雇用保険とは、労働者の生活を保証するための保険です。加入には条件がありますが、会社が雇用保険に入ることは義務であり、未加入は罰則を受ける可能性があります。

しかし、中には雇用保険に加入していない状態で従業員を雇っている場合もあるでしょう。とはいえ、未加入と知った場合も泣き寝入りする必要はなく、気づいた時点で速やかに対処することが大切です。

この記事では、雇用保険の加入を確認する方法や未加入である理由、泣き寝入りせずに済む方法などを解説します。会社の雇用保険加入状況について気になっている方は、ぜひ参考にしてください。

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雇用保険未加入とわかっても泣き寝入りする必要はない！

雇用保険は、労働者にとって生活を守るためにも必要な社会保障制度の一つです。

しかし、会社が雇用保険に加入していない場合もあり、自分の会社が未加入の可能性もあるでしょう。

ただし、会社が雇用保険に未加入だと気づいたとしても、泣き寝入りすぐ必要はありません。その理由として、雇用保険の加入は法律で定められた会社の義務であり、未加入の会社には罰則が科される可能性があるからです。

さらに詳しく解説します。

雇用保険の加入は会社の義務だから

雇用保険の加入は、福利厚生ではなく、法律で定められた会社の義務です。雇用保険法第7条により、労働者を雇用する事業主は、原則として全ての労働者を雇用保険に加入させることが定められています。

この義務は、会社の規模や業種に関係なく適用されます。雇用保険は、一時的な生活保障や再就職のための支援など、労働者の生活を守るものであり、会社側には確実に手続きを行う責任があるのです。

未加入の会社は罰則を受けるから

雇用保険への加入を怠った会社は、法律に基づいて罰則を受ける可能性があります。

労働者の雇用保険加入手続きが行われなかった事業主に対し、6か月以下の懲罰または30万円以下の罰金が科されると定められています。

この罰則の存在は、会社に対して強い抑止力になるため、積極的に雇用保険への加入手続きが行われるのですが、嘘の申告をする会社も存在するのです。

また、罰則以外にも会社は繰り上がって保険料を納付する必要があります。これは、会社にとって大きな経済的負担となる可能性もあるでしょう。

雇用保険の加入を確認する2つの方法

雇用保険への加入状況を確認することは、自身の労働の権利を守る上で大切です。主な確認方法は2つあり、給与明細の確認、ハローワークに問い合わせをおこないます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

給与明細を確認する

雇用保険の加入有無を確認する簡単な方法は、給与明細を確認することです。

通常、雇用保険に加入している場合、給与明細に「雇用保険料」または「雇用保険」という項目が記載されます。

給与明細の免除欄に「雇用保険料」という項目があれば、雇用保険に加入しているため、保険料負担として給与から一定額が免除されていることがわかるでしょう。

ただし、給与明細の形式は会社によって異なる場合があります。「雇用保険料」という項目名ではなく、「雇用保険」や「雇用保険」などの略称が使われていることもあるでしょう。

保険料として健康保険や厚生年金保険と一緒に記載されている場合もあるため、確認してみてください。

ハローワークに確認する

給与明細で確認できない場合や、より確実に知りたい場合は、ハローワークに直接問い合わせる方法があります。ハローワークでは、会社の雇用保険加入状況を正確に確認することが可能です。

ハローワークでの確認方法としては、ハローワークの窓口で「雇用保険の加入状況を確認したい」と伝えます。

運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類、雇用保険番号がわかる書類があれば提示しましょう。

ハローワークでは、これらの情報をもとに、雇用保険加入状況を確認します。また、加入履歴や被保険者期間なども確認できるので、より詳細な情報を得られるでしょう。

雇用保険に加入する条件とは

雇用保険は、労働者全員が必ず加入できるわけではありません。一定の条件を満たす必要があります。

加入状況は、主に以下の2つです。

それぞれ詳しく解説します。

1週間の所定労働時間が20時間以上である

雇用保険に加入する条件の一つとして、1週間の所定労働時間が20時間以上であることです。この条件は、フルタイムの正社員だけでなく、パートタイムやアルバイトの労働者にも適用されます。

