薬剤師が「フリーランス」として働く方法があるのを、ご存知でしょうか?
フリーランス薬剤師とは、どこの企業にも属さず、個人事業主として働く薬剤師のことです。
「時間の自由」と「収入の自由」のどちらも手に入る可能性があり、注目を集めている働き方です。
そこで本記事では、フリーランス薬剤師の働き方やメリット・デメリットについて解説していきます。
正社員の経験があり、フットワークの軽い方であれば、フリーランス薬剤師はおすすめできる働き方です。
「正社員として働くのに苦しさがある......」という方は、フリーランスも検討してみましょう。
目次
フリーランス薬剤師の働き方
フリーランス薬剤師はその名のとおり、会社などに属さず、自由に働くスタイルです。
調剤薬局やドラッグストアで、雇用薬剤師と同じように働く方もいれば、Webライターや講演、YouTubeで生計を立てる方もいます。
フリーランス薬剤師の働き方に、正解はありません。週の半分は薬剤師として、もう半分がWebライターとして働く、という方もいます!
フリーランス薬剤師と派遣薬剤師の違い
フリーランス薬剤師と派遣薬剤師は働き方が似ていますが、明確な違いがあります。
派遣薬剤師は自由に働いているように見えますが、実は、派遣会社の正社員です。
福利厚生が充実している企業も多く、有給を取ることも可能です。
一方で、どの組織にも入らず、業務委託として働くのがフリーランス薬剤師となります。
では、「実際に働く場所」は、どのように決まるのでしょう。
派遣薬剤師は、派遣会社と企業の間で、働く条件を決めます。
「勤務日数」や「時給」を、派遣会社が交渉してくれます。つまり、薬剤師は「薬剤師の業務」に集中できるのです。
一方で、フリーランス薬剤師は、自ら企業と交渉します。勤務日数や時給を、誰かに決めてもらうわけではありません。
すべて自己責任というプレッシャーは、もちろんあります。しかし、交渉次第でコントロールできる部分が増えるのは、大きなメリットです。
フリーランス薬剤師のメリット3選
フリーランス薬剤師になるメリットは、以下のとおりです。
それぞれ解説していきます。
働く場所や時間を自分で決められる
フリーランスのメリットは、「自分で選択できる」ところです。
雇用されている薬剤師の多くは、働く場所や時間は「会社」が決めますが、フリーランスは「自分」で決めます。
正社員のほとんどの方は、週40時間で働くシフト制か、月単位でのフレックス制でしょう。この場合、勤務時間を減らすことは、基本的にできません。
フリーランスでは、「副業でスキルを伸ばしたいから、薬剤師の仕事は週に4日。1日6時間で働こう」というように、調整できるメリットがあります。
ただし、自分の好き勝手に働けるわけではありません!
相手の企業が「それでもいいよ」と言ってもらえる条件でしか働けないので、そこは注意が必要です。
とはいえ正社員とは違い、フリーランスの「裁量権」が大きくなるのは魅力的な点といえるでしょう。
人脈・知見が広がる
フリーランス薬剤師として働くと、人脈が広がります。
なぜなら、ひとつの企業ではなく、様々な企業で働くからです。
正社員の薬剤師と比べてみましょう。
ひとつの会社に長く勤める正社員に対し、フリーランスはそのような働き方はほとんどできません。契約が終わったら次の職場で働くことになります。
すると、多くの方と出会います。その出会いが、人脈を広げるチャンスとなるでしょう。
薬剤師同士の横のつながりができるのはもちろん、経営者や役員クラスの方ともつながりが生まれるかもしれません。
また、薬剤師の仕事、いわゆる「調剤」以外の仕事もやらなければいけません。したがって、様々な知見も増えていきます。
たとえば、営業力です。調剤薬局やドラッグストアで働く薬剤師であれば、営業するケースはそう多くありません。しかし、フリーランスは営業をかけて仕事をもらわなければいけないので、経験値が溜まっていきます。
このように、フリーランスは人脈も知見も増えやすい傾向にあります。
事業で使用した経費を計上できる
最後のメリットは、経費を計上できる点です。
経費とは、事業に発生するコストのことです。たとえば、以下のようなものを指します。
- 交通費
- 交際費
- 専門書の購入費
経費を確定申告で計上することで、納める税金を軽くできます。
正社員で働いていたときに比べ、経費を計上できる分、手元に残る金額が多くなるかもしれません。
フリーランス薬剤師のデメリット
一方で、フリーランス薬剤師にはデメリットもあり、以下のとおりです。
それぞれ解説していきます。
不安定である
薬剤師に限らず、フリーランスの収入は不安定でしょう。先述したとおり、同じ職場で長く働けるわけではないからです。
