な選択肢でしょう。
保育士を辞めることの主なデメリット
ストレスの多い保育士を辞めた方がよいと頭では考えていても、デメリットを考慮すると、なかなか退職に踏み切れない方もいらっしゃるかと思います。
保育士を辞めることの主なデメリットは、以下の2点です。
子どもと触れ合う機会がなくなる
実際に「子どもが好きだから」「子どもと触れ合いたいから」というモチベーションで、保育士になった方が大半ではないでしょうか。
保育士を辞めて他業種に転職すると、子どもと触れ合う機会は必然的に減少します。
保育士からの転職活動を行う際には、子どもとの触れ合い以外にやりがい・喜びを感じることができるかどうかを、ご自身の中でよくイメージしておくことが大切になるでしょう。
ブラック企業に再就職するリスクがある
とにかく保育士の仕事から抜け出したい、どんな職場でも構わないと考えていると、ブラック企業に再就職してしまうおそれがあります。
世間には、たくさんの優良企業がある一方で、労働者を低賃金で酷使しようとするブラック企業が存在することも事実です。
ブラック企業は、とにかく早く仕事を辞めたいという転職希望者に触手を伸ばし、劣悪な労働条件での就職を勧誘してきます。
ブラック企業に再就職してしまうことを回避するためには、焦って転職先を選ばずに、複数の転職先を比較検討することが大切です。
保育士の仕事が辛いのであれば、先に保育士を退職してから転職活動を行うことも考えられます。
保育士は転職しやすい!転職活動における元保育士の強み
元保育士は以下の強みを持っているため、一般企業の求人ニーズは根強く、転職を成功させる方も非常に多いです。
転職活動の際には、元保育士ならではの強みを活かして会社に貢献できることをアピールするとよいでしょう。
人当たりの良さ
保育士には、毎日子どもに対して、笑顔で明るく接することが求められます。
そのため、対人のコミュニケーションの中でも、自然とポジティブな表情や姿勢を出せるようになっている方が多いです。
人当たりの良い方は、転職活動をしている際にも「一緒に働きたい」「取引先への受けが良いかも」と採用担当者に感じさせることができるので、内定を得られる確率が大きく上がります。
きめ細かい気配りや要領の良さ
保育士は、少ない人数で多くの子どもの面倒を見なければなりません。
そのため、目の前の子どもの面倒を見ながらも、教室の隅から隅まで目を行き届かせる気配りに長けています。
また、子どもの世話をする一方で多くの事務作業をこなさなければならず、仕事の要領の良さも求められます。
どのような職種であっても、保育士として培った気配りや要領の良さをアピールすると、転職に成功する可能性が高まるでしょう。
激務に耐えてきた経験
保育士の労働時間は長く、勤務時間中も気を休める暇がありません。
保育士として働いている最中は辛く感じられるかもしれませんが、転職後の仕事においては、保育士の激務に耐えてきた経験はプラスに働きます。
勤務時間中に集中力が切れにくくなりますし、繁忙期で少々仕事が増えたとしても、「保育士に比べれば楽」という気持ちで乗り越えることができるかもしれません。
異業種への転職もおすすめ|元保育士を欲しがる業種は?
保育士の人柄やスキルは、さまざまな業種で活かすことができます。
その中でも以下の業種については、元保育士に対する求人を積極的に行っていますので、興味のある方は情報収集をしてみてください。
接客業
飲食店やホテルなどの接客業では、客に対して常に笑顔で明るく接することが求められます。
また、多くの客が一堂に会する場で働くことになるため、会場全体への気配りも必要です。
このようなスキルは、保育士が日常業務の中で培ってきているものであり、保育士と接客業は親和性があると言えます。
そのため、接客業関連の求人に応募すれば、元保育士の方が採用される可能性は高いでしょう。
営業職
営業職も、高い対人コミュニケーションスキルが求められる業種です。
営業担当者の人柄や明るさがきっかけとなって、新たなビジネス上の取引が始まるケースも少なくありません。
ベビーシッター
保育士と共通点の多い職業の代表例としては、ベビーシッターが挙げられます。
小さな子どもの世話は、一般の方にとっては非常にストレスがかかる仕事です。
しかし元保育士であれば、もっと多くの子どもを同時に世話してきた経験がありますので、この点は心配いらないでしょう。
共働き世帯が増える中で、ベビーシッターへの需要は高まっていますので、元保育士向けの求人ニーズも根強く存在します。
またベビーシッターの働き方は、保育士に比べるとかなり柔軟になっています。
ワークライフバランスを実現しつつ、子どもと触れ合う機会を確保したい方にとっては、ベビーシッターが魅力的な選択肢になり得るでしょう。
保育士を辞めるための手順
いざ保育士を辞めることを決意したら、退職に向けて具体的な行動を始めましょう。
保育士を辞めるための大まかな手順は、以下のとおりです。
転職活動をして内定を得る
退職後に自営業や専業主婦(主夫)などになる場合を除いて、転職活動をする必要があります。
収入が途切れないようにしたい場合には、保育園に退職意向を伝える前に内定を得ておくことがおすすめです。
ただし、保育士としての仕事があまりにも辛い場合には、先に退職してから転職活動を行ってもよいでしょう。
転職活動には短くても2か月程度、長ければ半年程度を要するケースもあるので、十分な時間的余裕をもって転職活動を行いましょう。
保育園に退職意向を伝える
保育園に退職意向を伝えるタイミングは、就業規則などの規定を参照して決めるのがよいでしょう。
法律上は2週間前に通知すれば退職できますが、就業規則などでは、もっと長い事前通知期間が設定されていることもあります(1か月前、3か月前など)。
精神的に辛い状況が続いている場合を除けば、引継ぎを行って円滑に退職するためにも、就業規則などに従ったタイミングで退職意向を伝えることが望ましいでしょう。
業務の引き継ぎを行う
退職の意向を保育園に伝えたら、退職日までの間に、後任者への引継ぎを行います。
クラスの中でご自身が担当している業務の内容や、子どもの特徴などを伝えて、後任者がスムーズにクラスへ入っていけるような環境を整えてあげましょう。
有給休暇を消化する
正式な退職日までの間に、有給休暇は必ずすべて取得させてもらいましょう。
「○月○日までは仕事をしてほしい」と求められた場合には、その日の後にまとめて有給休暇を取得するとよいでしょう。
有給休暇を完全に消化するまでは在籍扱いになり、給料が発生します。
退職する
有給休暇を消化した後、実際に保育園を退職することになります。
お世話になった同僚の保育士がいる場合には、ひととおり挨拶を済ませておきましょう。
転職先への入職時期にもよりますが、すぐに入職する場合には、退職前後の時期は非常にバタバタしがちです。
そのため、あらかじめ退職に向けて計画的に準備を進め、スムーズに新生活へと入っていけるような態勢を整えましょう。
退職時に未払い残業代を請求できる場合もある
保育士の方は、雑務の処理や延長保育への対応などにより、残業時間が多くなる傾向にあります。
しかし、残業時間を正確に記録している保育園は、残念ながら少ないのが実情です。
もし残業をしたことの証拠が存在する場合には、退職時に保育園に対して残業代を請求できる可能性があります。
タイムカードのデータ以外にも、
- メールの送受信履歴
- 交通系ICカードの乗車履歴
- 業務日誌
などが残業の証拠になり得ます。
もし保育園から支給されている残業代が、実際の残業時間に比べて少ない場合には、不足分の支払いを保育園に対して請求することもご検討ください。
保育士の転職にお勧めの転職エージェント
保育士の方が転職を目指す場合、転職エージェントを活用するのも有力な選択肢です。
転職エージェントに登録すると、幅広い企業から転職先を探すことができます。
また、履歴書作成や面接対策についてのアドバイスを受けられる点や、労働条件の交渉を一任できる点も大きなメリットです。
保育士としての転職を目指す場合は、保育士転職に特化した転職エージェントに登録するとよいでしょう。
それ以外の職種への転職を目指す場合は、大手総合型の転職エージェントに登録するのがお勧めです。

