未経験から法務職への転職が難しい理由と転職に必要なスキルや資格、転職のポイント

編集者
佐藤達也
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法務への転職は難しい?未経験からでも転職を成功させるには?
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法務への転職は、業務の専門性の高さから経験やスキルを重視して採用されるケースが多く、他業種と比べれば難しいと言えます。

しかし、決して転職ができない市場ではありません。法務に必要なスキルや、転職しやすい企業について理解していれば、転職できる可能性はあります。

今回の記事では、法務への転職が難しいとされる理由や、必要なスキルや資格について解説するのでぜひ転職活動の参考にしてください。

関連記事:法務の転職に強い転職エージェントおすすめ6社を徹底比較!転職市場や転職成功ポイントも解説

目次

法務の主な仕事内容

法務の仕事内容は、「法務」という名前のとおり、企業の法律に関わる確認や問題点の改善です。

業種によって法務が関わる業務内容は異なりますが、主な業務は以下の4つになります。

  • 契約書の確認…契約書の不備がないかの確認/先方に有利な契約書になっていないかを確認/トラブルがあった際の対処について記載されているか など
  • コンプライアンス向上…社員が情報漏洩や不正を起こさないための意識向上のルール・マニュアル作り
  • 弁護士とのやり取り…法改正などがあった場合に手続き方法を顧問弁護士とやり取りしてルールに落とし込む
  • 紛争対応…取引先や顧客とトラブルが起こり、裁判に発展した場合に、弁護士と一緒に交渉などの対応を行う

上記の業務を行うため、弁護士と同等レベルまでいかずとも、法律の知識に長けている必要があります。

関連記事:需要が高まる法務部の仕事と役割とは|必須スキルや求められる人材像・転職成功ポイントも解説

法務への転職が難しい理由

法務への転職は、基本的に難しいと考えてください。法律の知識はもちろん、業務内容についても、他の部署と大きく異なる点があるからです。

以下で、法務への転職が難しい理由について解説します。

専門知識が必要

法務は、法律に関する専門知識が必要です。弁護士レベルまで理解しておく必要はありませんが、企業法務に関するある程度の内容は理解しておかなければいけません。

また、法務は即戦力が求められる傾向にあるため、未経験の場合は、法学部出身や法科大学院出身者が採用されやすいのが現実です。

そのため、全くの法務未経験や、法律に関する経験が乏しいと、法務への転職は難しいでしょう。

常に勉強が必要

法務は、自ら調べて行動する力が求められます。なぜなら、度々発生する法改正に伴って手続きや書類の変更なども行うからです。

与えられた業務をこなすのではなく、企業に関する法律に対して、自らアンテナを立てて動かなければいけないので、前職とは全く異なる働き方になる可能性もあります。

法学部や法科大学院出身であっても、常に最新の情報を吸収するために、勉強を続けなければいけません。

責任感が大きい

法務は、企業イメージを左右する重要なポジションです。

特に昨今では、SNSなどの炎上リスクを防ぐために、コンプライアンスに重きを置いている企業が増えています。もし社員の不正などによりネット炎上してしまうと、企業のイメージが大きく失墜し、株価が暴落してしまう可能性もあります。

この責任感の大きさは、法務未経験者からすればプレッシャーに感じてしまうでしょう。

経営視点が必要

法務は、単純な企業に関する法律だけではなく、経営視点も必要になります。

特に昨今では、法務が企業経営の相談役になるケースも増えてきました。また、経営への理解は、契約書の作成や交渉時にも有利になります。

必ずしも必要なスキルではありませんが、法務未経験であれば経営視点も養っておきたい部分です。

企業により業務内容が異なる

法務は、一般的な企業に関わる法律知識以外に、業種ごとの専門知識も求められます。たとえば、製造業界とIT業界では求められる法律知識が異なります。

もし、携わったことのない業種であれば、一からその業種に関する法律知識を学ぶ必要があるので、その点も法務転職のハードルを上げる一因でしょう。

即戦力が求められる傾向

法務の中途採用で、企業が募集する人材のほとんどは、経験者・即戦力です。

実際に、転職サイトの「doda」で法務の求人を検索したところ、以下の結果になりました(2023年4月時点)。

  • 法務の全体求人数…3,985件
  • 全体求人数のうち、業種未経験歓迎…125件
  • 全体求人数のうち、職種未経験歓迎…90件

上記のように、法務で未経験を採用している企業は少ないため、法務未経験者の転職は難しいと言えます。

法務職の採用率が低い

法務職は、経験者であっても採用率が低いです。

法務省の「法務部門実態調査」よると、法務経験者による中途採用は56.7%。つまり、法務経験者であっても転職できる可能性が低いのです。

未経験者の場合は、さらに採用が難しくなるでしょう。

関連記事:法務の転職は経験者でも難しい?活動のポイントとスキルアップの注意点

法務への転職を成功させるために取得しておくとよい資格

未経験から法務に転職する場合、資格を取得しておくと、ある程度有利になります。ただし、あくまで資格は、「自身の知識を高めるため」「他の求職者と差をつけるため」程度に考えておきましょう。

