SESと派遣エンジニアはどこが違うの?
SESは派遣ではないの?
上記のような疑問を持っている方も少なくないはずです。SESも派遣も派遣先企業に常駐して業務をおこなう点は共通していますが、異なる点もたくさんあります。
そして、エンジニアとしてこれからキャリアを積んでいきたいと検討している方の中には、SESと派遣のどちらにしようか迷っている方もいるでしょう。そこでこの記事では、まずはSESと派遣の違いについてまとめました。双方の違いを明確にしたい方は参考にしてください。
さらに、SESと派遣のメリット・デメリットについても解説しています。SESと派遣のどちらで働こうか迷っている方は判断材料の1つにするとよいでしょう。
SES契約とは|派遣や請負との違いを解説
まずは、SES契約とはどういったものかと、SESと似た概念である「派遣」および「請負」との違いを整理しておきましょう。
SES契約とは
SESとは、システムエンジニアサービス(System Engineering Service)の略称で、ソフトウェアやシステム開発などの労働力を提供する契約形態のことです。
SESの契約形態は、法的には「準委任契約」と呼び、法律行為の事務処理以外の業務を遂行に対価が支払われる契約を指します。根拠法令は民法656条です。
SESと派遣の違い
SES契約と派遣契約には、2つの違いがあります。「契約内容」と「指揮命令権」です。表でまとめると次の通りです。
SES | 派遣 | |
雇用形態 | 準委任契約 | 派遣契約 |
指揮命令権 | 雇用元の指揮命令で働く | 派遣先企業の指揮命令で働く |
報酬の対象 | エンジニアの労働力や技術に対して報酬が支払われる | 実際に労働した時間や期間に応じて派遣料金が生じる |
SESの契約は前述の通り「準委任契約」ですが、派遣の契約は「派遣契約」です。もっとも、契約の名前が違うだけで、労働力を提供する点はどちらも共通しています。
一方、指揮命令権はSESと派遣で明確な違いがあります。
派遣の場合、指揮命令権は派遣先企業にあるため、派遣先の指示に従って働きます。対して、SESでは派遣先であるクライアントに指揮命令権はありません。雇用主であるSES企業の指示で働きます。
SES契約を結んだうえで、派遣先から直接業務命令を受けた場合には、偽装請負とみなされる可能性があるため注意が必要です。
「偽装請負」とは・・・
引用元:あなたの使用者はだれですか?|厚生労働省 東京労働局
書類上、形式的には請負(委託)契約ですが、実態としては労働者派遣であるものを言い、違法です。
SESと請負の違い
SESと請負の違いは、報酬の対象です。表にまとめると次の通りです。
SES | 請負 | |
雇用形態 | 準委任契約 | 請負契約 |
報酬の対象 | エンジニアの労働力や技術に対して報酬が支払われる | 完成した成果物を納品することで報酬が支払われる |
SESは、一定の期間に業務をおこない、技術を提供することを約束します。その技術やスキルに対して報酬が支払われるため、成果物を必ず完成させなければならない義務はありません。
対して請負契約は、業務を完了させることを約束する契約であり、完成した成果物に対して報酬が支払われます。つまり、成果物を完成させて納品する必要があります。
たとえば、請負の場合、「ゲームアプリの開発」の契約を結んだなら、ゲームアプリを開発し、完成させて納品するまでが仕事です。
しかし、SESの場合では、ゲームアプリを一定期間開発する「技術力の提供」が仕事となります。そのため、期間内にゲームアプリの開発を完成させる義務はありません。
このように、SESと請負では、報酬の支払い対象に違いがあるのです。
SESのメリット
SESには次のようなメリットがあります。一つひとつ確認してみましょう。
- さまざまな環境で経験を積める
- 人脈が広がりやすい
- 安定した収入を得やすい
さまざまな環境で経験を積める
SESには、さまざまな環境で経験を積めるメリットがあります。常駐先ごとに、社内の環境やプロジェクト内容、人間関係などが異なるからです。
