訪問看護の転職に失敗したと感じる理由は、業務内容や看護を提供する場の環境、教育体制の不備などがあげられます。

病院とのギャップにとまどい、失敗したと感じるケースが多いのです。

転職を成功させるためには、訪問看護の特徴を理解し、情報収集をおこなうのが重要です。

本記事では、訪問看護の転職で失敗したと感じる理由や、失敗したと感じたときの対処法、失敗しないためのポイントを解説します。

訪問看護は今後ますます需要が見込まれる仕事です。転職を成功させたい方は、ぜひ記事を参考にしてください。

訪問看護の転職に失敗したと感じる理由7つ

希望に満ちて訪問看護へ転職したものの、「失敗した」と感じる人は少なくありません。

失敗したと感じる理由は以下の7つがあります。

一つずつ詳しくみていきましょう。

1.業務内容が合わない

訪問看護は、業務内容や働く環境など病棟勤務とは大きく異なります。

病棟のイメージのまま転職すると、合わないと感じ「失敗した」との思いが強くなります。

たとえば、医療処置のスキルアップを考えて転職した人です。

病棟勤務より医療処置が少ないため、物足りなさを感じる可能性があります。

また、営業活動が合わないと感じる人もいます。

訪問看護ではスタッフが営業活動をする事業所もあり、慣れない業務にストレスを感じる場合があるのです。

2.環境がつらい

看護を提供する場の環境が合わず「つらい」と感じるケースがあります。

訪問看護は利用者さんの居宅に出向いて看護をおこなうため、病棟のように設備や物品が揃っているわけではありません。

あるものを工夫して使い、看護をおこなう必要があるのです。

また、衛生状況もさまざまです。潔癖な人はつらいと感じる場面があるかもしれません。

移動がつらいと感じる人もいます。

利用者さんの訪問は天候に関わらずおこなわなければならないためです。

自転車や徒歩移動の場合、大雨や夏の暑さで体力が消耗する可能性があります。

3.求人情報と実際の条件が異なっている

求人情報と実際の勤務条件が異なる場合、失敗したと感じる人は多いです。

とくに、残業については注意しましょう。残業なしと書かれていても、実際は残業が多かったり、基本給にみなし残業代が含まれていたりする場合があるためです。

事前にしっかり確認しておきましょう。

4.オンコール体制がストレス

オンコール体制がストレスとなり、失敗したと感じる人もいます。

オンコールとは、電話相談や緊急時の呼び出しに備え、待機することです。

平成27年度の「訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査研究事業報告書」では、回答のあった事業所で以下の結果でした。

ほとんどの事業所で、夜間・休日の緊急対応をおこなっているのです。

また、利用者数130～150人に対し、1日当たり「1人」で担当する事業所が52.3％でした。

1人でオンコール対応をする場合は、緊張で眠れない場合もあるかもしれません。

【参考記事】訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査研究事業 報告書　p20～23／一般社団法人 全国訪問看護事業協会

