営業事務は「一部業務が自動化される」「客観的な成果が見えにくい」といった背景もあり、キャリアにならないと思われがちです。

しかし、「資格を取得してスキルアップする」「能動的に働いて職場環境を改善する」といったポイントを意識すれば、十分キャリアアップできます。

スキルや仕事への積極性を身に付けておけば、社内でのポジションアップにつながるだけでなく、転職でも有利になるでしょう。

本記事では、「営業事務はキャリアにならない」と言われる理由やキャリアを積むコツ、おすすめのキャリアチェンジ先、転職成功のポイントなどを解説します。

関連記事：事務職に強い転職エージェント・サイト4選【未経験OK】転職成功のポイントや注意点

「営業事務はキャリアにならない」と言われやすい理由

「営業事務はキャリアにならない」と言われる理由として、大きく4つが挙げられます。

ルーティンワークメインのため専門スキルを身に付けにくい

営業事務は、以下のようなルーティンワークがメインです。

もちろん、他の業務をサポートする重要な仕事であることは間違いありません。

しかし、基本的に高度な専門スキルは要求されないため、漠然と働いても次のキャリアに活かせる力は身に付けにくいでしょう。

参照：jobtag | 営業事務

数値による客観的な成果が見えにくい

営業事務は、客観的な成果が見えにくい点もネックです。

たとえば営業なら「成約件数」「飛び込み件数」など、客観的な数値で成果を判断できます。マーケティング部署であれば、「施策による売上」で成果を判断可能です。

一方で営業事務は、上記のような「企業の売上に直結する明確な数値指標」がありません。

そのため、仕事の成果が見えず自分の努力をアピールしにくい面があります。仕事の成果を伝えられなければ、転職活動でも実力をアピールできず、キャリアアップが難しくなるでしょう。

業務のIT化や外注などが増えている

営業事務はIT化や外注が進んでいるため、今後は企業が採用人数を縮小するかもしれません。

現在は事務作業全般において、AIやRPA導入によるIT化が進んでいます。

たとえばRPAの場合、令和元年の調査で「AIやRPAを導入済み・導入予定」と回答した自治体の割合は、以下のようになりました。

このように規模の大きい都市では、「議事録作成」「コンビニ交付の集計業務」「所得申告書入力業務」など、細かい事務作業がIT化されています。

参照：総務省 | 自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査 p.1

こうしたIT化が進めば、営業事務の仕事は少しずつ縮小していくでしょう。

営業事務自体の採用倍率が高い

営業事務はそもそも倍率が高いため、転職して次のキャリアを歩みたくても、採用されない可能性があります。

実際、令和6年5月時点における営業事務の有効求人倍率は「0.96倍（営業・販売事務従事者）」でした。

参照：厚生労働省 | 一般職業紹介状況（令和6年5月分）について | 参考統計表 p.9

事務職はノルマがなく定時退勤しやすいため、ワークライフバランスを実現できる仕事として人気が高いのです。

過度に心配する必要なし！コツを押さえれば営業事務としてキャリアを積み上げられる

このように、営業事務は「成果が見えにくい」「IT化が進んでいる」といった理由で、キャリアにならないと思われがちです。

しかし、だからといって過度に心配する必要はありません。「スキルアップを図る」「社内でのコミュニケーションを意識する」といった正しいコツを押さえれば、営業事務でもキャリアアップは可能です。

具体的には以下のコツを意識しましょう。

営業担当者と積極的にコミュニケーションをとる

社内の営業担当者と積極的にコミュニケーションを取りましょう。

営業事務は、営業担当者との頻繁なコミュニケーションを求められる仕事です。

たとえば「顧客からの問い合わせを担当者へ取り次ぐ」「担当者の要望をヒアリングしてわかりやすいプレゼン資料を作成する」といった場面で、コミュニケーションが求められます。

こうした場面でスムーズにコミュニケーションを取り、求められる業務をスピーディーかつ正確に提供することで、営業事務のスキルを磨き「社内でポジションを上げる」といった形でキャリアアップできます。

「資格の取得」などで事務作業で必要なスキルを磨く

事務作業で求められるスキルを積極的に磨きましょう。

事務作業では、PCスキルやコミュニケーションスキル、資料作成能力などが求められます。

こうしたスキルを持っていれば社内で重宝されるうえ、転職時のアピールポイントとしても活用できます。

スキルを身に付けて自分のレベルを客観的にアピールするには、資格の取得がおすすめです。営業事務なら、MOSや秘書検定、簿記などの資格がよいでしょう。

職場で能動的に仕事することを心がける

職場で能動的に働くことも心がけましょう。

営業事務はルーティンワークがメインのため、業務に慣れれば流れ作業で淡々と進められます。

しかし、キャリアを積みたいのであれば、能動的に「マニュアル改訂を提案する」「マクロを組んで職場全体の入力作業を効率化する」などをおこなうことが重要です。

能動的に仕事へ取り組み実績を残せれば、現在の職場で評価されるだけでなく、転職時のアピールポイントも作れます。

自社商品・サービスの知識を身に付ける

ある程度、自社商品・サービスに関する知識も身に付けましょう。

営業事務では、担当者の代理で顧客対応をおこなうケースがあります。顧客対応では「商品の使い方がわからない」「プランで不明点がある」といった質問に回答することもあるでしょう。