規模の異なる企業のプロジェクトに参加すれば、それだけ新しい知識やスキルが身につき、未経験分野に挑戦できることから、業務の幅も広がるでしょうし、スキルアップにもつながります。
人脈が広がりやすい
さまざまな現場を経験できることから、多数の人と知り合えるのもメリットの1つでしょう。
人脈が広がることで、新たな交友関係ができたり、仕事につながったりする可能性もあります。
フリーランスや独立など、将来の可能性を広げるチャンスにもつながるため、さまざまな人と出会い、人脈を築きやすい点もSESのメリットです。
安定した収入を得やすい
SESでは、雇用元であるSES企業の正社員として、派遣先企業へ出向き常駐します。そのため、毎月月給が発生し、安定した収入を得やすいところがメリットです。
派遣先との契約が終了しても、雇用元との契約は維持されるため、次の常駐先が決まるまでの間も給料が支給されます。
SES契約のデメリット
一方で、SES契約には次のようなデメリットが存在します。SESか派遣かを選ぶ際の参考にしてください。
- 環境が変わりやすい
- 仕事の重要部分は任されにくい
- キャリアアップを図りにくい
関連記事:SESはブラックって本当?ブラック企業の特徴やホワイト企業の見極め方を解説!
環境が変わりやすい
頻繁に環境が変わることは、さまざまな現場を経験できるメリットがある一方で、デメリットにもなり得ます。
SES契約の期間は、プロジェクトなどによっても異なりますが、1ヵ月~3ヵ月、半年のケースも珍しくありません。
つまり、打ち解けてきたころに契約期間が終了を迎え、次の現場に慣れなければならないこともあるのです。
そのため、次々と環境が変わることに苦手意識のある方にとって、SESの働き方はストレスがたまりやすいと言えるかもしれません。
関連記事:客先常駐のSESが辛いと言われる理由は?メリットや辛いと感じた際の対処法を徹底解説
仕事の重要部分は任されにくい
SESには、仕事の重要な部分は任されにくい傾向があります。これは、SESは派遣先企業の正社員ではないからです。
基本的に、上流工程などの仕事は派遣先の社員がおこないます。SESは下流工程を任されることが一般的ですから、スキルアップがしにくい側面があるでしょう。
キャリアアップを図りにくい
キャリアアップを図りにくい側面もデメリットといえるかもしれません。
SES契約では、さまざまな分野の業務にチャレンジできる魅力があり、スキルの幅は広がる可能性がありますが、単純作業を繰り返すだけの業務になるケースもあります。
そのため、さらに深い知識や上流工程へのステップアップをしようと思っても難しいかもしれません。
関連記事:SES・下請けSIerはやめとけ…?3ヵ月で残業なしの上流工程へ転職する方法
派遣のメリット
次に、派遣のメリット・デメリットについて確認しておきましょう。まずはメリットからです。
さまざまな環境でスキルを磨ける
さまざまな環境で働けて、スキルを磨けるメリットがあるのは、SESと同じです。
とくに派遣は、あなたのスキルと派遣先が必要とするスキルが合致するとすぐに派遣されるので、より多くのプロジェクトに参加できる可能性が高いでしょう。
いろいろな開発手法に触れられることから、スキルアップすることも難しくありません。
ワークライフバランスを整えやすい
派遣での働き方は、人によってワークライフバランスを整えやすい特徴があります。プロジェクトが終わったら、次のプロジェクトに参加するまでの期間を調節できることがあるからです。
また、労働条件についてもあなたの要望を聞いてもらえることも少なくありません。勤務時間を調節できれば、メリハリをつけて働くこともできるでしょう。
派遣先企業からオファーを受けられる可能性が高い
派遣として働くと、SESよりも派遣先企業からオファーを受けられる可能性が高いのもメリットといえるでしょう。
SESは派遣元の正社員ですから、派遣先から引き抜かれることはあまりありません。一方、派遣は派遣元の正社員ではないので、オファーを出しやすいといえます。
