社会保険給付金は雇用保険や健康保険からもらえるお金の総称で、基本的には失業保険と傷病手当金のことを指します。

組み合わせると最大28ヶ月の長期間もらえると聞き、気になっている方も多いでしょう。

しかし、条件や手順をしっかり理解していないと、もらえるはずの給付金がもらえず損をすることにもつながりかねません。

本記事では社会保険給付金がどんな制度なのか、仕組みや条件を解説しています。最大28ヶ月もらうやり方についても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

事前に読みたい⇒社会保険給付金とは？申請方法や条件・メリットとデメリットを紹介

社会保険給付金は雇用保険や健康保険からもらえるお金のこと

社会保険給付金とは、雇用保険や健康保険からもらえるお金の総称です。公的な名前ではなく、申請をサポートするサービス会社が便宜的に付けた名前が広まり、一部で使われています。

会社員や公務員は、必ず社会保険に加入しています。

そして毎月社会保険料を支払っていますが、制度を利用して支払い以上の給付を受けている人は多くありません。なぜなら、制度の内容自体があまり知られていないからです。

社会保険給付金は、自分で申請しないともらえないお金です。利用条件を満たしている場合、会社員なら当然行使する権利があります。

しかし制度を知らないまま就職・退職していると、一方的に社会保険料を支払い続けるだけで損をしている可能性もあると認識しておきましょう。

社会保険給付金の種類一覧

そもそも社会保険とは、次の5つの保険の総称です。

このうち、社会保険給付金で利用するのは健康保険と雇用保険です。

組合や協会によって、社会保険給付金の種類は多岐にわたりますが、主に次のものがあります。

たとえば産休・育休を取得した女性なら、出産手当金や育児休業給付金の存在は知っているでしょう。

雇用保険の失業保険も有名ですが、そのほかの給付金については知らない人がほとんどではないでしょうか。

これらのあまり知られていない制度を利用しようというのが、社会保険給付金の考え方です。

基本的には失業保険と傷病手当金を指す

「社会保険給付金」という言葉を使うとき、基本的には失業保険と傷病手当金の2つを指しています。

これは、申請をサポートする各サービス会社が「退職する際に多くのお金がもらえる」とうたっているためです。

この前提を頭に入れたうえで、社会保険給付金が最大28ヶ月もらえる仕組みについて見ていきましょう。

社会保険給付金が最大28ヶ月もらえる仕組みとは

社会保険給付金は、失業保険と傷病手当金をそれぞれ最長期間で利用することで、合計28ヶ月になる仕組みです。

それぞれくわしく見ていきましょう。

失業保険を受給する

失業保険を最長期間で利用する流れは次のとおりです。

失業保険の給付日数は、雇用保険の加入期間と年齢ごとに異なります。

たとえば20代で会社を1年で辞めた場合、給付日数は90日（3ヶ月）です。

しかし、就職困難者として認定されると300日（10ヶ月）まで給付日数が増えます。

