国家資格である薬剤師は、働き先も調剤薬局、病院、ドラックストア、企業と幅広く、資格を取得しておけば職業としても安泰と考えていた人も多いでしょう。
しかし、実際に転職活動をしてみて、薬剤師の転職活動には厳しいものがあると感じてしまった方も出てきたかもしれません。
近年、薬剤師の増加やドラックストアの出店減少、オンラインの服薬指導などで、薬剤師の転職は厳しい状況に置かれやすくもなりました。
そのため、薬剤師として転職を成功させたいのであれば、薬局や病院から必要とされる薬剤師にならなければいけません。
この記事では、薬剤師の転職が厳しいと言われる理由や、厳しい転職市場でどのように戦うのかをまとめました。最後には薬剤師で転職の成功を目指す方におすすめの転職エージェントも解説しています。
※【参考記事】薬局薬剤師に関する基礎資料(概要)|厚生労働省
関連記事:薬剤師向け転職エージェント16社を徹底比較|選び方や転職成功ポイントも
薬剤師の転職市場は厳しいと言われる理由|薬剤師求人の現状とは
冒頭でもお伝えしましたが、薬剤師の転職は厳しい傾向にあります。近年では、コロナ禍の影響も大きかったのですが、原因はそれだけではありません。
薬剤師は買い手市場へ
引用元:薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会|厚生労働省
薬剤師の転職市場が厳しい理由の1つ目は、今後は買い手市場に移行することが予想されるからです。
上記の図は厚生労働省が作成した薬剤師の需要推計の推移です。今後20年以上に渡って、供給が需要を上回っていることが見て取れます。
供給の方が多いため、市場はどんどん冷え込んでいきます。
ライバルとなる薬剤師が増えれば、優秀な経歴・スキル等を持つ薬剤師から採用されていきますので、アピールポイントが少ない薬剤師は採用されにくくなります。
0402通知の影響
薬剤師の転職市場が厳しくなった要因には、「0402通知」も挙げられるでしょう。
実際、薬剤師の業務が効率化され、対物業務にかかっていた時間を対人業務にシフトできるようになったようです。
ただし、非薬剤師の業務拡大によって、薬剤師の人数や稼働時間が減らせる可能性が指摘できるでしょう。業務の運営に必要な薬剤師の労働力が減れば、その分、薬剤師の採用も慎重にならざるを得ません。
薬剤師の数は増えていることに対して薬剤師の需要が低下してしまえば、薬剤師も転職市場で求められにくくなってしまいます。
デジタル技術活用の影響
また、医療分野のデジタル技術の活用によって、薬剤師の必要性が低下している点も、薬剤師の転職が厳しくなる原因に挙げられます。
薬剤師の分野では、処方箋の電子化やオンラインでの服薬指導、調剤ロボットの活用などが起き始めています。
また、デジタル技術の発展により、薬剤師が担ってきた正確さを求められる業務を、より効率的にできるようにもなってきています。
薬剤師として転職を成功させるためには、このようなテクノロジーの変化に対する対応や、ライバルの薬剤師に負けないような専門性、コミュニケーション能力を高める必要があります。
調剤報酬改定の影響も
調剤報酬改定の影響も、薬剤師の転職市場を厳しくしているといえるでしょう。
また2022年に改訂された「調剤報酬」からも同様の流れが見て取れるでしょう。地域支援体制加算の施設要件に象徴されるように、対人業務の点数は高く設定されています。
つまり、薬剤師として採用されるには、正社員、パートに関わらず、在宅業務やかかりつけ、他業種と連携する能力など、高いスキルを求められるようになるのです。
薬剤師として、柔軟に幅広い業務に対応できないと、転職市場でもアピールしにくくなってしまいます。
雇用の流動性が低くなったことも一因
雇用の流動性が低くなったことも、薬剤師の転職市場が厳しくなった一因といえるでしょう。特に調剤薬局チェーンで顕著な動きが見られます。
調剤薬局チェーンでは、新卒採用を強化し、労働環境の改善など、ブランクを作らずに正社員として働き続けられる体制を整えてきました。
その結果、新卒採用のみで人材が充足したことで雇用の流動性が低くなり、中途採用やパートなど外部の人材採用を控える傾向にあるようです。
厳しい転職市場でも必要とされる薬剤師の特徴
このように、薬剤師にとって転職市場は厳しい状況に置かれている理由があります。