5.教育体制が整っていない

訪問看護ステーションのなかには、教育体制やシステムが整っていないところもあります。

新入職者の教育はOJTが中心であり、教育プログラムが構築されていないところもあるためです。

訪問看護について幅広く学びたいと考えている人は、失敗したと感じる場合があります。

看護師の人数が少ないため、忙しいと教育に時間をかけられないケースもあるのです。

「看護職員規模別の訪問看護ステーション数の推移」の令和2年データによると、職員が5人未満のところが6割近くを占めていました。

新規で設立した事業所は、営業や利用者さん獲得のため、教育まで手が回らないこともあります。

【参考記事】訪問看護 p33「看護職員規模別の訪問看護ステーション数の推移」／厚生労働省　社会保障審議会介護給付費分科会（第220回）資料3

6.人間関係が合わない

人間関係が悪く、合わないと感じるケースもあります。

訪問看護ステーションは少人数で運営されており、決まった人とだけ顔を合わせるためです。

病棟勤務の場合交替制であるため、合わない人がいてもやりすごせます。

しかし、訪問看護は夜勤がなく同じ顔ぶれになるため、人間関係が悪かったり、職員間のトラブルに巻き込まれたりすると、つらいと感じてしまうのです。

また、訪問看護は上司の存在が大きいです。看護観に共感できなかったり、言動が威圧的だったりすると、失敗したと感じるかもしれません。

7.一人で訪問するためプレッシャーがある

訪問看護は一人で訪問するのが基本です。

アセスメントや対応を自分だけでおこなうため、プレッシャーを感じる場面もあります。

病棟勤務では、判断に迷うことがあっても他の看護師に相談できたり、協力が得られたりします。

院内に医師もいるため、異常時はすみやかに診察してもらえる環境です。

しかし、訪問看護では自分で考えて対応しなければなりません。状態が悪かったり、急変したりするような場面では緊張感を伴うでしょう。

サポート体制については、事前に確認するのがおすすめです。

訪問看護の転職で失敗したと感じる場合の対処法3つ

訪問看護の転職で失敗したと感じる場合の対処法は以下のとおりです。

すぐに辞めるのではなく、できることをおこなってから転職を考えましょう。

1.今までよりよくなったことを見つける

今までよりよくなったことを探してみてください。

訪問看護に転職した人の多くは、患者さん一人ひとりとじっくり向き合いたい、夜勤のないところで働きたいと考え転職しています。

「一人の利用者さんと関わる時間が増えた」「利用者さんの生活に合わせた看護ができるようになった」など、以前よりよくなったことがあるはずです。

2.上司に相談する

職場環境や働き方で困りごとがある場合は、上司に相談してみましょう。

相談は、きちんとした理由や改善案を持っておこなうのがおすすめです。

ただし、上司が信頼できるかどうかといった問題もあります。

面接時に、人柄やコミュニケーションのとりやすさなどをチェックしておくといいでしょう。

3.改善が見込めない場合は転職を考える

上司に相談しても状況の改善が見込めなかったり、悩みが増えたりしている場合は、他の訪問看護ステーションに転職するのも一つの方法です。

いずれにしても、自分の目指す将来像や目標を明確にしておくのが大事です。

訪問看護の転職で失敗しないためのポイント5つ

訪問看護への転職で失敗しないためのポイントは以下のとおりです。

一つずつ解説しますので、転職して後悔しないよう参考にしてください。

1.訪問看護について理解しておく

訪問看護に転職する場合は、制度や特徴をあらかじめ調べておきましょう。

病棟看護と異なる点も多く、ある程度イメージを持たないと、転職後に失敗したと感じてしまうためです。

病棟看護と訪問看護の大きな違いは以下の点です。

病棟看護は患者さんの治療が最優先です。

しかし、訪問看護は利用者さんの生活も考慮して看護を提供する必要があります。

看護を提供する場は病院ではなく、利用者さんの居宅です。

そのため使用する機器や物品は限られ、不便に感じるときもあるでしょう。

また、他事業所の専門職との関わりが多いことも病棟勤務と異なる点です。

利用者さんのかかりつけ医やケアマネジャー、介護事業所のスタッフとやりとりが多く、連携が重要になります。

訪問看護に転職する場合は、これらの特徴を理解しておくといいでしょう。

2.情報収集を十分におこなう

応募前には、希望の訪問看護ステーションの情報を十分に確認しましょう。

確認するとよい内容は以下の6つです。

看護師が10人程度いるステーションは、比較的経営が安定し、一人にかかる負担は少なめです。

5人前後の小規模なステーションは一人の負担は大きめですが、自分たちで職場を育てている実感が持てるでしょう。

オンコール体制については、月の当番回数や電話がくる頻度、緊急訪問の頻度を確認しておきましょう。

当番手当や緊急訪問手当も忘れずに聞くようにしてください。

また、利用者さんはどのような疾患が多いのか確認するのも大事です。

疾患によっては、訪問回数が多くなるためです。

教育・研修体制についても確認してください。

先輩看護師と一緒に行動する同行訪問の期間や、オンコール当番の開始時期など聞いておきましょう。

連絡ツールや記録媒体についても確認することをおすすめします。

スマートフォンやタブレットの貸与があるかなどです。

訪問看護報告書や訪問看護計画書など毎月作成する書類が多いため、貸与があるかどうかは大切なポイントです。

これらを確認しておけば、訪問看護の転職の失敗を減らせるでしょう。

3.複数の訪問看護ステーションを比較する

訪問看護ステーションは複数を比較して決めるのがおすすめです。

訪問看護ステーションはそれぞれに特徴があります。

たとえば、医療的ケア児を積極的に受け入れているところ、ターミナルケアに力を入れているところなどです。近年は施設内訪問看護も増えています。

施設内訪問看護とは、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅で暮らす利用者さんを訪問する仕事です。

