障害をお持ちで仕事をしてはいるものの、今の職場に満足がいかず転職を考えているのではないでしょうか。

しかし障害があるため、転職は難しいと考えている人もいると思います。そこで今回は転職を検討中の方に向けて、障害者雇用の現状や難しいと言われる理由を解説します。

転職を成功させるコツやおすすめの転職エージェントなども合わせて解説するので、転職検討中の方は、本記事の内容を参考にしてください。

関連記事：障がい者向け転職エージェント10選｜選び方や活用するポイントも解説

障害者の転職はどれくらい難しい？雇用の現状

障害を持つ人々が直面する転職の難しさとその背後にある現状について詳しく見ていきましょう。

それぞれひとつずつ詳しく解説していきます。

障害者の申込後の就職率は低い傾向にある

障害者の転職市場において大きな問題は、就職率の低さです。

厚生労働省の統計情報によると、平成30年度障害者の申込後の就職率は48.4%です。平成20年度の37.1%と比べると増加はしていますが、2人に1人が就職できていない状況なので、低いと言えるでしょう。

出典：平成 30 年度 障害者の職業紹介状況等

民間企業で働く障害者は増加傾向にある

障害者の方々が働く環境は、これまでよりも確実に広がっています。

政府の働き方改革の一環として、障害者の雇用促進が進められ、多くの民間企業もその流れに乗り始めています。

厚生労働省では、民間企業の障害者雇用率を2024年4月に2.5％、2026年7月に2.7％と段階的に引き上げると決定しました。

そのため民間企業で働く障害者は増加傾向にあります。

今後、障害がいのある方が活躍できる場所が、いっそう増えていくことが予想されるでしょう。

参照：障害者雇用率制度について

障害者の転職が難しい理由5選

障害者の転職が難しいと言われている理由は以下の通りです。

それぞれひとつずつ詳しく解説していきます。

自身の障害への理解が不足しているため

障害者の転職が難しい理由のひとつは、自身の障害に対する理解が不足している点です。

自己理解が不足していると、自分がどのような職種や環境で最も能力を発揮できるのか、また、どのような支援が必要なのかを明確に伝えることが難しくなります。

例えば、視覚障害者であれば、どの程度の視力があるのか、何が見えて何が見えないのかといった具体的な情報を正確に把握し、それを伝える能力が求められます。

聴覚障害者の場合でも、自分がどの程度の音が聞こえ、どのような状況でコミュニケーションが取りづらいのか、また、どのような支援が必要なのかを把握し、それを面接時に伝えることが求められます。

障害者自身が自己理解を深め、それを適切に伝えることができれば、企業もその人を適切にサポートし、その能力を最大限に活かすことが可能となります。

業種や職種が障害者に適さない場合があるため

2つ目の理由は、業種や職種が障害者に適さない場合があるという点です。

障害者として一度就業した場合でも、自身の障害状況によっては一部の業種や職種が困難になることがあります。

例えば、身体的な障害を持つ人が、体力を必要とする仕事や立ち仕事に従事するのは困難である可能性があります。

このように業種や職種が障害者に適さない場合があるため、障害者の転職は難しいと言われています。

ただしポイントをおさえれば、障害を持っていたとしても転職活動を成功させることは可能です。コツが気になる方は、後述する「障害者が転職活動を成功させる6つのポイント」もぜひご覧ください。

現場の理解や環境整備が十分でないため

3つ目の理由は、企業の現場での理解や環境整備が十分でないためです。これには、主に2つの側面があります。

• 障害者に対する固定観念が存在すること
• 職場の物理的な環境整備が不十分であること

障害者が一定の業務を遂行できないという偏見や、障害者を雇用することが業務運営上のリスクになるという誤った認識を企業側が持つことで、採用や転職の機会を失う原因となります。

建築設備のバリアフリー化や労働環境の調整が進んでいない職場が多いです。障害者が職場で十分なパフォーマンスを発揮することを阻む要因となり、転職活動を困難にしています。

障害者が転職しやすくするには、企業側の理解と職場環境の整備が必要です。

障害者は職場定着率が低いため

4つ目の理由は障害者の職場定着率が低いためです。

障害者職業総合センターの情報によると、障害者の入社1年時点の定着率は、身体障害は、60.8%、知的障害は49.3%、知的障害は71.5%となっています。

大卒で新卒1年目の定着率は12%なので、それに比べると障害者の職場定着率が低いと言えます。企業は長期で働いてくれる人を採用したいため、定着率の低さは障害者の転職が難しいとされる理由の1つです。

