「飲食店はきついからやめたい」
「飲食店から一般企業への転職は厳しそう」
「飲食店でのスキルは一般企業で活かせるのだろうか」

こうした悩みをお持ちの方は少なくありません。厚生労働省の調査によると、飲食業界の離職率は他業種と比較して著しく高い結果が出ています。この実態からも多くの方が転職を検討していることがわかります。

しかし、実際に転職活動に不安を抱く方も少なくありません。とくに、飲食店は資格が必要とされる業種ではないため「転職に不利なのではないか」と思う方も多いでしょう。

この記事では、飲食店からの転職が厳しいと言われる理由から、成功のためのポイント、おすすめの業界を詳しく解説します。飲食店からの転職に不安を感じている方は最後まで読んで活動の参考にしてみてください。

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飲食店からの転職は厳しいと言われる理由

飲食店から一般企業への転職が難しいとされる背景には、業界特有の構造的な問題があります。飲食業界は他業界と比較して入社のハードルが低く、アルバイトからそのまま正社員になるなども一般的です。

こうした入社のしやすさが、転職時の障害となっているケースが少なくありません。

たとえば、入社しやすいが故に「簡単に辞めてしまうのではないか」と懸念されるのです。

実際に厚生労働省の調査によると、宿泊業・飲食サービス業の入職率と離職率は他の業界と比較して著しく高い数値となっています。

引用：厚生労働省｜令和４年雇用動向調査結果の概況

この高い離職率が「飲食業界からの転職者は長続きしない」とのイメージを持たれている原因となっています。とくに、短期間で退職している場合は、さらにマイナスの印象を持たれやすいでしょう。

また、飲食店での経験が一般企業でどのように活かせるのかを企業側が判断に迷うケースも少なくありません。

さらに、飲食業界は深夜まで営業しているため、夜型の生活を送っていると思われる傾向があります。そのため「日中の勤務に対応できないのではないか」と不安を抱かせる原因となっているのです。

飲食店をやめて一般企業へ転職したいと思う理由

そもそも、なぜ飲食店から転職したいと思うのでしょうか。飲食店を辞めて一般企業に転職したい人に多い理由を見ていきましょう。

自分の状況と当てはめて見てください。

体力を使うから

飲食店での勤務は、想像以上に体力を消耗します。立ち仕事が基本で、重い食器や食材を運ぶ作業も多く、腰や膝への負担が大きい職業です。

とくに厨房では、高温の中に長時間いなければならない状況で、夏場はさらに体力の消耗が激しくなります。

このような肉体的な負担が、年齢を重ねるにつれてより大きくなっていくため、退職を考えるようになるのです。

給料が低いから

飲食業界の給与水準は、他業界と比較して低い傾向です。厚生労働省の調査では飲食業界の平均賃金は259.5（千円）と、全産業の中で最も低くなっており、この傾向は近年ずっと続いています。

飲食業界は利益が少ないため人件費を抑えている企業が多く、中には深夜手当や残業代が適切に支払われないケースも少なくありません。また、景気にも左右されやすいため、なかなか昇給がしにくい業界です。

