適応障害と診断された方の中には「退職したいけれどその後どうしよう」「そもそも適応障害を理由に退職できる？」などの疑問や不安を抱える方は多くいるのではないでしょうか。

本記事では、そもそも適応障害とは何なのか、退職前にできることや退職の流れ、退職後に受けられる経済的支援などについて詳しく紹介します。

さらに、退職後の仕事に不安を抱えている方のために、おすすめの転職支援サービスについてお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

関連記事：障がい者向け転職エージェント11選｜選び方や活用するポイントも解説

そもそも適応障害とは

近年よく聞く「適応障害」という名前を、聞いたことはあるけれどよく知らないという方は少なくありません。

適応障害とは、仕事や職場の環境が原因で極度のストレスや緊張を感じ、心身に様々な症状が表れる状態です。

主な症状は上記の通りです。適応障害の引き金となるのは、ほとんどが仕事のストレスです。そのため、自分自身の心の弱さを責めたり見て見ぬふりをする方が少なくありません。また、このような症状が出ても無理して働き続ける方も多くいます。

しかし、その結果症状が悪化し不調が長引き、働くことが困難になってしまうケースもあるため注意しなければいけません。

適応障害の症状が出たら早めに医療機関を受診してください。休養をとるなど適切な対処をすることで、心身の健康を取り戻すことを何より優先させてください。

適応障害で退職する前にできること

適応障害で退職する前に、ぜひやっておくべき5つのポイントがあります。

それぞれの具体的な内容について下記で詳しくみていきましょう。

症状が重いなら休む

医師の診断がある・ないに関わらず、体に出ている症状が重いようであればまずはゆっくりと休むようにしてください。

食事を摂れない、めまいがひどくて立てない、会社に行かなければいけないのに出社拒否してしまうなどの状態であれば、まずは何より休むことが大切です。

ひとまずは休暇を取得し、心身共にゆっくりと養生するようにしましょう。

医師の診断を受ける

自分自身が適応障害かどうか判断できない場合、医師の診断を受けてください。

結果的に適応障害と診断されなくても、専門家に診てもらい心身の不調を治療することは大切です。

薬を処方された場合は用法・容量を守って正しく服用し、心身の回復に努めましょう。

合理的配慮を受けられないか相談する

合理的配慮とは、障害がある方が困難に思うことに対し、職場へ過重な負担がかからない範囲で配慮する制度で、「障害者雇用促進法」によって義務付けられています。

適応障害に合理的配慮が認められるかどうかは会社によって異なりますが、適応障害発症の背景には「発達障害」「不安障害」などが関係するケースが少なくありません。

合理的配慮によって業務内容や量の調整、部署異動などが行われることでストレスが緩和されるのであれば、原疾患と一緒に適応障害の症状も治まることがあります。

また、合理的配慮は本人と会社側が相談しながら進めていくことが基本です。どちらかが一方的に決めることではないため、まずは上司や産業医、人事、社内のメンタルヘルス窓口などに相談しましょう。

外部の専門機関に相談する

社内で適応障害に関する悩みを相談しにくい場合、外部の専門機関を頼るのもひとつの方法です。例えば、厚生労働省が運営している「こころの耳」では、相談窓口が設置されているためメールや電話、SNSなど様々な方法で相談することができます。

精神科や心療内科を検索することもできるので、まずは一度利用してみてはいかがでしょうか。

ほかにも、自治体や民間企業で気軽に相談できる専門的な機関があるので、まずは自分の住んでいるエリアにどのような機関があるかを調べてみてください。

参考：「こころの耳」｜厚生労働省

休職を取る

退職ではなくまずは休職を選択するのもおすすめです。適応障害の方の中には「休職なんて必要ない」「休まず仕事を続ける方法はないか」と考える方が多くいます。

しかし、現状のままでは適応障害が良くなることはまずありません。

適応障害をよくするためには、仕事や職場などの「原因」から離れることが効果的です。休職という形が嫌な場合は、長期的な有給休暇など別の方法で休みをとれるよう主治医や会社と相談してみてください。

