- 「毎日忙しくて体力がもたない」
- 「上司と馬が合わない」
- 「作業療法士の仕事にやりがいを感じられなくなった」
こうした理由から、作業療法士の転職を考えている方もいるでしょう。異業種への転職を検討している方もいるかもしれません。
しかし、漠然とした理由での退職・転職は、失敗する可能性があります。転職を成功に導くためには、いくつかのポイントを押さえる必要があるのです。
作業療法士が転職したいと考える理由や転職に失敗しがちな特徴、転職を成功させるポイントを紹介します。
作業療法士が転職したいと考える理由
作業療法士の転職理由には、以下のようなものが挙げられます。
- 体力的にきつい
- 給料が割に合わない
- プレッシャーが大きい
- 人間関係のストレスがある
- 専門性を見失ってしまう
体力的にきつい
作業療法士は、リハビリやレクリエーションなどで体を動かすため、「きつい」と感じる方が多く見られます。
【リハビリの例】
→立ち上がる・座る・寝返りなどの起居動作や、日常生活動作などの訓練
→風船バレーや棒体操、ちぎり絵 など
→子どもの発達に合った援助をするため、ときには一緒にトランポリンを跳ぶこともある |
机上で行う業務もありますが、それなりの運動量があるため、体力が必要なのです。
また、患者を支えることで体に負担がかかり、腰痛や肩こりに悩む作業療法士も少なくありません。そのため、長く続ける自信がなくなり転職を考える方もいます。
給料が割に合わない
作業療法士の仕事は、日常動作のリハビリから書類作成、カンファレンスまで多岐に渡ります。
作業療法士1人に対して、担当する患者は複数いるため、勤務時間内にすべての業務を終えるのは至難の業です。その結果、残業が多くなるケースも珍しくありません。
一方で、作業療法士は、給与水準が低い傾向です。
厚生労働省と国税庁の調査によると、作業療法士の平均年収は約408万円、対して日本の平均年収は約433万円となっています。
作業療法士の平均年収 約408万円 |
給与所得者の平均年収 約433万円 |
【参照】
▶厚生労働省| 令和2年 賃金構造基本統計調査
▶国税庁| 令和2年分 民間給与実態統計調査
日本の平均年収と作業療法士の年収を比べると、25万円もの差があります。多忙な業務のうえ、400万円前後の年収となると「割に合わない」と感じてしまうのも無理はないかもしれません。
プレッシャーが大きい
プレッシャーが大きい点も、転職を考える理由に挙げられています。
作業療法士の仕事は、機能訓練を通して社会復帰に向けたサポートを行うことです。しかし、訓練の効果はすぐに得られるものではありません。
インターネット掲示板では、以下のような作業療法士の口コミ相談が寄せられていました。
病院で勤務しているとリハビリ職の限界を感じるようになりました。
- どれだけ適切なアプローチをしても元に戻らない身体。
- 患者様のモチベーション次第で訓練結果が大きく変わる現実。
- 服薬調整でいともたやすく良くなる身体。
- 医者や看護師から受ける職業差別的な発言。
- 先輩の意見が絶対で後輩側からの意見は二の次という風習。
など、新卒時に思い描いていた理想と現実とのギャップに疲れ果ててしまいました。
引用元: PT-OT-ST.NET掲示板 より一部抜粋
ストレスやプレッシャーから、モチベーションが低下してしまい、転職を考える方も少なくないようです。
人間関係のストレスがある
