会社が傷病手当の申請を嫌がる理由とは?対処法や労災との違いを紹介

           
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病気やケガで出社できない場合、傷病手当金の申請を検討する方も多いでしょう。

傷病手当金は健康保険に加入している方で、支給条件を満たしている場合に受給が可能です。

しかし、申請を申し出た際に、会社に傷病手当金の手続きを嫌がられるケースがあります。

本記事では、会社が傷病手当金を嫌がる7つの理由や、傷病手当金の基本情報を解説します。

労災との違いや、会社が傷病手当金の手続きを嫌がった場合の対処についても紹介するので、傷病手当金の申請を検討している方は最後までご覧ください。

事前に読みたい⇒雇用保険の傷病手当とは?受給条件や期間・失業保険との関係を解説

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目次

傷病手当金とは

傷病手当金とは、会社員が病気やケガで働けない場合に、健康保険から支給される手当金を指します。

ここでは、傷病手当金の以下の基本情報について解説します。

受給を検討している方は、支給条件を満たしているのか確認し、支給期間や金額、必要な手続きを理解したうえで会社に申し出ましょう。

傷病手当金の支給条件

傷病手当金を受給するには、以下の条件を満たす必要があります。

傷病手当金の支給条件
  • やむを得ず働けない状態であること
  • 業務外の病気やケガであること
  • 連続する3日を含み、4日以上仕事に就けないこと
  • 休み中に給与の支払いがないこと

働けない状態であるかを判断するには、医師が発行する診断書が必要です。傷病手当金の申請にも医師の診断書が必要なので、傷病手当金は自分の意志だけで申請できるものではありません。

業務中や通勤途中にケガをした場合は、傷病手当金ではなく労災保険の対象です。業務外のケガといっても、美容医療や歯列矯正など、疾病でないものは対象外となるので注意しましょう。

連続する3日を含む4日以上仕事に就けないことが条件であり、連続した3日間を「待期期間」と呼びます。待期期間の3日間は欠勤日だけでなく、公休や有給休暇でもカウントされます。

休み中に給与がもらえる場合、傷病手当金の受給はできません。しかし、休み中に給与の支払いがあったとしても、傷病手当金よりも少ない場合は差額分が支給されます。

傷病手当金の支給条件や審査については、以下の記事も参考にしてください。

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傷病手当金の審査は落ちる?不支給になる原因や対策・再請求を解説 傷病手当金は、病気や怪我で働けなくなった場合に支給される制度です。 しかし、審査が厳しく、審査に落ちる場合がある場合もあります。 申請をしたいと考えている方の...

傷病手当金の支給期間

これまでの支給期間は支給を開始した日から最長1年6ヶ月でしたが、令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して1年6ヶ月に変更になりました。

令和2年7月1日以前に支給を開始した方は、旧制度の適用になります。

傷病手当金の支給金額

傷病手当金の1日当たりの支給金額は、以下の計算式で算出できます。

「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準月額を平均した額÷30日×2/3」

支給開始日とは、1番最初に給付金が支給される日です。

たとえば、支給開始日以前の4ヶ月の標準報酬月額が45万円、それ以前の8ヶ月が40万円の場合は以下の計算になります。

「(45×4+40×8)÷12÷30×2/3=9,259円」

有給を利用せずに土日を含めて連続半年間(183日)休んだ場合は、待期期間の3日間は支給対象外となるため、180日間分受給できます。

よって「9,259×180=1,666,620」となり、支払総額は1,666,620円です。

傷病手当金を受け取るために必要な手続き

傷病手当金を受け取るには、以下の流れで手続きをおこないます。

手続き
  1. 勤務先に長期間休むことの報告
  2. 3日間の待期期間を完成させる
  3. 申請書や添付書類など必要書類をそろえる
  4. 書類を提出して申請をする

必要書類は、傷病手当金支給申請書・医師の診断書・事業主の証明書・被保険者の休業証明書を用意します。

医師や事業主に記入してもらう書類もあるため、早めに準備することがポイントです。

申請書は加入している保険組合や、協会けんぽ(全国健康保険協会)から取り寄せます。記入漏れや誤りがあると給付が遅れる原因となるため、各項目を正確に記入してください。

