2023年に厚生労働省が調査した「看護師等（看護職員）の確保を巡る状況」によると、結婚を理由に退職する看護師は11.6%いることがわかりました。

このアンケートに回答した64,628名のうち、11.6%（7,494名）が結婚を理由に退職しているので、珍しい転職理由ではありません。

本記事では、ライフスタイルが変わっても長く働ける職場の選び方から、転職を成功させるポイントまでを紹介します。

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関連記事：看護師向け転職エージェントおすすめ19選を徹底比較【2024年最新】

結婚を理由に退職する看護師は11.6%

厚生労働省が2023年に発表した「看護師等（看護職員）の確保を巡る状況」によると、64,628名中7,494名（11.6%）が結婚を理由に退職したことがわかりました。

看護師の退職理由1位は年代別で異なります。

厚生労働省が2023年に発表した「人口動態統計月報年計（概数）の概況」によると、平均初婚年齢は夫31.0歳で、妻は29.5歳でした。

男性は看護師歴9～11年目にあたる31歳、女性は看護師歴7～9年目の29歳に結婚する可能性があることがわかります。

看護師が結婚を理由に転職する理由

最近では男性看護師も増えてきましたが、看護師として活躍している方の9割が女性です。

その女性看護師が結婚を理由に転職する理由は以下の3つです。

それぞれ解説します。

勤務先に通うのが難しくなるから

看護師が結婚をきっかけに転職する理由の1つ目は勤務先に通うのが難しくなるからです。

結婚したら一緒に暮らす夫婦はたくさんいます。

例えば遠距離恋愛の末、結婚した場合、夫がいる地域に引っ越すかもしれません。近距離恋愛でも、住んでいる場所によっては通勤に片道1時間以上かかる可能性があります。

今後職場への通勤が大変になることから、自宅から通いやすいエリアで転職先を探す看護師もいます。

もともと職場に不満があったから

もともと職場に不満があった看護師が、結婚をきっかけに転職するケースもあります。

不満があったにもかかわらず、転職しなかった理由は2つ考えられます。

看護師は今後もニーズが安定している職種です。そのため、看護師の求人票は世の中にたくさん掲載されています。

しかし、転職時に有利なのは経験豊富な看護師です。人手不足の影響から即戦力を求めている職場は多いため、看護師経験が1年未満だと選択肢が狭まる可能性があります。

また雇用保険に1年以上加入しているなど条件を満たせば、転職先が見つからず退職した場合に失業手当が支給されるのです。

失業手当は自己都合退職だと支給されるのに3ヶ月以上かかります。結婚とともに1ヶ月以内に引っ越す場合は「特定理由離職者」に該当します。

正当な理由のある自己都合退職になるため、失業手当もすぐに支給されるのです。

育休などの制度が用意されていないから

少数精鋭や独身のスタッフが多い職場だと、育休などの制度が用意されていないこともあります。

将来、出産・育児することを見据えて、子育てしやすい職場に転職する看護師も少なくありません。

例えば以下のような制度が整っている職場であれば、ライフスタイルが変わっても長く働きやすいでしょう。

将来的に子どもが欲しい方は、すぐに転職の予定がなくとも、現職で子育てしやすい制度が用意されているか確認してみましょう。

結婚前に転職するメリット・デメリット

結婚前に転職するメリットの1つ目は仕事と家庭との両立がしやすいことです。

結婚前に恋人と同居し、自宅から通いやすい職場に転職すると結婚後もスムーズに働けるでしょう。

結婚予定であることを面接担当者に伝えれば、シフトを考慮してくれる可能性があります。

また6ヶ月以上働けば産休が、1年以上働けば育休が取得可能です。将来的に子どもが欲しい方は結婚前に転職した方が良いかもしれません。

結婚前に転職するメリットの2つ目は、貯金しやすいことです。

結婚前に転職すれば、勤務先で働く期間が長くなります。実家で暮らしている場合は家賃が不要なので、その分を結婚資金などに充てられるでしょう。

将来的に子どもが欲しい場合、産休・育休・時短制度を活用すると収入が落ちてしまいます。働けるときに活躍し、貯金しておけばいざというときの備えとなるでしょう。

結婚前に転職するデメリットは、現職の上司から引き止められる可能性があることです。

また転職先に結婚予定であると伝えても、入籍するまでは未婚の看護師として採用されるでしょう。そのため残業や夜勤に対応する必要があります。

結婚後に残業・夜勤を減らしてもらう交渉が必要になるので、大変になるかもしれません。

結婚後に転職するメリット・デメリット

結婚後に転職するメリットは、2つあります。

1つ目はライフスタイルに合わせて転職先が選べることです。

実際に夫婦生活をしてみてフルタイム勤務が難しいと思えば、パート・アルバイト募集している求人に応募できます。

転職先からも理解されやすいので、働きやすいようにシフトを考慮してくれるかもしれません。

もしすぐに転職先が見つからなくても、失業手当を受け取りながら探せるので安心です。結婚を理由に1ヶ月以内に引っ越しした場合は「特定理由離職者」に該当するので、すぐに失業手当が支給されます。

