適応障害やうつ病などの精神病を患うと、心身の回復を図るために休職する方も多いでしょう。

しかし一度職場から離れると、次第に社会復帰へ不安が生じ「復職が怖い」と感じやすくなる人もいます。復職日が近づくにつれ不安と焦りが募り、辛い気持ちを抱えたまま毎日を過ごしている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、休職中にできる社会復帰のための準備を紹介すると共に、「復職が怖い」と感じた場合の対処法や安心して働くために受けるべき適切なケアを解説します。

復職の意思はあるものの、「職場が怖い」「働けるか不安」といった気持ちが生じている方は、参考にしてください。

復職に向けた事前準備

適応障害やうつ病を発症して休職した場合、症状の回復や休職期間の満了が近付けば職場復帰に向けて準備する必要があります。

このとき、以下のステップを踏んで精神面と生活面を少しずつ整えておくのとスムーズに復職しやすいでしょう。

1. 主治医に復職のタイミングを相談する
2. 復職を想定して生活リズムを整える
3. 復職について職場と話し合う
4. 職場復帰する

いきなり復職して体調を崩さないためにも、詳細を確認しておきましょう。

復職が怖い｜不安になった場合の4つの対処法

たとえ心身が回復しても、復職日が近づくにつれて「きちんと働けるだろうか」と不安になる方は多いものです。このような感情は病気の有無に関係なく、休職した人であれば誰もが抱く感情ですのでマイナスに捉える必要はありません。

以下の対処法を試してみることで不安な気持ちが軽減されることもありますので、ぜひ試してみてください。

怖い・不安要素を書き出す

不安な気持ちを和らげる1つ目の方法は、怖い・不安な要素を書き出すことです。

心配事をイメージしてマイナスな気持ちになってしまったときは、どのような点が不安なのか、具体的に書いてみることで自分の気持ちを客観視でき、解決策を見いだすことができたり、気持ちが落ち着いたりすることもあります。

職場で負担に感じていた内容を整理する

復職が怖くなるのは、休職前の仕事で感じていたストレスが大きいことが原因かもしれません。そのような場合は、どのような点がストレスだったのか整理してみましょう。

以下は、精神的・身体的な負荷がかかりやすいことの一例です。

• 残業が多かった
• 責任のある仕事が多かった
• 人間関係でトラブルがあった　など

職場環境における負担を明らかにできれば、復職時の働き方を具体的に見直せます。主治医や職場担当者と面談する際も、話を進めやすくなるでしょう。

復職後をイメージしない

復職が怖い・不安と感じるのは、仕事のネガティブなシーンが頭をよぎるためと考えられます。そのような時は、復職後のことをイメージしないのもひとつの方法です。

あまり考えすぎると不安な気持ちがどんどん大きくなってしまうこともあるため、復職後の姿をイメージせず、「まずは出社できれば良い」と考えてリラックスするのが大切です。

第三者に話を聞いてもらう

復職が不安になった場合、誰かに話を聞いてもらうだけでストレスが緩和される可能性があります。一人で悩んでいると不安がどんどん大きくなってしまうという人は、ぜひ第三者に話してみましょう。

ただし、話す相手が適切でないと心ない言葉をかけられたり真剣にとらえてもらえずに悲しい気持ちになったりすることもあります。

疾患や休職の事情を把握している方や医療関係者、自治体窓口など、適切な相手を選んで話すと解決の糸口が見えてくるはずです。

転職エージェントなら、転職のプロに無料相談できます。

復職が怖いときに受けるべき適切なケアとは？

うつ病からの復職が怖いと感じる方は、支援機関を活用して適切なケアを受けましょう。
ここでは、精神障害の方が復職時に受けられるケアを詳しく解説します。

リワークプログラムの活用

職場復帰の際に活用できる支援には「リワークプログラム」があります。

リワークプログラムとは、うつ病などの精神障害のある方が社会復帰を目指す際に利用できるサポート制度で、以下のようなスキル習得を図るものです。

また、これらのプログラムは複数の施設が実施しており、場所によって受けられる内容が異なります。施設ごとのリワークプログラムをチェックしておきましょう。

医療機関（医療リワーク）

医療機関のリワークプログラムでは、医師や看護師によって医療に基づいたリハビリテーションが実施されます。このような医学療法では心身機能の回復や安定を図り、再休職の防止を目指します。

