保育士として働いている方の中には、給料の安さを感じている方も多いことでしょう。

厚生労働省によると、保育士が退職した理由には次の内容が多いと報告されています。

保育士を退職した理由で一番多いものは職場の人間関係ですが、2番目に多い理由として給料の安さが挙げられていました。          

この記事を読んでいるあなた以外にも、給料の安さを感じている保育士は多いといえます。

そこで本記事では、保育士の給料がなぜ安いのかという原因を解説し、給料を上げるためのポイントを紹介します。保育士として給料を上げていくヒントとして活用してください。          

【関連記事】保育士を辞めたい理由は？対処法や辞めた後の選択肢などを解説！

保育士の平均年収｜全職種より月収5万円、年収60万円ほど安い

冒頭で給料が安いと感じている保育士は多いとお伝えしましたが、保育士の給料は実際に安いのかどうか確認していきましょう。

賃金構造基本統計調査や民間給与実態統計調査を参考に、保育士と全職種の給料の平均を比較したところ、次のような差額がありました。

	年収	月収	手取り
保育士	391万円	27万円	23万円
全職種	458万円	32万円	27万円
差額	−67万円	−５万円	−4万円

参考：保育士：令和4年賃金構造基本統計調査/全職種：令和４年分 民間給与実態統計調査

保育士は他の職種と比べて、月収で5万円程度、年収では換60万円以上低いことが分かりました。

「保育士の給料が安い」という考えは、あなただけの思い込みではなく、事実として認識しても間違いはないでしょう。

参考記事：保育士の年収を徹底解説！月収や手取りは今後上がるのか

保育士の給料はなぜ安い？給料が安い5つの理由

なぜ保育士の給料は安くなってしまうのでしょうか？

こちらの項目では、保育士の給料が安い5つの理由を解説します。

女性が多い職業だから

保育士の給料が安い大きな理由の1つが、女性が多い職業であることが挙げられます。

厚生労働省の保育士の現状と主な取り組みによると、保育士の女性比率は95％以上と、圧倒的に女性が多い職業であると言えます。

国税庁によると、男女の平均年収には大きな差があり、男性が563万円、女性は314万円でした。女性の給料は男性より大幅に低い結果となっています。

女性の給料が上がりにくい理由としては次の要素が挙げられます。

特に保育士の女性は、20〜30代で結婚・出産を迎える方も多く、働き盛りで一度離職や退職をするため、平均的な給料も上がりにくくなっていると考えられます。

残業や夜勤で稼ぐのが難しいから

では、保育士のように女性が多い職業として挙げられる看護師も給料は安いのでしょうか。

令和4年賃金構造基本統計調査によると、看護師の給料は平均年収500万円、平均月収35万円程度となっており、保育士よりも年収100万円ほど高いことが分かります。

看護師の多くは、夜勤を担当しているため、夜勤手当や深夜労働手当により年収を上げやすい状態であることが理由の1つとして考えられます。

一方、保育士は夜勤がほぼありませんし、サービス残業が状態化しているところも多く、残業や夜勤などの手当で給料を上げるのは難しいという特徴があります。

保育料を上げにくいから

近年の物価高騰に伴い、大企業を中心に従業員の給料も増加傾向にあります。

これは、「物価上昇→会社の売上アップ→従業員にも還元」というようなサイクルが出来ているからです。

一方で、保育施設は簡単に保育料を上げられない状態にあります。少子化対策のために、子育て世代への支援が広がっており、保育料の無償化が広まっています。

そのため、保育士の給料にもなる保育料は国からの支援頼りになっており、国からの支援が不十分だと保育士に対してしわ寄せが及んでしまうのです。

国から支給される財源が限られているから

保育士の給料は、国が定める公定価格による影響を受けます。

公定価格とは、子供一人の保育や教育にかかる費用を算出したもので、公定価格をもとに保育施設に予算が割当てられます。

一般企業であれば、利益を上げれば従業員にも還元されやすいのですが、個々の保育施設では簡単に利益を上げられるわけでもないため、保育士の給料が上がりにくい原因にもなっています。

保育士への給料が後回しにされがちだから

上記のように、国の財源が保育士の給料を支えているため、政府が保育士の仕事の重要性を理解し、適切な支援を行わないことには、保育士の給料は上がりにくいままです。

この10年ほどで、共働きや少子化対策の一環として保育士の重要性にもスポットが当てられてきていますが、それまでは保育士の仕事の重要性は認識されておらず、保育士の給料がなかなか上がらない理由の1つなってしまいました。

