経理は膨大な数字やデータを扱う高いスキルが求められることから、転職が難しいと考えられがちです。経理への転職では、即戦力となる経験やスキルが求められたり、求人倍率が高いことも内定獲得を難しくする原因です。
しかし、志望動機やアピールポイントなどを事前にまとめて職務経歴書や面接の対策を行い、スキルや転職意欲の高さを伝えれば、未経験からでも転職を実現できる可能性は十分にあります。
また、転職タイミングや志望する企業を工夫したり、資格取得を目指したりすることによって、さらに内定獲得の確率を高めることができるでしょう。
この記事では、経理への転職が難しいと考えている人向けに、転職を成功させるための対策やポイントについて紹介します。
まだまだ経理転職をあきらめたくないという人は、ぜひ参考にしてください。
目次
経理の転職が難しいと言われる理由
経理は、専門性の高さや雇用形態の変化から、転職が難しいと言われています。
経理の転職が難しいと言われる理由に、以下が挙げられます。
即戦力となる専門的な経験・スキルが重視される
経理職に限ったことではありませんが、中途採用の求人の多くは、入社したらすぐに業務を担当できる即戦力人材を求めています。
経理業務に携わったことのある人の方が教育リソースが最低限で済む可能性が高いため、経験者を優先的に採用しがちです。特に、中小規模の企業の場合は中途採用に割く時間やコストが限られているため、経験者に限って採用を行っているケースが多いでしょう。
未経験かつ専門的なスキルがない場合、採用優先度は自然と下がってしまいます。
未経験から経理への転職をチャレンジする場合は、会計関連の学部を卒業して専門知識がある、簿記など経理に役立つ資格を取得しているなど、経理に役立つ何らかの専門性を持つことが大切です。
専門的な経験やスキルがなければ、転職できたとしても、任せられる仕事は誰でもできるようなデータ・書類の整理程度になってしまいます。転職しても、働き甲斐を見いだせなければ、転職を繰り返してしまう可能性もあります。
求人倍率が高く狭き門になりがち
事務職の求人数は求職者数に対して少ない傾向にあり、競争率が高くなりがちです。
厚生労働省が発表している一般職業紹介状況に基づくと、令和4年12月時点で全職業の有効求人倍率は1.31倍であるのに対して、経理が属する事務的職業全体は0.49倍となっています。
さらに細かい分類でみると、経理は一般事務と会計事務に属する求人が多いと考えられますが、前者が0.39倍、後者が0.71倍といずれも全職業の平均より低水準です。
求人倍率は求職者1人に対する求人件数を示すものであるため、1倍を下回っているということは「求職者1人に対して求人が1件に満たない状況」ということを意味します。
このように、経理職を含む事務系の職種は転職案件が転職希望者に対して少ないため、転職の競争率が高くなりがちであるという特徴があるのです。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001042435.pdf
派遣や契約社員が経理を担当する企業も多い
大手企業の場合は特に、人件費の削減や繁忙期に柔軟に労働力を調節できるように、基本的な経理業務は派遣や契約社員が対応しているケースも少なくありません。
そのため、大手企業の正社員として経理職に就く場合は、派遣・契約社員の教育やマネジメント能力などが求められる場合が多く、さらに転職のハードルは高くなります。
経理職未経験で、「経理」「正社員」「大手企業」のニーズを全て満たしたうえでの転職難易度は高いため、優先順位をつけて「どれかの条件を妥協する」「長期戦を覚悟して資格取得を目指す」など、転職活動に工夫が必要です。
経理の転職が成功している人の特徴
経理の転職を成功させるためには、応募書類の工夫や徹底した面接対策が欠かせません。
また、転職エージェントを活用してそれぞれにマッチした求人案件を紹介してもらうと、転職の成功率が上がる場合があります。
応募書類、特に職務経歴書を工夫している
中途採用のプロセスでは、書類選考である程度候補者を絞ったのち、面接を行うのが一般的です。そのため、書類で魅力がアピールできなければ面接にすら進めません。
中途採用の書類選考において重要なのは職務経歴書です。