適応障害で退職する流れ・伝え方

適応障害が原因で仕事が続けられない場合、どのような流れで退職すればいいのか、退職の意志を伝えるタイミングなどについて紹介します。

基本的な順序は上記のようになります。それぞれを詳しくみていきましょう。

主治医や産業医の意見を聞く

退職は非常に大きな決断となります。一人で悩み決めるのではなく、まずは主治医や産業医の意見を聞いてください。

適応障害の症状を把握してくれている主治医の場合、状況によっては退職ではなく休職を勧めるケースもあります。

また、産業医がいる会社の場合、専門的知識を基に就業に関するアドバイスなどが受けられるでしょう。最終的な決断をするのは自分自身であることに変わりありませんが、決める前に専門家に相談することで広い視野で考えられるようになります。

退職する・しないに関わらず、自分の判断に後悔しないようまずは豊富な知識と経験をもつ専門家に相談してみてください。

2週間以上前に上司に退職の旨を伝える

退職を決断したら、2週間以上前に上司にその旨を伝えましょう。退職については「民法第627条」で定められていますが、会社によっては「退職の〇ヶ月前に伝える」などの就業規則があり、この場合は就業規則が適用されます。

基本的には「退職の1ヶ月前に伝える」といった規則がほとんどですが、会社によってこの期間は異なります。いつまでに退職の意志を伝えるべきか、必ず確認しておきましょう。

しかし、あまりにも退職を伝える時期が早すぎる場合、「退職の自由」が極度に制限され、公序良俗の観点から無効とされる可能性もあるので注意してください。

参考：e-Gov「民法」

退職届を提出する

退職届は会社によって雛型があることもあるので、必ず確認しておきましょう。また、手続きの方法が定められていることもあります。

退職届を提出する際、正直に「適応障害」を理由にする必要はありません。「私事都合」や「健康面の理由」などと伝えれば通じるケースがほとんどです。

以前から上司に適応障害のことを相談している場合、退職の流れがスムーズで話しが通りやすくなります。

場合によっては退職を引き止められることもあるかもしれません。引き止められても退職はできますが、断りにくい状況を作られたり自分では対処できない状況になってしまった場合、自治体や厚生労働省が設置している窓口に相談してみましょう。

適応障害がひどい・引き止められた場合は退職代行の利用がおすすめ

適応障害がひどく退職の意志を示しても、引き止められてしまい中々退職できないと悩む方は少なくありません。

そんな時は、退職代行の利用がおすすめです。退職代行に依頼すればその日から会社への連絡や手続きのためのやり取りを全て任せることが可能になります。

代行会社によっては交渉もすべて請け負ってくれるので、自分自身で何かしらの行動を起こす必要もありません。特に適応障害の場合、体調不良だけではなく出社拒否などで会社に行くことに強いストレスを感じることもあります。

無理をすればより症状が深刻化してしまうことも珍しくありません。転職先を見つけても、今後の仕事に影響が出てしまうケースもあるでしょう。自分自身を守るためにも、引き止められて退職をスムーズに進められないときは、退職代行の力を借りてみてはいかがでしょうか。

下記の記事では、おすすめの退職代行サービスを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

関連記事：退職代行おすすめランキング14選｜サービス内容を比較【2024年6月】

適応障害で退職後に受けられる経済的支援

適応障害で心身共に不調となってしまっても、金銭的な不安が大きく中々退職の決断ができない方も多いのではないでしょうか。ここでは、適応障害で退職した後に受けられる経済的支援について紹介します。

主な種類は上記の5つです。それぞれどのような支援が受けられるのか、具体的な内容を詳しくみていきましょう。

自立支援医療（精神通院医療）

適応障害を含む精神障害に対し、治療を続ける必要がある方を対象にした制度です。医療費の自己負担を軽減してくれるので、金銭的な心配をせず積極的に治療を受けることが可能になります。

医療費の自己負担は一般的に3割となっていますが、自立支援医療が適用されれば自己負担は1割になるため大幅に負担が軽減されるでしょう。また、所得区分や適応障害の症状の重さによって負担上限月額が決まります。