では、そのような状況のなかでどういった薬剤師が必要とされるのでしょうか。
ここで、転職市場で求められる薬剤師について確認しておきましょう。
対人業務の充実
これまで薬剤師の仕事としては薬の管理が中心でした。調剤業務が強く求められ、処方箋を受け取った後は、いかに正確に素早く薬を提供できるかが重要視されてきたといえるでしょう。
ただし、前述の通り今後は対人業務が重要視されます。薬剤師の業務をする中で、対人業務をおこなえるかが重要となるでしょう。
対人業務は、処方箋受付時と処方箋受付時以外に大別されます。処方箋受付時には丁寧な聞き取りや服薬指導が必要です。
一方の処方箋受付時以外は、副作用のフォローアップやポリファーマシーの分析・評価などが求められます。
【参考記事】対人業務の充実|厚生労働省
かかりつけ薬剤師
対人業務の充実の1つとして、とくに、かかりつけ薬剤師となれる人材も今後は重宝されるでしょう。かかりつけ薬剤師とは、患者のニーズに沿った相談に応じられる薬剤師のことです。
患者側としては、薬の専門家が身近になって安心・安全に薬を使用できたり、処方医や医療機関と連携して支えてもらったりといったメリットがあります。
ただし、かかりつけ薬剤師になるには次のように「十分な経験等」が必要とされています。誰でもなれるわけではない点に注意が必要です。
- 薬剤師として薬局での勤務経験が3年以上
- その薬局に週32時間以上勤め、かつ1年以上在籍している
- 医療に関する地域活動に参画している
- 薬剤師研修認定等を取得している
【参考記事】かかりつけ薬事脚・薬局の推進について|厚生労働省
在宅業務に対応できる薬剤師
地域支援体制加算による売り上げへ貢献できることや、他薬局と差別化できることが理由です。
在宅業務では、薬剤師が患者の自宅に訪問して薬剤を提供するだけでなく、服薬指導や残薬の管理、在宅担当医への処方提案などが含まれます。
薬剤師としての知識やスキルはもちろんのこと、高いコミュニケーションや提案力、几帳面さが求められるでしょう。
なお、在宅業務はかかりつけ薬剤師と異なり、必要な条件はありません。ただし、勤務する薬局が在宅訪問に対応している必要があります。
【参考記事】在宅医療における薬剤師業務について|厚生労働省
資格の保有
より深い知識があり、幅広い患者に対応できる薬剤師も、転職市場で評価されるでしょう。
在宅寮支援認定薬剤師をはじめとした認定資格のほか、薬物療法専門薬剤師などの専門資格などを保有しておけば、あなたの専門性が示せます。
なお、資格を保有しておけば市場価値があがり選考に通過しやすいだけでなく、手当が出て収入アップにつながるメリットもあります。
薬剤師が厳しい市場で戦うための方法
転職市場で評価される薬剤師像が理解できたとしても、急にそれだけの経験やスキル、知識を持つのは難しいもしれません。
そこでここでは、これから転職活動をおこなう薬剤師の方が、厳しい転職市場で戦うための方法についてまとめました。参考にしつつ、転職活動に役立ててください。
資格を取得する
資格を取得している薬剤師は専門性を示せることから、転職市場における価値が高くなるでしょう。
そのため、今後転職を検討している薬剤師の方は、事前に資格取得をしておくと転職が有利に進められます。専門性を示せるだけでなく、意欲が高いことを採用担当者にアピールできるでしょう。
薬剤師の資格は多岐に渡りますが、大きく認定資格と専門資格に分けられます。具体的には次のようなものがあり、あなたが深めたい専門性などを考慮して、資格取得に挑戦してください。
【認定資格】 | 【専門資格】 |
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研修認定薬剤師 在宅療養支援認定薬剤師 プライマリ ケア認定薬剤師 救急認定薬剤師 外来がん治療認定薬剤師 老年約爆認定薬剤師 外来がん治療認定薬剤師 がん薬物療法認定薬剤師 腎臓病薬物療法認定薬剤師 など | 薬物療法専門薬剤師 医薬品情報専門薬剤師 薬物療法専門薬剤師 地域薬学ケア専門薬剤師 外来がん治療専門薬剤師 がん指導薬剤師 精神科専門薬剤師 HIV感染症専門薬剤師 腎臓病薬物療法専門薬剤師 など |
好条件を求め過ぎない
好条件を求め過ぎないことも、転職を成功させるために大切な姿勢かもしれません。