経理で役立つスキルや過去の経験について、もれなくおさえることを意識しながらまとめましょう。マネジメント経験や社内の部署間の調整をした経験も記載すると、即戦力人材として評価されます。
自分をアピールすることが苦手だったり、文章の組み立てが苦手な人は、転職エージェントを活用して書類を添削してもらうなど工夫をしましょう。特に、アドバイザーが求職者も企業にも通じている体制のエージェントでは、企業ごとに重視するポイントを教えてもらえることがあります。
経理未経験の場合は、データ処理や数値計算、文書作成関連の業務経験の豊富さをアピールしましょう。
関連記事:経理の職務経歴書、書くべき項目と作成のポイントを解説
面接対策を徹底している
一般的に、面接官は職務経歴書を参照しながら面接を進めます。職務経歴書の内容をしっかりと覚えたうえで、内容を肉付けするようなエピソード、経験から得た気づきなどを話せるようにしておきましょう。
未経験の場合、未経験から始める際の課題を克服する方法についても明確に説明できるようにしておいてください。過去に新しい業務を工夫して乗り切った経験があれば、その時のエピソードに触れながら話すのも良いでしょう。
面接対策は、転職エージェントの活用も視野に入れ、模擬面接で事前練習を徹底してください。
転職エージェントを利用している
未経験でも通過しやすい転職先にアプローチするためには、転職エージェントをうまく活用するのがおすすめです。
ネットで検索しても見ることができない非公開求人を多数抱えているため、より魅力的でマッチした求人を紹介してもらえる可能性があります。
また、書類作成や面接対策などについても、転職紹介のプロであるエージェントに相談してアドバイスをもらうのがおすすめです。未経験という不利なポイントをうまくカバーしながら、選考を優位に進められるでしょう。
転職活動の時期を工夫している
求人が増える時期を狙った方が内定獲得の可能性を高められます。経理の転職で求人が増えやすい時期は大きく分けて次の3つです。
- 1〜2月:年度末を迎えた後の4〜5月の決算期へ対応するため
- 6〜7月:新卒採用が一巡し、かつ株主総会を終えて採用に注力する余裕がでるため
- 10〜11月:年始の1月入社狙いの転職希望者を獲得するため
未経験からの転職に適しているのは、10〜11月です。この時期は次の繁忙期となる4月〜5月まで時間があるため、次の繁忙期までにキャッチアップすれば良いという考え方から、相対的に未経験の採用ハードルが下がる可能性があります。
関連記事:経理の転職でベストなタイミングは?転職しやすい時期と成功のポイントを解説
採用されやすい求人を狙う
未経験の場合、受け入れてもらいやすい求人にアプローチするのがおすすめです。例えば、次のような求人では、未経験歓迎、もしくは未経験でも可としている案件があります。
- 若手なら第二新卒枠
- 中小企業やスタートアップ
- 派遣や契約社員
- 会計・税理士事務所の補助
その他、転職ポータルサイトで「未経験可」となっている案件に着目するのもよいでしょう。また、転職エージェントに相談すれば、プロの目線から未経験でもチャレンジしやすい求人案件を紹介してもらえるでしょう。
経理に役立つ資格を取得する
経理関連の資格を取得して、知識とスキルで実務経験の無さを補うのもおすすめです。
経理に転職する意欲が強く、時間をかけてでも転職を実現したいという人は、長期戦を覚悟して資格取得から始めるのも選択肢の一つです。
関連記事:経理の転職で役に立つ資格13種|転職で本当におすすめの資格とそうでない資格とは
未経験でも経理の転職が成功するアピールポイント
未経験から経理への転職を成功させるために、アピールするポイントを工夫しましょう。
経験者と比べれば足りない部分があることは認めながらも、キャッチアップする意欲の高さや、未経験から経理を目指す理由をうまく説明することが大切です。
以下でそれぞれ解説します。
数字やデータを扱うスキルや経験
営業や人事、商品企画などあらゆる部署において、エクセル、ワードなどを使ってデータ分析や事務書類の作成を行う業務は多かれ少なかれ発生することでしょう。
過去に数字を集計したり、精緻なデータ分析をしたりした経験があれば、それらは収支管理や決算資料の作成をする経理業務において役立つでしょう。
関連記事:【年代別】経理の転職に必要なスキルを解説!スキル不足の対処法は?