関連記事：失業手当（失業保険）はどんな制度？計算方法や条件・期間・もらい方までくわしく解説

参考：ハローワーク「よくあるご質問（雇用保険について）」

傷病手当金を受給する

傷病手当金を最長期間で利用する流れは次のとおりです。

傷病手当金の場合、病気や怪我の状態によっては、最長期間である1年6ヶ月受給できる可能性があります。

併用すると最大28ヶ月受給できる

失業保険と傷病手当金を併用すると次のようになります。

2つの給付金は同時にはもらえないため、組み合わせで合計28ヶ月受給できる可能性があるのです。

社会保険給付金を最大28ヶ月もらう条件・対象者

それでは、社会保険給付金を最大28ヶ月もらう条件や対象者を見ていきましょう。

当てはまる部分を確認してみてください。

失業保険の場合

失業保険は、退職理由によってもらえる条件が変わります。

自己都合で退職した場合は一般離職者となり、失業保険の給付開始までに2〜3ヶ月の給付制限があるのが特徴です。

怪我や病気で働けなくなった場合は、特定理由離職者に該当します。会社の倒産などで退職した特定受給資格者とともに、給付制限はありません。

就職困難者は、次に当てはまる方が該当します。

身体・知的・精神障害の場合は手帳が必要ですが、うつ病や統合失調症は医師の診断によって認定される場合があります。

もっとも長い10ヶ月の給付を受けるには、ハローワークで就職困難者と認定されなければなりません。

いずれの場合も、もらえる金額は前職の給与の50〜80％です。

参考：ハローワーク「基本手当について」「よくあるご質問（雇用保険について）」

傷病手当金の場合

一方、傷病手当金の条件はやや複雑です。

業務外の病気やケガで療養中であること。
業務上や通勤途中での病気やケガは労働災害保険の給付対象となりますので、労働基準監督署にご相談ください。なお、美容整形手術など健康保険の給付対象とならない治療のための療養は除きます。

療養のための労務不能であること。
労務不能とは、被保険者が今まで従事している業務ができない状態のことで、労務不能であるか否かは、医師の意見及び被保険者の業務内容やその他の諸条件を考慮して判断します。

4日以上仕事を休んでいること。
療養のために仕事を休み始めた日から連続した3日間（待期期間）を除いて、4日目から支給対象です。

給与の支払いがないこと。
ただし、給与が一部だけ支給されている場合は、傷病手当金から給与支給分を減額して支給されます。

引用：全国健康保険協会「傷病手当金について」

簡単に言うと、業務外の理由で発生した怪我や病気で仕事ができなくなり、3日以上休むと4日目から支給対象となります。もらえる金額は給与の3分の2程度です。

ただし、給与の支払いがあればその分は減額されます。受給期間は最長1年6ヶ月です。

なお、1年以上雇用保険に加入していて退職時に傷病手当金を受給していれば、退職してからも継続して受給できます。

条件は次のとおりです。

注意点として、退職日に出勤すると給付対象とならないため、挨拶などは前日までに済ませましょう。また、老齢年金・出産手当金・労災保険の休業補償給付などと重複しての受給はできません。