申請者が保険組合の場合、会社の担当部署に提出するケースがほとんどです。

協会けんぽに加入しているなら、会社経由または申請者本人が、加入している支部宛てに郵送をおこないます。

申請後、保険者が必要書類を確認し、不備や問題がなければ支給が始まる流れです。

会社が傷病手当を嫌がる7つの理由

前述したとおり、傷病手当金を申請するには事業主に記入してもらう書類が必要です。

しかし、傷病手当金を申請することを嫌がる会社もあります。

なぜ会社が嫌がるのか、7つの理由について解説します。

労務管理の負担がかかるから

労務管理に負担がかかることが、傷病手当金の手続きを嫌がる理由のひとつです。

傷病手当金を申請するには、手続きに必要な書類の準備や証明がなどの作業が増えます。

担当者の手間や時間がかかるため、特に忙しい時期に申請を頼むと嫌がられる場合があるでしょう。

また、申請者が休職することで、他の従業員が業務を負担する必要があることも、嫌がられる理由の一因として挙げられます。

経済的な負担やリスクが増加するから

社員ひとりであれば大きな問題ではありませんが、傷病手当金の申請増加は会社の経済的な負担が増加する可能性があります。

「傷病手当金の受給=出社不可」が条件であるため、申請者が長期間休職するほど、業務の生産性が落ちるリスクがあります。

特に繁忙期に申請が重なれば、人手不足になり大きな痛手となるでしょう。

また、休職者が多い企業と周囲に知られることで、企業の評判にも影響を与える場合があります。

このように、経済的な負担やリスクが増加することで、傷病手当金の申請を嫌がられることが考えられます。

年金事務所への報酬を虚偽申告していたから

会社は人を雇用した際に、報酬をいくら支払うか年金事務所に届けます。

年金事務所への虚偽申告は、法的に重大な問題であり、発覚すると会社に対して大きな罰則が科せられる可能性があります。

そのため、年金事務所への報酬を虚偽申告している会社は、傷病手当金を申請することで「虚偽申告が明るみになるのでは?」と恐れて手続きを嫌がる場合があります。

しかし、傷病手当金の申請は労働者の権利なので、適切な手続きのうえ申請を進めることが大切です。

社員に嫌がらせをしているから

社員への嫌がらせ目的で、傷病手当金の申請を嫌がる会社もあります。

特に、申請者が退職時に会社との間でトラブルがあった場合、個人的な嫌がらせをするために申請を嫌がります。

解決するには会社とのトラブル解決を図ることが方法のひとつですが、簡単に解決しないケースも多いでしょう。

また、トラブルがなくても、苦手意識の強い社員に対しては申請を面倒に感じる場合があります。

嫌がらせ行為は労働者の権利を侵害するものであり、法的に不適切な行為です。

会社の言いなりにならず、自信の権利を守るために、必要な手続きを進めましょう。

傷病手当の制度を誤って認識しているから

傷病手当金は加入している健康保険から支払われるため、会社が給付金を支払うわけではありません。

原資は労働者が毎月支払っている健康保険料なので、労働者の立派な権利です。

しかし、傷病手当金の手続きを嫌がる会社のなかには「傷病手当金は会社が支払うもの」と、制度を誤って認識しているケースも珍しくありません。

会社的にはコストがかかることは避けたいため、間違った対応をする場合があります。

この場合、会社に対して傷病手当金の制度を説明し、誤解を解くことで解決できるでしょう。

また、今後同じ事態にならないためにも、社内での教育や情報共有が大切です。

書き方がわからないから

中小企業やベンチャー企業では、傷病手当金の申請経験がないゆえに、事業主の申請方法がわからないケースが少なくありません。

書類の書き方がわからない場合、どのくらいの手間や時間が必要か把握できず、手続きをおこなう前から嫌がられてしまう可能性があります。

しかし、傷病手当金支給申請書において事業主の記入が必要な点は以下の3点です。

事業主の記入が必要な点
  • 申請期間のうち出勤した日付をマーク
  • 申請期間のうち出勤していない日付をマーク
  • 事業所の情報

傷病手当金支給申請書は、事業主だけでなく被保険者自身、医師の記入が必要な箇所があります。

各項目の記入方法や必要な書類が複雑であるため、申請に手間がかかると思い込んでいることが珍しくありません。

実際には記入例などもあるので、知識がない場合でもある程度の対応が可能です。

書き方がわからないことで対応を嫌がられるなら、記入例を一緒に提出するとスムーズに手続きを進めてくれるかもしれません。

労災と混同しているから

労災と傷病手当金について混同していることも、申請を嫌がる原因に挙げられます。

労災との違いは次で詳しく解説しますが、混同している場合、以下の理由で手続きを嫌がる場合があります。

手続きを嫌がる理由
  • 労災保険料が上昇するリスクの懸念
  • 不正や何らかの理由により労働基準監督署長による調査を避けたいから
  • 労災の事実が社内外に広まってほしくないから