作業療法士は「人 対 人」の仕事であり、さまざまな職種の人とも密接に関わっています。そのため、苦手だからといって「できるだけ関わらない」という行動はとりにくく、ストレスになりがちです。
人間関係のトラブルには、以下のようなものが挙げられます。
【人間関係のトラブル例】
- リハビリに対する考え方や価値観を押し付けられる
- 適切な指導をしてもらえない
- 陰口を言われる
- 患者とうまくコミュニケーションが図れない
- 知識のマウントを取られる
こうしたトラブルが精神的負担となり、作業療法士を続けられないと判断する方もいます。
専門性を見失ってしまう
作業療法士の専門性を見失い、転職する方もいます。
病院や施設、デイサービスなど、作業療法士として働ける施設は多数ありますが「業務の区別」が明確にされていないケースも少なくありません。
ゆえに「施設によって担う業務が違う」といった現象も起きています。
たとえば、次のようなケースです。
- デイサービスで、マッサージのみ行う
- 整形外科で、理学療法士と同様の業務を行う
- 病院で、リハビリ以外に看護師のサポートなども行う など
介護職員の一員として勤務している場合には、給与も介護職員と同様に計算されることもあるようです。こうした状況から「作業療法士って、なんなのだろう」と、モチベーションが下がってしまい、転職を検討する方もいます。
転職に失敗しがちな作業療法士の特徴
転職活動は、成功する人もいれば、失敗する人もいます。
この章では、失敗する特徴を以下4つ紹介します。
- 転職の目的がハッキリしていない
- 条件をこだわりすぎている
- 応募先の情報をあまり見ていない
- 転職理由がネガティブ
転職の目的がハッキリしていない
「なんとなく」や「つまらないから」といった理由だけで転職すると、失敗してしまう可能性があります。
例えば面接の際に「今回、弊社に応募した理由を聞かせてください」と言われたとしましょう。そのとき、どう回答しますか?「えっと」や「なんとなくです」といった回答では、担当者から好感をもってもらうのは難しいでしょう。
転職の面接時には、担当者から必ずといっていいほど、退職理由や志望動機について質問されます。質問を受けた際に、ハッキリ答えられるよう目的を明確にする必要があります。
条件をこだわりすぎている
条件をこだわりすぎるのも、転職に失敗しがちな人の特徴です。
例えば給料や休日数など、待遇面ばかりこだわっている場合、施設の方針や社内の雰囲気などが見落としがちになります。結果、入職後に「こんなはずじゃなかった」「イメージと違った」と、ショックを受けてすぐに転職したくなる可能性があるのです。
自分の中で、外せない条件と譲れる条件を見極め、優先順位をつけることが重要です。
応募先の情報をあまり見ていない
応募する施設の情報を把握していない場合、失敗する確率が高いといえるでしょう。
なぜなら、施設の方針と、自分の価値観や考え方が一致しているとは限らないからです。アットホームな環境で、患者との心のつながりを第一に考える施設もあれば、1日も早い社会復帰を目指して日々ノルマを課す施設もあります。
こうした施設の基本理念や方針を確認しないまま転職してしまうと「雰囲気が嫌だった」「考え方に納得できない」と不満が溜まり、入職そうそう退職を考えてしまいかねません。
ズレを防ぐためにも、応募予定の施設や病院の方針は確認するのが得策です。
転職理由がネガティブ
ネガティブな転職理由は、不採用になってしまう恐れが高まります。
例を挙げてみましょう。担当者から、退職理由を質問されたとします。以下、A・Bどちらの転職者と仕事をしたいと思いますか?