知識を身に付けて上記のような簡単な質問を巻き取れるようになれば、営業担当者の負担を軽減できます。

他の従業員の負担を軽減できる事務員は職場から評価されるため、社内でのポジションアップも期待できるでしょう。

営業事務に関連する仕事でキャリアを積み上げるルート

具体的に営業事務のキャリアを積み上げるルートしては、大きく以下3つが挙げられます。

職場内でポジションを上げる

一番身近なルートが「職場内でのポジションを上げる」というものです。

上記で紹介した「営業担当者の負担を軽減する」「業務効率化のために積極的に提案する」といったアクションを起こし、職場から評価してもらうことで、昇格や昇給などを期待できます。

人間関係や福利厚生を含め、現在の勤務先に大きな不満がないのであれば、毎日コツコツ努力して職場内でのポジションアップを狙いましょう。

別の営業事務の企業へ転職する

職種は変えずに、別の企業へ転職するのもよいでしょう。今までの経験をアピールできるため、採用される可能性も高い傾向にあります。

とはいえ営業事務の採用倍率自体は高いため、決して油断せず「資格を取得してスキルアップする」「仕事で積極的に提案する」といった取り組みを、欠かさずおこないましょう。

より専門性の高い事務職へ転職する

営業事務にこだわりがない方は、より専門性が高い事務職への転職を考えましょう。

専門性が高い事務職の場合、基礎的な事務処理能力はもちろん、法律や医療など特定ジャンルの知識が必要です。専門性が高いほど人材の替えが効かないため、企業からの需要も高まり結果的にキャリアアップを望めます。

専門性の高い事務職としては、たとえば以下が挙げられます。

代表的な「専門性の高い事務職」については、以下の記事でも解説しています。
関連記事：法務部│医療事務│金融事務│労務

営業事務からのおすすめの転職先

上記で解説したように、営業事務を含めて、事務職全般でキャリアを積み上げることは可能です。

とはいえ、自分で考えた結果「やはり将来性が不安なので別の業界へ転職したい」ということもあるでしょう。

その場合、「将来性がある」という観点で転職先を探すのであれば、以下の業界がおすすめです。

おすすめの転職先	おすすめの理由
IT業界	技術革新によって新しい分野の仕事や企業が数多く登場している
医療・福祉業界	高齢化社会の進行によって、看護師や介護士、医療技術者など、幅広い職種で需要が高まっている
流通業	オンラインショッピングの普及によって、物流やマーケティング、カスタマーサポートなど、多方面で人材が必要になっている
ゲーム業界	巣ごもり需要やeスポーツなどの普及もあり、世界的な市場拡大が予想される
医療機器のメーカー	医療技術の発展によって、研究開発や製品設計、マーケティングといった分野で人材が求められている

より具体的な、将来性のある仕事の種類や持っておくと有利な資格、転職のコツなどは以下の記事で解説しています。
関連記事：これから需要が増える仕事14選｜役立つスキルや資格・将来性のある業界も解説！

営業事務からの転職を成功させるポイント

営業事務からの転職を成功させるポイントは、以下の6点です。

なるべく成果を数値で定量的にまとめる

営業事務としての成果は、なるべく数値で定量的にまとめましょう。

転職活動では、今までの実績や成果、身に付けたスキルを企業からチェックされます。営業事務であれば、以下のように仕事の成果をわかりやすく数値で整理しましょう。

事務職でも工夫次第で定量的に成果をまとめられるため、時間をかけて今までの業務を振り返りましょう。

自己分析をおこない強みやアピールポイントをまとめる

自己分析を実施して、自分の強みやアピールポイントを把握しましょう。強みを把握し「どのアピールポイントを強調すべきか？」を考えることで、より自分の魅力を伝えられます。

上記で解説したように数値的な成果をまとめつつ、具体的なエピソードを交えてコミュニケーション能力やPCスキルなどをアピールできるとよいでしょう。

未経験歓迎の求人に応募する

未経験歓迎の求人であれば、採用される可能性は高いでしょう。求人サイトで「未経験歓迎」「未経験者OK」といったタグやワードで検索できます。サイトによっては「未経験求人特集」といった特集を組んでいる場合もあるため、チェックしておきましょう。

