必死に勉強して理学療法士の国家資格を取得したものの、仕事内容の多さや人間関係に嫌気がさし、「一般企業に転職したい」と思う人も多いでしょう。
国家資格を持っているとはいえ、リハビリ専門職に従事するために必要な資格なゆえ、一般企業でもスキルの一つとして見なしてもらえるのか気になりますよね。
今回は、理学療法士から一般企業に転職したい方に向けて、理学療法士から一般企業に転職するメリット・デメリットや、おすすめの転職先を紹介します。
関連記事:理学療法士(PT)におすすめの転職エージェント11選!選び方のコツや転職の流れを解説
目次
理学療法士から一般企業に転職するのは難易度が高い?
しかし、理学療法士の資格を活かせる一般企業の求人は少ないことから、難易度は高いといえます。
実際、理学療法士のほとんどが病院で勤務しており、一般企業に勤務している理学療法士の数は多くありません。
「体力的にきつい」「もっと給料が高い仕事に就きたい」という悩みから、一般企業への転職を視野に入れている方は、後ほど紹介する「理学療法士経験者におすすめの転職先」や「一般企業への転職を成功させるコツ」をぜひ参考にしてください。
理学療法士から一般企業に転職するメリット3つ
理学療法士から一般企業に転職する難易度は高いものの、メリットはあります。
以下のメリットが自分にとってメリットと感じるかどうか、チェックしながら読み進めてみてください。
人間関係のストレスから開放される
理学療法士は、患者だけでなく医師や看護師、他のリハビリスタッフ、利用者の家族と密接に関わる仕事です。
さまざまな立場の人とチームを組んで患者をサポートし、積極的にコミュニケーションをとって行動しなければならないことから、人間関係のストレスを感じやすい傾向にあります。
もちろん、一般企業でも他社とのコミュニケーションは欠かせません。
ですが、さまざまな立場、年代の人と関わらざるを得ない理学療法士と比較して、一般企業は人間関係におけるストレスから開放されやすいといえます。
体力的な負担を軽減できる
理学療法士を辞めたい理由として最も多く挙げられるのが体への負担で、一般企業へ転職すればその悩みを解決できます。
理学療法士がサポートする患者は、病気やケガなどによって体力や筋力が低下し、思うように体を動かせない方が対象となります。
そのため、体力仕事ではない一般企業に転職すれば、体力的な負担を軽減できるかもしれません。
給料アップが期待できる
理学療法士から一般企業に転職すると、給料アップが期待できます。
「国家資格まで取ったのに…」「他の医療従事者に比べて低い…」といったことも、給料の低さの不満を助長しているかもしれません。
また、理学療法士でも経験を積んでいけば給料が上がっていくことが見込めますが、営業職のようにインセンティブがつくわけではないので、緩やかな上昇といえるでしょう。
もちろん、未経験で一般企業に入社した場合でも、理学療法士よりも高い年収が見込めるということではありません。
職種や業界、スキルの有無によっても年収は異なるので、求人情報をチェックしたり面談時に確認したりしてください。
理学療法士から一般企業に転職するデメリット2つ
理学療法士から一般企業に転職する場合、メリットばかりではありません。
「転職するかどうか迷っている」「辞めたいけれど理学療法士の仕事は好き」などの悩みがある方は、理学療法士を辞めることで発生するデメリットもきちんと把握しておきましょう。
資格を活かすことが難しくなる
理学療法士の資格を活かせる仕事はそれほど多くないことから、「資格をアピールして転職を成功させたい」「資格を活かして仕事をしたい」という方にとっては転職が難しくなってしまうでしょう。
後ほど詳しく紹介しますが、理学療法士の資格を活かせる一般企業はもちろんいくつかあります。
ですが、場合によっては、転職活動において資格がアピール材料にならない可能性も頭に入れておきましょう。
業務内容に慣れるまでに時間がかかる
理学療法士は専門職です。病気やケガなどで身体が思うように動かない人に対して、立つ・座る・歩く・寝るといった基本的動作の回復・維持を目的にサポートします。
体力に限界を感じて事務職を選んだものの、「座りっぱなしでほとんどパソコン作業ばかりという日々に疲れた…」なんてこともあります。