- 転職者A…「上司との価値観が合わなかったからです」
- 転職者B…「これまでの経験を活かしてスキルアップしたいと思ったからです」
転職者Bを採用したいと考える方が多いのではないでしょうか。
ネガティブな表現は、担当者や施設側に不安感を与えてしまいます。「採用しても、またすぐに辞めるのではないか」と思われてしまうと、本来は優秀な人材であっても、成功するのは難しいでしょう。
退職理由は、ポジティブな理由に言い換えるのが重要です。
作業療法士が転職を成功させるポイント
転職の失敗例があるのと同様に、成功例もあります。
この章では、転職を成功させるポイントを5つ紹介します。
- 自分の気持ちを見つめ直す
- 転職理由を明確にする
- 履歴書を丁寧に記入する
- ポジティブな転職理由にする
自分の気持ちを見つめ直す
なぜ今の職場を辞めたいのか、自分の気持ちを見つめ直してみましょう。
人間関係や体力、給与など、さまざまなものが挙げられるでしょう。
その中で、この先も解決が見込めないものは、転職活動へと進むのがおすすめです。
一方で「今日、先輩から注意を受けて腹が立った!」といった、衝動的な感情で転職を考えている場合は、転職をしないほうがいいケースもあります。
なぜなら、どの施設・どの業種に転職しても、苦手な人は存在します。注意を受けることも、給料が割に合わないことも、起こり得るのです。
じっくりと自分の気持ちを整理してみましょう。
転職理由を明確にする
転職活動をするうえで、非常に重要なのが、目的を明確にすることです。
目的をハッキリさせることで、自分の進む道が見えてきます。
「目的がわからない」という方は、以下の項目を参考にして考えてみてください。
【例】
- 作業療法士として、転職先でどのように働きたいのか
- どんな職場で働きたいのか
- 自分は今後、どうなりたいのか など
転職する目的が明確になると、仕事への姿勢や熱意を応募先にも伝えられるようになります。
また、実際に候補の施設に見学に行くのもおすすめです。転職するにあたり、転職先の職場の雰囲気は気になるところではないでしょうか。
下見や見学に行くと「柔らかい雰囲気」「明るくハツラツとした雰囲気」など、施設ごとのカラーを自分の目や直感で感じ取れるため、価値観の不一致の防止につながります。
履歴書を丁寧に記入する
転職をする際、履歴書の提出は欠かせません。
記入欄が多く、面倒くさいと思うかも知れませんが、履歴書の書き方によってはイメージを下げてしまう可能性があります。
たとえば、以下のような例が挙げられるでしょう。
【例】
履歴書の書き方 |
抱かれがちなイメージ |
字が乱雑 |
|
誤字脱字が多い |
|
自己PRや志望動機が空白のまま |
|
採用担当者はまだ、転職者の人柄を把握しているわけではないため、履歴書からイメージするケースも少なくありません。
つまり、乱雑に書くとイメージダウンにつながる反面、志望動機などをしっかり記載すると、好印象を持たれる可能性もある、と言い換えられます。
近年は、パソコンでの作成も主流になりつつありますが、パソコンでの作成であっても、誤字脱字や記入漏れなどは起こり得ます。
履歴書も採用の大事な判断材料だと心得て、丁寧に記入していきましょう。
ポジティブな転職理由にする
ネガティブな理由が退職のきっかけになっているケースは多くあります。しかし、面接でそのまま伝えてしまうと、マイナスなイメージを持たれてしまいかねません。
本音はネガティブな理由でも、ポジティブに変換して伝えるようにしましょう。
【言い換え例】
ネガティブな理由 |
ポジティブの言い換え |
やりがいが感じられない |
これまで以上に業務の幅を広げたい |
給与が上がらない |
適切な評価のもと、自分の経験やスキルを発揮したい |
キャリアアップができない |
より専門性を高めたい |
採用担当者から「活躍してくれそう」「即戦力になってくれそう」など、好感をもってもらうのが成功のポイントです。
転職サービスを利用してみる
転職支援サービスを利用するのも、ひとつの方法です。
とくに、現職で働きながら転職活動をするとなると、求人をゆっくり探す時間がありません。心身ともに疲れ果ててしまい、最終的に「内定もらえれば、どこでもいいや!」と投げやりになってしまうこともあるでしょう。焦りや、投げやりでの転職は、失敗する可能性があります。
転職エージェントを利用すると、キャリアアドバイザーから自分に合う求人を探してもらえるので、仕事をしながらでも転職活動ができます。また、書類の添削や面接対策も行ってもらえるので、転職活動に自信が持てるようになるでしょう。
作業療法士におすすめの転職エージェント
作業療法士におすすめの転職エージェントを3社紹介します。