保育士転職に特化した転職エージェント
①保育士ワーカー
保育士ワーカーは、トライトグループが運営する保育士向けの転職エージェントです。
求人数の多さが特徴となっています。
②ヒトシア保育

ヒトシア保育は、株式会社ネオキャリアが運営する保育士向けの転職エージェントです。
専任のコンサルタントから求人の紹介を受けられます。
③保育士バンク!

保育士バンク!は、株式会社ネクストビートが運営する保育士向けの転職エージェントです。
子育て情報メディアを運営するなど、幼児教育に力を入れているため、きめ細かいサポートが期待できます。
大手総合型の転職エージェント
①リクルートエージェント

リクルートエージェントは、「転職支援実績No.1」を掲げる大手転職エージェントです。
非公開求人を10万件以上取り揃えており、保育士の求人情報も、それ以外の求人情報も多数保有しています。
②doda

dodaは、専門スタッフによるきめ細かいサポートを行う大手転職エージェントです。
キャリアアドバイザーによる転職アドバイスや、採用プロジェクト担当によるフィードバックにより、万全の準備で面接に臨むことができます。
③マイナビエージェント

マイナビエージェントは、登録者の希望を丁寧にヒアリングしたうえで転職サポートを行う大手転職エージェントです。
転職希望の保育士の方にとっても、希望する業界・業種とのマッチングが大いに期待できます。
まとめ
保育士は激務であり、待遇がそれほど高いとは言えない業種です。
プライベートな時間も確保しにくく、家庭との両立もなかなか難しいため、離職を考える保育士の方も一定の割合でいらっしゃいます。
保育士に対しては、その人当たりの良さや激務への体制などが高く評価されているため、求人ニーズが豊富に存在します。
大手総合型の転職エージェントや、保育士特化型の転職エージェントを活用すれば、ご自身の能力を活かせる求人に巡り合える可能性が高まるでしょう。
保育士として過ごす日々に大きな負担を感じている方、プライベートな時間を確保できずに悩んでいる方は、転職によって一度目先を変えるのも有力な選択肢です。
新しい業界・業種にチャレンジすることが、人生を変える大きなきっかけとなるかもしれません。