「発達障害があってもできる仕事って何だろう？」
「自分に向いている仕事が知りたい」

発達障害があり、自分にはどんな仕事ができるのかわからないと感じる方も多いでしょう。

発達障害の特性は幅広く、個人差が大きいため、仕事探しや継続に苦労するケースは珍しくありません。

この記事では、発達障害のある方に向いている仕事・向いていない仕事を解説します。

発達障害がある方の働き方や仕事探しのコツについても紹介しているため、参考にしてみてください。

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発達障害とは

そもそも発達障害とは、脳機能の発達に関連する障害の総称です。

特性・特徴に応じた多様な症状があり、仕事や対人関係で悩む方も多くいます。

まずは、発達障害の種類や特徴について理解しましょう。

発達障害の種類

発達障害には、大きく分けて次の3種類があります。

ただし、発達障害の症状には重なり合う部分も多く、たとえば「ASDの症状とADHDの症状をあわせ持つ」といったことも珍しくありません。

また、どの特性が強く出るかや程度の大きさも個人差が激しいため、一般的な症状よりも、自分の特性を理解することが大切です。

発達障害の特徴

発達障害の種類別の特徴・特性は次のとおりです。

ASD：自閉スペクトラム症

ASDは、自閉症スペクトラム・自閉症・アスペルガー症候群とも呼ばれます。

社会性に乏しく、他者の言葉の意味をきちんと理解できなかったり、他者への関心が薄かったりするのが特徴です。

人によっては、五感に強いこだわりを持つ感覚過敏や、反対に痛みや刺激を感じにくい感覚鈍麻（どんま）、体をうまく扱えず運動能力に欠ける発達性協調運動障害などをあわせ持ちます。

