夜勤や土日出勤、残業が多い看護師の仕事では、手当によって毎月の給与も変動しやすく、自分の給与明細の内容をしっかり理解できるようにしておくことをおすすめします。

本記事では、実際に看護師として働く方の給与明細事例を参考にしながら、給与明細を見るときのポイントをご紹介します。

給与明細の内容をきちんと理解することができれば、「給与が正しく支払われていない」などの未払金に早めに気付くことができます。

また、給与からの天引き項目やお金の流れが把握でき、給与支給の全体像をつかむことができるでしょう。

給与支給の全体像を把握することで、何を改善すれば給与アップに繋がるかも見えて来るので、ぜひ参考にしてみてください。

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【実物】看護師の給与明細

看護師業務に従事されて2年目の女性、Aさんに実際の給与明細を見せていただきました。

基本給：213,900円
時間外・休日・夜間勤務手当：9,981円
各種手当総額：73,668円
支給総額：297,549円
控除総額（所得税・掛け金等）：54,041円（内243,508円は貯蓄）
支払総額：243,508円

厚生労働省｜令和５年賃金構造基本統計調査によると、20～24歳の平均月収は269,100円ですので、控除に含まれている掛金を併せて見ると平均月収以上の金額が支給されています。

受け取っていた給与額に関して満足していたか、Aさんにコメントもいただきました。

このように、所属する施設や担当する業務によっても異なりますが、身体的負担や精神的負担も含めて考えると「本当に、仕事に対して適切な給料が支払われているの？」と感じる人も多いのではないでしょうか？

看護師の給与明細で見るべきポイント①【所定内給与】

では、実際に自分の仕事に対して給料がどのように支払われているのかを確認する方法をご説明していきます。

給与明細を見る場合、まずは所定内給与を確認しましょう。

所定内給与とは、労働契約や雇用契約で定められた所定労働時間内の労働に対して支払われる賃金のことです。

一般的には、給与のベースとなる「基本給」と、あらかじめ支給が定められている「諸手当」が該当します。

基本給

基本給は給与のベースとなる給与額のことです。

勤続年数で基本給が変動するケースもあれば、業務内容や役職で変わるケースもあり、勤務先の給与規定によって定められています。

諸手当

諸手当は、基本給では賄えない部分を補うための給与項目です。

名称は勤務先によって違いますが、代表的な手当をご紹介します。

勤務先の病院・施設によっては、これらの手当が支払われないこともあります。

ご自身の給与明細や勤務先の労働契約書等を参照して手当の有無を確認してみましょう。

また、残業手当や休日手当などは、所定労働時間外の労働に対する賃金ですので、後述する「所定外給与」でご紹介します。

看護師によくある手当一覧
通勤手当	通勤にかかる交通費を勤務先が補助する手当
家族手当	家族を扶養している場合に支給される手当
住宅手当	住宅ローンや家賃などを補助する手当
役職手当	看護主任や看護師長、看護部長など役職に就く人に支払われる手当
資格手当	所持している資格に対して支払われる手当
交代勤務手当	夜勤と日勤の交代勤務による身体的負担に対して支払われる手当