契約期間が終わったら、同じ職場では働けません。次の働く場所がなければ、無収入となります。
契約期間が満期になる前に、会社の都合で「もう来なくていいよ」と言われるケースもあるかもしれません。中途の薬剤師の入社が決まって、人材不足が解消されたら、フリーランスとして働くのは難しいでしょう。
正社員は雇用が守られています。よほどの問題を起こさないと、働けなくなるリスクはありません。
一方で、フリーランスは常に不安がつきまといます。
「安定した職場で働きたい」と考えている方は、フリーランスではなく正社員のほうがおすすめかもしれません。
雑務が増える
正社員の方々は、自分ひとりですべての雑務をこなしているわけではありません。
確定申告は会社が仲介してくれますし、事業拡大のための営業も、営業部署の方が行っているはずです。
一方で、フリーランスの場合は、自分ひとりですべての雑務をこなさなければいけません。
例として、以下のようなものです。
- スケジュール管理
- 確定申告
- 営業活動
会社では仕事の役割が決まっています。薬剤師は、調剤をメインとして働いている方が多いでしょう。
フリーランスで働くなら、薬や病気の知識だけではなく、他のスキルも求められます。知見を増やすチャンスですが、やるべきことが増えるのをデメリットと感じる方も多いでしょう。
フリーランス薬剤師の年収
フリーランス薬剤師の働き方はわかった。でも、年収はどうなの?
と疑問をもたれる方が多いでしょう。
結論から言うと、収入は働き方によって上下します。
時給や働く日数、副業の有無によって左右されます。正社員のように毎月固定給、というわけにはいきません。
例を挙げてみましょう。
時給3,000円で週40時間働いた場合、年収は以下のようになります。
3,000円×40時間×52週(1年間の週数)=624万円
しかし、上記のケースでは祝日を加味していません。したがって、600万前後になると思われます。
週の稼働時間を短くしても、副業収入があれば、年収600万〜700万は目指せるかもしれません。
正社員で稼ぐとなると、簡単に達成できる金額ではありません。フリーランス薬剤師は、働き方によって高収入を得られるチャンスでしょう。
フリーランス薬剤師になる方法
フリーランス薬剤師になるためには、いくつか手続きが必要になります。
手続きというと「めんどくさい!」と思われがちですが、そこまで大変なものはありませんよ!
フリーランス薬剤師になる方法は、以下の流れです。
それぞれ解説していきます。
➀年金の支払い手続きをする
まずは年金の支払い方法の、変更手続きが必要です。
正社員の年金は「厚生年金」にあたります。すべての正社員が納めている年金が、厚生年金です。
「払っていた感覚がない!」という方も多いでしょう。それは、収入から天引きされていたからです。給与明細に明記されているので、確認してみましょう。
一方で、個人事業主であるフリーランス薬剤師は「国民年金」に移行する必要があります。収入から天引きされないため、自分で支払わなければいけません。
退職すると同時に、「厚生年金」の加入資格はなくなります。それと同時に「国民年金」への加入が求められますので、速やかに加入しましょう。
お住まい地域の役所で、加入手続きを行ってください。
➁保険の切り替え
フリーランスになると、国民健康保険に加入するケースがほとんどです。
正社員は、健康保険に加入しています。そして、支払額の半分は、会社が負担していました。
国民健康保険に切り替えることで、支払う保険料は増える傾向にあります。
お住まい地域の役所で、変更手続きを行いましょう。転身してから、14日以内に加入する必要があります。
➂開業届・承認申請書を提出
フリーランスに転身したら、「開業届」と「青色申告承認申請書」を出しましょう。
開業届とはその名のとおり、個人事業を開業したことを税務署に申告する書類です。フリーランスになってから、1ヶ月以内に提出しましょう。
一方で、青色申告承認申請書は、確定申告を青色申告にしたいときに出す申請書になります。白色申告よりも節税効果があるので、こちらも提出したいところです。
どちらの書類も、税務署へ提出しましょう。
➃確定申告を行う
フリーランスに転身すると、確定申告をする必要があります。
先述した「青色申告承認申請書」を出している場合、青色申告の提出でOKです。
フリーランス薬剤師に必要なスキル3選
では、フリーランス薬剤師にはどのようなスキルが必要なのでしょう。
結論から言うと、以下のとおりです。
それぞれ解説していきます。
薬剤師としての能力
フリーランスになるためには、薬剤師として高いスキルが求められます。
なぜなら、スキルがないと周りから信頼されないからです。
どこの職場でも働くことができるスキルや経験があるとベストです!
