「うつ病で退職すると転職が不利になる？」
「うつ病を理由に退職するのはイメージが悪い？」

重労働社会の日本において、うつ病が原因で働き続けるのが難しくなった人は少なからず存在します。また、うつ病が原因で退職するのに抵抗がある人もたくさんいるでしょう。

しかし、実際にうつ病で退職したとしても、とくに大きな問題は起こりません。

本記事では、うつ病で退職しても問題ない理由と辞めるときの対策、退職の流れなどを解説します。

関連記事：仕事を辞めたいあなたに！原因と対処法・辞める際の判断基準

うつ病で退職しても問題ない理由

うつ病で退職しても問題ない理由は以下のとおりです。

むしろ、うつ病を患っている状態そのものが問題です。キャリアの心配もあるかもしれませんが、まずは治療を最優先に考えましょう。

退職することでうつ病が軽減されるケースがある

うつ病で退職しても問題ない理由は、退職して療養期間を設ければ、逆に症状が軽減されるためです。うつ病の原因が仕事や職場の環境である場合、退職すれば原因となる要素に触れる機会がなくなります。

うつ病を引き起こした原因を目の前からなくすことで、少しずつ症状も緩和されていくでしょう。嫌な仕事を我慢して続けると、うつ病が悪化して長期間働けなくなるおそれもあります。今後の体調にも大きく影響するので、無理して働くのだけは絶対に避けてください。

労働者には退職の自由がある

うつ病で退職しても問題ない理由として、労働者にはそれぞれに退職の自由が与えられているためです。民法第627条の第1項には、退職の意向を伝えたのち、2週間経過すれば雇用関係が終了すると定められています。つまり、退職を宣言するだけで、2週間後には仕事を辞められるのです。

退職の自由がある以上、うつ病を理由に仕事を辞めるのはなにも問題ありません。無理して働くほうがよほど問題なので、できるだけ早めに退職の手続きへ移りましょう。

参考：労働相談Q＆A｜日本労働組合連合会

自己都合で退職できる

うつ病を理由に退職する場合、自己都合で辞められます。退職には、自己都合と会社都合があります。会社都合は会社側の都合で、自己都合は自分自身の都合で仕事を辞めるという意味合いです。

会社都合での退職は、倒産や経営破綻などのほかに、社員が職場の不利益になるような行為を働いた理由が含まれます。つまり、転職活動の際に「なにか問題を起こしたのではないか」と疑われるケースがあるため適切な弁解が必要です。

しかし自己都合は、自分の希望で退職したと見なされるため、理由を聞かれた際も前向きな要素を含めればよいのです。転職活動の際は、うつ病についてはあまり触れず、できるだけ自分の願望やキャリプランを話すようにしましょう。

理由によっては傷病手当が受給できる

うつ病が理由で退職した場合、傷病手当が受給できるケースがあります。自己都合での退職は、失業保険を受け取れる時期が2ヵ月ほど遅くなるため、収入確保において不利になると思われがちです。

しかし、うつ病を患っている場合、代わりに傷病手当が受け取れます。一般的な自己都合で退職した人と比べると、得られる給付金に関して有利になるのです。

ただ、うつ病により傷病手当を受け取る際は、発症理由が会社以外のものでないといけません。うつ病の原因が、会社が直接的な理由であれば、労災保険が該当します。退職する際は、給付金について入念に調べておきましょう。

参考：雇用保険の具体的な手続き（失業の認定）｜ハローワークインターネットサービス

うつ病で退職する際におこなうべき対策

うつ病で退職する際は、事前に以下の対策をおこないましょう。

ひとつずつ解説します。

うつ病の原因をまとめておく

うつ病で退職する際は、なぜうつ病になったのかの原因をまとめておきましょう。うつの状態ではまとめるのが難しいかもしれませんが、簡単にまとめるだけでも問題はありません。

上司によるパワハラやいじめが原因であれば、理由づけとなる証拠を残しておくのが得策です。訴訟を起こすときにも活用できるうえ、会社に相談する際にも有利になります。

また、うつ病を発症した原因をまとめると、「なぜ自分がうつ病になったのか」を俯瞰して確かめられます。今後同じ状況に陥らないためにも、原因をまとめるのは効果的です。

雇用契約・条件をチェックする

うつ病になった原因をまとめたあとは、雇用契約や条件をチェックしましょう。労働時間や休暇日数、1ヵ月の残業時間などは、それぞれの会社で定められているはずです。

自身の労働条件と、会社によって課された条件が一致していなかった場合、うつ病を発症した理由を特定するのにもつながります。雇用条件を理由にすれば、退職を申し出るのにも有利なうえ、条件を合わせるよう申請することも可能です。

