ブラック法律事務所とは、その名が示す通り「労働環境がブラックな法律事務所」のことを指す言葉です。
法律に関わる仕事をしていながら「ブラック」と聞くと驚くかもしれませんが、労働条件などの情報を発信している法律事務所が意外に少なく、一部の過酷な労働環境にある法律事務所が問題となっています。
このように、法律事務所へ転職や就職をお考えの方は、まずブラックな法律事務所に就職しないことが大切です。
そこで今回は、このような「ブラック法律事務所」に就職しないために、ブラック法律事務所の4つの特徴や、就職を回避するための見分け方、抜けだして転職する方法を解説します。これから法律事務所への就職や転職をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ブラック法律事務所の特徴4つ
ブラック法律事務所には、4つの特徴があります。
- 収入に見合わない過重労働を強要している
- スタッフに不当な扱い・ハラスメントをしている
- 悪徳業者・反社会組織の代理人をしている
- 業務内容が聞いていた内容と異なる
それぞれ詳しく解説します。
収入に見合わない過重労働を強要している
ブラック法律事務所の特徴には、収入に見合わない過重労働を強要している点が挙げられます。
法律事務所の仕事には、クライアントや相談者からのヒアリングや、公的書類(戸籍謄本や住民票など)の取り寄せ、内容証明書類の作成や送付、案件整理、裁判書類の作成や判例の収集など、さまざまな仕事があります。また、弁護士が担当する業務以外にも、弁護士のスケジュール管理や、出張の手配、会議資料の作成、接客、書類の整理などの秘書業務も多いのが特徴です。
ブラック法律事務所は、業務の分業がされておらず、少人数の弁護士やスタッフが横断的に膨大な量の仕事をしなければならない環境となっていることがあります。
弁護士の収入は高いので、忙しいのは仕方がないと思う方がいるかもしれません。しかし、近年は弁護士数が増加傾向にある一方で訴訟件数が減少しており、弁護士の年収も連動して減少しています。あわせて事務所の経営が厳しくなることも「ブラックな労働環境」を誘発している要因と考えられます。
参考:日本弁護士連合会「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査 2020」より
スタッフに不当な扱い・ハラスメントをしている
ブラック法律事務所の特徴には、スタッフに不当な扱い・ハラスメントをしているといった事例も挙げられます。
法律を専門的に扱う弁護士業界で、スタッフに不当な扱いをしたり、ハラスメントが行われたりしているとは信じがたいことですが、弁護士業界は閉鎖的で縦社会の慣習が強く残っている業界でもあるため、ハラスメントが起こりやすい特徴があります。
法律事務所という特殊な業界で、外部からの介入しにくいのも、ブラック法律事務所が放置されやすい原因の1つと言えるでしょう。
悪徳業者・反社会組織の代理人をしている
ブラック法律事務所の中には、悪徳業者や反社会組織の代理人をしているといったケースもみられます。ただ、悪徳業者や反社会組織の代理人をしているからといって、弁護士の資格がないのに法律行為を行うような、いわゆる「非弁行為」ではないため、直接罰せられることはありません。
しかし、このような反社会的な行為を行う団体や企業と繋がりがあると、そこに勤める人材の将来にも悪影響が及ぶ可能性は否定できません。
反社会的組織との繋がりがある法律事務所に所属している場合には、一刻も早く退職・転職することを、強くおすすめします。
業務内容が聞いていた内容と異なる
ブラック法律事務所の特徴の4つ目は、契約前に聞いていた業務内容と異なる業務をさせられるケースです。
法律事務所を選ぶ際は、扱う業務の分野や範囲を重視する方も多いのではないでしょうか。ブラック法律事務所では、面接時に「入所すれば、すぐに希望の業務に就ける」と説明しておきながら、実際はまったく希望の業務に関わることができないといったケースがあります。
特徴1で紹介したように法律事務所の仕事は多岐にわたるため、雑務に追われてしまい、本業である弁護士の仕事が全くできない、または禁止されているような状態です。
ブラック法律事務所の見極め方4つ