知識やスキルがあれば、どの職場でも戦力としてカウントされます。周りのスタッフから感謝される薬剤師のイメージです。
可能であれば、管理薬剤師として働いた経験があるといいでしょう。管理薬剤師を経験していれば、「人や薬のマネジメントも経験している方なのか!」と安心感を与えることができます。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力の高い薬剤師は、フリーランスに向いています。
では、なぜコミュニケーションが大事なのでしょう。それは、ひとつの職場で働くわけではなく、多くの職場で働く可能性があるからです。
どこの職場でも、情報共有のためのコミュニケーションは必須です。雑談も含めて、職場にスッと溶け込めるコミュニケーション能力があるほうがいいでしょう。
また、医師や顧客とスムーズにコミュニケーションをとれると、仕事もうまく回るようになります。
ただし、ものすごく高いコミュニケーション能力が必要なわけではありません。相手を思いやり、きちんと「報連相」ができる方であれば、フリーランス薬剤師として活躍できるでしょう。
営業力
フリーランス薬剤師は、営業力が大切です。ここでいう営業とは、「物を売る」営業ではありません。「自分を売る」営業になります。
自分の魅力をアピールする手段として、営業スキルが必要になります。
では、何のために営業するのでしょう?
それは、以下の内容を決めるためです。
- 働く場所
- 働く時間
- 給与
正社員のときは、すべて会社が決めてくれていたかもしれません。しかし、フリーランスになると、自分で交渉して決めなければいけません。
A社の薬剤師が不足していたとしましょう。その場合、A社へ営業をかけて交渉します。契約がとれれば、晴れて薬剤師として働けるようになります。
「薬剤師なんだから、営業なんて必要ない」と思っている方も多いでしょう。
しかし、フリーランス薬剤師で働き続けるためには、営業スキルはとても重要になります。少しずつでもいいので、学んでいきましょう。
フリーランス薬剤師に不安を感じる方へ
ここまでフリーランス薬剤師の働き方や、メリット・デメリットを解説してきました。
自由度が高く、年収を上げられる可能性があるフリーランスに、魅力を感じているかもしれません。
一方で、フリーランスになることに、不安を感じる方も多いでしょう。
- いつ収入が0になるかわからない
- 働き場所が見つからない
- 職場が自分に合わない
先述したとおり、フリーランスと派遣は働き方が非常に似ています。
派遣会社が「働く場所」を探してくれるので、安心して働くことに集中できます。
派遣会社のアドバイザーは、業界にとても詳しいです。悩みがあったら、いつでも相談にのってくれますよ!
以下の記事ではおすすめの派遣会社を紹介していますので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。
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まとめ【フリーランス薬剤師は自由度の高い働き方です!】
フリーランス薬剤師は、収入や職場が不安定である一方で、非常に自由度の高い働き方です。
働き方次第では、今よりも収入を上げるチャンスでしょう。自由度が高い分、志の高い方にはおすすめできる働き方です。
フリーランスに不安があるならば、まずは派遣薬剤師にチャレンジするのもありでしょう。
働き方は似ていますが、雇用されている分、安心感のある働き方になっています。