公務員は失業保険をもらえない！代わりにもらえる手当と申請方法を解説

「公務員は失業保険を受給できるの？」

退職を考えている公務員のなかには、上記のような悩みを抱えている方もいるでしょう。

結論、公務員の方は失業保険を受給できません。雇用保険法で公務員は適用対象外と定められているからです。

とはいえ「失業保険の代わりに受給できる手当はないの？」と疑問に思う方もいるはずです。

そこで、本記事では失業保険の代わりに受給できる退職手当の計算方法・申請手順を解説します。記事を読めば、公務員を辞めた後も生活に困らなくて済むでしょう。

退職後の生活が不安な公務員の方は、最後まで読んでみてください。

あわせて読みたい⇒退職後にもらえる給付金まとめ！自己都合退職でももらえる条件とは？給付期間・金額も解説

そもそも失業保険（失業手当）とは？

失業保険とは、失業者の生活維持と再就職支援を目的に支給される給付金です。

正式名称は「雇用保険の失業等給付の基本手当」ですが、一般的には「失業保険」「失業給付」「失業手当」と呼ばれています。

失業保険を受給する条件

失業保険を受給するには、以下の3つの条件を満たさなければいけません。

ただし、退職理由によっては、離職日以前の1年間で雇用保険に6ヶ月以上加入していれば失業保険を受給できます。

反対に、以下のケースに当てはまる方は失業保険を受給できません。

以下の記事では、失業保険の給付日数や計算シミュレーションを紹介しています。失業保険の受給条件に当てはまっている方はチェックしてみてください。

公務員が失業保険を受給できない理由

失業保険について解説しましたが、公務員の方は、以下の理由により失業保険を受給できません。

公務員の方で退職を検討している方は確認しておきましょう。

雇用保険の適用対象外だから

公務員が失業保険を受け取れないのは、雇用保険の適用対象外だからです。

民間の会社員は、給料から雇用保険料が引かれ、失業時には給付を受けられますが、公務員は法律で雇用保険に加入しない仕組みになっています。

その代わり、退職手当などの独自の保障制度があります。国家公務員や地方公務員の多くはこの対象ですが、非常勤や契約職員など一部の立場では、民間と同じように雇用保険に加入している場合もあります。

自分が加入しているかどうかを知りたいときは、給与明細に「雇用保険料」の記載があるかを確認するか、人事課へ問い合わせましょう。

国家公務員・地方公務員ともに独自の退職手当制度があるから

公務員が失業保険を受けられない理由のひとつに、独自の退職手当制度の存在があります。国家公務員は「退職手当法」、地方公務員は「地方公務員法」に基づいて、退職時にまとまったお金を受け取ります。

これは企業でいう退職金にあたるもので、生活を支える役割を果たします。勤続年数が長いほど支給額も増え、20年以上勤務すれば数百万円になることもあります。

公務員はそもそも雇用保険の制度に含まれておらず、失業手当の代わりにこのような手当が用意されているのです。そのため、公務員は一般的な失業保険の対象外とされています。

国家公務員と地方公務員の違い

国家公務員は国の省庁などで働く人、地方公務員は都道府県や市区町村の役所、学校、消防などで働く人を指します。どちらも公務員ですが、所属する組織や勤務ルールが異なります。

この違いから、加入している制度も変わります。

たとえば、常勤の公務員は法律で身分や待遇が守られており、雇用保険に加入していないケースが多いです。雇用保険は一般の会社員向けの制度で、加入していない人は原則として失業保険を受け取れません。

職の安定性が高く、失業のリスクが低いとされているから

公務員が失業保険を受けにくい理由の一つは、職の安定性が高く、失業のリスクが低いと見なされているからです。

国家公務員や地方公務員の多くは、定年まで安定して働ける前提で採用されており、会社の倒産やリストラのような急な解雇はほとんどありません。

そのため、一般企業の社員のように雇用保険に入っていないケースが多いのです。

ただし、臨時職員や非常勤職員などの一部は雇用保険の対象となる場合もあります。公務員には独自の制度や保障が用意されていることもあり、民間と同じ仕組みでの失業保険は設けられていません。制度の違いを理解しておきましょう。

公務員は失業保険の代わりに退職手当を受給できる

公務員は失業保険を受け取れないとお伝えしましたが、その代わりに退職手当を受給できます。ここでは、退職手当の受給条件や国家公務員と地方公務員での条件の違いを解説します。

退職手当を受給できる条件

公務員は原則として、失業保険の代わりに退職手当を受け取れます。ただし、以下の条件を満たす必要があります。

まず、勤続期間が原則12ヶ月以上ある必要があります。次に、退職手当の支給額が、雇用保険の失業給付に比べて明らかに少ない場合が対象です。

そして、退職の翌日から1年以内に職を失い、さらに7日間の待期期間を経ても仕事に就けない状態であることが求められます。これらの条件を満たしていれば、失業状態に対して一定の支援を受けられるしくみになっています。