上記のようなブラック法律事務所に就職しないために、以下では「ブラック法律事務所の見極め方」を4つ紹介します。
短期間で退職した人が多すぎないないか確認する
ブラック法律事務所と優良な法律事務所の簡単な見分け方として、短期間で退職した人が多すぎないないかを確認する方法があります。
Webツールなどで過去の当該法律事務所のHPを遡ってみる方法もありますが、直接周辺のお店や法律事務所、現場で働くスタッフに聞いてみるのもおすすめです。
もし、ブラック法律事務所であれば、悪く思われても気にする必要はありませんし、優良な法律事務所であれば、働くスタッフを見ればすぐにわかるでしょう。
また、気になる法律事務所があれば、定期的にWebサイトなどを確認するのもおすすめです。
その法律事務所出身の弁護士がいないかを調べる
弁護士の多くは、自分の職務経歴をインターネットでも公開しています。なぜなら、自分の強い法律分野をわかりやすくし、クライアントや相談者からの信頼度を上げるのに役立つからです。
もし気になる法律事務所があれば、その法律事務所の名称でネット検索をかけてみましょう。そこで出身弁護士がヒットしない、そもそもHPすらないような法律事務所であれば、ブラック法律事務所である確率が高くなります。また、ブラックではなくとも、優秀な人材を育成するシステムや教育制度が整っていないケースがほとんどであると考えられます。
優良な法律事務所からは、優秀な弁護士を多く排出しているケースが多いため、その法律事務所出身の弁護士がいないかを調べるのも、1つの判断材料として有効です。
法律事務所の口コミや評判を確認する
近年は、インターネットの普及によって、さまざまな企業や法律事務所などの「口コミや評判」を確認することも可能です。そこで、当該法律事務所を検索してみましょう。
もし、労働環境が劣悪な事務所の場合は、何かしらの悪い口コミや評判が書き込まれているかもしれません。
また「弁護士懲戒処分検索センター」のWebページからは、2001年以降に懲戒処分を受けた弁護士を調べることができます。
ブラック法律事務所に所属している弁護士は、過去に懲戒処分を受けている可能性もあるため、検索してみると良いでしょう。
雇用条件を確認する
ブラック法律事務所を見分ける方法として、就職活動を行う中で、雇用条件をしっかりと確認することも重要です。求人票に詳しい記載がない、明記していない場合は、ブラック法律事務所の可能性が高いと言えます。
もし法律事務所から内定をもらったとしても、雇用契約書の内容が曖昧、あまりにも待遇が良すぎるという場合にも注意が必要です。そこで、何か違和感を覚えたり、怪しいと思ったりしたら、内定を辞退するのがおすすめです。
ブラック法律事務所に就職しないためのポイント4つ
以下では、ブラック法律事務所に就職しないためのポイントを、4つ紹介します。
雇用条件や契約書を確認する
ブラック法律事務所に就職しないための1つ目の方法は、雇用条件や契約書を確認することです。就職する際の基本中の基本ではありますが「法律を司る職場でブラックな環境があるはずがない」という思い込みは捨ててください。
もちろん、多くの法律事務所は、きちんとした求人票や面接を行い、応募者に採用条件を提示しています。ただ、これまでの慣習に従い、契約時に雇用条件を明示しない法律事務所があるのも事実です。
「法律事務所だから安心」という思い込みは捨てて、雇用契約を結ぶ際は、しっかりと雇用条件や契約書を確認するのが基本です。もし、雇用条件や契約書を明記していなかった場合は、すぐに内定を辞退して、就職を取りやめることを強くおすすめします。
ブラックな職場に就職してしまうことは、一生に関わる選択となりますので、冷静に判断しましょう。
懲戒処分歴のある弁護士がいないか確認する
前述したように、ブラック法律事務所に就職しないために、弁護士本人が何らかの処分を受けた経歴がないかを調べるのがおすすめです。また、当該法律事務所に懲戒処分歴のある弁護士がいないかも、並行して確認しておきましょう。
懲戒処分歴のある弁護士を調べる際は「弁護士懲戒処分検索センター」のWebページから検索可能です。ぜひご活用ください。
職場環境を調べる
ブラック法律事務所に就職しないためのポイントは「職場環境を直接調べてみる」のがおすすめです。気になる法律事務所があれば、何かを相談してみたり(1時間5,000円〜10,000円程度)、直接見学させてもらったりすると良いでしょう。
