「週休3日制」とは、その名の通り1週間に3日間休める働き方のことを指します。女性やシニア、外国人などさまざまな事情を持つ人を労働力として確保できるメリットがあり、「働き方改革」の一環として政府が推し進める施策の1つです。

柔軟な働き方ができる一方で「給与が削減されるのでは」「実質的なリストラ？」などと不安を抱く人も多いでしょう。

そこでこの記事では、週休3日制のメリットやデメリット、導入する企業などを詳しく紹介します。週休3日制の企業を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

総合週休3日制の種類と選択的週休3日制

週休3日制の働き方には、大きく3つの種類があります。

それぞれ考えられるメリット・デメリットがありますので、各社がどのような種類の週休3日制を取り入れているかを確認しておくことが重要です。

給与維持型

給与維持型の週休3日制は、従来通りの給与を維持したまま週3日間の休みが適用される働き方です。

労働時間は短縮しつつも給与が維持されるため、従業員にとってはもっとも理想的な働き方といえるでしょう。

一方で週休3日になっても週休2日のときと同じ仕事量を求められる場合、労働者に対する負担は大きくなる可能性があります。

また企業にとっては人件費は変わらない一方で、生産量が下がることも予想されるため、実質的な人件費が上がるデメリットもあり、なかなか導入が進んでいないのが現状です。

給与減額型

給与減額型の週休3日制は、週の労働日数を減らすぶん給与が減少するパターンです。

プライベートの時間を増やしたい従業員や、趣味、家族との時間を重視する人にとって魅力的な働き方で、副業することで収入アップものぞめるでしょう。また企業側としては、人件費の節約が期待できます。

ただし、勤務時間の減少に伴い給与も減少するため、従業員は生活スタイルの調整が必要になる場合があります。

総労働時間維持型

総労働時間維持型の週休3日制は、給与も労働時間も従来の週休2日と変わらない働き方です。

週休2日のときの1日の労働時間が8時間だった場合、週休3日だと1日10時間の労働が必要となります。

また基本的には週休2日のときと給与は変わりませんが、残業時間として換算される時間が少なくなるため、実質的に収入が減る可能性があります。

選択的週休3日制とは

一口に「週休3日」と言っても、従業員全員が一律で週休3日になるパターンと、希望者のみが週3日になるパターンがあります。

従業員が自分のライフスタイルや仕事のニーズに合わせて、週休3日制を選択できるため、仕事とプライベートの調和を図りやすくなります。

ただし、企業側は労務管理が複雑になるため労務コストがかかる点がデメリットです。

選択的週休3日制は企業によって異なる運用方法があるため、転職を考える際はその企業の具体的な制度内容や適用条件を確認することが重要です。

週休3日制を導入している代表的な企業

週休3日制は政府が推し進める施策の1つではありますが、まだ義務化はされておらず一部の企業でのみ導入されているのが現状です。また、週休3日制を導入している企業も「試験的な導入」がほとんどで、本格導入している企業は稀のようです。