先述したように、法務への転職は、経験と即戦力が求められるため、資格を取得して大幅に採用率が高くなるわけではありません。

以上を前提とした上で、これから紹介する資格の取得も検討してみてください。

ビジネス実務法務検定

ビジネス実務法務検定は、コンプライアンスや法令遵守の知識を図る資格で、3級~1級まであります。

資格を取得しておけば、基本的な法律知識があるという証拠になるので、アピール材料として使えるでしょう。

ただし、3級ではアピール材料として弱いので、2級までは取得しておくのがおすすめです。

ビジネスコンプライアンス検定

ビジネスコンプライアンス検定は、健全な企業活動の推進を目的とした民間の資格です。

コンプライアンスを重視している企業の場合、ビジネスコンプライアンス検定を取得しておけば、大きなアピール材料として使えるでしょう。

特に、上級を取得しておけば、転職に有利になる可能性は高くなります。

TOEIC

法務に必須の資格ではありませんが、TOEICも受けておくとよいでしょう。なぜなら、大手企業の場合は国際案件の契約締結のために、英語力が求められるからです。

目安としては、TOEIC700点以上が好ましいです。また、企業によっては営業の席に同席する可能性もあるので、英会話スキルも磨いておくとよいでしょう。

法務への転職は資格必須ではない

上記で法務転職において取得しておくとよい資格について解説しましたが、資格は必須ではありません。アピール材料として、多少有利になる可能性はありますが、資格はあくまで知識を持っているというアピールです。

そのため、資格の取得が難しいと感じても、法務への転職を諦める必要はありません。

ただし、法務に関しては、弁護士や司法書士などの資格は歓迎される傾向にあります。独占業務を行うための資格を取得している場合は、法務への転職は有利といえます。

法務への転職で求められるスキル

法務に求められるのは、知識の他にスキルもあります。

資格などを取得していない場合でも、以下で紹介するスキルを上手にアピールできれば、採用される可能性は高くなるでしょう。

特に求められるスキルは、以下の4つです。

  • コミュニケーション能力
  • ロジカルシンキング
  • 書類作成能力
  • 業種への専門性

各スキルが求められる理由について、解説します。

コミュニケーション能力

法務の仕事は、社内はもちろん、社外とも関わる機会が多い仕事です。そのため、円滑に意思疎通ができるコミュニケーション能力が必要になります。

また、単にコミュニケーション能力があるだけではなく、法律についての知識をわかりやすく説明するための言葉選びや話し方も重要です。

論理的思考力

法律についての交渉や説明は、法律知識がない人にとってはとても難しいものです。そのため、法律知識のない相手にわかりやすく伝えるための、論理的思考も求められます。

書類作成能力

法務は契約書などの書類作成業務が多いです。そのため、書類作成のスピードや内容の正確さが求められます。

特に契約書においては、内容の正確さとスピーディーな作成が求められる傾向にあるので、書類作成のスキルをアピールすると、転職に有利になる可能性があります。

業種への専門性

先述したように、法務に求められる知識は業種によって異なります。そのため、その業種への専門性も求められるスキルの一つです。

仮に企業に関する法律への知識が乏しかったとしても、その業種に関連する法律に詳しいのであれば、採用される可能性は高くなるでしょう。

関連記事:外資系法務の仕事内容と年収や必要スキル、転職活動のポイントを解説

法務転職で求められる人間性

法務への転職で、求められる人間性について解説します。

未経験可としている企業であれば、人間性をアピールすることで、ポテンシャル採用される可能性があります。

特に、以下の特徴は法務に求められる傾向があるので、自身に当てはまる部分があるか確認してみましょう。

学習意欲が高い

法律に関する業種は、常に学ぶ意欲が必要です。法律のプロである弁護士であっても、すべての法律を覚えているわけではありません。そのため、常に学習して知識を身につける意欲が必要なのです。

また、法改正が行われた場合にも、迅速に内容を理解し対応しなければいけないため、学習意欲が低い人は変化についていけず知識を取りこぼしてしまうでしょう。

事務作業が得意

法務の仕事は、対人コミュニケーションもある一方で、主な仕事は契約書などの内容確認です。そのため、コツコツと一つの書類を確認できるような人に向いています。

地道な事務作業が苦手な人にとっては、業務内容自体にストレスを感じてしまうでしょう。

倫理観が高い

法務は、企業が法律というルールから外れないようにするための仕事です。つまり、法務をおこなう人は高い倫理観を持ち合わせていなければいけません。

他人の不正を正したり見逃したりしないために、自分自身もルールに沿って行動できる人や、正義感のある真面目な人でなければ、法務の仕事は全うできません。

情報収集に長けている

法律は、情報収集能力も求められます。なぜなら、法改正があった場合には迅速に改正内容を理解したり、トラブルが起きた際には、過去の事例と対比したりする必要があるからです。