出典：障害者の就業状況等に関する調査研究

参照：学歴別就職後３年以内離職率の推移

業務に必要なスキルを身につけていないため

5つ目の理由は業務に必要なスキルを身につけていないためです。

業務スキルが不足していると、求人企業から見てその人が職務遂行能力を持っていると判断するのが難しくなります。

具体的には、ITスキルやビジネススキル、コミュニケーションスキルなど、多くの仕事で要求される基本的なスキルが該当します。

障害がある人々が転職を成功させるためには、自分自身のスキルセットを向上させるための教育や訓練の機会を探し、積極的に取り組むことが必要です。

次の章では障害者が転職活動を成功させるポイントを紹介します。

障害者が転職活動を成功させる6つのポイント

障害者が転職活動を成功させる6つのポイントは以下の通りです。

それぞれひとつずつ詳しく解説していきます。

働くために必要な配慮や環境を理解する

自分自身に必要な配慮や働く環境を深く理解することが重要です。

まず、自身の障害の特性とそれによって生じる制限を明確に認識し、求められる職務内容との整合性を評価する必要があります。また、自分がどのような支援や環境を必要としているのかを把握し、それを適切に伝えるスキルも求められます。

さらに、働きたい業界や職種が、自分の能力や障害の特性に適しているかを評価することも重要です。障害者向けの転職サイトやエージェントを活用し、自分にぴったりの職場を見つけるための情報収集を行いましょう。

自己分析をする

転職活動を成功させるために自己分析は重要です。自己分析とは、自分自身の能力や適性、経験、価値観を深く理解することです。

障害者の方々が自己分析を行うことで、自分にとって最適な職種や業界、企業を見つけ出すことが可能となります。

自分の得意なこと、興味があること、これまでの経験やスキルを振り返りましょう。これまでの経験やスキルを活かせる仕事を探すことで、転職後もスムーズに業務に携わることができます。

また、自分の価値観や求める職場の環境を考えることも忘れてはなりません。

どのような環境で働きたいのか、どのような人間関係を築きたいのか、自分にとってどのような仕事が価値あるものなのか、等々を明確にすることで、自分に合った職場を見つけやすくなります。

スケジュールの調整をする

障害者の転職活動で重要なのが、スケジュールの調整です。

特に医療機関への通院が必要な方や、身体的・精神的な疲労が溜まりやすい方は、日々のスケジュール管理が必要不可欠となります。

面接やエントリーシートの提出期限など、転職活動には様々なスケジュールが絡むため、それらを的確に管理することが求められます。

また、自身の体調を考慮し、無理のない範囲で活動を進めることも大切です。無理をしてしまうと、体調を崩すリスクがあり、結果的に転職活動が長期化する可能性もあります。

そのため、自分自身の体調や能力を見極めつつ、スケジュールを調整することが求められます。

面接準備をしっかりする

転職成功の大きな鍵として、面接準備の重要性は言うまでもありません。

特に障害を持つ方々は、自身のスキルや経験を適切に伝えるだけでなく、自身の障害についても説明する必要がある場合が多いです。下記項目を事前に準備しておくといいでしょう。

• 自身の障害の内容
• 自身の障害が職務にどのような影響があるか
• 自身のスキル・経験・強み
• 面接官に対する逆質問
• 自身の障害に適応するための具体的な提案

これらを事前に準備しておけば、面接官に自身の障害を理解してもらい、自身の能力と経験を評価してもらうことが可能となります。

ハローワークなどの就職支援サービスを活用する

転職活動を成功させるためには、ハローワークなどの就職支援サービスを上手く活用することです。

これらのサービスは、障害者の就職・転職を支援するための専門的な知識と経験を持ったスタッフが揃っており、一人で抱え込むよりも遥かに効率的に転職活動を進めることが可能です。

具体的には、ハローワークでは障害者のための就職相談会や求人情報の提供を行っています。また、障害者雇用促進法に基づく障害者就労支援センターでは、障害者の就職準備や職場適応の支援を行い、その後の就職活動をスムーズに進めるためのサポートを提供しています。

また、地域によっては障害者の転職を専門にサポートするNPOや社会福祉法人もあり、これらの機関では就職活動のアドバイスや面接練習、履歴書の添削など、より具体的な支援を受けることができます。

ハローワークなどの就職支援サービスを有効活用し、自身の障害に合った転職先を見つけましょう。

障害者向けの転職エージェントを活用する

障害を持つ人々にとって、転職活動は決して簡単なことではないでしょう。

しかし、障害者向けの転職エージェントを活用することで、自分で探すよりも有利に転職活動を進められる可能性が上がります。

転職エージェントは、具体的な求人情報の提供はもちろん、自身のスキルや経験を最大限に活かせる仕事を見つけるためのアドバイスやサポートを提供してくれます。

また、これらのエージェントは、障害者雇用促進法によって障害者の雇用を奨励している企業との繋がりもあります。そのため障害への理解が深い企業をスムーズに見つけやすい傾向にあるといえるでしょう。