参考までに、週休3日制を導入（試験導入含む）している代表的な企業と具体的な内容を見てみましょう。

日立製作所【総労働時間維持型】

日立製作所は、2022年度に総労働時間も給与も維持したうえで週休3日にできる勤務制度を導入しています。

勤務時間の下限をなくすことで従業員は勤務時間を自由に配分し、休日を増やすことができます。

月前半の労働時間を長くすることで月末に大型連休を取ることも可能です。また、私用の合間に1時間だけ働くこともできます。

パナソニックホールディングス【総労働時間維持型】

パナソニックホールディングスは、日本の大手企業で初めて完全週休2日制を導入した企業としても知られています。

2023年2月には週休3日、週休4日を選べる勤務制度を一部の部署や雇用形態で本格導入しました。

週休3日は1日の最低労働時間を撤廃することで休みを1日増やし、代わりに勤務日の労働時間を長くすることで給与を維持できる仕組みです。

佐川急便株式会社【総労働時間維持型】

佐川急便株式会社は、物流業界の労働環境改善や人材不足解消を狙って、一部の営業所で週休3日制を導入しました。

1日の労働時間を8時間から10時間に増やしたため、1週間の労働時間は週休2日と変わりません。よって給与水準も週休2日のときと同水準となります。

今後全国エリアへの拡大や既存従業員への適応などについても検討中のようです。

株式会社ファーストリテイクリング（ユニクロ）【総労働時間維持型】

ファーストリテイリング（ユニクロ）は、小売業界では珍しく週休3日制を導入している代表的な企業です。

佐川急便と同じく、変形労働時間制を用いた1日10時間×4日勤務のフルタイム契約となり、週休3日でありながらも給与は変わりません。

現時点（2023年12月）では地域正社員（転勤なしの正社員）のみの制度となるようです。

Zホールディングス（ヤフー）【給与減額型】

Zホールディングス（ヤフー）では、土日の休日に加え1週当たり1日の休暇を取得できる週休3日制を取り入れています。

この制度は、小学生以下の同居の子を養育する正社員および契約社員、家族の介護や看護をする正社員および契約社員のみ利用可能です。

制度の利用および変更は月単位で可能なので、子どもの夏休みなどに合わせて変動することもできます。制度利用により取得した休暇ぶんは無給となります。

週休3日制を導入する企業で働く5つのメリット

週休3日制を導入する企業で働くことには、多くのメリットがあります。代表的な5つのメリットを見ていきましょう。

プライベートを充実させることができる

週休3日制を導入する企業で働くと、プライベートの時間を家族や友人と過ごしたり、趣味や自己啓発などに取り組めたりするため、個人の生活の質を高めることが可能です。

プライベートの時間を充実させ、メリハリをつけて働けることは従業員の幸福感や満足度を高める重要な要素となるでしょう。

通勤や仕事のストレスを軽減できる

ザイマックス不動産総合研究所が発表した「首都圏オフィスワーカー調査2018」は、「通勤時のストレスは生産性やエンゲージメントに影響を与える」としています。

週休3日制により、単純に通勤日数が減ることで、通勤に伴うストレスや疲労が軽減され、仕事への満足度が高まることが予測されます。

また、仕事の日数が減ることで、仕事のストレスも分散され、効率的な業務遂行にもつながるでしょう。

資格取得に充てる時間を作ることができる

週休3日制では、プライベートの時間を利用して資格取得や勉強会参加などのスキルアップに充てることができます。

これにより、キャリアの向上や将来の転職に向けた準備が可能になり、報酬アップにもつながるでしょう。

また、新しい知識や技能を身につけることは、現職での業務の質向上にもつながるため、企業にとってもメリットとなります。

副業・兼業がしやすくなる

プライベートの時間を利用して副業や兼業をおこなう時間が持てることも、週休3日制の大きなメリットの一つです。

これにより、収入源の多様化やキャリアの幅を広げることができます。また、異なる業界や職種で経験を積むことで、本業においても新たな視点やアイディアをもたらす可能性があります。