また、派遣契約終了後に直接雇用して引き抜く行為は労働派遣法第33条で認められており、違法行為にも該当しません。
【参考記事】第8 派遣元事業主の講ずべき措置等|厚生労働省
派遣のデメリット
一方、派遣には次のようなデメリットがあります。
関連記事:派遣社員にはデメリットが多い?メリットや向き不向き、おすすめの派遣会社を紹介
身分が不安定
あくまで派遣社員ですから、身分が不安定であることがデメリットです。SESは派遣元の正社員ですから、仮に派遣されず仕事がない間も給与が支払われます。
対して、派遣は「派遣待ち」の状態が続くと収入が途絶えてしまいます。また、いわゆる派遣切りにある可能性も否定できず、そもそも仕事にアサインできない状態になる可能性もあるでしょう。
キャリアを積み上げられない
派遣ではキャリアを積み上げられないのも、SESと共通したデメリットです。1つの現場でじっくりと働くことはありませんので、キャリアアップは見込めません。
とはいえ、派遣で働くと派遣元からオファーを受けられる可能性があります。キャリアアップを狙うのであれば、まずは派遣として働き、オファーを受けて派遣先で正社員となる道もあることは覚えておきましょう。
SESは偽装請負に注意
SES契約を結ぶ際は、偽装請負に注意しましょう。
先ほど少し触れましたが、SES契約では、クライアント企業が直接エンジニアに指揮命令を出すことは禁じられています。
SES契約は、準委託契約であって、派遣契約ではないからです。本来、派遣契約を結ぶには、届出をおこない許可をもらわなければなりません。
しかし、取得するためのルールが厳しく、取得できない企業が「SES契約」として契約を結び、直接指揮命令を出すケースがあります。
なお、厚生労働省によれば、次の2点いずれにも該当しない場合には偽装請負に該当するとしています。
- 自己の雇用する労働者の労働力をベンダーが自ら直接利用するものである
- 請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理する
SESと派遣はどっちがいい?
ここまで読まれて、結局、SESと派遣はどっちがいいか迷っている方も少なくないでしょう。最後に、SESと派遣のそれぞれにおすすめの人を解説するので、参考にしてください。
関連記事:SESはやめとけと言われる理由とは?ホワイト企業へ勤める方法を解説!
SESがおすすめの人
安定した収入が欲しい方は、SESで働くとよいでしょう。お伝えした通り、SESは派遣元の正社員ですから、仕事の有無にかかわらず毎月安定して給与が支払われるからです。
さらに、福利厚生を受けたい人もSESが向いています。これも、SESが正社員だからです。どのような福利厚生があるかは派遣元によりますが、給与や賞与以外にも報酬・サービスが必要な方は、SESを選ぶとよいでしょう。
派遣がおすすめの人
仕事とプライベートをきっちりと分けたい方や、ワークライフバランスを充実させたい方は、派遣がおすすめです。プロジェクトごとに仕事を請け負うので、ある程度、仕事量を調節できるからです。
また、いろんなプロジェクトに参加したい方も派遣を選ぶとよいでしょう。プロジェクトごとに違う環境に飛び込む必要があるので、常に新鮮な気持ちで仕事をしたい方にもおすすめです。
まとめ
SESは、「準委任契約」であり、派遣や請負とは報酬の対象や指揮命令系統が異なります。
労働力やスキルを提供して報酬を受ける契約のため、成果物を完成させる義務は発生しません。また、指揮命令権は雇用元にあり、クライアント企業からの指示は禁止されています。
なお、SESも派遣もそれぞれにメリット・デメリットがあります。どちらを選ぶかは人によりますから、この記事で紹介した「SESがおすすめの人」「派遣がおすすめの人」を参考に選ぶとよいでしょう。
なお、現在、SESや派遣として働いているけれど、設計や要件定義などの上流工程に関わりたいと考えている方もいるかもしれません。そういった方は、転職がおすすめです。
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