転職市場が厳しくなっていることから、高収入を実現できたり、時間の融通が利きやすかったりといった求人はなかなか見つからなくなっているからです。
好条件の求人ばかりにエントリーしていると、いつまでたっても採用されないなんて事態になりかねません。
あなたの中で求人に求める条件に優先度をつけておくことは重要ですが、あまり好条件ばかりを求めるのは避けましょう。条件については一定程度、妥協する姿勢も大切です。
転職エージェントを利用する
薬剤師n求人を探すには、薬剤師の転職に特化した転職エージェントを利用するのが一番の手です。転職エージェントは、あなたの経歴やパ求人に求める条件をヒアリングしたうえで、最適な就業先を提案してくれるからです。
転職エージェントの特徴にもよりますが、調剤薬局やドラックストア、病院、企業など、幅広い求人を保有しています。
今まで調剤薬局でしかた働いたことがない方でも、企業からの求人を詳しく聞くこともできますので、転職の幅を広げるためにも利用してみてください。
あなた自身で求人を探すより効率的でかつ、選考通過のためにさまざまなサポートを受けることができます。
薬剤師求人を見つけるのにおすすめの転職エージェント
ここでは、薬剤師求人を見つけるのにおすすめの転職エージェントをまとめました。
なお、転職エージェントは、独占求人といって、その転職エージェントにしかない求人を保有しているのが一般的です。
マイナビ薬剤師
- 「顔が見える面談」による丁寧なヒアリング
- 手厚い転職サポート
- 臨床開発室・治験コーディネーターなど取り扱い職種が幅広い
マイナビ薬剤師は、大手人材紹介企業である株式会社マイナビが運営する転職エージェントです。
対面、またはWebでおこなわれる「顔が見える面談」にこだわりがあり、今後のキャリアプランや仕事に求めることなど、求職者の話に耳を傾けて、叶えたい転職内容を汲み取ってくれるでしょう。
サポートの手厚さに定評があり、求人紹介や書類添削、面接対策などの支援にくわえ、面談同行や給与交渉なども任せられます。
求人情報の読み方や内部情報も教えてもらえるため、気になることは何でも質問してみるのがおすすめです。
取り扱い職種の幅が広いことも特徴で、薬局、病院、ドラッグストアのほか、臨床開発室・治験コーディネーターなどの企業勤務の求人も保有されています。
さまざまなキャリアの選択肢を検討したい方に、うれしいポイントでしょう。
サービス概要 | |
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サービス名 | マイナビ薬剤師 |
運営会社 | 株式会社マイナビ |
公開求人数 | 48,621件 |
非公開求人数 | 非公開 |
対応地域 | 全国 |
公式サイト | https://pharma.mynavi.jp/ |
ヤクジョブ
- 求人を4万件以上保有
- 取引企業・医療機関は7,000社以上
- 企業を取材しているので詳しい情報がわかる
「ヤクジョブ.com」は、30年近く薬剤師業界を中心に医療業界の人材サポートをおこなっている、クラシス株式会社が運営する薬剤師向けの転職サイトです。
長年かけて医療機関と築いてきた信頼と実績があるからこそ、現在も6万件以上の求人情報を保有し、利用満足度97.7%(※)を誇ります。
全国47都道府県の求人を取り扱い、ほとんどの都道府県で100件以上の求人を保有しています。なかでも調剤薬局の求人は、全体の8割と豊富に扱っています。
(※)ヤクジョブ.com公式サイト参照
- ミスマッチを防ぎたい方
- 多くの求人から自分に合った求人を選びたい方
- ライフスタイルに合った働き方をしたい40代の方
サービス概要 | |
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サービス名 | ヤクジョブ |
運営会社 | クラシス株式会社 |
公開求人数 | 51,670件 |
非公開求人数 | 非公開 |
対応地域 | 全国 |
公式サイト | https://yaku-job.com/ |
レバウェル薬剤師
- 取引先医療機関1.4万件(※公式サイト参照)
- 転職前に職場の内部情報が分かる
- 医療・ヘルスケア領域に精通したアドバイザーがサポート