自分が気になる職種や業界の仕事内容や1日のスケジュールなどを調べたり、家族や友人から事前に聞いたりしておくことをおすすめします。
そのため、転職を決断する前に、一般企業のイメージを固めておくことが大切です。
一般企業への転職がおすすめの理学療法士の特徴
一般企業へ転職したいけれど、本当に自分に合っているのだろうか…
と悩んでいる人も多いでしょう。
ここでは、一般企業への転職がおすすめの理学療法士の特徴をより詳しく紹介します。
間接的にでも誰かの生活を支ることにやりがいを感じる方
間接的にでも誰かの生活を支ることにやりがいを感じる方は、一般企業への転職がおすすめです。
理学療法士の仕事は、患者を目の前にして運動機能のサポートをおこないます。実際に身体に触れることも多く、「自分が直接患者をサポートしているんだ」というやりがいや達成感を感じられるのが特徴です。
一方、一般企業は、流通の流れにおいてサービスや商品を最終的に使う顧客と直接やり取りしないこともあります。そのため、本当に自分の仕事が役に立っているのか不安に感じてしまうこともあるかもしれません。
もちろん、職種や業界によって「顧客」の定義は異なりますが、自分たちの商品やサービスを喜ぶ姿を直接見たい人にとっては、やりがいを感じにくいでしょう。
プレゼンテーション・マネジメント能力が高い方
プレゼンテーション・マネジメント能力が高い方も一般企業への転職がおすすめです。
プレゼンテーション能力とは相手が求めている情報を的確に伝えるスキルのことで、マネジメント能力は人や物を管理するスキルのことです。
リハビリ業務の際、患者の希望を汲み取ったうえでリハビリの方法を患者が納得できるように提案できれば、プレゼンテーション能力があるといえるでしょう。また、患者一人ひとりに寄り添ったリハビリを自分の負担を最小限にしておこなうことができていれば、マネジメント能力があるといえます。
職種によって業務内容は異なりますが、どの職種においても役立つスキルです。
病院という環境で働くことにストレスを感じる方
今の環境が合わず、職場を変えて理学療法士を続ける方もいます。ですが、病院という環境で働くことにストレスを感じている方は、職場を変えてもまた同じようにストレスを抱えてしまうでしょう。
思い切って、一般企業へ転職することをおすすめします。
直接患者をサポートすることはできなくなりますが、後ほど紹介する理学療法士経験者におすすめの転職先で、理学療法士で得た知識や経験を一般企業で活かすことも可能です。
理学療法士経験者におすすめの転職先
理学療法士経験者におすすめの転職先は以下の4つです。
これまでの経験やスキルが新しい職場で活かせるかどうかは、大事なポイントです。
医療・福祉機器関連の会社
医療・福祉機器関連の会社は、理学療法士経験者におすすめの転職先です。たとえば、医療・福祉機器メーカーや販売会社などが挙げられます。
理学療法士は筋力の回復を目的として運動療法だけでなく、様々な医療機器を用いて患者の回復をサポートします。
医療機器の知識だけでなく、実際に使用し、そしてそれによってどのように患者の回復を後押ししたのか体験しているため、経験をもとに商品の提案をしたり製品開発に携わったりできるでしょう。
そのため、医療機関未経験者と比較して、説得力が違います。
医療・福祉機器関連の企業のなかには、理学療法士での経験を必須、または歓迎スキルとしている求人を出していることもあるので、要チェックです。
介護支援関連の会社
介護支援関連の会社も、理学療法士経験者におすすめの転職先です。
介護支援関連の会社とは、介護事業者向けに介護商品を提案・販売する会社のことを指します。
これまで自身がおこなっていた患者をサポートする仕事は介護施設の職員が行うため、その介護職員に向けて提案します。
商品の使い方を説明する場合、慣れた手つきであれば介護職員も安心しますし、実際の経験を交えて提案できれば、より商品の魅力をアピールできるでしょう。
医療系コンサルタント関連の会社
医療系コンサルタント関連の会社とは、大学病院やクリニックなどの医療機関や製薬会社、医療機器メーカーなどに対し、経営面で抱える問題解決を手助けする会社のことです。
それぞれの問題に対し、戦略立案や人事制度設計、業務効率化によるシステム導入支援などをおこないます。
