看護師が転職を考える際、選択肢の一つとして公立病院が挙げられます。公立病院は安定性や福利厚生の充実など、多くの魅力的な特徴を持っています。

しかし、民間病院とは異なる点も多く、転職を検討する際には後悔しないように、十分に考えて決めることが大切です。

この記事では、公立病院で働く看護師の特徴や民間病院との違い、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。

さらに、公立病院への転職を成功させるためのコツや、よくある質問についても紹介しますので、自分に合った転職先を見つける参考にしてください。

公立病院で働く看護師とは

公立病院で働くにあたり、公立病院はどのような病院か、民間病院との違い、公立病院で働く看護師の仕事内容や役割などを確認しましょう。

公立病院とは「自治体が運営する病院」

公立病院は、都道府県・市町村などの自治体が母体となり、設立・運営する医療機関を指します。

これらの病院は地域の医療ニーズに応えるために設立され、地域住民の健康を守る重要な役割を担っている病院です。

公立病院の主な特徴として、地域の中核病院としての役割、救急医療や高度医療の提供、災害時の医療拠点としての機能などが挙げられます。

公立病院で働く看護師は地方公務員となり、これらの特徴を持つ医療機関で、地域医療の最前線で活躍することになります。

公立病院と民間病院の違い

公立病院と民間病院には運営主体の違いがあり、公立病院が都道府県・市町村などの自治体、民間病院が民間企業や医療法人です。

経営方針においては、公立病院が公共性を重視するのに対し、民間病院は採算性も考慮します。

公立病院は、基本的な給料や雇用条件の基準などは公務員と同じであり、経営状態に左右されないことが特徴です。

一方、民間病院は経営状態によって、スタッフの給料や賞与が左右されるリスクがあります。

また、異動や転勤に関しては、公立病院では自治体内での異動がある一方、民間病院では基本的に少ないことが違いです。

福利厚生は公立病院の方が充実している傾向にあり、診療科の範囲も公立病院の方が幅広い傾向にあります。

これらの違いを理解した上で、自分のキャリアプランや価値観に合った選択をすることが重要です。

仕事内容や役割について

公立病院で働く看護師の基本的な仕事内容や役割は、民間病院と大きな違いはありません。

主な業務内容には、患者の日常生活援助、診療の補助、医療機器の操作、患者や家族への説明・指導、他職種との連携・調整などがあります。

ただし、公立病院ならではの特徴もあります。地域医療への貢献として、幅広い医療ニーズに対応する必要があり、看護師も地域医療の視点を持って業務に当たることが求められます。

また、災害時の医療拠点としての役割から、災害医療に関する知識や技能を身につける機会が多くあることも特徴です。

さらに、教育・研究活動に力を入れている公立病院も多く、看護師育成に携わったり、地域の保健行政と密接に連携したり機会も多くあります。

これらの特徴を踏まえると、公立病院で働く看護師は、患者のケアだけでなく、地域全体の健康を支える重要な役割を担っているといえるでしょう。

看護師の転職先に公立病院をおすすめする理由

看護師の転職先に、公立病院をおすすめする理由として、以下の5つがあります。

それぞれ詳しく解説します。

さまざまな診療科を経験できる

公立病院の大きな魅力の一つは、幅広い診療科を経験できることです。多くの公立病院は地域の中核病院として機能しているため、内科、外科、小児科、産婦人科など、さまざまな診療科を有しています。

多様な医療現場を経験できる環境が整っていることは、看護師として幅広い知識と技術の習得、将来的な転職時の選択肢の広がりにつながる点が強みです。

さまざまな診療科での経験は、看護師としての総合的なスキルアップに大きく貢献し、長期的なキャリア形成に役立ちます。

手厚い教育体制や研修制度がある

公立病院は、教育体制や研修制度が充実しています。これは、公共性の高い医療機関として、質の高い医療サービスを提供し続けるために重要視されているのが理由です。

新卒看護師向けの体系的な教育プログラム、経験年数に応じた段階的な研修制度、認定看護師や専門看護師の資格取得支援、学会参加への支援、院内研究活動の奨励など多岐にわたる教育・研修の機会が提供されています。

これらの充実した制度により、看護師としての専門性を高め、継続的なキャリアアップを図ることが可能です。

福利厚生が充実している

公立病院の大きな魅力の一つが、充実した福利厚生制度です。年次有給休暇や夏季休暇、冬季休暇などが充実しています。

また、育児休業や介護休業の制度や特別休暇なども積極的に取得し、仕事と家庭の両立がしやすい環境が整っていることは魅力です。

さらに、自治体によっては住宅手当や借り上げ住宅の制度があり、定期健康診断や人間ドックの補助など、健康管理のサポートも充実しています。

このような充実した福利厚生により、長期的に安心して働ける環境が整っている病院です。

安定した給与と賞与が保証されている

公立病院で働く看護師の給与体系は、一般的に年功序列の傾向があり、退職するまで安定した収入が保証されています。

毎年の定期昇給があり、年2回の賞与支給は一般的に民間病院よりも高水準です。また、夜勤手当、住居手当、扶養手当など、さまざまな手当が受け取れ、残業代もしっかりと支払われます。