【給料明細を公開】保育士が働く環境の実態をインタビュー

保育士の給料が安い理由について解説いたしましたが、実際に保育士として働く方にはどのように影響しているのでしょうか。

編集部では実態を探るべく、保育士として勤続10年のAさん（30代・女性）にインタビューを実施しました。

（参考：内閣府男女共同参画局｜結婚と家族をめぐる基礎データ）

実際のお話を聞く中で、前述した5つの理由以外にも保育施設の経営方針によって保育士の給料が上がらない実態も知ることができました。

同様に、この記事を読んでいる方の保育施設特有の理由もあるのではないでしょうか。

保育士の給料は上昇傾向にある

ここまで保育士の給料が安い理由と実態をご説明しましたが、近年では保育士給料の改善も見られます。

参考：保育士の現状と主な取組｜厚生労働省

保育士の処遇改善は2013年（平成25年）から本格的に始まり、10年ほどで年収が50万円以上上がっています。

また、2023年（令和5年）にはこども家庭庁が発足し、現在、保育士の待遇改善に動いてくれています。

しかし、保育士が働く環境の実態でも話に合ったように、保育施設の経営方針による要因などから転職をする保育士も増加しており、人手不足における人材確保と離職防止が大きな課題となっています。

また、他職種での給料上昇や物価高騰などにも追いついていく必要があると考えると、今後も保育士の給料が改善されていくことが予想されます。

保育士が給料を上げる5つの方法

国を挙げて保育士の給料改善に取り組む動きは見られますが、個人のやり方次第では、今すぐにでも自身の給料を上げていける方法があります。

こちらでは、給料が安いと感じている保育士の方ができる、給料を上げる方法をご紹介します。

役職を目指す

今いる職場で給料アップを目指すのであれば、役職を目指すことも1つの方法です。

一般の保育士と、主任保育士、施設長の給料は次のように大きな違いがあります。

役職	年収	月収
施設長（園長）	639万円	53万円
主任保育士	460万円	38万円
保育士	306万円	26万円

参考：幼稚園・保育所等の経営実態調査結果(収支状況等）｜文部科学省初等中等教育局

主任保育士になれば、平均月収だけでも10万円以上の給料の差がありますので、給料面が大きく改善される期待が持てます。

しかし、主任保育士の平均勤続年数は21年です。

勤続年数が10年に満たない方は、すぐには役職に就けないことを理解しておきましょう。

10年以上の保育士経験がある方は、保育園によっては役職を就けてくれる可能性も出てきます。

役職付きで採用される保育園を探して転職を試みても良いでしょう。

キャリアアップ研修を受ける

主任保育士になるには年数がかかりますが、その前段階のキャリアアップ研修を受ければ月額最大4万円、給料を上げることができます。

このキャリアアップ研修は国を挙げての施策ですので、お勤めの保育園を通して申し込みをお願いすれば、高い確率で受けることができるでしょう。

役職	給料の増額	経験年数	園内での人数制限
副主任保育士	月額4万円	おおむね7年以上	おおむね1/3
専門リーダー	月額4万円	おおむね7年以上	おおむね1/3
職務分野別リーダー	月額5千円	おおむね3年以上	おおむね1/5

参考：保育士等のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ｜厚生労働省

勤続年数10年未満でも挑戦できますので、保育士としてある程度経験がある方は、ぜひ挑戦してみてください。

関連記事：保育士の給料が4万アップって本当？保育士処遇改善等加算について徹底解説

他の保育施設に転職する

手っ取り早く給料を上げるためには、給料が良い他の保育施設に転職することも1つの選択肢です。

保育園によってもある程度の給料差があるため、求人票をきちんとみて、給料が確実に上がりそうな保育園または保育園以外の保育施設を探してみるのもおすすめです。

また、福利厚生として住宅手当や資格手当などを導入している保育施設もあります。

手当として給料を上乗せしてもらう方法もありますので、求人を探す際は手当の内容・金額もしっかりチェックしてみてください。

公務員保育士を目指す

公立の保育士を目指すのも給料を上げる方法の1つです。

公立保育士は、公務員としての位置付けられており、昇給や賞与がしっかりと保証されています。

公立保育士になるには、各自治体で実施している公務員採用試験に合格する必要があります。

一般的に試験は一次試験と二次試験に分けており、一次試験は筆記テスト、二次試験は面接や実技のケースが多いです。自治体によって、試験の日程や試験内容は異なるため、事前にチェックしておきましょう。