コンサルタントとしての経験がなくても、医療施設で働いていた経験からアドバイスできることもたくさんあるので、顧客の悩みの寄り添ってアドバイスできるでしょう。
そのため、プレゼンテーション・マネジメント能力が高い方におすすめの転職先です。
住宅関連の会社
近年、高齢化が進んでいる背景から、バリアフリー住宅を建てたり介護リフォームをしたりする家庭が増えています。
そのため、理学療法士の知識を住宅業界で活かすことができます。
身体を思うように動かせない方が、生活するうえで何に不自由を感じるか実際に理学療法士として見てきているので、その経験をもとに住宅改修や福祉用具の使用などの提案をおこなうことができます。
顧客にとっても、担当者が理学療法士経験者だという点は安心材料になるでしょう。
理学療法士必見!一般企業への転職を成功させるコツ
理学療法士におすすめだからといって、「何の対策も立てずとも合格できる」ということではありません。
理学療法士経験者が転職を成功させるためのコツ3つを紹介します。
早めに転職活動を開始する
医療機関に在籍している理学療法士が少ない、そもそも人手不足なることが多いという背景から、退職したくてもなかなか辞められない場合もあります。
そのため、なるべく早めに転職活動を開始することをおすすめします。
一般的に、転職活動にかかる平均期間は約3ヶ月といわれているため、最低でも3ヶ月前にはスタートを切りましょう。
また、一般企業への転職がスムーズにいくとは言い切れないため、余裕を持って行動しておきましょう。
一般企業に転職する理由を明確しておく
理学療法士が一般企業への転職を希望する場合、一般企業に転職する理由を明確しておくことが重要です。
転職活動は、気になる企業を探し、履歴書を書いて応募し、面接を数回おこなって合否が決まります。
面接では志望動機や自己PRに加え、さまざまなことを聞かれますが、理学療法士が一般企業を受ける場合、一般企業を希望する理由を聞かれる可能性が高いといえます。
転職希望者のなかには、「理学療法士の仕事が嫌いになった」「人間関係に疲れた」という理由で退職を希望する人も多いでしょう。もちろん嘘をつく必要はありませんが、なるべくポジティブな表現に変換することを意識してみてください。
たとえば、「理学療法士の仕事が嫌いになった」の場合「〇〇の仕事にも興味を持つようになった」、「人間関係に疲れた」の場合「同じ志を持ったチームで動ける企業で働いてみたいと思った」など、前向きな気持ちが伝わるように答えると、良い印象を与えることができます。
転職エージェントを活用する
転職を決意したら、転職エージェントにさっそく登録してみましょう。
転職エージェントとは、転職したい求職者と、人材を採用したい企業をマッチングさせる転職サービスのことです。
希望に沿った企業を提案してくれるだけでなく、履歴書・職務経歴書の添削や、面接対策までおこなってくれる転職エージェントもなかにはいます。
特に転職未経験者は何から取り掛かれば良いか分からず、転職期間が伸びたり安易に転職を決めてしまったりすることもあるでしょう。
理学療法士から一般企業に転職する際におすすめの転職エージェント
理学療法士から一般企業に転職する際におすすめの転職エージェントを、3つ紹介します。
PTOTSTワーカー
- 病院や施設などの幅広い施設を紹介してくれる
- LINEで気軽に利用できる
- 20~30代の転職に強い
PTOTSTワーカーは、理学療法士・言語聴覚士・作業療法士への転職に特化した転職エージェントです。
さまざまな施設形態の職を取り扱っており、理学療法士としての仕事を続けたいけれど働く場所にこだわりたい方でも、自分の希望に合った企業を選ぶことができます。
求人数が充実しているのがPTOTSTワーカーの利点で、キャリアアドバイザーから手厚いサポートが受けられるため、安心して転職活動を進めることができます。
20~30代の初めて転職する方や転職経験の少ない方にとっては、うれしいポイントといえるでしょう。
ただ、首都圏や大都市圏の求人が多い傾向にあるため、求人検索をする際の勤務地は要チェックです。
レバウェルリハビリ
- 求人の幅が広い
- 対応が早くスムーズに進められる