交通手当などの諸手当は、勤務先の福利厚生として導入している手当であり、労働契約や雇用契約によっては支払われないケースもあります。

看護師の給与明細で見るべきポイント②【所定外給与】

所定外給与とは、所定労働時間を超えて働いた場合に支給される賃金のことです。

「残業手当」「休日手当」「夜勤手当」などが発生します。

上記で触れた所定外給与は労働基準法により支給が義務付けられています。

残業や夜勤を行ったにも関わらず、適切な所定外給与が支払われていない場合、勤務先に未払い賃金が発生している可能性があります。

給与明細や労働契約書等を改めて確認して、場合によっては弁護士や労働基準監督署への相談も検討しましょう。

残業手当

残業手当は、法定労働時間を超えて働いた時間に対して支払われる賃金です。

法定労働時間とは、原則として1日8時間、週40時間以内と定められています。

法定労働時間を超えて働いた場合は、法定労働時間内の賃金より25％割増の賃金が支払われる必要があります。

休日手当

休日手当は法定休日や勤務先が定めた休日に働いた場合に支払われる必要があります。

法定休日とは、1週間に1回以上付与される（例外として4週間を通じて4日以上）休日のことです。

休日手当は、法定労働時間内の賃金より35％割増の賃金が支払われる必要があります。

夜勤手当

夜勤手当は午後10時から午前5時の間に働いた場合の賃金に適応される深夜割増です。

労働基準法で割増率は25％割増と定められています。

夜勤の多い看護師の給与では、夜勤手当が正しく支払われているかどうかも確認しましょう。

看護師の給与明細で見るべきポイント③【控除】

給与明細が発行される看護師は、病院や施設などの雇用主から雇用されて給与が支給されている被雇用者です。

被雇用者が本来、収める税金や社会保険料の一部を雇用主が補填し、被雇用者が支払う分とまとめて納めています。

被雇用者にはその分を控除した金額が給与として支給されています。いわゆる給与からの天引きです。

各控除項目が何の目的で引かれているかも知らずに、漠然と「またこんなに引かれている」と勤務先への不満を抱いてしまうこともありますが、それは筋違いです。

給与からはどのような費用が引かれているかを知っておきましょう。

健康保険料

看護師の方は、協会けんぽや医療機関が提供する組合健康保険などに加入しています。

健康保険の保険料は、雇い主である病院・施設と折半で支払うことになっており労働者支払い分が給与から天引きされます。

控除される保険料は、看護師の収入や加入する組合の保険料によって異なりますが、1ヶ月に2万円前後の健康保険料が控除されていることが多いでしょう。

厚生年金保険料

病院や施設などで雇用されている看護師は、厚生年金保険に加入しています。

この厚生年金保険の保険料は、雇い主と労働者の折半で支払われており、労働者支払い分が給与から天引きされます。

厚生年金保険料も看護師の収入によって変動するので一概には言えませんが、月に3〜4万円ほど給与から控除されていることが多いです。

雇用保険料

雇用保険は、雇用されている看護師が休業したり失業したりした時に保障を受けられる保険です。

失業時に失業手当が受けられるものとしてご存じの方が多いでしょう。

雇用保険料も収入を元に算出されますが、厚生年金や健康保険に比べるとそこまで高くはありません。

一般的な収入の看護師であれば、1,000〜3,000円程度控除されるでしょう。

介護保険料

介護保険は、40歳から加入する保険で、主に介護サービスを受けるための保険です。

加入後に保険料が給与から天引きされます。

介護保健も収入から保険料が算出され、毎月3,000～4,000円程度控除されていることが多いです。

【参考】看護師の平均年収

各保険料の事例は看護師の平均年収をもとに大体の金額を算出しています。

看護師の平均年収は508万2,000円、給料は35万2,000円です。

出典：厚生労働省｜令和5年賃金構造基本統計調査

所得税

給与によって所得を得ている看護師は、所得税として税金を納める必要があります。

副業を行っている場合を除いて、所得税も給与から天引きされます。

給与天引きの場合は月の給与から年間所得を予測した分が毎月の給与から控除されます。

あくまでも予測の所得に対する税金ですので、多く納めすぎていた場合には年末調整によって返金されます。

所得税の計算は、所得層ごとの税率やさまざまな所得控除などが関係してきて非常に複雑なため、説明詳細は国税庁｜所得のしくみを参照ください。

住民税

1月1日時点で居住している都道府県と市区町村に納める税金です。

前年の所得から税額が計算され、その金額を12ヶ月に分けた1か月分が給与天引きされます。

勤務先独自の控除

勤務先によっては、次のような金額が給与から天引きされている場合があります。給与明細を見る際には、どのようなお金がいくら、どこに支払われているのかを理解しておきましょう。

勤務先独自の控除例
住宅費	勤務先の社宅・寮などに住んでいる場合に引かれる費用
組合費	勤務先の組合が加入する労働組合に支払う費用

看護師の給与明細で見るべきポイント④【勤怠】

給与明細には、給与や手当、控除だけでなく、勤務状況の記載もあります。

実際にご自身が働いた労働時間と照らし合わせて、正しく労働時間などが記載されているかを確認しておきましょう。

よくある問題としては、「労働時間が実際の時間よりも短く記載されていた」「残業時間や深夜労働が正しく計算されていなかった」などがあります。

少しでも異変を感じた場合は、ご自身でもしっかり計算し直してみて、違和感をそのままにしておかないようにしましょう。

ここでは、看護師の給与明細に記載される勤怠項目に関して簡単な説明をします。

給与明細に記載されている勤怠内容
労働日数	該当機関で実際に勤務した日数
有給取得日数	有給休暇を取得した日数
労働時間	該当機関で実際に働いた時間の合計
残業時間	所定労働時間または法定労働時間を超えて働いた時間
深夜労働時間	22時〜翌5時の深夜に働いた時間
休日労働時間	労働基準法で定められている休日に働いた時間
遅刻・早退時間	遅刻や早退で働かなかった時間