そのため、労災とは異なることや、傷病手当金制度の理解を改めることで、解決できる可能性があります。

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平均月収月間でもらえる金額
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傷病手当金と労災の違い

病気やケガで働けなくなった場合の補償として、傷病手当金以外に労災があります。

ここからは、傷病手当金と労災の違いについて解説します。

労災とは

労災とは正式名称「労働者災害補償保険」であり、仕事が原因で病気やケガをした際に、労働者に支払われる保険給付金です。

勤務中だけでなく、過労による病気や、通勤途中の事故なども保証の対象になります。

労災保険は正社員のみに向けた制度ではなく、パートやアルバイトを含むすべての労働者が対象です。

雇用人数や日数、雇用形態に拘らず、労働者をひとりでも雇用している事業場は、労災保険の加入が義務付けられています。

保険料は全額事業場の負担であり、大きく分けて以下の種類があります。

給付別名称
怪我や病気で治療中の給付療養補償給付

休業補償給付

傷病補償年金

介護補償給付
後遺症が残ったときの給付障害補償給付(障害補償年金、障害補償一時金)

介護補償給付
死亡したときの給付遺族補償給付(遺族補償年金、遺族補償一時金)

葬祭料
定期健康診断等で一定の異常があったときの給付二次健康診断等給付

労災の手続き方法

労災はすべての労働者が対象ですが、申請しなければ給付されません。

申請は以下の手順でおこないます。

申請の手順
  1. 労働災害の発生を会社に報告
  2. 労災の請求書を労働基準監督署長に提出
  3. 労働基準監督署長による調査の開始
  4. 労災給付の可否の決定
  5. 保険給付が始まる