また「有効求人倍率が高い＝人材不足」という業界も狙い目です。人材不足の業界は、未経験者を積極的に採用する傾向にあります。

有効求人倍率が高い仕事としては、たとえば以下が挙げられます。

参照：厚生労働省 | 一般職業紹介状況（令和6年5月分）について | 参考統計表 p.9

その他、未経験から挑戦しやすい仕事の詳細については、以下の記事で解説しています。
関連記事：未経験でもできる仕事16選！正社員として採用されやすい求人の特徴や転職のコツを解説

企業・業界研究をおこなう

転職活動では企業や業界研究も欠かせません。

志望企業や業界の現状をチェックし、「どんなスキルが必要か？」「どんな人物を求めているの？」などを知ることで、アピールの方向性を正しく考えられます。

たとえば、企業の求める人物像に「コミュニケーション能力のある人」が掲げられているなら、営業事務の経験をもとに「コミュニケーションを活かして成果を出したエピソード」を話せるとよいでしょう。

また、業界研究によって仕事内容を把握しておけば、入社後のミスマッチも防止できます。

とくに「別ジャンルの事務職で働く」「未経験の業界にチャレンジする」という場合は、イメージだけで転職先を決めないよう入念に調査しましょう。

営業事務としてのキャリアプランを明確にしておく

今後のキャリアプランを明確にすることも重要です。営業事務としてのキャリアプランを洗い出し、「どんなスキルを身に付けて・どのようになりたいのか？」を明確化することで、志望動機の説得力を高められます。

より具体的に「◯◯のキャリアを達成するには御社で□□という経験が必要」という部分まで伝えられれば、採用されやすくなるでしょう。

営業事務は採用倍率が高いため、スキルを身に付けるだけでなく、キャリアプランも明確にして企業から選ばれやすくすることが重要です。

転職エージェントを活用する

営業事務に限らず、転職では転職エージェントも活用しましょう。

幅広い業界への転職サポート経験を持つプロであれば、採用倍率が高い事務職へ転職するコツはもちろん、異業種への就職で必要なスキルや自己PRの方法などを的確にアドバイスしてくれます。

とくに「営業事務の成果をまとめられない」「異業種転職で事務経験をどのように絡めたらよいかわからない」といった方は、なおさらプロを頼って転職活動に励みましょう。

営業事務からの転職でおすすめの転職エージェント3選！

転職エージェントにはたくさんのサービスがありますが、とくにおすすめなのは以下の3つです。

リクルートエージェント

マイナビエージェント

ビズリーチ

営業事務のキャリアについてよくある質問

最後に、営業事務のキャリアを考えるうえでありがちな質問および回答をまとめました。転職活動をはじめる前に、チェックしておきましょう。

営業事務ではどんなスキルを身に付けられるの？

PCスキルやコミュニケーションスキル、資料作成能力などを身に付けられます。

営業事務に将来性はある？

AIやRPAの導入により、一部業務が自動化されているのは事実です。

しかし、自分の努力次第で将来性は作れるため、悲観しすぎる必要はありません。

たとえば「資格を取得する」「積極的に営業担当者とコミュニケーションを取る」などを意識すれば、職場内から評価されてキャリアアップできる可能性があります。スキルが身に付けば、転職も視野に入るでしょう。

具体的な内容は「過度に心配する必要なし！コツを押さえれば営業事務としてキャリアを積み上げられる」の章をご確認ください。

営業事務はどんなキャリアパスを描けるの？

大きく以下3つのキャリアパスが考えられます。

具体的な内容は「営業事務に関連する仕事でキャリアを積み上げるルート」の章をご確認ください。

営業職からキャリアチェンジするにはどんな仕事がおすすめ？

「今後の需要が拡大する」「未経験者を歓迎している」という仕事がおすすめです。

具体的な仕事については「営業事務からのおすすめの転職先」の章をご確認ください。

最後に | 営業事務でもキャリアを積める！コツを押さえて理想の将来を築こう

実際に、「営業事務はキャリアにならない」という声もあります。

確かに事務職は、高度なスキルを求められないことが多く一部業務はIT化されているため、将来性を感じない方もいるでしょう。

しかし、過度に心配する必要はありません。営業事務でも「担当者との積極的なコミュニケーションを心がける」「資格を取得してスキルを磨く」といったコツを意識すれば、キャリアアップは十分可能です。

業務で数値的な成果を残せれば、社内でのポジションアップを見込めるだけでなく、転職時の武器にもなるでしょう。

もちろん、営業事務にこだわらず、未経験の仕事に挑戦することもひとつの手です。

いずれにしても、自分が希望するキャリアや営業事務へのこだわり、持っているスキルなどを考慮し、ベストな選択を取ることを意識しましょう。