看護師が給与明細を見る上で知っておきたい4つの知識

給与明細に書かれている項目についてはご説明しましたが、それでも見る項目が多すぎて「ただ見て終わり」となってしまう可能性もありますよね。

そこで、ここでは看護師が給与明細を見る際のポイントを4つにまとめました。

最低限、以下の4つを理解しておけば、いざ未払い賃金等のトラブルがあったとしても、早くに気づくことができるはずです。

手取り額以外の情報も大切

給与明細に書かれている各項目の説明はしましたが、よく耳にする「額面給与」や「手取り額」が何を指すのかわからないという方も多いのではないでしょうか？

給与明細をきちんと見ない方は、【基本給】や【手取り額】ばかりを気にしがちですが、残業や深夜勤務で変動する『所定外給与』や『控除』によって増えている金額と減っている金額の内訳も理解しておくと良いでしょう。

特に看護師は、残業や深夜労働が多く、所定外給与が正しく計算されていないケースもあります。

【手取り額】だけを見ていると本来支給されるべき金額が支給されず、大きく損をした状態で給与を受け取っている可能性も起こり得ます。

給与明細をもらった時に、確認すべき2つのポイント

給与明細をもらった時には、次の2点を必ず確認しておきましょう。

コンプライアンス意識の高まりや労働基準法違反に対する厳しい罰則が取り入れられていることもあり、昔に比べて労働基準法に違反する働き方は減りましたが、今でも「サービス残業」などをさせている雇い主もいます。

実際に働いた時間よりも給与明細の労働時間や残業時間が少ない場合には、雇い主が正しく労働時間を算出していない可能性があります。

また、後述するように、残業手当などの所定外給与は労働基準法で決められた以上の割増賃金率で計算する必要があるため、正しく計算されているかどうかも確認してみてください。

所定外給与は割増賃金率を基に計算される

残業や深夜勤務などの所定外給与は、通常の賃金に法定割増賃金率をかけて計算する必要があります。

これは労働基準法で決められている内容であるため、正しく計算されていない場合は、労働基準法に違反している可能性があります。

割増賃金率は次のようになっています。

割増賃金率
時間外労働	1ヶ月60時間まで：25％以上 1ヶ月60時間を超える：50％以上
休日労働	35％以上
深夜労働	25％以上
時間外労働＋深夜労働	50％以上（25％＋25％）
休日労働＋深夜労働	60％以上（35％＋25％）

給与明細には、残業手当や深夜労働手当、残業時間、深夜労働時間などの記載がありますので、ご自身でもきちんと割増率で計算されているかを確認しましょう。

給与明細は3年分を保管する

もらった給与明細に問題があってもなくても、給与明細は3年以上保管するようにしましょう。

未払い賃金は過去に遡って請求することができ、給与明細を証拠にすることで、請求が成功しやすくなるからです。

賃金請求権の消滅時効は5年ですが、当面の間は3年なので、最低でも3年分は保管しておきましょう。できれば5年分以上の保管をおすすめします。

参考：未払賃金が請求される期間などが延長されています｜厚生労働省

看護師の平均年収

給与明細と関連して、看護師の平均年収についても簡単にご説明します。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、看護師の平均年収は508.2万円で、月収とボーナスに分けると以下のとおりでした。

