教育系の仕事は、学校の教師や塾講師だけではありません。スクールカウンセラーや児童指導員、司書教諭など、さまざまな職種があります。

教育系の仕事に転職したいと漠然と考えている場合は、職種について理解したうえで自分に合った職種を見つけることが大切です。

今回は、教育系の仕事の種類とそれぞれの仕事内容や年収、向いている人などについて詳しく解説します。

教育系の仕事の種類

教育系の仕事には、次の職種があります。

それぞれの仕事内容や年収、向いている人について詳しく見ていきましょう。

小学校教諭・中学校教諭・高校教諭

教師は、学校において生徒たちの教育と成長を支える存在です。小学校では幅広い教科を、中学校や高校では専門科目を担当し、学習指導要領に基づいて授業を進めます。

この際、生徒一人ひとりの理解度や学習進度に応じて適切なサポートをおこなうことが求められます。

また、生徒の生活態度や社会性の育成も担います。学校は集団生活を学ぶ場でもあり、教師は生徒同士の協調やコミュニケーション能力の育成、ルールやマナーの遵守を指導します。生徒の問題行動やトラブルにも適切に対処し、健全な学習環境を維持することが重要です。

さらに、教師は保護者と連携する必要があります。生徒の家庭環境や背景を理解し、家庭と学校との協力関係を築くことで、生徒のサポートにつなげます。その一環として、保護者との円滑なコミュニケーションや相談応対も欠かせません。

教師は常に自己成長を求められる職業でもあります。研究会やセミナーへの積極的な参加、他の教員との情報交換や意見交換を通じて、教育方法の向上や最新の教育理論の習得を目指します。

教師になるためには、教員免許状の取得が必須です。大学や専門学校などで教育課程を修了し、教員免許試験に合格する必要があります。その後、学校での実務経験を積みながら、教師としてのスキルや知識を磨いていきます。

教師の平均年収は以下のとおりです。

職種	年収
小学校教員	739.7万円
中学校教員	739.7万円
高等学校教員	677.5万円

大学教員

大学と短期大学は、高校卒業後に専門知識や技術を磨く場として重要な役割を果たしています。大学教員は、各自の専門分野において学生を教育し、基礎研究や先端研究に従事する職種です。

大学はさまざまな学部・学科を有し、学問の幅広い分野にわたる教育がおこなわれています。一方、短期大学は2年間のプログラムで、教育や家政、外国語などに焦点を当てた教育を行います。

大学教員は教授、准教授、講師、助教などの職位に分かれており、学問の最高学府として学術文化の水準を高める役割を担います。大学教員は教育以外にも、委員会活動や学会での研究成果の発表など幅広い活動をおこなうため、常に学内にいるわけではありません。

また、論文の発表によって学問の発展に貢献することや、社会問題に対する専門的な立場から意見を述べることも重要な役割です。

大学教員になるためには、大学が不定期に出す公募に応募し、選考に通過する必要があります。大学によっては、高い専門性を持つ人物、作家、芸術家、スポーツ選手などが採用されます。

大学教員の平均年収は、約1,065万円です。

出典：職業情報提供サイト「大学・短期大学教員」

養護教諭

養護教諭は学校保健の責任者で、健康管理や心のケア、環境衛生管理など幅広い役割を果たします。

健康診断の準備や指導、校外行事での健康管理、感染病予防などの健康管理業務から、児童生徒の心身の健康問題への相談対応、保健教育の実施、救急処置の実施、心理的なケア、環境衛生管理まで多岐にわたります。

養護教諭になるためには、養護教諭免許状の取得が必要です。一種免許状、二種免許状、専修免許状の３つの種類があります。一種免許状は、指定の4年制大学における教育・保健・看護系の学部・学科で、養護教諭育成課程を修了することで取得できます。

二種免許状を取得するには、短期大学や専門学校などの教育・保健・看護系の学科・コースで同様の育成課程を修了する必要があります。専修免許状は大学院を修了することで取得できます。

養護教諭の平均年収は約309万円です。

出典：求人ボックス「養護教諭」

特別支援学校教諭

特別支援学校は、心身にさまざまな障害を抱えた子供に、学校生活を通じての教育と自立のための支援を提供する学校です。

特別支援学校教諭は、個々の生徒の状況に応じた個別の指導計画を策定し、日課や時間割に基づいて教科の授業や特別活動の指導をおこなう一方で、生徒の障害に合わせた自立活動や特別な部活動の指導をおこないます。

また、生徒や保護者からの相談に応じ、専門的な助言や支援を提供します。特に、生活や進路に関する課題については、生徒や保護者と密接に連携し、最適なアドバイスをおこなうことが重要です。