また、受験資格として、各自治体で年齢制限が設けられています。そのため、公立保育士を目指す方は、なるべく早く行動するのが好ましいでしょう。

他の都道府県で働く

保育士の給料アップを狙う手段として、平均年収の高い都道府県で働くという選択肢もあります。

都道府県や各自治体の保育園ごとに基本給や賞与の回数、処遇改善の取り組み方が異なるので、どの県で働くかによっても保育士の年収は変わります。

保育士の年収が高い3つの県と、年収が低い3つの県をまとめると、次のような違いがあることが分かりました。

参考：厚生労働省「令和４年賃金構造基本統計調査」

保育士年収が高い県と低い県とでは、100万円以上の年収差が生じているため、「どこで働くか」も非常に重要になるのです。

いきなり沖縄から東京に転職するとなるとハードルが高いですが、たとえば奈良から大阪であれば通勤も可能な範囲内で、生活のイメージもつきやすいはずです。

また、一部の保育園では家賃を最大8万円負担してもらえる「借り上げ社宅制度」を取り入れているところもあるため、独身などで動きやすい保育士の方は、遠方の求人にも目を通してみてはいかがでしょうか。

都市部であるほど年収も上がりやすい傾向にあるため、県を跨いで転職先を探してみることも、保育士の給料を上げるポイントです。

給料を上げたい保育士におすすめの転職エージェント3選

保育士は役職に就いたり、研修を受けたりすることで給料を上げることもできますが、転職を通じて給料アップのチャンスが広がります。

転職も検討している方は、アドバイザーが親身になって相談に乗ってくれ、希望に応じた求人を提案してくれる保育士向けの転職エージェントの利用をおすすめします。

こちらの項目では、良い条件の求人紹介が多かったり、アドバイザーの提案力があって転職先への交渉で年収が上げやすかったりする、おすすめ転職エージェントを3つご紹介します。

保育士ワーカー

保育士ワーカーは、年間転職成功数3万人を誇るトライトグループが運営する転職エージェントです。

登録者限定の非公開求人が充実しており、給料や福利厚生が良い人気求人も見つかり安いでしょう。

また、給料以外に気をつけたい保育園内での人間関係にも重きを置いており、人間関係や、保護者の雰囲気などの内部情報までリサーチしています。転職後のミスマッチを避けたい方にもおすすめです。

保育士人材バンク

保育士人材バンクは、保育系の資格者を専門にサポートをおこなう転職エージェントです。

大きな特徴として、保育観や求める人材などを事前に把握できるため、自分に合った求人を効率よく見つけたい方におすすめといえるでしょう。

また、匿名での条件交渉に対応してくれる場合もあるため、もう少しだけ給料や手当などを上げてもらいたい求人があった場合に、より高い給料を狙うこともできます。

幅広く相談を受け付けており、現職の仕事や給料の悩みがある方でも気軽に相談しやすくなっています。

レバウェル保育士

レバウェル保育士は、手軽に転職しやすく転職後のサポートも充実している転職エージェントです。

求人情報は、入職者へアンケートを実施したり、施設に訪問したりといった方法で収集した職場の情報をもとに、ミスマッチを避けられるような工夫がされています。

LINEやメールで求人紹介等のやり取りができるため、現職が忙しくてなかなか転職活動に時間を割けない方にもおすすめです。

まとめ

保育士の給料を安いと感じている方も多いでしょうが、事実、他の職業と比べても年収が低い傾向にあります。

ただし、近年では保育士に対する待遇改善も見直しされてきており、最大月額4万円の給料を上げられるキャリアアップ研修なども取り入れられています。

各保育園でも、保育士確保のために基本給の増額や福利厚生の充実などに踏み切っている保育施設も増えてきました。

現在の職場での給料に不満がある方は、転職を検討してみても良いでしょう。

保育士で給料を上げたい場合は、まずは現職での昇格、研修や手当などで給料アップの余地があるか無いかを調べてみましょう。 どうしても給料が上がらない環境に置かれている方は、他の保育施設の求人をチェックしてみてください。