かかった費用は保険適用でき、自己負担額を抑えながらプログラムを受けることが可能です。

地域障害者職業センター（職リハリワーク）

各都道府県にある地域障害者職業センターでは、職業カウンセラーが休職者や企業に対する復職サポートをおこなっています。医療機関との連携もあり、休職者・企業・医師の三者の合意により、復職を目指すことが可能です。

なお、プログラムでは3～4ヵ月かけて職業リハビリテーションがおこなわれます。医療リワークのような治療ではなく、休職者と企業に向けた適応支援がメインとなっています。利用金額は無料となり、病状が安定している休職者であれば参加可能です。

企業（職場リワーク）

一部の企業では、自社の休職者を対象として独自のリワークプログラムを開催しているケースがあります。

これは休職者が通常業務へ復帰するまで安定して就労できるよう図るもので、厚生労働省が公表した「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」にも記載されているものです。

プログラムの詳細は企業ごとに異なりますが、復職後の再休職を防止し、安定的に働けるかどうかを見極めることを目的としています。

【参考記事】
リワークプログラムとは｜一般社団法人日本うつ病リワーク協会　
心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き｜厚生労働省

就労移行支援事業所へ相談する

復職への恐怖心がある方は、全国に3,353ヵ所設置されている就労移行支援事業所へ相談し、就労サポートを受けることで不安を軽減できる可能性があります。

「就労移行支援事業所」とは、一般企業への再就職・復職を図る障害者や難病者が、就労スキルを習得するための福祉施設です。

サービスは障害者総合支援法に則って提供されており、休職中の場合は以下3つの条件に該当すると利用できます。

1. 雇用企業・地域の就労支援機関および医療機関が、休職者に対して復職支援を実施できない場合
2. 「復職希望の休職者が支援を受けることで復職可能な状態になる」と、企業・主治医が判断した場合
3. 休職中の方が就労移行支援などのサポートを利用することで、確実に復職できると市区町村が判断した場合

なおプログラムでは、基礎体力や集中力を高める職業訓練や、マナーの習得を図る実習訓練がおこなわれます。支援内容は各事業所によって異なるため、休職期間中に近隣の施設へ問い合わせてみるのがよいでしょう。

【参考記事】
｢平成29年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A(平成29年3月30日)｣等の送付について｜厚生労働省　
令和３年社会福祉施設等調査_２障害福祉サービス等事業所・障害児通所支援等事業所の状況 ｜厚生労働省

転職エージェントや就労支援サービスを活用して再就職する

復職が怖いと思うなら、同じ職場に戻らず転職するのもおすすめです。

職場の環境が原因で精神病を患ってしまった場合、職場を変えることで前向きに働けるケースも珍しくありません。1人で転職活動をする自信がない方は転職エージェントのサポートを受けましょう。

転職エージェントなら、無料で企業の紹介や選考対策を受けられます。

また就労支援サービスは働くための知識や能力を身につけることができるサービスです。就職前から就職後の定着支援まで一貫してサポートしてくれるため、「いきなり転職活動をするのは不安」という方にもおすすめです。

復職におすすめの転職エージェント6選

転職エージェントを選ぶときは、精神病に理解のあるエージェントを選ぶことが大切です。

専任のアドバイザーがサポートしてくれたり、福利厚生や働き方が柔軟な企業を紹介したりしてくれるため、自分に合った企業と出会えるはずです。

以下は精神病の方が転職をするときにおすすめの転職エージェントです。

• dodaチャレンジ
• アビリティスタッフィング
• atGPエージェント
• 障害者雇用バンク
• DIエージェント
• 就職カレッジ

dodaチャレンジ

特徴①　障害者の転職・就職支援実績No.1 特徴②　うつ病・発達障害のある方のサポートに強み 特徴③　就労移行支援事業所とも連携

dodaチャレンジは、大手人材会社であるパーソルグループが運営する障害者特化型の転職エージェントです。2018年～2020年の障害者分野では転職・就職支援の実績No.1を誇り、求人数も豊富にあるのが特徴です。