多様な人材と共に働ける

週休3日制の企業には、子育て中の人や介護中の人、外国人など、さまざまな立場・状況の人に労働のチャンスがあります。

自身が週休3日制を選択しなかったとしても、多様な人材と共に働くことで刺激を受けたり、新たな視点を身につけたりするチャンスがあるでしょう。

また、週休3日制の導入により採用が活発化すれば、これまで人材が補充されず業務過多となっていた部署の負担が減ることも考えられます。

週休3日制を導入する企業で働く6つのデメリット

週休3日制を導入する企業で働く場合、いくつかのデメリットも存在します。週休3日制という制度自体がまだ浸透していないがゆえの不便さもあるでしょう。

代表的な6つのデメリットを紹介します。

給与が下がるケースがある

週休3日制の中には、労働時間の減少に伴い給与が減少する「給与減額型」を導入している企業があります。

給与の増減は生活の質に直結するため、週休3日制になることで今の暮らしができなくなる可能性もあるでしょう。

このため、転職を考える際には、給与体系や生活費の計画について慎重に検討する必要があります。

一日当たりの労働時間が増えるケースがある

日本で週休3日制を導入している企業は、週の労働日数を減らしつつも、一日当たりの労働時間を延長する「総労働時間維持型」の企業がほとんどです。

これにより、一日の労働負担が増加し、仕事の疲労が蓄積する恐れがあります。特に長時間労働が問題視されている業界や職種では、この点を注意深く考慮する必要があります。

特定の職種しか適用できない可能性がある

週休3日制は、職種や立場によっては適用が困難な場合があります。

例えば、顧客対応がコンスタントに求められる業務や、マネジメント職では、週休3日制の導入が難しいことがあります。

そのため、転職を考える際には、希望する職種や業界で週休3日制が適用されるか、希望すれば誰でも利用できるのかなどの条件を確認することが大切です。

取引先とのやり取りに工夫が必要

週休3日制の企業で働く場合、週休2日制の取引先と連絡を取り合う際には工夫が必要です。

特に営業職のように、コンスタンスに顧客とのやりとりが発生する場合、不便や誤解が生じることが考えられます。このため、取引先との関係や業務の流れに配慮しながら、柔軟な働き方を模索することが重要です。

社内のコミュニケーションが不足する可能性がある

社内に週休3日の社員と週休2日の社員が混在する場合、情報共有やコミュニケーションの機会が減ることが考えられます。

さらにテレワークを導入している企業ではその傾向が顕著となるでしょう。また、社員同士の交流が減ることでシナジーが生まれにくくなる点も考慮しなければなりません。

制度そのものが突然なくなる可能性がある

「週休3日制を導入している代表的な企業」でも述べましたが、週休3日制を本格導入している企業は珍しく、ほとんどが試験導入の段階です。

試験期間中に目指していた成果が得られない場合、企業は制度を廃止する可能性があります。

そのため、週休3日制を導入している企業に転職する際は、その制度の安定性や将来性についても考慮する必要があります。

週休4日制を導入している企業はある？

わずかではありますが、週休4日制を導入している企業も存在します。どのような企業があるか見ていきましょう。

みずほフィナンシャルグループ【給与減額型】

みずほフィナンシャルグループは、三大メガバンクのなかで初めて週休3日制、週休4日制を一部の部署で試験的に導入しています。

休みが増えるぶん給与が減る「給与減額型」の勤務制度で、週休3日の場合は従来の約8割、週休4日の場合は約6割となります。

休みが増える一方給与も減額されるため、利用する場合は慎重に検討する必要があるでしょう。

ナレッジソサエティ

ナレッジソサエティは、起業家・スモールビジネス向けのバーチャルオフィス・シェアオフィスを手がける会社で、「週休X日制」を導入しています。

週休3日、週休3.5日、週休4日、週休4.5日の働き方も可能で、起業や副業を目指すスタッフ向けの制度です。

ただし、研修期間（3ヶ月～1年）は週休2日（シフト制）での勤務が必要なので注意が必要です。

週休3日制を導入している企業に転職したいならまずは市場価値を知ろう

現状、週休3日制を導入している企業は少なく、転職を考えている場合は選択肢が少ないことを理解しておきましょう。また、週休3日制にはメリット・デメリットがあり、デメリット面も決して小さいものではないため慎重に検討することが大切です。

検討の結果、今すぐには転職しないと判断した場合も、将来に向けて自身の市場価値を把握しておくことは非常に大切です。

市場価値を把握するには自己分析や職務経歴書を作成するのが定番ですが、「時間がない」「どのように自己分析をしたらいいかわからない」という人はヘッドハンターや転職エージェントに相談してみるのがおすすめです。

ビズリーチには転職のプロフェッショナルであるヘッドハンターが在籍しているため、自分のスキルレベルや適正年収などに対し、客観的な視点でアドバイスをもらうこともできます。

「そもそも週休3日制を導入している企業に採用される可能性があるのか？」と気になる人はぜひ利用してみてください。

週休3日制についてよくある質問

週休3日制という制度についてよくある質問を解説します。

不安や疑問を解消したうえで、週休3日制を検討してみてください。

まとめ｜週休3日制を導入する企業は少しずつ増えている

週休3日制は、従業員のワークライフバランスの改善と生産性の向上、ひいては人材確保を目指し、少しずつ導入が進んでいます。

転職市場においても、週休3日制を導入している企業は注目されており、これからの働き方のトレンドとなる可能性もあるでしょう。

とは言え、現状では週休3日制の企業に転職するのは難易度が高いと考えておいたほうがいいでしょう。自身の転職可否を判断するためにも、まずは自分の市場価値を把握しておくことが大切です。

自分の強み・弱みを明文化しておけば、いざキャリアの分岐点が訪れても冷静に判断することができるでしょう。