ADHD：注意欠如多動症

ADHDは、忘れっぽく集中できない「不注意性」、じっとしていられない「多動性」、待つことができない「衝動性」が特徴です。

多動性と衝動性があいまって、多弁となる方も多くいます。

LD：学習障害

LDは知的な遅れはないものの、「読む・書く・計算する」のいずれかの能力だけが、ほかの能力に比べて極端に低い状態です。

文字の読み書きのみの障害の場合は「ディスレクシア」と呼ばれます。

参考：政府広報オンライン、厚生労働省、国立成育医療研究センター

発達障害がある方が仕事でつまずきやすいポイント

発達障害がある方が仕事でつまずきやすいポイントは次のとおりです。

コミュニケーションに難がある

特にASDの傾向が強い方は、他者とのコミュニケーションに難しさを感じることが多いでしょう。

ASDの方は相手の気持ちを読み取りにくく、目で見たまま受け取ってしまうため、柔軟性に欠ける部分があります。

冗談や曖昧な表現が通じず、気付かない間に仕事相手や同僚を怒らせたり遠ざけたりして、孤立化することも考えられます。

集中力に欠ける

ADHDの傾向を持つ方は集中力に欠ける場合が多く、仕事上でもつまずきを感じやすいでしょう。

注意力が続かないためミスが多く、一つの作業をやりきることが難しいかもしれません。

また、仕事に関係ない話をえんえん喋ってしまう、じっとしていられずそわそわ動き回ってしまうなど、周囲から「真面目にやる気がない」と思われやすいといえます。

柔軟な対応ができない

ASDやADHDの方は、柔軟な対応が苦手です。

曖昧な指示や表現では、どう作業していいかがわからず、仕事を進められないこともあります。

また、一度に複数の作業を同時進行するマルチタスクも苦手な場合が多いでしょう。

さらに、予期しないトラブルに不安を感じやすいため、人の入れ替わりや作業内容の変化が大きい職場は不向きです。

不注意からのミスが多い

ADHDの方は忘れっぽく、思いついたらすぐに行動する衝動性が強い分、ミスも多い傾向があります。

脳機能の障害で注意力が持続しないことが原因ですが、一般の方には「なぜ同じミスを何度も繰り返すんだ」と思われかねません。

ミスが続くと、同僚や会社にも迷惑をかけることになり、結果的に会社にいづらくなることも考えられます。

簡単な計算ができない

LDの方は、知的障害はないのに簡単な計算や読み書きができないため、仕事で不便を感じることがあります。

かかってきた電話のメモを取る、経費のレシートをまとめるなど、ちょっとした場面で困ったり、劣等感を感じたりするかもしれません。

関連記事：【発達障害で仕事辞めたい方向け】理由や改善策と向いている仕事を解説

【種類別】発達障害のある方に向いている仕事

ここからは、発達障害の種類別に、発達障害のある方に向いている仕事を紹介します。

ASDに向いている仕事

ASDの特性を持つ方には、次のような強みがあります。

ASDの強みを活かすためには、次のような仕事がおすすめです。

マニュアルが決まっていてコツコツ作業でき、接客などがない倉庫や工場での作業は、ASD向きといえます。

また、興味のある分野に集中できるプログラマーやシステム開発など、IT分野でも実力を発揮できるでしょう。

そのほか、自分のペースでできるデータ入力やライター、オペレーションが定まっているコールセンターなどもぴったりです。

ADHDに向いている仕事

ADHDの特性を持つ方には、次のような強みがあります。

ADHDの強みを活かすためには、次のような仕事がおすすめです。

興味のある分野ではこだわりや能力を発揮できるため、調理師やデザイナー、研究者などに向いています。

また、コミュニケーション能力の高さや豊富なアイデアを活かせる営業・販売・企画職などもぴったりでしょう。

職種だけでなく、フリーランスや在宅でできるかなど、自分が働きやすい環境を整えることも、働きやすさを高めるポイントです。

LDに向いている仕事

LDの特性を持つ方には、次のような強みがあります。

LDの強みを活かすためには、次のような仕事がおすすめです。

LDの方はコミュニケーションや仕事能力には問題がないため、販売や介護などの接客業に向いています。

計算や読み書きの必要がない、工場のライン作業や清掃業を選ぶのもいいでしょう。

一般的に、LDの方は視覚や聴覚が優れているとされているため、イラストレーターやデザイナー、カメラマンなどの仕事に就くと、能力を活かせるかもしれません。

また、一般的な事務や経理職で計算や読み書きが必要な場面でも、計算機を使用する、パソコンの音声読み上げ機能を使うなど、不足な部分を補いながら働くことも可能です。

【種類別】発達障害のある方に向いていない仕事

ここでは、種類別に発達障害のある方に向いていない仕事を見ていきましょう。

以下に挙げられているなかでも、その仕事に就いて活躍されている方も当然いらっしゃいますが、一般的に不向きとされている仕事を解説していきます。

ASDに向いていない仕事

ASDの特性を持つ方には、次のような弱みがあります。

そのため、次のような仕事は選ばないほうがいいでしょう。

マニュアルどおりの受け答えをするコールセンターなどは別として、直接お客様とやりとりする接客業や営業は避けたほうが無難です。

また、臨機応変な電話対応や接客が求められ、書類作成の機会も多い事務職も避けるべきといえます。

ADHDに向いていない仕事

ADHDの特性を持つ方には、次のような弱みがあります。

そのため、次のような仕事は選ばないほうがいいでしょう。

マルチタスクが求められるドライバーや保育士、ミスが人命にかかわる医師や看護師などは向かないでしょう。

また、単純作業をコツコツ続けられない特性から、工場のライン作業や倉庫作業などは不向きといえます。

LDに向いていない仕事

LDの特性を持つ方には、次のような弱みがあります。

そのため、次のような仕事は選ばないほうがいいでしょう。

読み書きの場面が多い事務・経理や、営業・保険などの業種は難しいといえます。

電話応対の機会が多いコールセンターも同様です。

また、デジタル化が進んでいる職場であれば、計算や読み書きの不得手を補いながら働ける場合もありますが、アナログ作業が多い職場は避けたほうが良いかもしれません。

今の仕事が向いていないと感じたら退職代行の利用もおすすめ

現在働いているものの「向いていない」と感じるなら、退職代行を使って辞めるのも方法の一つです。

発達障害は目に見えないため、周囲の理解を得づらく、働きにくさを感じることも多いでしょう。

より自分に合った職場に出会うには、最短即日で退職できる退職代行がぴったりです。

おすすめの退職代行サービスについては、以下の記事で詳しく紹介しているので参考にしてみてください。

発達障害がある方の働き方のコツ