レバウェル薬剤師は、医療業界の転職に特化したサービスを展開するレバレジーズメディカルケア株式会社が運営しています。
業界に精通したアドバイザーからのサポートが受けられるのはもちろん、アドバイザーは直接職場訪問して情報収集をしているため、職場の内部情報を詳細に知ることが可能です。
また、「転職エージェント」「スカウトサービス」「求人サイト」を兼ね備えたサービスのため、自身に合ったスタイルで転職活動を進めていくことができます。
サービス概要 | |
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サービス名 | レバウェル薬剤師 |
運営会社 | レバレジーズメディカルケア株式会社 |
公開求人数 | 2,752件 |
非公開求人数 | 非公開 |
対応地域 | 全国 |
公式サイト | https://levwell-yakuzaishi-agent.jp/lp/1/ |
ファーマキャリア
- 希望条件に合わせたオーダーメイドの求人作成
- 大手転職エージェント出身のコンサルタントが設立
- コンサルタントと二人三脚で転職活動に取り組める
ファーマキャリアの最大の特徴は、「オーダーメイド型求人」があることです。
希望条件に合致しそうな病院・薬局に直接交渉し、求職者のために新たに求人を作成してくれます。
大手転職エージェント出身のコンサルタントが設立したからこその交渉力で、理想に近い求人を提案してくれるでしょう。
質の高いサポートにも力を入れており、蓄積してきたノウハウをもとに、きめ細やかなサービスを提供しています。
どのコンサルタントに当たっても満足できるよう、教育にも重点を置いているため、安心してサポートを受けられるのも特徴です。
あえてコンサルタント一人あたりの担当人数を絞り込み、求職者一人ひとりに寄り添った転職支援をおこなっています。
ほかのエージェントでは満足できなかった方も、ファーマキャリアなら理想の転職を叶えられるかもしれません。
サービス概要 | |
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サービス名 | ファーマキャリア |
運営会社 | エニーキャリア株式会社 |
公開求人数 | 37,332件 |
対応地域 | 全国 |
公式サイト | https://pharmacareer.jp/ |
ファルマスタッフ
- 業界最大レベルの求人数と地方求人の多さに強み
- 転職相談満足度96.7%
- 薬剤師のための教育サービスも提供
全国12拠点を有するファルマスタッフでは、2024年1月現在、4万9,000件超(※1)の求人が保有されており、大都市だけでなく地方の求人も充実しています。
「年収600万円以上」「土日休み」「派遣」など、希望条件に合う求人が見つかるでしょう。
また、転職相談満足度が96.7%(※1)と高く、転職サポートが充実していることも魅力です。
書類作成や条件交渉の支援のほか、コンサルタントが実際に足を運んで収集した内部情報の提供もおこなっており、転職後のミスマッチを最小限に抑えられるはずです。
ファルマスタッフの母体は日本調剤株式会社とあって、教育面でも転職したい薬剤師を応援してくれます。
転職を機にキャリアアップやスキルアップしたい方におすすめのエージェントです。
(※1)ファルマスタッフの公式ホームページより
サービス概要 | |
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サービス名 | ファルマスタッフ |
運営会社 | 株式会社メディカルリソース |
公開求人数 | 51,942件 |
非公開求人数 | 非公開 |
対応地域 | 全国 |
公式サイト | https://www.38-8931.com/ |
まとめ
薬剤師の転職が厳しい理由を解説しました。
薬剤師の転職が厳しい理由には、薬剤師数の増加や、テクノロジー導入による薬剤師の必要性の変化などが挙げられます。
今後20年間で買い手市場が進むほか、調剤報酬改定などの影響も考えられます。
今後、選ばれる薬剤師になるには、対人業務の経験があったり、資格を保有していたりといったことが求められるでしょう。
そのときはぜひこの記事で紹介した、薬剤師に特化した転職エージェントを選んでください。