キャリアアドバイザーが求職者と企業の間に立ち、病気の症状に合った業務内容や環境づくりまでサポートしてくれるため、定着率も96％と高く、長く続けられる仕事に出会えるでしょう。

本人の希望に応じて、アルバイトから契約社員、契約社員から正社員へのキャリアアップも果たせます。

サービス名	dodaチャレンジ
運営会社	パーソルダイバース株式会社
特におすすめな人	・障害者手帳をお持ちの方 ・実績のあるエージェントを利用したい方 ・キャリアアップ転職をしたい方
対応地域	全国
障害者手帳の必要性	必要
公式サイト	https://doda.jp/challenge/

アビリティスタッフィング

特徴①　精神障害者の方向けの求人割合95％ 特徴②　登録前に相談会「アビリティゲート」を実施。前向きに転職に取り組める 特徴③　専門スタッフのフォローで定着率94％

アビリティスタッフィングも、大手人材会社であるリクルートグループが運営する障害者特化型の転職エージェントです。特に精神障害のある方の転職サポートに定評があり、これまで1800名を超える就職支援実績があります。

首都圏が中心にはなりますが、大手優良企業の求人が豊富にあるため、転職を機にキャリアアップ＆好待遇を手に入れたい方におすすめのサービスです。

公式サイトには、実際にうつ病をかかえながらも転職し働いている方の体験記も掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

サービス名	アビリティスタッフィング
運営会社	株式会社リクルートスタッフィング
特におすすめな人	・障害者手帳をお持ちの方 ・不安を解消したうえで転職活動を始めたい方
対応地域	首都圏
障害者手帳の必要性	必要
公式サイト	https://ability.r-staffing.co.jp/

atGPエージェント

特徴①　障害者向け転職分野で20年以上のノウハウあり 特徴②　支援機関と連携した総合的なサポート 特徴③　面談方法をオンライン、電話、対面から選択できる

atGPエージェントは、障害者向けの転職分野において20年以上のノウハウがあるゼネラルパートナーズが運営する転職エージェントです。

ハイクラス転職を目指す「atGPハイクラス」やアスリート専門の「atGPアスリート」、新卒学生専門の「atGP就活エージェント」などのエージェントサービスのほか、障害別にスキル習得を目指せる就労移行支援サービス「atGPジョブトレ」と併用することも可能です。

求人を選択するときは在宅勤務や時短勤務、未経験OKといった一般的な条件はもちろん「障害への配慮事項」なども選択でき、求職者の希望にマッチした求人が期待できるサービスです。

サービス名	atGPエージェント
運営会社	株式会社ゼネラルパートナーズ
特におすすめな人	・障害者手帳をお持ちの方 ・働き方や企業への明確な希望がある方
対応地域	全国
障害者手帳の必要性	必要
公式サイト	https://www.atgp.jp/

障害者雇用バンク（旧エラビバ）

特徴①　大手エージェントのほか、就労支援機関、ハローワークなど多彩な連携施設あり 特徴②　カウンセリングから内定後サポートまでスマホで完結 特徴③　必ず10社以上の求人紹介あり

障害者雇用バンクは、20～30代の若手人材の採用に強い転職エージェントです。障害者雇用バンクが独自に保有している非公開求人だけでなく、ハローワークなどの求人も閲覧できます。

また、大手転職エージェントとも提携しており、求職者の強みや人柄、症状に合ったサービスを紹介してもらえます。

「転職活動を始めたいけど何から始めたらいいかわからない」という人は、まず障害者バンクに登録してみるのがおすすめです。

アプリなどのダウンロードは必要なく、Web面談もスマホでOKなのでスキマ時間で手軽に転職活動を進められるのもポイントです。

サービス名	障害者雇用バンク
運営会社	株式会社スペシフィック
特におすすめな人	・障害者手帳をお持ちの方 ・20～30代の若年層 ・スキマ時間でさくさく転職活動を進めたい方
対応地域	全国
障害者手帳の必要性	必要
公式サイト	https://syogai-koyo-bank.com/