労働時間とは、準規則などで定められた時間のことです。

例えば「週1日4時間、5日勤務」の場合、1週間の所定労働時間は20時間となり、加入の条件を満たします。

一方、「1日3時間、週5日勤務」の場合は、1週間の所定労働時間15時間となるため、この条件は満たしません。

ただし、繁忙期など一時的に労働時間が増えて20時間以上になった場合でも、通常の所定労働時間20時間未満であれば、原則として雇用保険の対象にはなりません。

雇用見込みが31日以上である

雇用保険に加入する条件の二つ目は、雇用契約が31日以上であることです。これは、短期的な雇用ではなく継続、ある程度の期間、雇用関係がある労働者に適用されます。

例えば、3か月の期間限定アルバイトの場合、雇用期間が31日を超えているため、加入条件を満たします。一方、2週間だけの短期アルバイトの場合は、この条件を満たしません。

ただし、契約期間が31日未満であっても、更新が予定されている場合や同じ会社で繰り返し雇用されている場合などがあるでしょう。契約期間が31日以上であっても、実際の勤務日数が少ない場合は、雇用保険の対象にならないこともあります。

雇用保険未加入の会社が存在する理由は3つある

雇用保険に加入していない会社が存在する理由は、主に以下の3つです。

それぞれ詳しく解説します。

会社が雇用保険の加入条件を知らないから

雇用保険未加入の理由の一つとして、会社側が雇用保険の加入条件を正しく理解していないケースがあります。

特に、中小企業や人事労務の専門知識を持つスタッフが不足している会社では、未加入になってしまう場合があるでしょう。

中には、パートタイムやアルバイトは雇用保険に加入する必要がないと定めている会社があります。

ただし、実際には「週20時間の勤務、31日以上の雇用契約」を満たしている場合、雇用保険に加入しなければなりません。

また、従業員が5人未満の小規模事業所は追加義務がないといった誤った情報を信じている会社もあります。

このような雇用保険に関した知識不足によって、未加入の状態を維持している可能性があるでしょう。

雇用保険料の負担が大きいから

雇用保険料の経済的負担を抑えるために、意図的に加入を避けている会社も存在します。

雇用保険料は会社側で一定の経済的負担をしているため、経営状況が厳しい中小企業などでは、保険料の負担を重く感じる場合があります。

また、雇用保険が入ると、労働保険料の申告・納付や各種手続きなどの事務的な負担も増加します。そのため、加入義務を承知のうえで未加入を選択する会社もあるのです。

しかし、雇用保険の未加入は労働者の権利を侵害するだけでなく、未加入による罰則や繰延納付などのリスクを考えると、良い判断とはいえないでしょう。

不正が発覚しにくいから

雇用保険の未加入でも不正が発覚しにくいという事実があることも、一部の会社が加入を見送る理由の一つです。

雇用保険の加入状況について、定期的にチェックする公的な仕組みが十分に機能していないため、会社が意図的に導入を避けても、その問題が表面化しないケースがあります。

例えば、労働基準監督署による立ち入り調査は、通常、労働者からの申告や情報提供があった場合に行われます。

しかし、多くの労働者は自身の雇用保険加入状況を正確に認識していないため、不正として発覚する可能性は低いといえます。

雇用保険未加入でも泣き寝入りしない対処法

会社が雇用保険に未加入であっても、泣き寝入りせずに対処する方法は、主に以下の4つです。

一つずつ詳しく解説します。

会社に雇用保険の加入を要求する

まず、会社の人事部門や経営者に対して、雇用保険への加入手続きをするように強く要求することが大切です。

その際、雇用保険は法律で定められた義務であること、自身が加入条件を満たしていることを説明すると良いでしょう。

会社の中には、雇用保険への加入を忘れている場合があり、ほとんどの会社であれば加入の要求に対応してくれます。

万が一、会社が要求に応じない場合は、労働基準監督署やハローワークに相談することも検討しましょう。

徴収された雇用保険料の返還を請求する

給与明細に雇用保険料の控除が記載されているにもかかわらず、実際には加入手続きがされていないケースがあります。