また法律だけではなく、最新のビジネスの傾向などにもアンテナを張り、世の中の流れを理解しておくことが求められます。

変化に敏感であり、求められる内容に対して迅速に解決策を見つけられる情報収集能力が必要なのです。

関連記事:法務が転職して年収アップにつながるパターンと市場価値が高い人の特長

未経験からでも法務に転職するポイント

基本的に法務では経験者や即戦力が求められるので、未経験からの転職は難しいでしょう。

しかし未経験でも、以下の方法で転職できる可能性があります。

  • 未経験可な中小企業やベンチャー企業を探す
  • 法律事務所で経験を積む
  • 転職エージェントを利用する

以下で、その理由について解説します。

未経験可な中小企業やベンチャー企業を探す

中小企業やベンチャー企業であれば、法務を兼任できる場合があります。なぜなら、中小企業やベンチャー企業では、独立した法務部がないからです。

独立した法務部がない場合は、総部や人事などと兼任して法務を任せてもらえる可能性があります。法務以外の知識も一緒に学べるので、今後のキャリアアップにも大きく影響するでしょう。

もし、法務部のある大手企業に転職したい場合は、一度中小企業やベンチャーで法務を兼任して経験を積んでから転職活動をおこなう道もあります。

法律事務所で経験を積む

法律に関する知識が乏しい場合は、一度法律事務所に事務などで入社して経験を積みましょう。法律事務所に勤めることで、事務の仕事でも自然と法律に関する知識は身についていきます。

また、法律事務であれば作業内容自体は一般企業の事務と大きく変わらないため、未経験でも採用されやすいです。

今後転職を行う際にも「法律事務所で働いた経験がある」という経歴は大きなアピール材料になるので、一度経験を積んでみるとよいでしょう。

転職エージェントを利用する

自分の強みなどを上手くアピールできない場合は、転職エージェントを活用して法務への転職をサポートしてもらいましょう。転職エージェントは、あなたのスキルや強みをヒアリングした上で、最も適している求人を紹介してくれます。

他にも、企業とのやり取りや面接対応までサポートしてくれるので、自分だけで転職活動するより採用率はアップします。

ただし、転職エージェントは業種との相性もあるので見極めが重要です。特に法務の転職に強い転職エージェントは、以下の5つです。

  • BEET-AGENT…法務など管理部門に特化した転職エージェント。大手からベンチャー、国際法務・知財など専門業務からひとり法務まで多様な求人を保有。
  • NO-LIMIT…法務人材・弁護士に特化した転職エージェント。法曹業界とのつながりが強く、急募の非公開求人に出会える。
  • MS-Japan…法務・コンプライアンス特化の転職エージェント。士業の資格を持つ場合に有利。
  • 法務求人.jp…法務求人に特化した転職エージェント。業界大手のC&R リーガル・エージェンシー社が運営。
  • パソナキャリア…法務経験のあるアドバイザーが多数在籍。幅広く求人をチェックしたい人におすすめ。

いずれも法務に特化している転職エージェントなので、法務転職の際に活用してください。

また、法務に強いおすすめの転職エージェントについては、以下の記事でも紹介しているので、参考にしてください。

関連記事:法務の転職に強い転職エージェントおすすめ6社を徹底比較!転職市場や転職成功ポイントも解説

法務に転職後のキャリアパス

法務を通過点としてよりキャリアを高めたい場合は、主に以下3つのキャリアパスがあります。

  • 法務部のトップとして経営に関わる
  • CLO
  • 士業

以下で、それぞれのキャリアについて解説します。

法務部のトップとして経営に関わる

法務として経験を積んでいけば、法務部のトップを任せられるようになります。

トップにまでなると、法務業務以外の経営部分も相談されるようになるでしょう。この立場にまでなれば、企業にとっては欠かせない存在になります。

しかし、経営視点も必要になるため、この立場になるまでに、経営の知識も身につけておかなければいけません。

CLO

CLOとは、「Chief Legal Officer」の略で、最高法務責任者を指します。主に弁護士資格を取得している人が任命される役職ですが、弁護士資格が必須なわけではありません。

法務を長年務めて、企業法務の知識を蓄積しておけばCLOになれる可能性はあります。

士業

法務で法律の知識や経験を積んだ後に、弁護士や司法書士などの資格を取得する人もいます。士業の資格を取得しておけば、個人で独立することも可能です。

ただし、士業の資格取得は困難な道のりです。参考として、司法試験合格までに必要な勉強時間の目安は、3,000~8,000時間と言われています。

もし、将来的に士業としての独立を考えているのであれば、法務として働きながら司法試験に向けた勉強をしておきましょう。

法務への転職はポイントを押さえる

法務への転職は一般的に難しいとされていますが、決して無謀ではありません。

求められるスキルや人間性を持っていたり、未経験可の求人を探したりすれば、採用される可能性はあります。

ただし、未経験とは言っても、ある程度の法律知識は求められるので、自身の学びのためにも、資格取得を目指しながら法律知識を蓄えておくとよいでしょう。

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佐藤 達也

弁護士・公認会計士・税理士等の士業や、管理部門特化の転職サポートを行う人材紹介会社に在籍。士業・バックオフィスに特化した転職ノウハウ・企業調査を担当しています。分野特化だからこその、勘所を押さえたリアルな情報を発信できるよう心がけています。