特別支援学校や特別支援学級の教員になるためには、従来では盲学校、聾学校、養護学校といった特殊教育諸学校の教員免許が必要でした。

しかし、2007年4月の学校教育法の改正により、これらの免許は特別支援学校教諭の免許に一本化されました。一方で、特別支援学級の教員については特別支援学校教諭の免許が必要ない場合もあります。

特別支援学校教諭の平均年収は約493万円です。

出典：職業情報提供サイト「特別支援学校教員、特別支援学級教員」

日本語教師

日本語教師は、外国人に日本語を教える仕事です。日本語学校では、留学生や外国人労働者などに対して、日本語のリーディングやリスニング、ライティング、トーキングなどの知識や技術を伝えます。

授業計画の作成や教材の準備、学生のレベルに合わせた授業をおこなうことに加え、定期的なテストや評価を通じて学生の成績や進捗を把握し、個々の学習サポートやアドバイスも必要です。

また、学生からの相談に応じ、留学や進学に関するアドバイスや生活のサポートもおこないます。

日本語教師になるために資格は不要ですが、大学で日本語教育に関する科目を履修していることや、日本語教育能力検定試験に合格していることなど、日本語に精通している事実を証明する必要があります。

日本語教育能力検定試験に合格していると、採用されやすいでしょう。

また日本語教師の平均年収は約493万円です。

出典：職業情報提供サイト「日本語教師」

英会話教師

英会話教師は、リーディングやリスニング、ライティング、トーキングなどの知識や技術を伝える教師です。

英会話教室の中には、生徒の英語のレベルや目的に応じてクラスが分かれているケースがあります。また、個人レッスンやグループレッスンでは、個々のレベルに応じたカリキュラムを組むことが求められます。

また、英会話の知識だけではなく、英語圏の文化や社会に関する情報を提供することも仕事の1つです。

英会話教師になるために必要な学歴や資格はありませんが、高い英会話レベルとともに、コミュニケーション能力が不可欠です。

採用試験では、筆記試験やスピーキングテスト、模擬授業などの実技テストが行われることがあります。

英会話教師の平均年収は約383万円です。

出典：職業情報提供サイト「英会話教師」

スクールカウンセラー

スクールカウンセラーは、臨床心理に関する専門知識を活かし、学校現場で児童や生徒、保護者や教職員に対して相談や支援をおこなう専門家です。

不登校やいじめ、親子関係、学習関連などさまざまな問題や心の悩みに対応し、心のケアをおこないます。

スクールカウンセラーには、公認心理師や臨床心理士の資格が必要です。これらの資格を取得するには、大学卒業後に指定大学院を修了するか、臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了し、資格試験に合格する必要があります。

また、臨床心理学の専門知識や分析力、コミュニケーションスキルが求められます。

スクールカウンセラーの平均年収は約579万円です。

出典：職業情報提供サイト「スクールカウンセラー」

幼稚園教員

幼稚園教員は、幼稚園での生活全体を通じて、子どもたちの心身の発達を促すための教育をおこなう仕事です。

幼稚園は学校教育法に基づいた正規の学校で、幼児を保育・指導する場として位置付けられています。

登園した幼児の健康状態をチェックし、遊びや学習の様子を観察します。また、環境を整えながら子どもたちに指導を行います。指導内容は、健康、人間関係、環境、言葉、表現の領域に分かれており、個々の性格や発達の状況を踏まえつつ、適切にアプローチすることが重要です。

効果的な指導を行うために、日・週・月・年と細分化した指導計画を作成します。また、入園式や運動会などの行事に備え、準備や記録の作成、研修会や職員会議への参加も必要です。

幼稚園教員になるために必要な資格は、幼稚園教諭の免許状です。公立幼稚園と私立幼稚園では、採用試験の形態が異なります。採用試験には、子どもへの愛情や子どもとの関わり方だけでなく、幼児の発達や学習に関する知識や技術が求められます。

幼稚園教員の平均年収は約399万円です。

出典：職業情報提供サイト「幼稚園教員」

保育士

保育士は、子どもの保育を通じて成長や発達を促すことに加え、保護者に対して子育てに関する支援や助言を行う仕事です。認可保育所や児童福祉施設などで、就学前の子どもの保育に従事します。

保育所での保育の基本は、子どもの健康と安全を確保し、情緒の安定を図ったうえで、生活や遊びを通じて資質や能力を育むことです。保育の内容は健康、人間関係、環境、言葉、表現の5つの領域に分かれており、個々の子どもの発達段階や状況に応じて指導計画を作成し、保育活動を行います。

乳児の場合は授乳やおむつ替えなどの身の回りの世話をおこない、幼児期には遊びを通じて社会性や創造性を育みます。日々の保育では、食事や着替え、遊びなどさまざまな生活習慣を支援し、子どもたちの成長を見守ります。