このように長期的に見て安定した収入を得られ、生活設計がしやすくなることもポイントです。

退職金制度が適用される

公立病院で働く看護師には、公務員と同様の退職金制度が適用されます。この制度は勤続年数に応じて支給額が増えていくため、長く勤めるほど多い退職金が受け取れるでしょう。

また、一般的に民間企業よりも高額な退職金が支給され、自治体が運営していることにより支給の確実性も高いことが特徴です。

まとまった額の退職金は、退職後の生活設計に大きな助けとなります。この退職金制度は、長期的なキャリアプランを考える上で大きな魅力の一つといえるでしょう。

公立病院で働く看護師のデメリット

公立病院で働く看護師は、民間病院と比較した際にデメリットもあります。デメリットは、主に以下の3つです。

1つずつ詳しく見ていきましょう。

副業が禁止されている

公立病院で働く看護師は、一般的に副業が禁止されています。これは地方公務員法にもとづく職務専念義務によるものです。

具体的には、休日や夜間のアルバイトも原則として認められず、個人的に看護サービスを提供することも制限されます。さらに、講演や執筆活動などの副業的活動も原則として許可が必要となります。

この制限は、収入増加の機会を制限するだけでなく、多様な経験を積む機会も制限する可能性があります。

看護師のキャリアや経済面を考える上で、デメリットと感じる人もいるでしょう。

転勤の可能性がある

公立病院で働く看護師のなかで、地方公務員として採用された場合、同じ自治体内での転勤の可能性があります。

転勤があると、生活環境の変化が生じる可能性があり、住居や通勤経路が変わることもあります。家族がいる場合は、子どもの学校や配偶者の仕事にも影響が及ぶでしょう。

また、専門性を高めたい特定の分野がある場合、転勤によってその機会がなくなる可能性もあります。

さらに、転勤のたびに新しい職場環境に適応する必要があり、一から人間関係を構築する大変さもあるでしょう。

ただし、転勤の頻度や範囲は自治体によって異なるため、事前に確認することが重要です。

「公立」ではなくなる場合もある

近年、財政難や効率化の観点から、公立病院の独立行政法人化や民間への移管が進んでいます。病院が「公立」ではなくなると、職場環境や待遇などにさまざまな変化が生じる可能性があります。

まず、公務員から民間職員への身分変更が生じ、公務員としての福利厚生が適用されなくなる可能性があるでしょう。

さらに、経営方針がより効率性や採算性を重視する方向に変わったり、公務員のような安定性が失われるリスクもあるのです。

このような変化は、長期的なキャリアプランに大きな影響を与える可能性があります。公立病院への転職を検討している場合は、将来的な可能性や安定についても考慮することが大切です。

公立病院で働く看護師の給与や年収

公立病院で働く看護師の給与や年収は、一般的に民間病院よりも高い傾向ですが、具体的な金額は自治体や経験年数によって異なります。

初任給は大卒の場合、月給20万円前後からスタートすることが多く、毎年の一定の昇給により確実に上昇していきます。年2回の賞与は、合計で4〜5ヶ月分程度が一般的で約133万円であり、民間を上回る傾向です。

さらに、夜勤手当や住居手当、扶養手当などの各種手当も整っており、基本給に上乗せされます。

平均給与合計は約32万円/月、平均年収は約518万円です。

ただし、自治体によって変動し、地域手当が加算される地域ではさらに高くなる可能性があります。

長期的な視点で見ると、安定した収入が見込める点が公立病院の大きな魅力の一つといえるでしょう。

参考：令和５年地方公務員給与の実態│総務省

転職先に公立病院の看護師が向いている人の特徴

転職先に公立病院の看護師が向いている人の特徴として、経験やスキルアップを重視したい人や安定した給与を求めている人、ワークライフバランスを大切にしたい人が挙げられます。

経験やスキルアップを重視したい

公立病院は、看護師としての幅広い経験とスキルアップを求める人にとって理想的な環境です。

多くの公立病院が地域の中核医療機関として機能しているため、さまざまな診療科や専門分野での経験を積むことができます。

また、充実した研修制度や継続教育プログラムにより、最新の医療技術や知識を習得する機会も豊富にあります。

さらに、公立病院では学会参加や専門資格取得のサポートも手厚いため、スキルアップに励む看護師にとって魅力的な職場です。総合的な看護スキルを磨きながら、自身の専門性を高めていけるでしょう。