給付が始まるまでの期間は給付の種類ごとに異なります。

療養補償給付・療養給付であれば、支給までにかかる期間は1ヶ月が目安です。

しかし、精神疾患の労災請求や、過労死、過労自殺の労災請求をする場合、認定基準も複雑で調査に期間を要するため6ヶ月以上かかることがあります。

傷病手当金との基本的な違い

傷病手当金と労災では、業務中によるものか、業務外なのかといった点が大きく異なります。

傷病手当金は業務外の病気やケガに対し、労災は業務中、または仕事が原因の病気やケガが対象です。

そのため、プライベートで起こった事故によるケガは傷病手当金の対象であり、仕事によるストレスや過労からくる病気は労災が対象になります。

また、手続きの面では、労災は労働基準監督署長による調査を必要とする点が異なります。

会社が傷病手当金を嫌がった場合の対処法

会社が傷病手当金の手続きを嫌がったとしても、自分の権利を守るためには必要な手続きを進めることが大切です。

ここからは、会社が傷病手当金を嫌がった場合の対処法を紹介します。

社内の上司や人事担当者に相談する

まずは、社内での交渉から始めましょう。

傷病手当金の申請を嫌がられた際は、社内の上司や人事担当者に対して、自分の考えや要求を丁寧に伝える必要があります。

誤った認識をされないために、自分自身も傷病手当金の基本的な知識を身に付けたうえで相談をしましょう。

会社側としっかりとコミュニケーションを取ることで、申請の正当性を理解してもらえます。

申請書の書き方がわからない場合は、記入例を一緒に提出することで、会社側の手続きへのハードルが下がるでしょう。

また、同僚や先輩で傷病手当金の申請をおこなった方がいるなら、どのように手続きを進めれば良いのかアドバイスをしてもらえるかもしれません。

社内での相談で対応が難しい場合は、これから紹介する相談先を検討してみてください。

社労士に相談

社労士とは社会保険労務士の略称であり、社会保険や労働関連の法律の専門家として人事や労務管理をおこないます。

労働者の社会保険に関する手続きや法的なサポートを専門としているため、傷病手当金の申請への知識も持っています。

会社側が手続き方法がわからない場合でも、社労士に相談することで、申請代行の依頼が可能です。

また、申請者と会社がトラブルを抱えている場合では、社労士が間に入ることでスムーズな解決が期待できます。

社労士と連携している企業も多くあるため、確実に申請を進めていきたい方は社労士へ相談しましょう。

健保組合に相談

傷病手当金は健康保険に加入している方すべてに申請の権利があるため、健保組合(健康保険組合)への相談も、対処法のひとつです。

健保組合に相談することで、会社に対して文書の提出を促すなど、適切な指導をおこなってくれます。

そのため、会社が嫌がって手続きが進まなかった場合でも、健保組合にサポートを求めることで、スムーズに進む可能性があります。

また、健保組合のホームページでは、各給付金の詳細が記載されているのでチェックしてみましょう。

労働基準監督署へ相談

労働基準監督署とは、厚生労働省の出先機関であり、労働法規に基づいて、事業所の監督・労働者の保護に関する業務をおこなっています。

会社が労働基準法違反や最低賃金法違反の行為などをしていると、企業に対して指導勧告や、立ち入り調査をしてくれます。

そのため、傷病手当金の申請手続きが進まない場合、労働基準監督署に相談することで適切な対応を受けることが可能です。

具体的な相談方法や手続きに関しては、労働基準監督署の窓口で直接確認をしてみましょう。

弁護士に相談

傷病手当金の問題だけでなく、会社と個人的なトラブルを抱えている場合は、弁護士への相談を検討してみましょう。

弁護士は、法的なトラブルに関する専門知識を持っているため、労働者の権利を守るための強力なサポートを提供してくれます。

残業代の未払いや業務に関する不満があれば、傷病手当金の手続きと併せて問いただすことで、すべて解決へと導いてくれるでしょう。

弁護士が間に入ることで会社側も対応せざるを得なくなるため、問題の早期解決が期待できます。

経済的な負担が心配な方は、無料で相談できる「法テラス」などのサービスを視野に入れましょう。

社会保険給付金サポートを利用する

社会保険給付金サポートとは、退職後の雇用保険給付金の申請手続きをサポートしてくれるサービスであり、傷病手当金もサービスの一部です。

申請の複雑な手順をサポート専任スタッフが対応してくれるため、不明点があっても気軽に相談できます。

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また、ホームページには利用者の口コミが多数掲載されているので、利用を迷っている方は参考にしてみてください。

傷病手当金に関するよくある質問

最後に、傷病手当金に関するよくある質問をまとめました。

気になる質問がある場合は、解決するための参考にしてください。

傷病手当金はどのように支給される?

傷病手当金は、健康保険組合から指定された銀行口座に振り込まれます。

支給日は加入している健康保険組合や共済組合ごとに異なりますが、毎月10日・20日・月末のいずれかを支給日にしているケースがほとんどです。

以下の点は加入している保険に関係なく共通です。

共通の点
  • 支給方法は口座への振り込み
  • 土日・祝日や年末年始は支給されない
  • 支給日は平日に限る

支給日が土日や祝日の場合は、その支給日から最も近い平日が支給日となります。

実際の支給日は、傷病手当金の支給審査に合格した際に送付される「支給決定通知書」を見て確認しましょう。

傷病手当金の支給が開始されるまでの期間はどれくらい?

傷病手当金の支給が始まる期間は、申請手続きが初回、または2回目によって異なります。

初回の申請の場合は申請してから1~2ヵ月後、2回目では申請してから2週間~1ヶ月後が目安です。

具体的な支給日に関しては健康保険協会や共済組合によって異なり、申請手続きが完了したあとに届く「支給決定通知書」によって確認できます。

書類に不備があった場合は、上記の期間よりも開始までの期間が延長される可能性があるので覚えておきましょう。

少しでも早く給付を受けたいなら、書類の記入ミスや漏れに注意してください。

傷病手当金が支給停止となる条件は?

職場に復帰した場合や、療養が終了した際は、支給が停止となります。

また、傷病手当金を受給できる期間が残っていても、同時に厚生年金保険法による障害厚生年金(国民年金の障害基礎年金も含む)を受けられるようなった場合は傷病手当金の支給が打ち切られます。

しかし、障害厚生年金の支給額が傷病手当金の額よりも少ない場合、差額分の受給が可能です。

会社が傷病手当金の手続きを嫌がるなら外部団体への相談を検討しよう

傷病手当金の手続きを会社が嫌がる理由や、傷病手当金、労災の基本情報を解説しました。

会社が傷病手当金の手続きを嫌がるにはさまざまな理由が考えられますが、傷病手当金の制度について詳しく理解できていないことが大きな一因と考えられます。

そのため、傷病手当金の制度を理解してもらうことで、スムーズに手続きをしてもらえるかもしれません。

会社に制度を理解してもらうには、自分の考えや要求を丁寧に伝えることがポイントです。

さらに、申請書の記入例を一緒に提出することで、手続きの負担を軽減できるでしょう。

それでも手続きをしてくれない場合は、社労士や健保組合、労働基準監督署、弁護士への相談を検討してください。

または、社会保険給付金サポートの利用もおすすめです。

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設立日 2009年11月
代表者(代表取締役社長) 中山博登
主な事業内容 HR事業、インターネットメディア事業(リーガルメディア、派生メディア)、少額短期保険事業
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