保育士になるには、保育士資格が必要です。専門学校や大学の養成課程を卒業するか、保育士試験に合格する必要があります。試験は各都道府県で年2回実施され、保育士養成課程を修了した者や実務経験のある者が受験できます。

保育士の平均年収は約391万円です。

出典：職業情報提供サイト「保育士」

学習塾教師

学習塾教師は、幅広い年代の生徒を対象に、個々の学習ニーズや目標に合わせた個別の指導を行う教師です。

学習塾の形態は、大人数の生徒に対して授業を行う塾から個別指導塾まで多岐にわたります。補習や進学など、それぞれの目的や学習レベルに合わせてカリキュラムを設計し、教材の作成やテストの採点を行います。

学習塾教師に特別な学歴や資格は必要ありません。ただし、担当教科に関する基礎学力に加え、人柄や意欲などが求められます。また、有名大学出身者であれば、学習塾教師の就職・転職に有利です。

学習塾教師の平均年収は約383万円です。

出典：職業情報提供サイト「学習塾教師」

幼児教育講師

幼児教室講師は、主に幼児を対象に学びを提供する講師です。小学校入学までに基礎学力を高めることを目的としつつ、楽しく学びを提供することが求められます。

勤務先は幼児教室で、多くの場合は事前研修によって職場のルールや学習に関するポリシー、進め方などを学ぶことができます。幼児教育講師に資格は必要ありませんが、幼稚園教員や保育士などの経験、資格などがあると優遇される傾向があります。

時給制や日給制が主に採用されているため平均年収については勤務時間で大きく異なりますが、週休3日で1日8時間労働の場合、約220万～300万円程度が目安です。

児童指導員

児童指導員は、養護施設や児童養護施設などで保護者のいない児童や虐待を受けている子供の育成や生活指導をおこなう職種です。

日常生活や社会のルールの習得、学習や遊びの指導に従事します。朝から夜まで子供たちと一緒に過ごし、学校の送り迎えや日誌の記録、学習のサポート、身の回りの世話などをおこないます。

進路相談では、子供1人ひとりの希望や状況に合わせたアドバイスを提供し、信頼関係を築きながら適切な進路をサポートすることが求められます。

児童指導員になるためには、指導員任用資格が必要です。大学で社会福祉学や心理学、教育学などを専攻して卒業するか、社会福祉士や教員免許を取得することで、指導員任用資格を取得できます。

児童指導員の平均年収は、約415万円です。

出典：職業情報提供サイト「児童指導員」

監督・コーチ

監督やコーチは、サッカーや野球、テニス、バレーといったスポーツにおいて、選手を育ててチームを勝利へと導く責任を持つ人物です。選手の個性を理解したうえで成長を促し、適材適所に選手を配置する能力が求められます。

監督やコーチになるためには、その分野で優れた実績を残しているか、豊富な経験があることが必要です。

たとえば、野球なら甲子園出場や元プロ野球選手などが優遇されるでしょう。小学校から高校生までのスポーツにおける監督やコーチは、ボランティアかごく少額の収入の場合がほとんどです。

強豪校の場合は、月数十万円の給与で採用される場合もあります。

司書教諭

司書教諭は、図書館資料の選択、収集、提供や、子どもの読書活動に対する指導、学校図書館の利用指導計画の立案と実施などを行う職種です。

教員ではなく事務職員として学校図書館に勤務する場合は、「学校司書」と呼ばれます。

司書教諭になるためには、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の教諭免許を取得し、司書教諭講習を受講する必要があります。

司書教諭の平均年収は約579万円です。

出典：職業情報提供サイト「図書館司書」

職業訓練指導員

職業訓練指導員は、公共職業能力開発施設や認定職業訓練施設において、訓練生に対して技能や技術、専門知識などの訓練指導、就職支援などをおこなう職種です。

訓練中は訓練生の技能習得度や知識の理解度を把握し、適切な指導をおこないます。就職支援の際は、業界のニーズや技術動向の把握などが必要です。

職業訓練指導員になるためには、職業訓練指導員免許を取得する必要があります。免許を取得するための要件は、職業能力開発総合大学校の指導員養成課程の修了や技能検定合格、高等学校教育免許の取得などです。