安定した給与や退職金を求めている

公立病院は、安定した給与体系と充実した退職金制度を求める看護師にとっておすすめです。

公立病院は、民間病院と異なり、病院の経営状況に左右されず、安定した給与と賞与が受け取れます。

また、民間病院と比較して高水準であることが多く、長期的に見て安定した収入が期待できるでしょう。

さらに、公務員と同様の退職金制度が適用されるため、勤続年数に応じて高額の退職金が支給されます。

経済的な安定は、将来の生活設計を考える上で大きな魅力となり、働き続けるモチベーションにもなるでしょう。

ワークライフバランスを大切にしたい

公立病院は、ワークライフバランスを重視する看護師にとっても魅力的な職場環境です。

労働基準法にもとづいた勤務体系が徹底されており、残業時間の管理も厳格になっています。また、年次有給休暇や特別休暇などの休暇制度が充実しており、取得しやすい雰囲気があるでしょう。

また、育児や介護に関する支援制度も整っているため、家庭生活と仕事の両立がしやすい環境です。

さらに、多くの公立病院では、ワークライフバランスの改善に向けた取り組みが積極的に行われており、看護師の心身の健康維持にも配慮されています。

公立病院は、プライベートな時間を確保しながら、看護師としてのやりがいを実感できる転職先といえるでしょう。

公立病院への転職を成功させるコツ

公立病院への転職を成功させるコツとして、以下の4つがあります。

一つずつ詳しく見ていきましょう。

採用試験の対策をする

公立病院への転職を成功させるためには、採用試験の対策が欠かせません。公立病院では、一般的に書類選考、筆記試験、面接試験が行われます。

筆記試験では、看護師としての専門知識だけでなく、一般教養や時事問題が問われることも多いため、幅広い分野の学習が必要です。過去問や参考書を活用し、効率的な学習計画を立てましょう。

また、面接では、公立病院で働く意欲や地域医療に対する理解が重視されます。

事前に公立病院の役割や運営方針について調べ、自分の経験やスキルをどのように活かせるかを具体的に伝えられるよう準備することが重要です。

採用試験は競争率が高い場合もあるため、しっかりとした準備で合格の可能性を高めましょう。

志望動機を明確にする

公立病院への転職を目指す際には、自分自身の志望動機を明確にしておくことが大切です。面接では、「なぜ公立病院なのか」という質問が必ずあります。

質問に対して明確で具体的な回答ができるよう、自分の価値観やキャリアプランと公立病院の特徴を結びつけて用意しましょう。

「地域医療に貢献したい」「幅広い診療科で経験を積みたい」「安定した環境で長期的にキャリアを築きたい」といった理由の場合、その背景やエピソード、具体的な目標も併せて説明しましょう。

また、公立病院の理念や取り組みについても調べ、共感している点を伝えることで、志望動機に説得力が生まれます。

各自治体の採用情報をチェックする

公立病院は自治体ごとに運営されているため、採用情報も各自治体によって異なります。そのため、自分が希望する地域の自治体が発信する、採用情報を定期的にチェックすることが重要です。

自治体の公式ホームページには、公立病院の採用試験の日程や募集要項、必要な資格などが詳細に記載されています。ただし、募集時期は年に1回程度の場合もあるため、タイミングを逃さないよう注意しましょう。

また、自治体によっては説明会や見学会などを実施している場合もあります。この機会を活用すると、公立病院の雰囲気や業務内容について直接知ることができ、自分に合った職場かどうか判断する材料になります。

看護師専門の転職エージェントを活用する

看護師専門の転職エージェントは、公立病院への転職活動を効率的に進めるためにも有効な方法です。

公立病院の求人情報だけでなく、応募書類作成や面接対策など、転職活動全般をサポートしてくれるサービスが受けられます。

また、非公開求人など一般には出回らない情報も得られる可能性があります。さらに、専任アドバイザーがついてくれる場合もあり、自分の希望条件やキャリアプランに合った求人を提案してもらえる点も魅力です。

特に、公立病院特有の採用情報について詳しいアドバイザーからアドバイスを受けることで、不安なく転職活動を進められるでしょう。

ただし、複数の転職サイトを比較し、自分に合ったサービス内容やサポート体制があるサイトを選ぶことが大切です。

公立病院への転職におすすめの転職エージェント3選

公立病院への転職におすすめの転職エージェントは、以下の以下の3つです。

各エージェントの特徴やサービスの内容などについて1つずつ紹介していますので、エージェント選びの参考にしてください。

レバウェル看護

レバウェル看護（旧：看護のお仕事）は、看護師に特化した転職サービスで、レバレジーズメディカルケア株式会社が運営しています。厚生労働省から「適正な有料職業紹介事業者」に認定されており、信頼性と安心感が特徴です。