参考：全国健康保険協会「傷病手当金について」

社会保険給付金を最大28ヶ月もらう方法

それでは、実際に社会保険給付金を最大28ヶ月もらう方法について、順を追って解説します。

1つずつ確認してみてください。

4日以上続けて休みを取る

社会保険給付金をもらうためには、在職中に傷病手当金を受給し、退職後に失業保険をもらう流れになります。

まずは傷病手当金の受給条件を満たすために、怪我や病気で4日以上の休みをとったかを確認しましょう。休みは連続して取る必要があります。

細切れに取っている、4日以内など条件を満たしていない場合は対象とならないため注意してください。もちろん、嘘の症状でズル休みするのはNGです。

病院で診断書を書いてもらう

次に病院へ行き、どんな症状で働けないかの診断書を書いてもらいましょう。

ただし、業務にかかわる内容は労災扱いになるため、業務外で生じた症状に限られます。

傷病手当金を受給する理由としては、10代から40代までは精神及び行動の障害が多く、50代以降は癌や循環器系の疾患が多くなっています。

参考：厚生労働省保健局「傷病手当金について」

傷病手当金を申請する

診断書とともに、申請書を所属の健康保険組合へ提出しましょう。

組合の審査に数週間〜数ヶ月かかることもありますが、審査に通れば、4日以上連続して休んだ場合の4日目以降が支給対象となります。

月に一度通院する

審査に通ると、症状に応じて最大1年6ヶ月の受給が可能です。

ただし、症状が良くなれば受給は当然打ち切られるため、月に1度程度の定期的な通院が求められます。

退職する

傷病手当金を受給した状態で退職します。

退職後に継続受給したい場合は、次の条件を満たすようにしてください。

参考：全国健康保険協会「傷病手当金について」

失業保険の受給期間延長手続きをする

退職後にまだ傷病手当金を受け取っている場合は、失業保険の受給期間延長手続きをしましょう。

失業保険には退職後1年間の有効期限があるうえ、傷病手当金と重複してもらうことはできないためです。

延長手続きをすると、失業保険をもらう時期を最長で3年間延ばせます。

参考：大阪労働局「受給期間の延長」

傷病手当金受給後に病院で回復証明をもらう

症状の回復度にもよりますが、働ける状態になったら病院で回復証明をもらいましょう。

傷病手当金は最大で1年半（18ヶ月）受け取れるため、満額を希望する場合はそのタイミングに合わせてください。

失業保険の受給期間延長を解除する

働ける状態になったら、​​失業保険の受給期間延長を解除しましょう。

同時に失業認定手続きをしますが、給付日数を最大の300日（10ヶ月）にするためには、就職困難者と認定される必要があります。

判断はハローワークがおこなうため、医師の診断書や手帳など必要があれば持参しましょう。

4週に一度求職活動をおこなう

失業保険の受給中は、4週に一度の求職活動をしなければなりません。働ける状態にありながら就職できていないことを証明するためです。

求職活動には次のものが含まれます。

なお、早期に就職が決まれば再就職手当がもらえます。

再就職時に、失業手当の所定給付日数の3分の2以上が残っていた場合は残日数の70％が、3分の1以上が残っていた場合は60％が支給される仕組みです。

再就職が早いほど給付率が上がるため、体調に問題がなければ積極的に求職活動をおこないましょう。

参考：ハローワーク「再就職手当のご案内」

社会保険給付金に関するよくある質問

ここでは、社会保険給付金に関するよくある質問に回答します。

社会保険給付金は自分で申請できる？

失業保険はハローワークで必要な手続きをすればよく、手間はかかるものの難しいことはありません。

傷病手当金も手順こそ多いですが、やることは診断書をもらって申請書を提出し、定期的に通院するだけです。

そもそも、社会保険料をきちんと払っていて正当な権利があるのに、利用しにくい制度になっているとしたらおかしな話ではないでしょうか。

申請をサポートするサービス会社が「自分では手続きが難しい」と煽っているために誤解を生みがちですが、きちんとした手順を踏めば自力でも申請できるため安心してください。

社会保険給付金はいくらもらえる？

失業保険の給付額は前職の給与の50〜80％で、給付日数は年齢や働いた期間により異なります。

傷病手当金は、給与の約3分の2の金額が最長で1年半もらえます。

社会保険給付金は怪しい？

条件を満たせばもらえるきちんとした制度のため、怪しくありません。

怪しいという噂が多いのは、「社会保険給付金」という名前が公的な名称ではなく知名度が低いことや、サービス会社が高い金額がもらえると煽っていることが考えられます。

傷病手当金に限っても平成29年度で約190万件の申請があり、約3,600億円が支給されています。

実際に申請している方はたくさんいるため、安心して利用しましょう。

参考：厚生労働省保健局「傷病手当金について」

社会保険給付金の申請は会社にバレる？

失業保険、傷病手当金とも会社と必要書類のやりとりがあるため、バレることは避けられません。

とはいえ、いずれも会社が払うわけではなく、支払い元は雇用保険と健康保険なので、気まずく感じる必要はないでしょう。

また、書類のやりとりも退職後に郵送やメールで済ませればよく、バレるとしても労務や総務の人だけです。

そもそも社会保険料を支払っている以上、社会保険給付金をもらうのは当然の権利であり、後ろめたく思う必要はありません。

まとめ

社会保険給付金は、病気や怪我で働けないときに積極的に利用したい制度です。

知名度が低いため怪しく思われがちですが、単純に失業保険と傷病手当金を組み合わせたものであり、難しく考える必要はありません。

制度を知らないがゆえに、もらえるはずのお金をもらわずに損をしてしまってはもったいないですよね。本記事を参考に、万が一のときにはぜひ活用してみてください。