職業訓練指導員の平均年収は約493万円です。

出典：職業情報提供サイト「職業訓練指導員」

教育関係の仕事に向いている人

教育関係の仕事には、次のような人が向いています。

教育関係の仕事に向いている人の特徴について、詳しく見ていきましょう。

コミュニケーション能力が高い

コミュニケーション能力が高い人は、生徒の気持ちを理解したうえで適切な対応を取ることができます。

たとえば、授業や個別指導の際に個々の学習への理解度を把握し、適切なアプローチを取れるため、生徒は学力を効率的に上げることが可能です。

教育に情熱を持っている

教育に対する情熱を持っていることも重要です。

教育の重要性を理解し、生徒や学生の成長を支援することに喜びを感じる人は、困難な状況に陥ったとしても諦めることなく乗り越えられるでしょう。

ただし、熱血教師は時代背景的に求められない傾向があるため、同僚や生徒に対して情熱を押しつけないよう注意が必要です。

相手に合わせた対応ができる

個別指導塾の講師や職業訓練指導員などにおいては、相手に合わせた対応ができる柔軟性も重要です。

自身との信頼関係や個々のニーズ、学習スタイルなどに合わせて、オーダーメイドの対応ができれば、生徒や訓練生の能力が早く高まります。

教育系の仕事で役立つ資格

教育系の仕事で役立つ資格の一例を紹介します。

それぞれ、役立つ職種も含めて詳しく見ていきましょう。

教員免許状

学校の教員になるためには、教員免許状が必要です。

対象の免許状を取得できる大学や短期大学に入学し、科目と単位を必要数修得して卒業します。

その後、各都道府県教育委員会に教員免許状の授与申請をおこない、審査に通過できれば教育免許状が交付されます。教員免許状は、学習塾講師や大学教員などにおいても印象アップにつながる資格といえるでしょう。

認定児童厚生員資格

認定児童厚生員資格は、児童館や放課後児童クラブなどの職員向けの資格制度です。

児童厚生二級指導員、児童厚生一級指導員、児童厚生一級特別指導員、児童健全育成指導士があります。

必須な資格ではないものの、取得することで児童と適切なコミュニケーションを取りつつ、個々に合わせた学習指導ができる能力の証明が可能です。

児童発達支援士

児童発達支援士は、一般社団法人人間力認定協会が認定する民間資格です。

発達障害を持つ子どもの能力を引き出して、自立できるように促す能力を証明できます。

国家資格ではないものの、児童発達支援に関する職種に就きたい場合に有利に働きます。

教育系の仕事に転職するためのポイント

教育系の仕事に転職したい場合は、次のポイントを押さえましょう。

それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

経験を活かせる転職先を選ぶ

他業種から教育業界への転職を目指すのであれば、自身のスキルや経験を活かせる職種を選ぶことが大切です。

一見、教育系とは無関係に思えても、意外な職種で役立つ場合があります。たとえば、IT業界でエンジニアとして活躍してきた場合、その専門知識を活かして学習塾でのプログラミング教育に携わることができます。

また、営業職で培ったニーズを捉えて掘り下げる能力を職業訓練指導員に活かすことも可能です。

民間資格で補強する

未経験の場合、民間資格を持っていることが転職に有利に働くことがあります。

たとえば、児童発達支援士や認定児童厚生員などは、児童指導員に就きたい場合に有利になるでしょう。

ただし、教員免許状のように就職に必須な資格の代わりにはなりません。また、民間資格は国家資格よりも信頼性が低い傾向があるため、知識やスキル、経験が優先されやすいことに注意が必要です。

表からは見えない業務まで把握する

教育系の仕事に転職する際は、表面上の業務だけではなく、裏で行われる業務や補助的な役割も把握することが大切です。

たとえば、教育機関では、授業の準備や実施、生徒の指導・相談、教材の作成などが主な業務です。しかし、教室の清掃や整備、教材の保管や配布、生徒の健康管理なども行っています。

さらに、教育現場だけでなく、教育政策や教育制度の理解も重要です。たとえば、教育行政や教育団体での仕事を考える場合、教育法や学校教育の基本理念、地域社会との連携などについても理解しておく必要があります。

これによって、より広い視野で仕事に取り組むことが可能になります。

また、実際に転職してから、予想していた業務内容と異なるために後悔する事態も防ぐことができます。

教育系の仕事に転職したいなら転職サービスの活用もおすすめ

異業種から教育系の仕事に転職を目指すなら、転職のプロであるエージェントを活用するのが賢い選択といえるでしょう。

この章では、教育系の仕事に転職したい方におすすめの転職サービスを紹介します。

まとめ

教育系の仕事といってもさまざまな職種があります。それぞれ、業務内容や向き不向き、年収、必要な資格などが異なるため、興味のある職種についてさらに詳しく調査したうえで、自身にとって最適な職種を見つけることが大切です。

また、自身のキャリアの棚卸しによって、今後のキャリアも踏まえて職種を選択することも重要です。

転職エージェントに相談することで、自身に合った教育系の職種について無料でアドバイスを得ることができるため、この機会に利用してはいかがでしょうか。