転職活動をする時間がない方や、転職するか迷っている方は登録してみてはいかがでしょうか。
- PTOTSTワーカー
- レバウェルリハビリ
- PTOT人材バンク

PTOTSTワーカー
PTOTSTワーカー は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士向けの転職サイトです。
豊富な求人数を強みとしており、2022年6月時点の作業療法士の求人だけでも約15,000件保有しています。また、求人票には記載されない「職場の雰囲気」などを教えてもらえるのも魅力です。
人と人とのやりとりが多い作業療法士にとって、施設内の雰囲気は重要な判断要素になり得ます。事前に雰囲気や人間関係がわかると「こんなはずじゃなかった」というズレを防ぐことができるからです。
豊富な求人の中から選びたい、好条件の転職先を探している、といった方は登録してみてはいかがでしょうか。
運営会社 |
株式会社トライトキャリア |
本社所在地 |
〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2-12-7 清和梅田ビル13階 |
公開求人数 |
作業療法士:約15,000件(2022年6月時点) |
おもな求人職種 |
理学療法士/作業療法士/言語聴覚士 |
公式サイト |
レバウェルリハビリ
レバウェルリハビリは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のための転職支援サービスです。
運営会社のレバレジーズメディカルケア株式会社は、ほかにも看護師や介護士、医療技師に特化したサービスを展開しており、医療・介護業界で10年以上の実績を有しています。
実際に施設に足を運んで情報を収集しているため、福利厚生や職場の雰囲気といった詳細な情報まで共有してもらえるでしょう。
運営会社 |
レバレジーズメディカルケア株式会社 |
本社所在地 |
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷二丁目24番12号 |
公開求人数 |
非公開 |
おもな求人職種 |
理学療法士/作業療法士/言語聴覚士 |
公式サイト |
PTOT人材バンク
PTOT人材バンク は、作業療法士・理学療法士などのリハビリ職専門の転職支援サービスです。
作業療法士に特化したキャリアパートナーが在籍しているため、質の高いサポートを受けられるのが利点です。専門性の高いキャリアパートナーは、その業界や職場に精通しているため、業界ならではの悩み相談も乗ってもらえるでしょう。
実際の年収や給料、職場の雰囲気や休暇なども細かく教えてもらえるので、納得したうえで応募できます。
手厚いサービスを受けたい、専門コンサルタントに担当してほしい、という方におすすめです。
運営会社 |
株式会社エス・エム・エス |
本社所在地 |
〒105-0011 東京都港区芝公園2-11-1 住友不動産芝公園タワー |
公開求人数 |
作業療法士:約13,800件(2022年6月時点) |
おもな求人職種 |
理学療法士/作業療法士/言語聴覚士 |
公式サイト |
作業療法士から異業種への転職は可能?
作業療法士から、一般企業や異業種への転職もできます。
作業療法士の資格を活かしながら働ける一般企業には、以下のようなところがあります。
【作業療法士の資格を活かして働く一般企業の例】
- スポーツジムなどのフィットネス業界
- 福祉用具専門員
- 介護サービスの営業
- 障がい者支援事業
- 福祉用具の開発 など
「できれば、医療・福祉業界とは関係のない業界での仕事がしたい」という方もいるかもしれませんね。
まったくの異業種で転職する場合、作業療法士の「資格」ではなく、「これまで培ってきたスキル・能力」をアピールする必要があります。
【これまで培ってきたスキルや能力を活かす例】
- コミュニケーション能力
- 問題解決能力
- マネジメント能力 など
採用担当者に好印象をもってもらえれば、他業種への転職も可能です。
ただ、未経験業界への転職は、当然わからないことが多々でてきます。同業種の転職とは違った困難があることも覚悟しておきましょう。
まとめ
「転職活動を失敗したくない」と思うのは、ごく自然なことです。
失敗しないためにも、転職を考える際は目的や条件をしっかり整理しておきましょう。
転職活動に自信がない人や、迷っている人は、転職エージェントの利用をおすすめします。
キャリアアドバイザーからアドバイスや自己分析をしてもらうことで、新たな視点も見えてくるかもしれません。
成功のコツを押さえて、転職を有利に進めていきましょう。