国家公務員と地方公務員での条件の違い

国家公務員は、原則として12ヶ月以上勤務していれば支給対象になります。ただし、懲戒免職などの理由があると受け取れないこともあります。

地方公務員も基本的には似ていますが、細かい条件は自治体ごとに条例で決められており違いがあります。定年退職のほか、自己都合や勧奨退職でも支給されることがありますが、退職理由によって金額が変わることもあります。

正確な条件を知るには、所属先の人事担当者や退職手当規程を確認しましょう。

公務員に支給される退職手当の計算方法

公務員に支給される退職手当は「退職時の月給×支給率＋調整額」で計算されます。

支給率は退職理由や勤務年数によって変動します。調整額は在職期間中の貢献度に応じた加算額です。

上記の計算式をもとに、公務員が受給できる退職手当をシミュレーションすると、以下のようになります。

国家公務員の場合は「国家公務員退職手当支給率早見表」で支給率がわかります。

地方公務員の場合は、地域によって支給率や調整額が異なるので、各自治体の条例や規則をチェックしましょう。

公務員が退職手当を受給する際の申請方法

公務員が退職手当を受給する際は、以下の手順で進めます。

それぞれを詳しく解説します。

退職届の提出と退職日確定

公務員が退職手当を受け取るには、まず退職日を確定させる必要があります。自己都合で退職する場合は、「退職届」を所属長へ提出し、希望する退職日を明記しましょう。退職届の提出期限は職種や自治体ごとに異なります。

定年退職の場合は提出が不要なこともありますが、届出が必要なケースもあるため注意が必要です。不安なときは人事担当に事前に相談しておくと安心です。早めの確認と準備が、スムーズな退職手続きにつながります。

必要書類の受け取りと記入

退職が近づくと、所属している部署から退職手当の申請に必要な書類が配られます。多くの場合、退職届が正式に受理されたあとに配布される流れになります。

配布される書類には、氏名・現住所・口座情報などを記入する欄があり、誤りがあると退職手当の振込が遅れることがあります。

特に口座番号やフリガナなどの記載ミスはよくあるため、記入後は必ず見直してから提出しましょう。不明点がある場合は、担当者に早めに確認することが大切です。

書類の提出

必要書類の記入が終わったら、期限内に忘れず提出しましょう。提出先は、所属していた部署の人事担当者や任命権者です。

自治体によっては、本人確認書類や通帳のコピー、退職辞令の写しなどが必要になる場合があります。事前に求められる書類を確認しておくと安心です。

記入内容に誤りがあると、確認や差し戻しにより手当の支給が遅れることがあります。不安な箇所があれば、事前に担当者に相談しましょう。提出書類の控えを自分でも保管しておくと、後日の確認にも役立ちます。

審査・計算期間

書類を提出したあとは、人事部門や共済組合などで審査や支給額の計算が行われます。勤務年数や退職時の役職、給与などをもとに金額が計算され、不備があると再提出を求められることもあります。

特に、退職後は手続きが滞ると支給が遅れるため、事前に案内を確認し、提出前に書類の内容をしっかり見直しておきましょう。

退職手当の支給

審査が終われば、通常は数週間から1ヶ月ほどで退職手当が指定口座に振り込まれます。ただし、実際の支給日は勤務先や自治体によって異なる場合があります。

手当の支給予定日が通知されていないときや、支給予定日を過ぎても振込が確認できないときは、できるだけ早めに担当の窓口へ連絡しましょう。支給状況を確認することで、手続きの漏れや書類の不備があっても早期に対応できます。