その場合、過去に徴収された雇用保険料の返還を会社に請求することが可能です。

返還請求の際は、給与明細などの証拠を提示すると良いでしょう。

会社が応じない場合は、労働基準監督署に相談します。ただし、この方法は会社との関係悪化につながる可能性があるため、慎重に判断することをおすすめします。

雇用保険料を後納する

雇用保険に未加入だった期間の保険料を後から納付することで、その期間を被保険者期間に算入できる場合があります。

また、後納により、失業給付などの受給資格を得られる可能性があります。

そのためには、ハローワークに相談し、後納の手続きを行いましょう。

ただし、後納できる期間は原則として2年以内であり、会社と協力して手続きを進める必要があるため、期間にを過ぎないように注意が必要です。

失業保険を申請する

雇用保険に未加入だった場合でも、条件を満たせば失業保険を申請できます。

申請の際は、ハローワークに相談し、ご自身の状況を説明してください。離職票などの必要な書類を準備し、会社に対して、雇用保険被保険者資格取得届の提出を依頼します。

ただし、会社の協力が得られない場合、申請が困難になる可能性があります。これらの対処方法を状況に応じて選択し、適切に行動することで、雇用保険未加入の問題に対処できるでしょう。

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雇用保険の未加入が発覚！会社に損害賠償請求はできる？

雇用保険の未加入が発覚した場合、会社に対して損害賠償請求を行うことが可能です。以下、3つのポイントについて詳しく解説します。

会社の義務違反となる

雇用保険への加入は、法律で定められた会社の義務です。法律により、事業主は労働者を雇用した場合、雇用保険に加入させる義務があります。

この義務に違反した場合、懲役6ヶ月以下または罰金30万円以下の罰則が科される可能性があります。また、雇用保険の加入対象者がいないという虚偽の申告も罰則の対象です。

会社がこの義務を怠った場合、明確な法律違反となり、従業員に対する義務違反として扱われます。

債務不履行にもとづく損害賠償請求ができる

会社の義務違反は、法的には債務不履行として扱われます。

民法に基づき、債務不履行による損害賠償請求が可能です。

損害賠償の対象となるのは、雇用保険未加入により従業員が被った具体的な損害がある場合にかぎられます。例えば、失業給付を受けられなかったことによる経済的損失や、育児休業給付金を受給できなかったことによる損失などです。

損害賠償請求を行う際は、具体的な損害額を立証する必要があります。給付金の未受給額や、それに伴う経済的不利益を明確に示すものを用意しなければなりません。

満額請求できるとは限らない

損害賠償請求を行う場合、満額請求ができるわけではありません。

損害額の立証責任は請求者側にあり、具体的な損害を明確に示せない場合、請求額が減額されるケースがあります。

裁判所は、従業員側にも雇用保険加入の確認義務があったと判断する可能性があります。この場合、過失相殺により賠償額が減額されることがあるのです。

時効の問題も考慮する必要があります。債権の消滅時効は原則として10年ですが、状況によっては短くなる場合もあります。

したがって、損害賠償請求を行う際は、できるだけ早期に専門家（弁護士など）に相談し、適切な対応を取ることが大切です。

雇用保険未加入の問題は、単に損害賠償請求だけでなく、会社との関係性や今後のキャリアにも影響を与える可能性があります。慎重に対応を検討し、必要に応じて法的支援を求めることをお勧めします。

雇用保険が未加入の場合は適切な対処をしよう

雇用保険は会社の義務であり、従業員の生活を守るためにも必要な制度です。

しかし、加入の必要性を理解していない場合や、保険料負担から逃れるために故意に未加入である場合など、会社によっては加入していないケースもあります。

しかし、未加入であるとしても泣き寝入りする必要はありません。その事実を知った場合は、会社の総務部やハローワークなどに早期に相談し、加入の要求や適切な対応をすることが大切です。

雇用保険未加入は、在職中または退職後の生活にも影響が出てくるため、ご自身の会社が雇用保険に加入しているかを確認しましょう。