結婚後に転職するメリットの2つ目は、現職を退職しやすいことです。

現在では「寿退社」という言葉が使われる頻度は減ってきています。それでも結婚を理由に退職することがわかれば、上司から引き止められる可能性は少なくなります。

結婚後に転職するデメリットは産休・育休が取りづらいことです。

転職後すぐに産休を取ると、スタッフからの印象が悪くなる可能性があります。

多くの転職先は人手不足を解消したくて求人を出しているためです。入社1年以内に産休に入ってしまうと、職場が回らなくなるかもしれません。また育休を取得するためには勤務先で1年以上働いている必要があるので、気をつけましょう。

男女雇用機会均等法によって本来禁止されていることですが、面接時に出産予定を聞かれる可能性があります。

もしすぐにでも子どもが欲しいと考えている方は、子育てに理解がある職場を選んだ方が良いでしょう。

結婚後も長く働ける転職先の選び方

本章では結婚後も長く働ける転職先の選び方を紹介します。

上記の6つに当てはまっていれば、ライフスタイルが変わっても働きやすいといえます。それぞれ解説します。

残業が少ないか

結婚後、パートナーや子どもと過ごす時間を確保したいなら残業が少ない職場を選びましょう。

残業が多い職場に転職してしまうと、家事との両立が難しくなります。

また長時間の残業は精神的にも体力的にも疲労するため、求人票では残業の有無や平均残業時間を確認しましょう。

中には残業時間を少なく求人票に記載する職場もあります。そのため、内部事情を共有してくれる転職エージェントを利用した方が失敗を避けられるでしょう。

夜勤が少ないか

結婚後に無理なく働き続けるためには、仕事と家庭が両立できる職場を選ぶことが大切です。

特に将来的に子どもが欲しい場合、夜勤の有無・回数を求人票で確認しましょう。

夜勤があれば高収入を実現できますが、パートナーや子どもと顔を合わせる機会が減るかもしれません。また職場によっては正社員勤務を希望する場合、夜勤が必須になるところもあります。

将来的に子どもが欲しい場合は、パートナーと話し合ったうえで正社員かパートで働くかを決めた方が良いといえます。

もしパートとして働く場合は扶養の範囲で働くか、社会保険に加入するかも相談しましょう。

有給休暇消化率は高いか

将来的に子どもを検討しているなら、求人票で有給休暇消化率が高いかも確認しておきましょう。

なぜなら平日は保育・学校行事があったり、子どもが小さい場合は頻繁に保育園からお迎えの電話がくるようになるためです。

有給休暇消化率が高ければ、子どもの保育・学校行事に参加できる可能性が高まります。

子どもの体調不良で出勤できない場合、有給休暇に切り替えられるかもしれません。

もし求人票に記載していない場合は、転職エージェントを通じて質問してください。職場の内部事情に詳しいアドバイザーが共有してくれます。

スタッフの平均勤続年数が長い

スタッフの平均勤続年数が長ければ、働きやすい制度を整えている職場の可能性があります。

平均勤続年数が10年以上のスタッフが数名以上いれば、ライフスタイルが変わっても長く続けられるかもしれません。

求人票のアピールポイントや企業の採用サイトをチェックし、なぜ平均勤続年数が長いのかを確認してみましょう。

子育て中のメンバーも活躍しているか

子育て中のメンバーが活躍しているなら、長く働きやすい環境だといえます。

なぜなら子育て中はさまざまなトラブルが発生するためです。子どもが未就学児ならよく体調を崩します。保育園に預けたとしても途中で体調不良になり、早退することもあるでしょう。

子育て中のメンバーが何名も働いているなら、トラブルが発生した際もうまく対応できる仕組みが整っている可能性が高いです。もしくは勤務先の近くに保育園、または院内保育を完備しているかもしれません。