退職する際は、事前に雇用契約や条件が大きくズレていなかったかをチェックしてみてください。

受給できる保険の種類を確認する

うつ病で退職する際は、受給できる保険の種類をチェックしておきましょう。自分の状況によって、どんな保険が適用されるかを検討するのは、スムーズに申請するためにも大切です。

「うつ病で退職しても問題ない理由」でも軽く触れましたが、傷病手当や失業手当・労災保険など、多くの給付金が存在します。自分がどの手当に該当するかを、事前に確認しておくとよいでしょう。

うつ病で退職するときの流れ

うつ病で退職する際は、以下の流れに沿って各手続きを済ませましょう。

順番に解説していきます。

医師に相談して診断書を用意する

うつ病で退職を検討している方は、はじめに医師へ相談し、診断書を発行してもらいましょう。診断書は、職場が原因でうつ病を発症したという証拠を残すために有効です。

診断書を提示されると、退職の意向を申し出る際に引き止められにくくなるため、休職の手続きをおこないやすくできます。また、うつ病の対処や治療に踏み込む機会も得られるので一石二鳥です。

退職するときの理由づけにもなるため、うつ病を発症した方は必ず病院で診察を受け、診断書を用意してもらいましょう。

上司に退職の旨を伝える

医師からの診察を受けたあとは、診断書を提示しつつ、上司に退職の意向を伝えましょう。口頭のみで伝えるより、診断書を見せながら退職の意思表示をすれば、事態の深刻さをよりはっきりと伝えられます。

またうつ病を発症した社員は、上司側としても引き止めにくいため、スムーズな手続きへ移るために効果的です。仕事を辞める際は、診断書を持参のうえ上司に退職の意向を伝えましょう。

関連記事：【退職理由別】退職の伝え方と円満退職の秘訣！

有給休暇の消化を申請する

上司に退職したい旨を伝えたあとは、有給休暇の消化を申請しましょう。本来、会社との雇用契約が解除されるのは、退職の意向を伝えたのち2週間後です。つまり、実際に仕事を辞めるまでの2週間は、おもに引継ぎ作業などの業務を任されます。

しかし、今すぐに仕事を辞めたい場合は、残っている分の有給を消化するのがおすすめです。残りの2週間を有給に当てれば、今後出社する必要はなくなります。消化できる有給がないときは、残りの期間を欠勤扱いに変えるのもひとつの方法です。早めに退職したい方は、有給や欠勤などを有効活用しましょう。

離職票の交付を申し込む

退職の意向を伝えたあとは、離職票の交付を申し込みましょう。離職票は、基本手当を申請する際に必要な書類です。退職後、次の仕事が決まるまでに期間が空く人は、基本給付を受け取る必要があるでしょう。

手当の受給を予定している方は、必ず離職票の交付を申請してください。離職証明書は、ハローワークで入手できます。退職が決まったのち、できるだけ早めにハローワークへ向かうことをおすすめします。

うつ病で退職したあとにおこなうべきこと

うつ病で退職した方は、退職後に以下の項目を済ませましょう。

ひとつずつ解説します。

労災保険または傷病手当の申請をおこなう

うつ病になった原因に合わせて、退職後に労災保険または傷病手当の申請をおこないましょう。労災保険は、通勤や勤務中など、業務上の事情によってケガや病気になった際、働けなくなった労働者に向けて支払われる手当です。ケガや身体の病気だけでなく、うつ病などの精神疾患にも該当します。

傷病手当は、仕事以外が原因の病気やケガのために会社を休み、十分に収入が得られない際に支給される給付金です。療養中に、休職者本人とその家族の生活を援助するために設けられています。自分がどちらの給付を受け取れるのかを把握し、正しい手順で申請をおこなってください。

失業保険の申請をおこなう

上記で紹介した手当のほかに、失業保険の申請も視野に入れましょう。失業保険は、会社を退職した際に、次の仕事が決まるまでの期間、生活費を受給できる制度です。おもに、長期間次の仕事を決めるのが厳しい方が受給できます。

うつ病は、短期間で治るものではありません。できるだけ、長期間の休養を見据えておくべきです。うつ病で退職した方は、傷病手当や労災保険のほかに、失業手当の申請も検討しておきましょう。