また、約15万件という業界最大級の求人数を誇り、在籍アドバイザーが年4,000回以上の職場訪問を行うことで、職場のリアルな情報を提供しています。

さらに、給料アップや勤務条件の交渉もサポートしてくれるため、希望に合った職場を効率的に見つけることが可能です。転職後の後悔を減らし、安心して新たなキャリアをスタートできるサービスとして、多くの看護師から支持されている転職サービスです。

ナース専科 転職

ナース専科転職（旧：ナース人材バンク）は、株式会社エス・エム・エスが運営する看護師向け転職サービスで、厚生労働省の適正認定を受けた信頼性の高いサービスです。

全国15カ所に拠点を持ち、対面相談が可能で、北海道から沖縄まで約17,000件の求人を取り扱っています。

美容クリニックや一般企業など病院以外の求人にも強く、地方の求人も充実しています。さらに、担当者は病院の内部情報に詳しく、的確なアドバイスが受けられる点が特徴です。

年間利用者数10万人超、看護師登録者数No.1の実績を持つ老舗サービスとして、多くの看護師に支持されています。

 

看護roo！

看護roo!転職は、看護師向けメディア「看護roo!」が運営する特化型求人転職サイトで、約20万件の豊富な公開求人数を誇ります。

全国の多様な求人を扱い、エージェント求人と直接応募求人の両方から選択できるため、柔軟な転職活動が可能です。

LINEでのやり取りにも対応しており、在職中でも気軽に利用しやすい環境が整っています。また、職場診断やキャリアアドバイザー診断、転職応援コンテンツなどの充実したサービスを活用できるのが特徴です。

応募先の職場の内部事情も詳しく知ることができるため、自分の希望条件に合った理想的な職場への転職をサポートしてくれる信頼性の高いサービスです。

 

公立病院の看護師に関してよくある質問

公立病院の看護師に関して、よくある質問をまとめています。

公立病院の転職や就職に年齢制限はある？

公立病院の看護師採用において、法律上は年齢制限を設けることは禁止されています。しかし、実際の運用では、自治体や病院によって対応が異なる場合があるのも事実です。

多くの公立病院では、能力や経験を重視する傾向にあり、年齢にとらわれない採用を行っています。ただし、一部の自治体では、定年までの勤務可能年数を考慮して、事実上の年齢制限を設けている場合もあります。

応募を検討する際は、各自治体や病院の募集要項を確認し、不明な点があれば直接問い合わせることをおすすめします。

公立病院は中途採用でも採用可能？

公立病院では、中途採用も積極的におこなわれています。多くの公立病院が経験豊富な看護師を求めており、民間病院などでの勤務経験を持つ看護師の採用に前向きです。

中途採用では、即戦力としての期待が高く、専門的なスキルや経験が評価されます。

採用方法は自治体や病院によって異なりますが、一般的に書類選考や筆記試験、面接などの過程を経て採用が決定されます。

中途採用の募集は、新卒採用とは別に行われることが多いため、希望する病院の採用情報を定期的にチェックすることが大切です。

公立病院の看護師は何歳まで働ける？

公立病院の看護師の定年は、一般的に55〜60歳の間に設定されています。ただし、多くの公立病院では定年後も再雇用制度を設けており、希望すれば65歳まで働き続けることが可能な場合が多いでしょう。

再雇用制度を利用する場合、勤務形態や給与条件が変更になりますが、豊富な経験を活かして後進の指導にあたるなど、重要な役割を担います。

また、近年では少子高齢化や看護師不足を背景に、定年年齢の引き上げや、定年後の継続雇用の拡大を検討する自治体も増えています。個々の状況や希望に応じて、長く活躍できる環境が整いつつあるといえるでしょう。

まとめ

公立病院は、看護師の転職先として安定性や充実した福利厚生、幅広い診療科での経験が積める点など、多くの魅力を持っています。

民間病院と比較すると、給与や退職金が安定しており、教育体制や研修制度も整っているため、スキルアップを目指す人に最適です。一方で、副業禁止や転勤の可能性、公立病院が民間化するリスクなどのデメリットもあります。

公立病院への転職を成功させるには、採用試験対策や志望動機を明確にすることが重要です。

また、看護師専門の転職サービスも活用しつつ、理想的な職場環境を見つけられるよう準備を進めていきましょう。