公務員の退職手当と失業保険に差額がある場合の対処法

勤続年数が短い公務員の場合、退職手当が失業保険の相当額よりも少ない可能性があります。

退職手当が失業保険の相当額より少ない場合、その差額分を受け取ることが可能です。

この章では、公務員の退職手当と失業保険に差額がある場合の対処法を3ステップに分けて解説します。

1. まずは差額を受給できるか確かめる

まずは、退職手当と失業保険の差額を受給できるか確かめましょう。

以下の条件を満たしていれば、差額を請求できます。

差額の受給手続きができる期間は、原則として退職日の翌日から1年以内です。

退職手当と失業保険の差額を受給したい方は、早めに手続きしましょう。

2. 勤務先から退職票をもらう

退職手当と失業保険の差額を受給できる方は、勤務先から退職票を受け取りましょう。

国家公務員の場合は「国家公務員退職票」で、地方公務員の場合は国家公務員退職票に準ずる書類が交付されます。

3. ハローワークで求職の申し込みをおこなう

退職票を受け取ったら、住所を管轄するハローワークで求職の申し込みをおこないましょう。

求職の申し込みは、ハローワークにある「求職申込書」に必要事項を記載して窓口に提出すれば完了です。

求職の申し込みを終えた後は失業の認定を受け、受給資格が認められれば差額を受け取れます。

公務員を退職して転職活動する際のポイント

ここでは、公務員を退職して民間企業に転職したい方に向けて、転職活動のポイントをまとめています。

公務員からの転職で失敗したくない方は、チェックしてみましょう。

また、以下の記事では民間企業への転職を成功させるコツに加え、おすすめの職種も紹介しています。

転職を考えている公務員の方は、あわせて参考にしてみてください。

関連記事：公務員から民間企業への転職は可能！成功させるポイントや注意点を解説

公務員で身につけたスキルを洗い出す

まずは、公務員で身につけたスキルを洗い出しましょう。

最初に身につけたスキルを洗い出しておくと、あなたのアピールポイントが明確になるからです。

公務員のなかには「ジョブローテーションが多くて、スキルが身についているか不安...」という方もいるかもしれませんが、公務員の仕事で身につくスキルはたくさんあるはずです。

選考時にアピールできるポイントを見つけられるよう、事前にスキルを洗い出しておきましょう。

退職理由はポジティブに伝える

応募書類や面接で退職理由を説明する際は、できるだけポジティブに伝えましょう。

ネガティブな退職理由を伝えると、採用担当者にマイナスイメージを与えてしまうからです。

たとえば「残業が多かった」「異動が多かった」のように不満を伝えると「次も同じ理由で辞めるのでは...？」と思われる可能性があります。

そのため、できるだけポジティブな退職理由に変換しましょう。

関連記事：【具体例付き】理想の退職理由と例文｜円満に退職するためのポイント

転職エージェントを活用する

公務員からの転職活動で不安や悩みがある方は、転職エージェントを活用しましょう。

転職エージェントでは、無料でプロのキャリアアドバイザーから転職活動の総合的なサポートを受けられます。

具体的に受けられるサポートの例を以下にまとめました。

転職エージェントを利用すれば、キャリアカウンセリングの結果をもとに、あなたに合った求人を紹介してもらえます。

また、応募書類の添削や面接対策も受けられるので、安心して選考に臨めるでしょう。

「公務員から転職したいけど、どの仕事が向いているかわからない...」「履歴書や面接で公務員の経験をどのようにアピールすればいいのかな？」と悩んでいる方は、利用を検討してみると良いでしょう。

以下の記事では、公務員からの転職におすすめの転職エージェントをまとめています。

転職エージェントを選ぶ際の参考にしてみてください。

関連記事：公務員からの転職におすすめの転職エージェント7選｜選び方と使いこなすコツも解説

公務員の失業保険に関するよくある質問

最後に、公務員の失業保険に関するよくある質問に回答します。

疑問点がある方はチェックしてみてください。

退職手当の受給期間は延長できる？

結論、退職手当の受給期間は延長できます。原則、退職手当の受給期間は退職日の翌日から1年以内です。

しかし、妊娠・出産・育児・病気などで30日以上働けない状態が続く場合は、手続きをすれば受給期間を延長できます。延長を申請する際は、受給期間延長等申請書を勤務先の担当部署に提出しましょう。

自治体によっては、医師の証明書や母子手帳など、働けないことを証明する書類の提出を求められる場合もあります。

期間雇用の公務員は失業保険を受給できる？

期間雇用の公務員は、失業保険を受給できます。期間雇用の公務員は人員整理がしやすいため、雇用保険の対象です。

ただし、期間雇用でも18日（1日8時間）以上勤務した月が連続で6ヶ月を超えた場合は、雇用保険の加入対象から外れます。この場合は、失業保険を受給できなくなるのでおさえておきましょう。

期間雇用の公務員で失業保険の受給対象者のなかには「申請方法がわからない...」という方もいるかもしれません。

もし、失業保険の申請方法がわからない場合は、失業保険サポートを活用してみてください。経験豊富なコンシェルジュが申請をサポートしてくれるので、安心して手続きを進められるでしょう。

まとめ

公務員の方は失業保険をもらえない代わりに、一定の条件を満たせば退職手当を受給できます。

退職手当を受給したい方は、まず勤務先で退職票を受け取りましょう。

国家公務員の場合は「国家公務員退職票」で、地方公務員の場合は国家公務員退職票に準ずる書類が交付されます。

また、勤務年数が3年以内と短い場合、退職手当と失業保険相当額の差額も受け取れる可能性があるので、受給したい方は忘れずに手続きしてください。

退職手当の受給期間は、退職日の翌日から1年以内です。妊娠・病気などの特別な理由がある場合を除いて、受給期間の延長はできないので、早めに申請しましょう。

ちなみに、期間雇用の公務員は例外的に失業保険を受給できる場合があります。対象の方は受給期間内に忘れず申請してください。

もし、申請方法がわからない方は失業保険サポートを活用しましょう。無料で個別相談を受けられるので、まずは申請に関する悩みや受けられるサポートを確認してみることをおすすめします。