引用：厚生労働省｜令和5年賃金構造基本統計調査の概況

拘束時間が長いから

飲食店での勤務は、拘束時間が長くなりやすい特徴があります。開店前の仕込みや閉店後の清掃作業など、営業時間外の業務があるためです。

また、人手不足により休みを返上したり、残業になったりも珍しくありません。

このような対応が多く、長時間労働になってしまう環境にあります。結果的に退職者が多くなり、さらに人手不足が深刻になるといった悪循環になっている店舗も多いのです。

週末に休みづらいから

飲食店は土日祝日が最も忙しいため、平日よりもスタッフを増員する必要があります。

店舗によっては、土日は全員出勤しなければならないと決められている店舗も多いです。そのため週末に休みを取りにくくなります。

また、連休や長期休暇も取りづらいため、友人や家族との予定を立てにくく、プライベートな時間の確保が難しいのも飲食店の特徴です。

こうした状況が長く続き、次第に友人と疎遠になり孤独を感じる方も少なくありません。

クレーム対応があるから

飲食店では料理の味や提供時間、接客サービスなど、多くの場面でお客様からのクレームを受けることがあります。

とくに、アルコールを提供する店舗では、酔ったお客様への対応に神経を使う場面も多いでしょう。

このようなストレスが日常的に発生し、人によっては精神的な負担が蓄積されていきます。

また、近年はちょっとしたミスでもSNSで投稿され拡散されるケースもあり、以前に増して気を遣うケースが多くなっているのです。

飲食店から別業界に転職する5つのメリット

飲食店から転職すると飲食店では経験できなかったメリットを得られる可能性が高いです。

次に、飲食店から一般企業へ転職するメリットを見ていきましょう。

順番に解説します。

1.休日が確保しやすくなる

飲食店では当たり前だった、土日祝日の出勤から解放されます。

一般企業では完全週休二日制を採用している会社が多く、年間休日数は平均して120日前後が確保できるのは大きなメリットです。

また、長期休暇の奨励や有給休暇の積極的な取得も促進されており、休みやすい環境の企業が多いです。

そのため、長期の計画も立てやすく、旅行や趣味の時間を確保できるようになります。夏季休暇や年末年始休暇なども充実しており、心身のリフレッシュが図れるでしょう。

2.長時間労働から解放される

一般企業では労働時間の管理が厳格で、残業時間の上限も明確に守られているのが一般的です。

これまで飲食店で常態化していた、深夜までの勤務や残業から解放されるメリットは大きいでしょう。

多くの企業では残業時間の削減を積極的に進めており、業務効率化やノー残業デーの導入も進んでいます。

飲食店から転職すれば、このように仕事とプライベートにメリハリがつけやすいです。

3.収入が上がる可能性がある

飲食業界は全業界の中で最も低賃金の業界のため、転職すると収入がアップする可能性があります。

とくに、大手企業では手当や賞与が充実しており、しっかりとした人事評価制度を導入している企業がほとんどです。そのため、努力すれば収入アップが期待できます。

また、評価面に関しても、たとえば営業職は、成果に応じた報酬体系になっている企業が多く、結果を出せば収入に直結しやすい環境となっています。

一方、飲食店は数値での評価がしにくく実績も出しにくい職種のため、一律の評価になってしまうケースも少なくありません。

4.在宅ワークができるようになる

コロナ禍を機に、多くの企業でリモートワークが導入されています。

一般企業に転職すれば、飲食店では不可能だった在宅での業務が可能となり、通勤時間の削減や働く場所の自由度が高くなるでしょう。

とくにIT企業を中心に、完全在宅勤務や出社日を調整できる企業が増加しています。

こうした企業に転職すれば、ワークライフバランスが取りやすくなり、生活スタイルも大きく変わるでしょう。完全リモート型の企業なら、地方へ移住して都市部の企業で働くなども可能となります。

5.規則正しい生活を送れるようになる

一般企業では、始業時間と終業時間が明確に定められており、飲食店のように深夜勤務や早朝勤務をしなければならないケースは少ないです。そのため、生活リズムが安定し、健康管理がしやすくなります。

決まった時間に出社し定時で帰宅できるため、睡眠時間も確保しやすく、規則正しい生活を送れるようになることで生活習慣の改善にもつながるでしょう。

飲食店からの転職で評価されるスキル

飲食店からの転職を考えるにあたって「役に立つスキルがない」という方が多くいます。

しかし、飲食店での経験は一般企業で役に立つものばかりです。中でも以下のようなスキルは高く評価されます。

一つずつ見ていきましょう。

臨機応変な対応能力

飲食店では突発的な事態が発生することも多く、状況に応じた柔軟な対応力が自然に身についている人が多いです。たとえば、急な団体の来店や在庫切れ、スタッフの欠勤など、さまざまな場面での問題解決能力が培われています。

このような経験は、とくに営業職などイレギュラーな状況が多い業界において高く評価されるでしょう。

また、客様の要望に答えたりクレームに対応したりといった経験も重宝されやすい傾向があります。

人材の管理や指導力

店舗運営におけるマネジメントの経験は、他業界でも重要視されるスキルです。

たとえば、シフト管理や新人アルバイトの教育、チームワークなど、組織運営に必要な能力が身についているのも飲食店経験者ならではと言えます。

こうした幅広い年齢層のスタッフをまとめた経験や、繁忙期の人員配置の工夫などは、転職時の大きな強みとなるでしょう。

コミュニケーション能力

飲食店での接客経験を通じて培われたコミュニケーション能力は、どの業界でも高く評価されます。

お客様との会話だけでなく、厨房とホールの連携や電話応対など、多くの場面でのコミュニケーションスキルが身についているからです。

とくに、忙しい状況下でも正確に情報伝達ができる能力や、相手の立場に立った丁寧な対応ができる能力は、ビジネスシーンでも欠かせません。こうしたスキルは、どの企業でも高く評価されます。