もし、直接職場環境を確認できない、または拒否されるような法律事務所であれば、応募するのは危険です。まずは、最低でも数回、直接当該法律事務所を訪れてみましょう。
口コミや転職サイトから外部の評価をチェックする
口コミや転職サイトから外部の評価をチェックするのは、法律事務所だけではなく、一般企業でも同じです。現代は、さまざまなキーワードで法律事務所や企業を検索できる時代です。もし、悪い評判や口コミがあれば、現実を確認することが大切です。また、検索しても「何もない」のも、今の時代では不自然と言えるでしょう。
法律事務所のHPや口コミがまったくない場合も、ブラック法律事務所である可能性があります。
法律事務所の転職は、転職エージェントの活用が安心
もし、あなたが現在ブラック法律事務所に所属しており、すぐにでも転職をお考えであれば、まず転職エージェントに登録・相談するのがおすすめです。
なぜなら、転職エージェントにはその分野と市場に精通した、転職のプロが在籍しており、転職活動の支援をしてくれるからです。また、転職エージェントを活用することで、同じようなブラック法律事務所に転職してしまうリスクが低くなる傾向にあります。
法律事務所から転職する際は、再びブラック法律事務所やブラック企業に転職しないためにも、必ず転職エージェントの活用をおすすめします。
転職エージェントへの登録は、現職で働きながらでも可能です。また転職エージェントに登録すれば、担当のキャリアアドバイザーが、さまざまな法律事務所の情報を無料で提供してくれます。そこで、できるだけ多くの情報を収集して、今の職場と比較しながら、より良い転職先を紹介してもらうことが大切です。
次の章では、法律事務所の転職におすすめの転職エージェント5社を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
法律事務所の転職におすすめの転職エージェント5選
以下では、法律事務所の転職におすすめの転職エージェント5選を紹介します。
NO-LIMIT(ノーリミット)
公式サイト:https://no-limit.careers/
NO-LIMIT(ノーリミット)は、弁護士や法務人材の転職支援を専門に行っている転職エージェントで、弁護士の転職に精通したアドバイザーが内定獲得までをトータルサポートしています。
NO-LIMITは、弁護士転職に特化しているサービスであるため、まずは登録しておくべき必須エージェントと言えるでしょう。また、求人の幅を広げたい方は、その他の転職エージェントも複数登録するのがおすすめです。
NO-LIMITの特徴は、利用者一人ひとりに寄り添った対応を心がけており、丁寧なヒアリングから転職後のフォローアップまで、求職者と法律事務所のミスマッチを減らすために注力していることです。
もし望んでいる求人がない場合には、希望される条件に合うように、新規求人開拓も随時実施しています。
NO-LIMITは登録無料ですので、ぜひ登録してください。
公式サイト:https://no-limit.careers/
無料会員登録はこちら:https://no-limit.careers/無料会員登録/
MS-Japan
MS-Japanは、経理・財務、人事・総務、法務などのバックオフィス系職種や、会計事務所・監査法人、税理士、公認会計士、弁護士の転職支援を行っているエージェントです。
管理部門に特化した転職エージェントとして長い歴史を持ち、長きにわたる運営で培ったノウハウを十分に活かしたサポートを提供しています。
また、管理部門に力を入れている転職エージェントであるため、企業内のインハウス案件を豊富に保有しているのが特徴です。
公式サイト:https://ms-japan.jp
弁護士ドットコムキャリア
弁護士ドットコムキャリアは、弁護士や企業の法務職に特化した転職エージェントです。
弁護士ドットコムキャリアは、弁護士相談ポータルサイトである「弁護士ドットコム」が運営しているため、弁護士業界に詳しいコンサルタントの転職サポートを受けることも可能です。
業界内での知名度が高く、弁護士ドットコムの運営で築いたネットワークがあるため、弁護士ドットコムキャリアだけが扱うことができる独自案件が多いという特徴があります。