施設内に設置されたステーションから、施設内の利用者の居宅に訪問し、看護を提供します。

移動の負担がなく、他の看護師に相談しやすいなどがメリットです。

自分の目指す看護をおこなうためには、複数のステーションを比較して決めるようにしましょう。

4.勤務条件や待遇を確認する

勤務条件や待遇をしっかり確認しましょう。

訪問看護の転職を失敗するパターンは、勤務条件や待遇などの情報不足も考えられるためです。

自分の優先したい条件を考え、情報を確認するのが大事です。

訪問看護ステーションのホームページや、看護師転職サイトで情報収集するといいでしょう。

看護師転職サイトに登録すると、情報収集のほか、職場を紹介してもらえたり、履歴書や面接対策などさまざまなサポートを受けられます。

条件交渉をおこなってくれるサイトもあるため、好条件での転職が可能です。

5.職場見学をおこなう

訪問看護の転職を失敗しないためには、職場見学もおすすめです。

職場の雰囲気や人間関係を確認できるためです。

スタッフの表情や、挨拶をしてくれるかなどチェックしましょう。

またステーションによっては、実際の訪問に同行できるところもあります。同行できればイメージとのミスマッチを防げるでしょう。

訪問看護の転職におすすめの看護師転職サイト3選

訪問看護の転職におすすめの看護師転職サイトを3つ紹介します。

情報収集目的だけの利用も可能なので、ぜひ利用してみてください。

レバウェル看護

レバウェル看護は、サイトに掲載されている看護師の求人数は15万件以上で、豊富な情報から希望に合う労働条件の求人を探せます。

求人情報だけではなく、職場環境の情報提供や履歴書の添削、模擬面接などのサービスも無料で受けられます。

過去の面接をもとに対策するため、就職の成功率も上がりやすいといえるでしょう。

情報提供はよいところだけでなく、大変なところも伝えてくれるため、転職の失敗確率を減らせます。

アドバイザーとの連絡はLINEのほか、メールやショートメッセージなどでも可能で、自分のペースで転職活動を進められます。

（※）レバウェル看護の企業ページより：2023年8月21日時点

ナース人材バンク

ナース人材バンクは、看護師専門の転職支援サービスです。姉妹サイトには、看護学生向けの「ナース専科就職ナビ」、看護師・看護学生向けの「ナース専科」があり、看護に役立つ情報を提供しています。

2005年にサービスを開始しており、豊富な転職実績があります。

各都道府県ごとにキャリアアドバイザーが在籍しており、求人票には載らない情報を保有しているのが特徴です。

給与や役職、勤務条件など、自分では言い出しづらい条件交渉を代行してくれるため、よりよい条件で転職したい人におすすめです。

マイナビ看護師

マイナビ看護師は、株式会社マイナビが運営する転職エージェントで、充実したサポートを受けられるのが特徴です。履歴書添削や面接対策はもちろん、条件交渉、退職意向の伝え方などのアドバイスをもらえます。

求人の30％が非公開求人であるため、好条件の求人と出会いやすいでしょう。

転職後のフォロー体制もあり、悩みや困りごとの相談ができるのもポイントです。

全国の支社やWebでの相談会では、キャリアアドバイザーが疑問に答えてくれます。気になることや不安なことを軽減できるでしょう。

訪問看護に向いている人の特徴

訪問看護は、利用者さんの生活の場で、本人・家族に寄り添った看護を提供できるのが魅力です。

以下の人が向いているといえます。

訪問看護は病院とは異なり、利用者さんの生活の場で看護を提供するため、臨機応変な対応が求められます。

訪問看護は、他事業所のスタッフや主治医とコミュニケーションをとる機会は多いです。

たとえば、利用者さんのサービス担当者会議や退院時カンファレンスなどがあります。

気になることがある際はケアマネジャーに報告する必要もあるため、コミュニケーションが苦にならない人は向いているといえるでしょう。

訪問看護ステーションの教育体制はさまざまで、十分な研修を受けられない場合も考えられます。

教育体制を事前に確認するのが大事ですが、自己学習したり研修に行ったりして「自ら学ぶ姿勢」も欠かせません。

訪問看護のよくある質問

訪問看護は地域包括ケアシステムを担う役割として注目されている

団塊世代（1947年～1949年生）が全員75歳以上となる2025年に向け、国は地域包括ケアシステム作りを加速させています。

訪問看護は利用者さんへの看護のほかに、家族・医師・専門職の調整役として重要な役割を持ちます。

一人ひとりとじっくり向き合えるのが大きなメリットであり、地域貢献の実感が持てる仕事です。

長く働き続けられる訪問看護ステーションと出会い、転職を成功させましょう。

まとめ

訪問看護師は地域包括ケアシステムを担う人材として期待され、求人数は増加しています。

転職で失敗しないためには、訪問看護と病棟看護の違いを知り、情報収集をおこなうのが大切です。

複数のステーションを比較したり、職場見学をしたりするのもおすすめです。

情報収集は看護師転職サイトを利用しておこなうといいでしょう。

キャリアアドバイザーは、一般には公開されていない情報を持っており、履歴書や面接対策をしてくれるところもあります。

自分に合った訪問看護ステーションを選び、失敗しない転職を目指しましょう。