通院のための医療費にのみ適用となるため、入院となった場合は対象外となるので注意しましょう。しかし、医療機関で「職場復帰支援プログラム（リワーク）」を受ける場合にも自立支援医療が適用になるケースもあるため、通院先の病院や主治医に相談してみてください。

傷病手当金

仕事以外の怪我や病気によって一定期間働くことができない場合に支給される手当です。対象は健康保険に加入している方のみとなっています。受給は、初回の支給日から仕事を休んだ期間に対して通算1年6ヶ月です。

退職前に1年以上の保険加入期間があった場合、退職後も引き続き受給できる可能性があるので、事前に確認しておきましょう。

また、どのような経緯で適応障害が発症したかにより、傷病手当金ではなく労災による「休業補償等給付」を受給できる可能性もあります。

傷病手当金の対象となっているのか、受けられる給付はどちらになるのかなどは、事前に人事や健康保険組合などに問い合わせておきましょう。

失業手当（雇用保険給付）

次の仕事が決まるまでの一定期間給付が受けられる制度です。失業手当は、適応障害の診断がなくても受けられるため、退職したら必ず手続きを行っておきましょう。

しかし、失業手当が受けられる対象となるのは、下記の条件をクリアした方のみです。

受給の期間や金額は、雇用保険加入の期間によって異なります。自分がどのくらいの期間保険に加入しているか分からない場合、人事などに問い合わせてください。

障害者手帳

身体障害や精神障害がある方が取得できる手帳ですが、認定条件は自治体により異なるので事前に確認しておきましょう。障害者手帳を保有していることで、医療費や税金の減額、公共料金の割引など、様々な面で金銭的な負担を軽減できます。

適応障害のみで申請することが難しいこともあります。障害者手帳の申請は、まずは主治医と相談して決めるようにしましょう。

生活保護

何かしらの理由によって働けない方や、低収入で必要な収入が得られない方を対象とした制度で、最低限の生活を保障するための給付金が得られます。

生活保護は主に収入面で受給の可否が判断されるため、適応障害の有無は関係ありません。「障害があるから受給できない」ということはないので安心です。

国の定める最低生活費に世帯収入が届いていない場合、生活保護が受けられます。受給要件は自治体による異なりますので、役所に問い合わせて詳しい話を聞いておきましょう。

適応障害で退職した方におすすめの転職支援サービス

適応障害を理由に退職した方の多くは、「次の仕事を見つけられるのか」「今後の生活はどうなるのか」など、漠然とした不安や心配を抱えています。そんな時は下記のような転職支援サービスを利用しましょう。

それぞれどのような支援を提供してくれるのかを把握し、自分に合った転職支援サービスを見極めてください。

ハローワーク（公共職業安定所）

求人の紹介や応募書類・面接に対するアドバイスといった仕事探しにおける全面的なサポートをしてくれます。ハローワークは全国にあるので、お住まいの近くの場所を探してください。

中には適応障害など、障害がある方を対象とした窓口を設置していることもあります。こうした窓口では障害に関する知識がある専門のスタッフが一貫して対応してくれることがほとんどです。

障害者手帳がなくても利用できるので、まずは一度問い合わせてみましょう。

就労移行支援

障害がある65歳未満の方を対象に、一般企業への就職から職場定着まで一貫した支援を提供してくれます。通所型の障害福祉サービスなので、スタッフは障害に詳しい方ばかりです。

就労移行支援では、業務スキルやストレスコントロールといったプログラムの提供、応募書類の添削や面接の練習など、就職活動に関するサポートも徹底しています。

適応障害がある方の初めての転職でも安心して支援が受けられるでしょう。

障害者手帳は必須ではありませんが、利用するためには自治体の判断が必要です。まずはお近くの就労移行支援に問い合わせて、詳しい話を聞いてみてください。

転職エージェント

転職エージェントは、転職を希望する方を全面的にサポートしてくれるサービスです。

適応障害のある方は、自己判断での転職が難しいケースが少なくありません。中には自分自身の適応障害の特性を理解できていないという方も多くいます。

このような場合、頑張って転職活動してもうまくいかなかったり、希望の条件の転職先が見つけらず仕事が決まらない状態が長引いてしまうでしょう。

転職エージェントを利用することで自分の特性に気付くことができ、適切な職場を見つけられる可能性が高くなります。

下記の記事では、適応障害がある方に特におすすめの転職エージェントを紹介しています。求職者の特性に合わせて適切な求人を紹介してくれるので、自分自身で探すよりも効率よく好条件の転職先を見つけられるでしょう。