将来的に子どもが欲しい方は以下の関連記事も参考になります。ぜひご確認ください。
関連記事：子持ち看護師が転職しやすい職場は？育児と仕事を両立させる方法も解説！

自宅から通いやすいか

結婚後は、独身時代よりも家事の負担が増えます。また子どもがいる方は、保育園への送迎が必要だったり、急に呼び出されてたりする可能性もあります。

自宅から通いやすい職場を選べば、通勤時間を短縮可能です。

そのためライフスタイルが変わっても働きやすいといえるでしょう。

関連記事：看護師におすすめの転職先16選！看護師以外の他職種や別の仕事も解説

看護師が転職を成功させるポイント

看護師は安定したニーズがあるので、求人も豊富にあります。

しかし、転職前にこれらのポイントを押さえておかなければ、後悔する可能性があります。転職前に確認しておきましょう。

残業が少ないなどの優先順位を決める

転職後のミスマッチを避けるためには、事前に譲れない条件を洗い出すことが大切です。

すべての条件を満たした職場はあまりありません。そのうえで優先順位を決めましょう。

優先順位を決められなければ、パートナーに相談してみてください。

失業手当をもらいながら転職活動する

新生活が落ち着いてから転職先を決めることも選択肢のひとつです。結婚前に貯金をしているなら、当分は生活できるでしょう。

前職に1年以上勤務していれば、失業手当をもらいながら転職活動することも可能です。

結婚を理由に1ヶ月以内に引っ越す場合は「特定理由離職者」に該当します。自己都合退職でければ早く失業手当が支給されるので、安心して転職活動を進められます。

もしくは理想の職場が見つかるまで、スキマ時間で働ける単発バイトや応援ナースとして働くのも良いでしょう。

病院以外の職場を選択する

夜勤なし・残業少なめな転職先を希望するなら、病院以外の職場を選択した方が良いかもしれません。

例えば以下のような職場が良いでしょう。

訪問看護ステーションは、傷病や障害を抱えている方の自宅に訪問し医療的なケア・支援をするサービスです。

利用者の自宅訪問件数は1日4〜6件で、1件につき30〜60分ほど滞在します。ほとんどの職場は土・日・祝休みで夜勤もないため、働きやすいといえます。

完全予約制のクリニックであれば、急患対応もなく就業時間内に業務を終わらせられる可能性が高いです。

以下の診察科目に対応しているクリニックを選ぶと良いでしょう。

企業看護師は、一般企業で働く看護師のことです。企業で働くスタッフの医療的・看護的サポートが仕事で、主に大規模な企業に常駐しています。

就業時間は一般社員と同様に9〜17時で週休2日制が多いです。

正社員以外の働き方も検討する

家事や子育てに注力したい場合は、正社員以外の働き方も検討してみてください。

パート・アルバイト、派遣社員などさまざまな雇用形態で働けます。

子育てが落ち着いたら正社員として働きたい場合は、正社員登用ありの職場で働くと良いかもしれません。

もしくは働けるうちに応援ナースでがっつり稼ぐという方法も選べます。

複数の転職エージェントを活用する

看護師求人はたくさんありますが、より好条件の求人を見つけるなら複数の転職エージェントに登録した方が良いでしょう。

なぜなら会員登録しないと閲覧できない非公開求人を取り扱っているエージェントも多いためです。

看護業界に詳しいアドバイザーが転職に必要な書類の添削や面接対策を支援してくれます。

また企業との給与交渉もしてくれるので、自分一人で転職活動を進められる自信がない方は登録してみてください。

看護師が結婚を理由に転職する際の注意点

看護師が結婚を理由に転職する際の注意点は2つあります。これらを意識して転職活動に臨みましょう。

経験が浅い場合は転職先の選択肢が少ない可能性がある

一般的に看護師を募集する職場は人手不足の可能性が高いです。

即戦力を求めていることが多いので、経験が浅ければそもそも求人に応募できない可能性があります。

少なくとも1年以上は看護師経験を積みましょう。

もし転職する時期を選べるなら、看護師歴4〜5年目で転職した方が良い転職先を見つけられるかもしれません。

なぜ4〜5年目の転職がおすすめなのかは関連記事で解説しています。気になる方はご確認ください。
関連記事：看護師が転職するのは何年目がベストな時期？【経験年数で徹底比較】

面接時に不利になる可能性あり

結婚を理由に転職した場合、面接担当者に「出産の予定は？」と聞かれる可能性があります。

本来なら「出産の予定があるか」を聞くことは、男女雇用機会均等法により禁止されています。

しかし、人手不足で即戦力を求めている職場の場合は聞かれることがあるようです。

もし出産予定を聞かれた際は以下のように回答してください。

「仕事を頑張りたい」「できる限り長く働きたい」と伝えることで、長く働きたいと面接担当者にアピールできます。

看護師の転職に関する質問

看護師の転職に関する質問をまとめました。

結婚後に苗字・本籍地が変わる場合は看護師免許の更新が必要？

結婚後に苗字・本籍地が変わる場合は、変更日から30日以内に看護師免許の更新をする必要があります。

住所を変更しただけで、苗字・本籍地が変わらなければ更新は不要です。

看護師免許の更新に必要なものは以下のとおりです。

免許証書換え交付申請書は、保健所か総務省行政管理局のホームページでダウンロードできます。

新しい免許証が発行されるまでに登録済証明書が必要になる場合は、別途85円切手を用意しましょう。

看護師の結婚は勤務歴何年目が理想？

結婚できる時期を選べるなら、看護師歴4〜5年目が理想です。もし同じ職場で5年以上活躍しているなら、結婚後に産休・育休を取得しても周囲から理解が得られやすいといえます。

条件があわず転職することになっても、4年以上の経験があればベテランと認められ、転職先の選択肢も増えます。

まとめ

本記事では、看護師が結婚をきっかけに転職するのはありかを解説しました。

結論からいうと、結婚を理由に退職した看護師は20〜30代の方に多い傾向だとわかりました。

結婚前か結婚後に転職するメリット、結婚後も長く働ける勤務先の選び方など結婚を控えている方が疑問に思う部分も記載しています。

この記事を参考に転職活動を進めていきましょう。