DIエージェント

特徴①　非公開求人＆ハイクラス求人多数 特徴②　希望や強みに基づいたキャリア診断で年収相場や適職がわかる 特徴③　求職者の希望に応じて業界・求人を新規開拓

DIエージェントは、求職者の希望や症状に合わせた企業紹介をしてくれる転職エージェントです。

「未経験の職種にチャレンジしたい」「転職を機に年収アップを狙いたい」といった希望はもちろん、DIエージェントで紹介可能な求人がない場合は新たに新規開拓もしてくれます。

専任のキャリアアドバイザーが求職者のスキルや経験を分析し、年収相場や適職などをアドバイスしてくれるため、これまで考えもしなかった新たな可能性に気づくこともあるでしょう。

サービス名	DIエージェント
運営会社	株式会社D＆I
特におすすめな人	・障害者手帳をお持ちの方 ・年収アップなどのキャリアアップを目指す方 ・転職を希望する特定の企業がある方
対応地域	全国
公式サイト	https://di-agent.jp/

復職でクローズ就労する場合におすすめの大手転職エージェント

クローズ就労が可能な状態である場合、大手の転職エージェントに登録して多数の求人からご自身の生活にあった職場を選択するようにしましょう。

リクルートエージェント

マイナビエージェント

doda

復職に失敗しないための心構え

さまざまな支援制度や治療によって働ける状態まで回復しても、復職後の生活で症状が再発すると再休職を余儀なくされます。そのような状況を回避するためにも、以下3点に注意した生活を送りましょう。

• 治療を止めない
• 無理をしない
• 一人で抱え込まない

治療を止めない

精神的に安定して体力が回復してくると、治療や服薬を止めても良いと思ってしまう方が多くいます。しかし、自己判断で通院・服薬を止めるのは非常に危険で、再発のリスクを高める可能性があります。

どんなに体調が良くても、働き続けるためには治療を継続させるのが大切です。また服薬や通院の回数は、主治医の判断に従いましょう。

無理をしない

症状が回復したからといって、復職後すぐにフルタイムで働くのは難しいと考えられます。

とくに働き始めの数週間は無理をせず、会社の理解が得られるなら時短勤務や試し出勤制度を利用して、少しずつ業務に慣れていくのがおすすめです。

また、仕事の感覚を取り戻すには少なくとも数ヵ月かかると心に留め、焦らずゆっくり復職できるようにしましょう。

一人で抱え込まない

復職は職場や家族・医療機関など、周囲との協力が不可欠です。一人で頑張ろうと思わず、つらいときは周りを頼るなどの行動が大切と覚えておきましょう。

あなた自身が周囲を頼る行動を見せれば、次第に周りの反応も変わってくるはずです。より働きやすい環境をつくりあげるためにも、一人で抱え込まない姿勢が大切といえます。

最後に｜精神疾患での復職に無理は禁物

適応障害やうつ病などの理由で休職した場合、復帰が近づくにつれて「復職が怖い」と感じるのは自然なことです。

そんなときは無理に感情を抑えるのではなく、具体的に何が怖いのかを明確にすることで解決策が見えてくることもあります。また一人で悩んでいても解決しない場合は、必要に応じて適切な機関へ相談するのも大切です。

多くの施設で実施されるリワークプログラムへの参加や転職などの選択肢から最適な復職方法を選ぶことで、不安を和らげて無理のない社会復帰を目指せるかもしれません。

また、精神疾患になった理由が仕事にある場合、復職することで再発のリスクが高まることは否定できません。もしその原因を排除することが難しい場合は転職するのも1つの方法です。

精神疾患に詳しい転職エージェントであれば、適切なアドバイスや企業の紹介をしてもらうことも可能ですので、ぜひ利用してみてください。