やりがいのある仕事と出会うためにも、ぜひ転職エージェントを利用しましょう。

関連記事：適応障害の方におすすめの転職エージェント10選！転職を成功させるための方法も解説

適応障害の方が退職するときのよくある質問

適応障害の方が退職するときのよくある質問として、下記3つの内容をピックアップしました。

退職に関して不安や心配を抱える方は少なくありません。ここでお伝えする3つの内容をしっかりと把握し、適応障害の退職に関して正しく理解しておきましょう。

適応障害を理由とした退職は甘え・逃げでしょうか？

適応障害を理由とした退職は、決して甘えや逃げではありません。適応障害で退職する方の中には「こんなことで退職するのは自分が甘いから」「仕事を辞めるなんて逃げていることと同じ」と自分自身を責めてしまう方もいるでしょう。

しかし、同じ環境であってもストレスの感じ方は十人十色です。適応障害によって心身に不調をきたしてしまうことは、甘えでも逃げでもありません。むしろ退職することで自分を守ることに繋がるため、無理に続けるよりよほど勇気ある決断といえます。

適応障害は、ストレスを軽減することで回復することがほとんどです。自分自身がストレスを感じやすいのはどういった場面か、何に負担を感じるかをよく理解し、どう対応することでストレスを軽減できるのかをしっかりと考え、適切に対処するようにしましょう。

適応障害で退職したら後悔しませんか？

適応障害を理由に退職することで後悔することはほぼありません。なぜなら、退職することで適応障害の症状が緩和されたり、治る可能性が大いにあるからです。無理に働き続けることで症状が深刻化し、治療が長引いてしまうことも防げるでしょう。

退職することで早い段階から集中して治療することができれば、時間をかけずに元の生活に戻ることも可能です。適応障害が発症した大きな理由として、職場の人間関係や多すぎる業務量が挙げられる場合、自分自身の努力だけではどうしようもありません。

このような状況は退職することが改善のための近道となるので、適応障害の症状緩和のためにも、退職もひとつの決断として視野に入れておきましょう。

適応障害で即日退職はできる？

適応障害で即日退職は可能です。しかし、辞めるためには会社が同意しなければ話を進めることはできません。人手不足や繁忙期の時期は、即日退職を受け入れてもらえないことも珍しくないでしょう。

また、民法第627条では、2週間前の申告であれば理由がなくても退職が可能と定められています。即日退職が現実的に難しい場合、2週間前に退職を伝えておきましょう。

それでも、「会社に行くのが怖い」「明日から行かなくていい方法を知りたい」という方もいるのではないでしょうか。この場合、下記の記事を参考にしてください。明日から会社に行かない方法や、おすすめの退職代行を紹介していますので、ぜひチェックしてみましょう。

関連記事：退職して明日から会社に行かない方法！必要な条件や手続き、頼れる代行業者を紹介

まとめ

適応障害は特別な障害ではなく、誰でもなりうる身近なものです。職場の人間関係や業務量など、仕事に関するストレスがキャパを超えてしまうと様々な症状があらわれます。ストレスが原因の適応障害は、ストレスを軽減させることが治療のための第一歩です。

本記事では、適応障害についての基本的な情報や退職前にできること、退職までの流れや上司への伝え方、退職してから受けられる経済的支援など、適応障害がある方が特に気になる内容について詳しくお伝えしました。

紹介した内容を参考に、適応障害があってもスムーズな退職・転職ができるようにしましょう。また、支援金制度を使えば金銭的な不安も軽くなるので、ぜひ対象となる制度を利用してください。