言葉遣いや礼儀ができている

接客で培われた正しい言葉遣いや接客マナーは、どの業界でも即戦力として活躍できるスキルとして高く評価されます。

こうした、社会人として必要な基本スキルがしっかり身についている点は、飲食店経験者の強みです。

また、お客様に対する心配りや同僚への配慮など、周囲への気配りができる点もビジネスでは必須となるスキルのため、企業から評価されます。

飲食店からの転職におすすめの業界5選

飲食店で身についたスキルや経験はどの業界においても役に立ちますが、とくに以下の業界では評価が高く、経験が活かせます。

次に、飲食店からの転職におすすめの業界を見ていきましょう。

順番に解説します。

1.公務員

公務員は、飲食店で培った接客マナーと臨機応変な対応力が活かせる職種です。

市役所や区役所の窓口業務では住民への対応が求められるため、飲食店での接客経験が強みを発揮できます。

公務員は、規則正しい勤務時間と安定した休暇制度が整っているため、ワークライフバランスを重視したい人に向いているでしょう。

公務員試験に合格しなければなりませんが、年齢制限がない職種もあるため、チャレンジの価値は十分にあります。地域の自治体などの募集も見てみると良いでしょう。

関連記事：民間企業から公務員の転職で後悔する7つのこと｜後悔しない対策も解説

2.運送業界

運送業界は、飲食店で身についた時間管理能力と体力が活かせる業界です。

とくに食品の配送では、食材の取り扱いや温度管理の知識が役に立ちます。また、時間内に配送するための段取りや配送ルートの考案などは、飲食店でのオペレーションの経験が活かせるでしょう。

さらに、近年の運送業界はドライバー不足が深刻化しており、未経験者の採用に積極的な企業が増えているので採用されるチャンスは高くなります。

労働時間や休みも厳格に管理されているため、長時間勤務になりにくい業界です。

関連記事：物流業界から転職する方法は？評価されるスキルや転職を成功させるコツを解説

3.食品業界

食品業界では、飲食店での経験を最も活かせるでしょう。食材の知識や衛生管理の経験は、食品メーカーや卸売業で即戦力として評価されます。

とくに品質管理や商品開発部門では、食材や調理の視点が重要視されるためです。

また、取引先が飲食店である場合も多く、業界知識を活かした営業職としての道もあり、食品業界に転職する飲食店経験者の方は少なくありません。

関連記事：食品業界に転職したい方におすすめの転職エージェント10選｜業界に有利なスキルや資格も紹介

4.介護業界

介護業界では、飲食店で培ったホスピタリティ精神とコミュニケーション能力が、大きな武器となります。

とくに、施設での利用者や家族との関わりにおいて、接客経験が活かせるでしょう。

また、施設内での連携や時間管理など、他にも飲食店での経験が役立つ場面が多くあります。

介護業界も人手不足に悩まされており、未経験者の採用に積極的な業界です。資格取得支援制度も充実しており、資格を取ればキャリアアップも期待できるでしょう。

関連記事：介護職を辞めたい理由10選！よくある悩みや辞める判断基準・対処法を解説

5.製造業界

製造業界では、飲食店での効率的な作業管理能力とチームワークが評価されやすい傾向があります。

とくに食品製造ラインでは、衛生管理や品質管理の知識が活かせるでしょう。

また、多くの製造現場では交代制勤務が採用されており、シフトでの勤務体系に慣れている飲食店経験者は適応しやすいのが特徴です。

製造業界は未経験でも採用されやすいため、飲食店経験者は経験をアピールすれば強みになります。

関連記事：製造業は「やめとけ」といわれる８つの理由｜転職におすすめの業種を解説

飲食店からの転職を成功させる7つのポイント

飲食店からの転職を成功させるためには、ポイントを押さえて活動することが重要です。

以下に7つのポイントを紹介するので、実践してみてください。

一つずつ見ていきましょう。

1.目先の収入にこだわらない

転職した際は、一時的に収入が減少する可能性を考慮しておく必要があります。

とくに未経験で異業種へ転職する際は、初任給が現在より低くなるケースも多いと認識しておきましょう。収入は徐々にアップしていくため、目先の収入にこだわらず、キャリアアップや昇格の可能性を考慮し、長期的な視点での判断が重要です。