治療に専念する

基本手当や、その他の給付金を申請し終えたあとは、うつ病の治療に専念してください。きちんと治療に専念すれば、少しでも早く症状を緩和させられます。

治療に専念する際は、医師に相談しつつ、そのときの症状によってどう過ごすかを考えてみましょう。全く動く気が湧かない場合、無理に動こうとせずじっとしておいたほうが賢明です。

うつ病を患ったときは、無理に仕事を続けず医師の話に耳を傾け、正しい方法で治療を受けてください。

うつ病で退職するデメリット

うつ病を発症した際は、できるだけ早めに退職したほうがよいのですが、以下のようなデメリットも見受けられます。

うつ病が原因で仕事を辞める方は、事前に以下のデメリットを把握し、それぞれの対処法を見つけておきましょう。

収入源がなくなる

当然ながら、仕事を辞めれば収入源はなくなります。長期間、うつ病の治療に専念したいと考えている方は、ある程度の貯金や家族からの援助が必要です。

基本手当や給付金などの救済措置はありますが、無職期間は余裕をもった生活が送れなくなります。また、給付金を受け取れる期間も有限です。休養できる期間にも、限りがあることは忘れずに過ごしましょう。

転職活動が不利になるおそれがある

うつ病で退職した場合、転職活動が不利になる可能性があります。治療などでブランク期間が長くなった際、採用担当者から怪訝な目で見られるおそれがあるためです。

うつ病が原因で前職を辞めたことを知られた場合、「自社でも同じ事態に陥らないか」と疑われるリスクが生じます。うつ病を懸念された際は、採用されづらくなる原因にもつながるため、退職した理由はできるだけほかの内容を伝えましょう。

退職したいと考えた理由は、うつ病だけではないはずです。可能な限り、前向きな理由を話すよう心がけてください。

関連記事：うつ病で転職は不利になる？安心して働ける職場を探す方法と転職支援機関を紹介

仕事を始めてもよいタイミングがわかりづらい

うつ病の人は、休養期間をどれほどとればよいかがわからなくなる場合があります。誤ったタイミングで社会復帰すると、すぐにうつ病が再発してしまうため危険です。

実際に、うつ病による療養期間は自身が予想するより長めに取らなくてはいけません。仕事を再開する基準として、「今すぐにでも働きに出られる」といえる状態がよいとされています。

「少し調子が良くなったから、とりあえず働いてみるか」と考えるうちは、絶対に復帰してはいけないのです。どのタイミングで復帰すればよいかは、症状などを加味して医師と相談してみましょう。

うつ病で退職したいと考えている社会人によくある質問

うつ病で退職したいと考えている社会人によくある質問を紹介します。同じ疑問がある方は、今のうちにチェックしておきましょう。

うつ病を理由に退職してもよい？

問題ありません。しかし、退職するにはデメリットもあるので、それぞれの対策を考える必要があります。デメリットについては、「うつ病で退職するデメリット」を参考にしてください。

うつ病を理由に退職するのはずるいこと？

全くずるいことではありません。うつ病は、肉眼では判別できない病気です。なかには、「大げさだ」「仮病ではないか」など、疑いの目を向ける人もいるでしょう。しかし、自身がつらければ、気にせず休んでもよいのです。

うつ病を理由に退職する人の割合は？

2020年11月1日から1年間で、精神不良により退職した人がいた事業所は、4.1％という結果が出ました。以上の結果は、事業所全体におけるデータのため、個人での割合はさらに高くなる可能性が予測されます。

参考：厚生労働省の2021年「労働安全衛生調査（実態調査）」｜独立行政法人 労働政策研究・研修機構

まとめ｜うつ病で退職しても問題はない！まずは治療に専念しよう

うつ病で退職してもなにも問題はありません。一部の意見では、「ずるい」「根性が足りていない」「大げさなのでは？」といった声も耳にするでしょう。しかし、うつ病も立派な病気です。本人にしかわからない、つらい症状もたくさんあります。

確かに、うつ病で退職する場合、いくつかのデメリットも見受けられます。しかし、うつ病を患った方が最優先におこなうべき対処は、十分な療養です。医師に相談し、治療に専念しつつ、今の自分にできることをしっかりと考えましょう。

なにもできないときは、「なにもしない」のが今の自分にできる最適な行動です。つらいときは、無理に行動しようとせず、治療に専念してください。