大手法律事務所やそのほかの法律事務所、一般企業の求人も扱っており、企業内弁護士を希望する方にもおすすめです。
公式サイト:https://career.bengo4.com/
弁護士転職.jp
弁護士転職.jpは、弁護士・法務職の転職に特化した転職サイトです。
2007年から法曹業界で転職支援を行っており、弁護士特化型のエージェントの中では老舗の1つに数えられるでしょう。
また、経験年数が少ない弁護士向け求人と、経験豊富な弁護士向けの求人を扱っているため、幅広い弁護士転職にマッチする可能性があります。
弁護士転職.jpは、求人サイトと、転職エージェントの両方があるため、自分の希望に合わせて転職活動を進めることができます。
公式サイト:https://www.bengoshitenshoku.jp/
リーガルジョブボード
リーガルジョブボードは、士業の転職に特化した転職サイトの1つです。
リーガルジョブボードでは、主に弁護士や司法書士、弁理士などの士業の求人を扱っており、特に司法書士・弁理士の求人数が多いのが特徴です。
企業と直接やり取りするダイレクトリクルーティングと、求人紹介や書類添削、面接対策・面接同行などのサポートを受けながら転職活動できるエージェントサービスの両方からサービスを選択できます。
エージェントサービスでは希望の転職期間を考慮してサポートしてくれるため、今すぐ転職したい人にもじっくり転職活動を進めたい人にもおすすめです。
公式サイト:https://legal-job-board.com/
ブラック法律事務所からどうやって抜け出す?辞め方は2択
以下では、ブラック法律事務所から抜け出す方法について解説します。もし、今ブラック法律事務所から抜け出せずにお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
強行的に辞める
民法では、退職の意思を伝えた2週間後であれば退職できることになっています。
事実、民法では、以下のように規定されています。
雇用の期間に定めがないときは、解約(=退職)の申入れから2週間が経過すると雇用契約が終了する(民法第627条第1項)
このように、たとえブラック法律事務所から抜け出せないとお困りの方も、しっかりと退職の意思表示を行うことで、強制的に辞めることも可能です。
ただし、円満に退職することが難しい場合の強行手段となるため、まずは職場で相談してみることをおすすめします。
今ある案件を片付けてからやめる
上記のように、退職を伝える時期については、法律で「退職の2週間前まで」と定められています。しかし、多くの場合は職場の就業規則に沿って退職を伝えるのが一般的です。
ただ、ブラック法律事務所の場合には、このような就業規則が存在しない可能性があります。そこで、ブラック法律事務所からの円満退職を望むなら、今ある案件を片付けてから辞めるのがおすすめです。
法律事務所の場合には、だいたい半年程度の期間を見込んで相談してみましょう。そうすることで、業務の引き継ぎや、新たな人員を確保する期間も十分に確保できるため、職場に迷惑をかけずに、円満退社できる可能性があります。
ただ、ブラック法律事務所の場合は、円満退職どころか「辞めることすら難しい」ケースもあるでしょう。そのような時は、2週間前に退職の意思を伝えて強制退職するか、労働基準監督署に相談するなどして対処する方法もあります。
労働基準監督署は、労働問題について相談できる最も身近な窓口です。主に『労働基準法違反』について相談することができます。
労働基準監督署は、各都道府県にいくつも設置されていますので、下記のリンクから最寄りの監督署を検索して相談してみましょう。
まとめ|ブラック法律事務所に入らないように対策を
上記のように、ブラック法律事務所に入らないようにするためには、まず就職する前に、十分な情報収集を行うことが大切です。
そこで、この記事内で解説してきた項目を確認することで、ブラック法律事務所に就職するリスクを大幅に低減できるでしょう。
また、もし今現在、ブラック法律事務所に勤務しているのであれば、すぐに弁護士専門の転職エージェントであるNO-LIMIT(ノーリミット)などに登録して、転職の専門家であるキャリアアドバイザーに相談してみましょう。きっと、あなたの望み通りの転職が叶うはずです。