また、福利厚生や休暇制度などもライフワークバランスを考える上では重要となります。こうした、収入以外の面が充実しているかにも目を向けたほうが良いでしょう。

2.転職理由を明確にする

面接で最も重要視される項目のひとつが転職理由です。

「何のために転職するのか」や「転職先でどうなりたいのか」といった転職理由を明確にする必要があります。本音は「きついから」や「給料が安いから」といった理由であっても、こうした否定的な理由では採用されません。

たとえば「新しい分野でスキルを活かしたい」や「より専門的な知識を身につけたい」など、前向きな理由を明確に説明できるようにしておくと良いでしょう。

また、転職先での具体的なキャリアプランも答えられるようにしておくと、説得力のある転職理由になります。

3.専門スキルを身につける

異業種への転職を有利に進めるためには、転職先で必要とされる専門スキルの習得が欠かせません。

たとえば、パソコンスキルやビジネス文書の作成能力、業界特有の資格などを今のうちから習得に向けて学習することをおすすめします。

また、オンラインで学習できるものなら、仕事を続けながら空き時間を活用して学べるため、積極的に勉強しましょう。たとえ、面接までに習得できなかったとしても、積極的に学習している姿勢が評価されます。

4.興味のある仕事を見つける

転職先を選ぶ際は条件面だけでなく、その仕事に対する興味や関心を持てるかどうかが大切です。

業界研究や企業研究を通じて、自分が本当にやりたい仕事をじっくり見つけてください。企業のホームページや求人からも情報は得られますが、職種説明会や企業説明会に積極的に参加してみるのもおすすめです。

説明会やセミナーでは、企業の採用担当者が直接話してくれるため、より具体的な仕事のイメージを掴みやすいでしょう。また、質問もできるので、気になる企業があれば積極的に説明を聞いてみてください。

5.転職条件に優先順位をつける

転職活動を始める前に、自分にとって重要な条件を明確に優先順位をつけましょう。

たとえば、勤務地や給与、休日、福利厚生など自分が希望する条件の中から、譲れない条件と妥協できる条件を整理して優先順位をつけておくのがおすすめです。

ただし、あまりにも条件を増やしすぎると選択肢が狭くなるため、絶対に譲れない条件は2つくらいに絞った方が良いでしょう。また、条件は長期的な目線で見て慎重に検討する必要があります。

6.辞める前に転職活動を始める

退職してから転職活動を始めると、経済的な不安や焦りから望まない条件で転職してしまう可能性があります。

従って、落ち着いてじっくりと自分にあった仕事を探すためには、在職中に転職活動を進めた方が良いでしょう。

たとえば、平日の休みを利用して面接に行くなど、計画的にスケジュールを組んで活動するとスムーズに進みます。このように、計画的に活動することが、より良い条件での転職を実現するポイントです。

7.転職エージェントを利用する

転職エージェントを利用すれば、面接の日程などを調整してくれるので、転職活動に集中できるメリットがあります。

たとえば、業界の最新動向など、自分では入手できない情報を提供してくれるのも転職エージェントの特徴のひとつです。

また、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策などのサポートも受けられるため、積極的な利用をおすすめします。

転職エージェントの担当者は求人企業と密に連絡をとっており、求めている人材や、過去に採用された際の質問の傾向なども把握しているケースが少なくありません。

そのため、アドバイスを受ければ、採用される確率が高くなります。初めて転職する人や、在職中に転職先を探す人は必ず利用しましょう。

飲食店から転職したい人が登録したほうがいい転職エージェント

飲食店からの転職を成功させるためには、適切な転職エージェントの選択が不可欠です。

次に、飲食業界からの転職に強みを持つ3社を紹介します。いずれも実績豊富な転職エージェントで、利用者も多いので登録しておきましょう。

それぞれ、特徴を解説します。

リクルートエージェント

クックビズ

マイナビエージェント

まとめ

飲食店からの転職は厳しいと思っている方も多いですが、飲食店での経験を通じて培ったスキルは、転職活動において十分強みになります。

とくに、接客力や対応力、時間管理能力などは、多くの業界で高く評価されるスキルです。

また、転職先の選択肢も、食品業界や運送業界、公務員など飲食店での経験を活かせる分野が数多くあります。

さらに、飲食点からの転職を成功させるためには、ポイントを押さえた活動が不可欠です。

1人で考えず、転職エージェントに相談しながら効率よく進めれば、思い通りの転職ができるでしょう。

本記事を参考に行動して転職活動を進め、ぜひ、ワークライフバランスの取れた生活を実現させてください。