コミュニケーション能力
経理職の仕事では、経理や予算管理、収支の承認などのプロセスにおいて、社内の他部署と日常的にコミュニケーションを取る必要があります。業務によっては、会計士や税理士など外部の関係者とも連携します。
社内外と連携して進める業務をスムーズに進めるためには、高いコミュニケーション能力が欠かせません。
過去の業務の中で、社内調整や顧客と交渉した経験など、自分のコミュニケーション能力を発揮した業務内容や実績は、経理に転職するうえで有効なアピール材料となるでしょう。
キャッチアップする意欲の高さ
未経験である以上、スキルや経験には及ばない部分があることは謙虚に認めつつ、足りない部分をどのようにキャッチアップしていくかきちんと説明しましょう。
例えば、簿記や会計関連の資格取得を目指している、もしくは実際に保有していれば有効なアピール材料になります。
また、新しい業務に適応するために、過去におこなった工夫などを紹介し、キャッチアップ方法を具体的に示すのもおすすめです。
志望動機や長期的なキャリアビジョン
新しい仕事に早期に順応するためには、自身の意欲が重要です。
例えば、現職が営業職の方が意欲をアピールする際には「過去の利益率を上げた経験から、より全社的な収支改善に携わりたくなった」といったように、実体験に基づく動機を伝えましょう。
また、「まずは経理で企業全体の資金の流れを理解し、ゆくゆくは全社的なマネジメントに関わっていきたい」といったように、長期的なキャリアビジョンを明確にし、それを実現するうえで必要な転職であることを面接官にアピールすると、より納得してもらいやすいでしょう。
関連記事:経理職が知るべき7つのキャリアプラン!プランの立て方、注意点を解説
経理未経験でも転職しやすい求人とは?
大手企業は要求レベルが高いので、未経験からの転職は容易ではありません。一方で、どのようなタイプの求人であれば未経験からでも転職しやすいのかを以下でご紹介します。
若手なら第二新卒枠
新卒3年程度までなら、第二新卒枠でチャレンジするのがおすすめです。
第二新卒の求人は経験がない、もしくは経験が浅いポテンシャル採用を前提とした採用方式なので、通常の中途採用と比べて未経験者でも積極的に採用する可能性があります。
関連記事:第二新卒歓迎の経理職に転職しキャリアアップを成功させる5つの秘訣
中小企業やスタートアップ
中小企業やスタートアップは人材不足に課題を抱えている企業が多く、スピード感を持って採用する意欲が高い傾向にあります。
組織が小さい分、みんなで成長しながら事業を拡大していこうとする風土の企業も多いため、未経験でもポテンシャルや意欲の高さを評価してもらえる可能性が高いといえます。
派遣や契約社員で応募
派遣・契約社員としての採用を目指すのも有効な選択肢です。
派遣や契約社員は人材の採否をコントロールしやすく、人件費も低く抑えられるため、未経験でも採用される可能性が上がります。また、派遣・契約社員を多く活用する大手企業にアプローチしやすくなるのもメリットです。
派遣や契約社員で経験を積んだのちに、ゆくゆくは正社員への転職を目指すのも賢いやり方といえます。
会計・税理士事務所の補助
会計事務所や税理士事務所の補助は、すでに専門家が在籍している環境であるため、未経験でも比較的アプローチしやすい求人です。
事務所の先生方は企業の経理や決算の監視、アドバイスをしているため、先生方の補助を担うことで経理業務の専門性を培うことができます。
将来的には企業の経理職として働くことを念頭に置きつつ、まずは事務所の補助として経験を高めるのも有効な選択肢の一つです。
経理転職で役立つスキルや資格とは?
未経験からのスキル・知識不足を補うために、資格取得はとても有効な手段です。以下の資格は、経理や事務作業で役立つのでおすすめです。
- 日商簿記(3~2級)
- 経理・財務スキル検定(FASS検定)
- 経理事務パスポート検定(PASS)
- ビジネス会計検定
- MOS
どれも、経理の仕事をおこなううえで欠かせない知識になるので、長期スパンで転職を考えている人は、まず自分に合う資格から勉強してみましょう。
難しい経理転職も対策を万全にすれば怖くない
経理の転職求人は即戦力採用が多いため、未経験から転職する時にはスキルや実務経験の不足がネックとなりがちです。
しかし、転職時期や志望先を工夫したうえで、職務経歴書や面接の対策を万全にしておくことで、選考通過率を高められます。
長期戦で転職活動に臨む意欲がある人は、簿記や経理・財務スキル検定(FASS検定)などの経理の転職に役立つ資格を取得するのも有効です。
今回の記事を参考に、ぜひ未経験からの経理への転職にチャレンジしてください。