参考：令和5年賃金構造基本統計調査｜厚生労働省

この金額は、基本給と残業手当、深夜手当、諸手当を合計した金額ですので、そこから税金や社会保険料を引いた手取り額は、月に26〜30万円ほどになります。

年収500万円は、他の職業と比べても同じくらいかやや高い水準です。

また、看護師は女性比率が高い職業ですので、女性のみで他の職業と比較した場合には、さらに高い水準になっています。

看護師の給与が高くなる理由としては、深夜手当や残業手当、資格手当などで基本給に上乗せしやすいことが理由にあると考えられます。

【関連記事】看護師の平均年収は？年代別のデータや年収アップの方法も解説！

看護師が給与を上げるためにできる4つの方法

給与は良い水準にある看護師ですが、もっと給与を上げたい場合には、次のような方法を取り入れてみましょう。

資格を取得して資格手当を増やす

職場によっては、資格手当が充実しているところもあるため、資格を取得することで、看護師の給与アップに繋げることができます。

看護師が給与アップに繋げやすいおすすめの資格として、以下の資格があります。

職場によっては、認定看護師や専門看護師の資格保有者には資格手当が付く場合があり、資格手当の平均支給額は次のようになっています。

専門看護師資格：11,279円
認定看護師資格：8,530円

参考：「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書｜日本看護協会

資格を持っていることで、より良い条件の職場へのキャリアアップ転職もしやすくなるため、時間を見つけて挑戦してみるのもおすすめです。

【関連記事】看護師の転職に有利な資格30選｜分野別の難易度やおすすめの資格を紹介

役職に就いて役職手当を増やす

管理職を目指すことも、看護師が給与を上げる方法に挙げられます。

管理職は、病院や病棟の看護師を取りまとめ、看護師と経営側の間でマネジメントをおこなうポジションです。

ある程度の勤続年数が求められますが、基本給が大きく変わってくるため、将来的には目指していくのも良いでしょう。

非管理職および管理職の看護師の基本給月額
職位	基本月給額
スタッフ（非管理職）	29.9万円
中間管理職 （主任相当職・副看護師長相当職・看護師長相当職）	32.7万円
管理職 （副看護部長相当職・看護部長相当職・副院長相当職）	38.5万円

参考：「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書｜日本看護協会

残業や夜勤で所定外給与を増やす

自身の心身に負担をかけることになるため、あまりおすすめではありませんが、看護師は夜勤がある職種なので、夜勤を増やし、夜勤手当で給与アップを狙うこともできます。

1回の夜勤でもらえる手当の額は、3交代制なら平均5,000円前後、2交代制なら平均1万円ほどです。

もし、2交代制の夜勤を月に5回増やすと約5万円の収入アップになり、1年間続ければ年収を60万円増やせます。

やり過ぎは健康面をみても良くありませんが、一時的に稼ぎたい時などは積極的に夜勤シフトに入ってみるのも良いでしょう。

【関連記事】夜勤専従看護師の現実とは？リアルな体験談から見る夜勤専従で働くメリット/デメリット

給与が良い職場に転職する

看護師の給与は施設の規模や地域などによっても差があるため、より好条件の職場に転職することで収入を上げることができます。

給与アップを目的に転職をする際は、基本給だけで判断するのではなく、手当の有無や福利厚生の充実度、昇給の仕組みなども含めて総合的に判断してみてください。

転職を検討される際は、以下でご説明する転職エージェントをうまく活用し、納得して働ける転職先を見つけることをおすすめします。

給与を上げたい看護師におすすめの転職エージェント3選

給与アップのために転職を考えている看護師の方は、看護師向けの転職エージェントを使うことをおすすめします。

おすすめの転職エージェント3選を参考にしていただき、気になる転職エージェントがあれば積極的に相談してみましょう。

レバウェル看護

レバウェル看護は、利用者数が累計40万人を突破している人気の転職サービスです。

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また、施設スタッフへのインタビューが掲載された求人情報もあり、実際に働いている人の生の声から職場の雰囲気を確認できます。

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給与交渉や勤務時間の調整、会社別の面接対策などのサポートを受けられます。

ナース専科　転職

ナース専科 転職は、看護師専門の転職支援サービスで、年間10万人以上の看護師が利用しています。

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都道府県ごとに担当キャリアパートナーが在籍しているため、他にはない一歩踏み込んだ情報提供を期待できます。

また、ナース専科 転職は看護師専門のサービスであり、業界知識が豊富です。

姉妹サイトも充実しており、実際に病院で働いている人の口コミ情報を確認して不安を解消できます。

まとめ

看護師が給与明細を見るときは、基本給や手取りだけを気にするのではなく、手当や勤務情報などもしっかり確認しましょう。

特に看護師は夜勤や残業も多い職業であるため、正しく賃金が支払われていなければ、月に数万〜10万円程度の未払金が発生している可能性があり得ます。

まずは本記事でご紹介した内容を参考に、ご自身の給与明細をしっかり確認してみましょう。

少しでも「おかしい」と感じた場合には、周りの看護師や労働基準監督署、弁護士などに相談することも検討しましょう。