次に発達障害がある方の働き方のコツを見ていきましょう。

自分の特性について理解を深める

発達障害のある方がうまく働くためには、自分の特性について理解を深めることが何より大切です。

自分の得意なこと・苦手なことを明確化し、それに合った職種や職業、仕事環境を選びましょう。

自分でわからないようなら、家族や友人など、第三者から忖度のない意見を求めるのも有効です。

働き方を見直す

現在、仕事がうまくいっていないと感じる場合は、働き方を見直してみましょう。

仕事内容が合っていない、人間関係が合わない、作業に集中しづらい環境など、さまざまな原因が考えられます。

発達障害のある方は変化を苦手とするため、なるべく人の入れ替わりがなく、個別に作業環境に配慮してもらえる職場がベストです。

雇用枠を見直す

雇用枠を見直すのも、方法の一つです。

発達障害がある方の働き方として、主に次の4つがあります。

一般採用枠：オープン就労

一般採用枠とは、いわゆる健常者の雇用形態です。

「オープン就労」は障害があることをオープンにして仕事を探す方法で、企業側が障害者への配慮体制を整えていることがほとんどです。

そのため、発達障害の特性に関しても個別の配慮が期待できますが、求人数や選択肢は非常に少ないといえます。

一般採用枠：クローズ就労

「クローズ就労」は、障害があることを隠したままで就職を目指します。

オープン就労や障害者雇用枠に比べると求人数が圧倒的に多く、賃金も高い傾向があり、選択肢の広さが特徴です。

ただし、健常者と同様に扱われるため個別の対応は期待できず、働きやすさや環境にバラつきが出やすいでしょう。

障害者雇用枠

障害者雇用枠とは、障害者手帳を持った方が対象の雇用制度です。

障害者雇用促進法において、企業や国は一定の割合以上の障害者の雇用が義務付けられており、一般企業で2.5％となっています。

また、40人以上の従業員がいる企業では、1人以上の障害者雇用が必要です。

障害者雇用枠は一般雇用枠と別に設定されているため、一般雇用枠よりも入社しやすいといえます。

また、定期的な通院や業務内容の変更が認められるなど、配慮を受けやすいこともメリットです。

福祉的就労

福祉的就労とは、一般企業での就労が難しいとき、就労継続支援事業所や地域活動支援センターなどで働く方法です。

事業所のサポートを受けながら作業できるため、自分のペースで進めやすく、人との関わりや作業を通して徐々に働く経験を積めます。

体調にあわせて、勤務時間や仕事量の調整も可能です。

企業側に配慮を求める

一般の企業でも、労働者が企業側に配慮を求めることが認められています。

2016年に障害者差別解消法が定められたことで、障害者を差別することなく、共生社会を目指す動きが高まっています。

発達障害がある方の場合、次のような配慮を求めることが可能です。

	困りやすい場面	配慮内容
作業への配慮	口頭の指示が理解できない	具体的に紙に書いてもらう
	急な予定変更に対応できない	1日のスケジュールを紙に書いてもらう
	作業の優先順位がわからない	担当者を1人にしぼり、その人からのみ指示を出してもらう
	マルチタスクができない	1つの作業が終わってから次の指示を出してもらう
環境への配慮	音が気になって集中できない	耳栓の着用を許可してもらう
	周囲に人がいると気になって集中できない	・座席に仕切りをつけてもらう ・職場の隅にデスクを設けてもらう
コミュニケーションへの配慮	自分から人を頼れない	毎日上司に質問・相談できる時間を設けてもらう
	誰に質問していいかわからない	担当者を1人にしぼり、わからないときはその人に聞いてもらう
	過集中で頑張りすぎてしまう	個室で休憩させてもらう

自分の苦手や特性に合った配慮を受けることで、働きやすさを上げられるでしょう。

就労サポートを受ける

そもそも、自分一人で自分に合った仕事を見つけることが困難だという場合は、次のような就労サポートを受けるのもおすすめです。

いきなり働くことが不安であれば、就労移行支援事業所や地域障害者職業センターで福祉的就労から始めてもいいでしょう。

また、職業訓練を受けたり、ハローワークのみどりの窓口（障害者窓口）を利用したりすることもできます。

自分一人で悩むより、周りの人の力を借りながら、働きやすい環境や仕事を見つけていきましょう。

発達障害がある方に向いている仕事探しのコツ

発達障害がある方に向いている仕事を探すコツは、次のとおりです。

メンタルヘルス対策に取り組んでいるか

まず、メンタルヘルス対策に取り組んでいる会社かどうかをチェックしましょう。

2015年に労働安全衛生法が施行され、企業にはメンタルヘルス対策が義務付けられました。

企業がおこなっているメンタルヘルス対策には、次のようなものがあります。

いざというときに相談できる窓口やカウンセラーの制度が整っていたり、セミナーや研修を実施していたりする企業であれば、発達障害の特性に関しても理解を得やすいでしょう。

福利厚生が充実しているか

福利厚生が充実していることもポイントです。

発達障害のある方が長く働くには、勤務時間や休日、働く環境に無理がないことが求められます。

そのため、有給休暇がきちんと取れる、休日出勤やサービス残業がないなど、福利厚生に力を入れている企業だと安心です。

柔軟な働き方ができるか

柔軟な働き方ができるかもチェックしましょう。

他人がいると集中できない方は自宅でのリモートワーク、音が気になる方は耳栓の着用可など、自分に合った働き方を認めてもらえると、仕事を続けやすくなります。

また、会社員としてはうまく働けなかった方でも、独立してフリーランスになるとのびのび仕事ができるというケースもあります。

さまざまな可能性を考えて、自分に合った働き方を選んでみてください。

興味ややりがいを持てるか

環境を整えることももちろんですが、仕事自体に興味ややりがいを持てるかも重要なポイントです。

発達障害のある方は、就職から1年で3割が離職しているという現実があります。

長く働いていくためには、自分がどんな仕事であれば苦がなくできるか、やりがいをもってできるかを、きちんと分析することが重要です。

参考：障害者の就業状況等に関する調査研究│障害者職業総合センター

まとめ

発達障害には、大きく分けてASD・ADHD・LDの3種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。

特性がまじわりあうことも多く、得意や苦手なことの個人差が大きいため、自分の特性を理解することが大切です。

自分に合った仕事を見つけるには、働き方や雇用枠の見直し、企業側からの配慮を求めるほか、就労サポートを受ける選択肢もあります。

そのうえで、得意なことを活かし、苦手なことはカバーしながら働ける職種や職場を見つけていきましょう。