- 登録から内定が決まった後までサポートしてくれる
レバレジーズメディカル株式会社の「レバウェルリハビリ」は、IT人材の転職サイトを運営するレバテック株式会社のグループ会社です。
医療・介護業界へのパイプを活かして集めた情報を求職者に教えてくれるため、仕事内容だけでなく制度の利用状況や会社の雰囲気なども応募前にチェックできることがあります。
また、理学療法士・言語聴覚士・作業療法士に特化した転職エージェントなので、求人数はそこまで多くないものの、求人の幅が広いのが特徴です。
理学療法士に詳しいキャリアアドバイザーからの専門的なアドバイスももらえるため、これまでの経験を活かせるかどうかといった相談が気軽にできます。
対応が早く、できるだけ早く転職したい人にうってつけの転職エージェントといえます。
PTOT人材バンク
- 理学療法士に特化した転職サイト
- 職場の雰囲気などの詳細な情報が掲載されている
- 本番前に模擬面接を受けられる
PTOT人材バンクは、株式会社エス・エム・エスが運営する理学療法士などに特化した転職サイトです。
登録すれば、求人紹介はもちろんのこと、履歴書・職務経歴書の添削や面接対策、企業への条件交渉などを完全無料でおこなってくれます。
特に評価されているのは詳細な情報が掲載されている点で、職場の雰囲気やスタッフ構成、教育体制、休みの取りやすさを応募前にチェックすることが可能です。
応募段階で知ることがなかなかできない情報を入手できれば、入社後「こんなはずじゃなかった」と後悔するのを防げます。
また、本番前に模擬面接を受けられる点も魅力の1つ。
面接が苦手な方や転職未経験の方におすすめの転職エージェントといます。
ただ、「担当者からの電話がしつこい」「メールが多い」などの低評価も見受けられるため、「自分のペースで転職活動を進めたい」と素直に伝えることが、転職を成功させるカギかもしれません。
理学療法士から転職を考えている方によくある質問
理学療法士から転職を考えている方によくある質問を3つ紹介します。
理学療法士の年収は最大でいくらですか?
ただ、一般的な病院勤務で上記の年収を目指すのは難しく、独立して開業したり大規模病院で役職に就いたりするのが賢明といえます。
理学療法士が働きやすいおすすめの場所は?
理学療法士が働きやすいおすすめの場所は、以下の通りです。
- 病院
- 診療所
- 医療福祉施設
- 老人福祉施設
- 地域包括支援センター
- 身体障害者福祉施設
- 児童福祉施設
- 精神障害者社会復帰施設
- 知的障害者福祉施設
- 障害者自立支援施設
- 教育・研究施設
- 行政関係施設
- スポーツ・フィットネス 関連施設
理学療法士が求められる場所は、病院や福祉施設だけではありません。
「理学療法士として働き続けたいけれど、今の職場は離れたい…」という方は、上記のおすすめの場所を参考にして、自分に合う職場を探してみてください。
理学療法士の年収が低いのはなぜですか?
理学療法士の年収が低いといわれている理由は、主に以下の3つです。
- 1人の理学療法士でおこなえるリハビリには制限があるから
- 診療報酬制度により、医療機関の利益が伸びにくいから
- 理学療法士の数が増えているから
1人の理学療法士でおこなえるリハビリには実施時間や人数に制限があります。そのため、どれだけ働いても収入が上がりにくいといわれています。
ただ、この制度により医療機関で働く人の給料が上がりにくく、理学療法士もその影響を受けているのです。
また、理学療法士の数が増えていることも、年収が上がりにくい理由の1つといわれています。
そのため、理学療法士の数が多いと、限りある診療報酬から給料を割り振るのが難しく、さらに役職に就く機会も少なくなることから、給料が上がりにくいのです。
まとめ
理学療法士から一般企業への転職はハードルが高いものの、決して不可能なものではありません。
また、転職を成功させるためには、早めに転職活動をスタートすることと、一般企業への転職を希望する理由を説明できるようにしておくことが大切です。
転職エージェントに登録すれば、悩みを共有したり自分にマッチする企業を探してくれたりします。転職は何かと心細くなりやすいので、すぐに相談できる担当者がいれば、安心して転職活動を進められるでしょう。