次の章では、障害者向けのおすすめ転職エージェントを紹介します。

障害者向けおすすめ転職エージェント

障害者向けのおすすめ転職エージェントを3つご紹介します。

特徴やメリットなど詳しく解説するので、自分に合った転職エージェントを見つけてください。

LITALICO仕事ナビ

障害者雇用バンク

障害者雇用バンクは、障害者の方の就職・転職活動に役立つ求人情報サイトです。豊富な求人情報と充実した就職支援サービスを活用することで、自分に合った仕事を見つけることができます。

職種、地域、キーワードなど、様々な条件で求人を検索することができます。ハローワークの求人と企業からの求人どちらも検索できるのが便利です。

面接対策や書類添削の個別サポートはもちろん、Web面談にも対応しており、遠方にお住まいの方や移動に不便を感じる方でも安心して利用できます。

サービス名	障害者雇用バンク
運営会社	株式会社HANDICAP CLOUD
公開求人数	企業求人1,175件・ハローワーク20,971件
非公開求人数	非公開
対応地域	全国

dodaチャレンジ

dodaチャレンジは、障害者転職・就職支援実績No.1の転職エージェントです。パーソルグループの特例子会社運営で、障害特性別の専任スタッフが在籍しています。障害特性や希望に合った大手・優良企業の正社員求人を多数紹介してくれます。

サービス利用者の総合満足度は95%以上で、応募書類添削や模擬面接など、コンサルタントによる分厚いサポートがあります。入社後も就労に関する相談が可能です。

大手人材企業のノウハウと障害者雇用の豊富な経験を生かしたサポートを受けることができます。身体障害・精神（発達）障害など、障害別に専属のスタッフがつくのも魅力です。

サービス名	dodaチャレンジ
運営会社	パーソルダイバース株式会社
公開求人数	1,518件
非公開求人数	非公開
対応地域	全国

障害者の転職でよくある質問

ここでは、障害者の転職に関してよくある質問とその回答をまとめました。

それぞれ見ていきましょう。

特例子会社と一般の障害者枠どっちがいい？

特例子会社は、障害者雇用を推進するために設立された企業であり、働きやすい環境が整っていることが多い一方で、時にはキャリアアップの機会が限られてしまうこともあります。

一方、一般の障害者枠では、障害者であることを理由に差別されることなく、能力を発揮して働くことができますが、障害に配慮した職場環境が整っていない場合もあります。

自分自身のキャリアビジョンやライフスタイル、健康状態などによって選ぶのがいいでしょう。

障害者は何歳まで働ける？

何歳まで働けるかは、障害の種類や程度、個々の健康状態などが影響するため、一概には答えられません。年齢制限も基本ありません。

しかし、障害者の就労に関する法的な規定や、障害者雇用を支援する制度などが存在します。これらを理解することで、より具体的な働き方やキャリアプランを検討することが可能になるでしょう。

障害者に対する企業の雇用意識も近年では高まっているので、志望企業が何歳まで受けていているか確認しましょう。

障害者が働きやすい企業はどこですか？

障害者が働きやすい企業とは、障害のある人が仕事を続けられる環境を提供し、その能力を最大限に引き出せる場所です。

しかし、一概に「障害者が働きやすい企業」と言っても、障害の種類や程度、個々の能力や希望により、その基準は大きく異なります。

具体的には、障害者が働きやすい企業は、以下のような特徴を持つことが多いです。

入社前に自分が働きやすい環境が整っているかチェックするといいでしょう。

障害者枠で転職するのは狭き門？

実際に障害者枠での転職は、一般的な転職よりも苦労が多いとされています。

しかし、それは決して「不可能」なことではありません。厚生労働省では、民間企業の障害者雇用率を2024年4月に2.5％、2026年7月に2.7％と段階的に引き上げると決定しています。

つまり障害者を受け入れる企業が増えています。簡単に転職をすることはできませんが、障害者向けの転職エージェントを有効活用すれば、内定を獲得できるでしょう。

参照：障害者雇用率制度について

障害者雇用は仕事を任されないって本当？

障害者雇用で働いている場合、時として仕事量が少ない時があります。下記のような理由が考えられます。

• 任せられる仕事が少ない
• 周りの人が忙しくてフォローできない
• 無理がないように配慮してくれている

もし今以上に働きたいのであれば、会社側にリクエストするといいでしょう。

まとめ

本記事では、障害者の転職が難しい理由を5つ紹介し、その解決策として6つの成功ポイントを解説しました。また、支援を得るための障害者向けのおすすめ転職エージェントについても触れました。

障害を持つ方々にとっては、転職活動で苦労するところが多いかもしれません。しかし、その困難を乗り越えるための情報と支援が整っていることも事実です。本記事で紹介したポイントやエージェントを活用し、転職活動を効率的に進めてください。