関連記事：おすすめの就労移行支援をタイプ別に紹介！選び方のポイントや利用時の注意点も押さえよう

就労移行支援とは

「就労移行支援」とは独力で就職をするのが難しい方に向けて、実務的なスキルを教えてくれたり、就職活動をサポートしてくれたりする制度のことです。

支援対象者	就職意欲のある65歳以下の障害者 障害者手帳がなければ、「障害福祉サービス受給者証」を自治体に発行してもらうことで制度の利用が可能
支援期間	2年（期間が残っていれば何度でも利用可能）
訓練内容	基本的生活習慣の確立・マナー・パソコンスキル・資格など利用者の希望に沿って訓練内容を選ぶことができる

【参考】就労移行支援事業｜厚生労働省

就労移行支援の仕組み

就労移行支援は民間企業が提供するサービスです。したがって運営会社は利益をあげる必要があり、その主な収入源は利用者の利用料と行政からの給付金です。

利用料に関しては、本人や世帯の収入によって減額、または無料になる場合があります。

給付金に関しては、事業所の利用者データに基づいて給付額が異なります。

就労移行支援を利用して求職する流れ

就労移行支援を利用する流れは以下のとおりです。

1．基本的生活習慣の確立・集中力や体力向上
2．自己分析・適性把握
3．挨拶・マナー・身だしなみを学習
4．職場見学
5．職場実習
6．求職活動（書類作成の練習・模擬面接・オフィスワークシミュレーションなど）
7．トライアル雇用
8．就職

ステップ4以降から本格的な求職活動が始まります。

利用者の状況に応じて途中から訓練を開始する場合や、ステップをスキップする場合もあります。

支援を受けて就ける仕事

利用者は基本的には一般就労を目標としています。

事業所には多種多様なカリキュラムがあり、自身の希望に合わせて学ぶことができます。

ある事業所の卒業生の就職先データを職種別にみれば事務が最も多く、利用者の過半数を占めています。

IT関連への就職に特化したコースを設置している事業所もあり、自身の希望する職種について学べる事業所を選ぶことが大切です。

【参考】就職実績・就職データ｜ウェルビー

就労移行支援がやめとけと言われる理由

この章では、「就労移行支援はやめとけ」「意味ない」といった声が上がる原因を説明します。主な原因は以下の3点です。

• 支援内容が不十分である
• 希望通り就職できるとは限らない
• 営業形態に問題のある事業所も存在する

支援内容が不十分である

利用者のニーズと事業所が提供するサービスがマッチしていないことがあるため、やめとけと言われることがあります。

「支援内容が簡単すぎる」あるいは「難しすぎてついていけない」という問題が発生しうるので、利用者は事前に事業所の下調べを入念にしておくことが不可欠です。

訓練内容を確認するだけでなく、使用するテキストもチェックすると難易度認識のずれを防ぐことができます。

希望通り就職できるとは限らない

就労移行支援は、利用者の就職をサポートする制度であるため、就職する主体者はあくまでも利用者本人です。

そのため事業所が確実に就職先を提供してくれるとは限りません。提供された職業の中に、自分自身の適性と合うものが見つからない可能性もあります。

厚生労働省が発表している令和4年の就労移行支援利用者の一般就労実績は、57.2％にとどまっているのが現状です。

希望通りの就職が実現できない可能性もあるという理由で、「就労移行支援はやめとけ」と言われることもあります。

【参考】一般就労への移行者数・移行率の推移（事業別）｜厚生労働省

営業形態に問題のある事業所も存在する

企業として利益を上げることを第一に優先する事業所もわずかながらに存在します。

行政から多くの給付金を得るためには、利用者が継続して通所し、一定の就職実績を残すことが必要なのです。

具体的には、しつこい勧誘をする・通所回数の少ない利用者に対して厳しい態度をとる・辞めさせてくれない、などのスタッフの対応例が挙げられます。

そのような事業所と契約することを避けるためにも、事前の下調べは重要です。

行政処分が行われた事業所については、以下のように各自治体のHPより確認できます。
【参考】視程障害福祉サービス事業者の行政処分について｜東京都

利用者の多い就労移行支援事業所の評判【体験談】

この章では当社のアンケートをもとに、実際に就労移行支援を利用した人の体験談を紹介します。

就労移行支援事業所の良い評判

以上の良い評判をまとめると、就労移行支援にはこのような利点があるといえます。

仕事に必要なスキルを学べる
スタッフが就職活動をサポートしてくれるおかげで安心して就職できる
通院同行や交通費支給などの独自のサービスが好評になっている事業所もある

スキルを身につけて就職したい方や、就職に関してサポートを必要としている方は、就労移行支援を上手に利用することができるでしょう。

就労移行支援事業所の悪い評判

以上の悪い評判をまとめると、就労移行支援にはこのような欠点が残っているといえます。

生活資金は貯金を切り崩すしかない
一部対応の良くないスタッフもいる
就職先をなかなか見つけられない

通っている事業所に「言葉使いや対応の良くないスタッフもいる」「なかなか就職できない」などの不満がある場合、信頼できるスタッフに相談するか、別の事業所を利用しましょう。

就労移行支援に向いている人

この章では就労移行支援を利用するのに向いている人を紹介します。

• 就職に関してサポートを必要としている人
• 人間関係やコミュニケーション能力を構築したい人

就職に関してサポートを必要としている人

就労移行支援とはまさに就職をサポートするサービスであるため、有効活用して就職を目指しましょう。

事業所のスタッフや同じように通所している方と二人三脚で目標に向かって努力することができます。

実用的なスキルを教えてもらえるだけでなく、一人ひとりの不安に寄り添いながら適性に合ったサポートをしてくれます。

人間関係やコミュニケーション能力を構築したい人

仕事は一人個人では完結せずに、必ずと言っていいほど様々な人との関わりが発生します。仕事をするには周りの人とコミュニケーションをとることが不可欠です。

接客業の練習といったような実務的な訓練のほかに、同じように通所している方やスタッフと会話するだけでも人間関係構築の練習になります。

事業所を利用した人の感想として、「所有する障害のことを理解してもらえて不安が解消されリラックスできた」という声もあります。

事業所で人間関係を構築することは、持っている悩みを共有して互いに成長できる良い機会です。

【参考】精神障害を持つ男性が事業所を利用した感想｜ウェルビー
ミラトレ支援員との面談を通じて自己理解を深め、自分の強みにも気づけた｜ミラトレ

就労移行支援に向いていない人

この章では反対に、就労移行支援の利用が向いていない人を紹介します。

• 生活資金がない人
• 事業所へ定期的に通うことが難しい人
• 2年以内に就職先を見つける予定のない人

生活資金がない人

生活資金がない人におすすめできない理由としては、就労移行支援を利用している期間はアルバイトやパートなどの一切の就労行為が禁止されているからです。

ある程度の貯金がないと、通所するための交通費や生活費が底をついてしまう恐れがあります。

交通費やそのほかの必要経費を負担してくれるような事業所もあるので、興味のある方は近くの事業所がそのようなサービスを展開しているかどうか調べてみるとよいでしょう。

事業所へ定期的に通うことが難しい人

事業所のカリキュラムは定期的に通所することを前提として作られているので、通所日が少ない場合は希望通りの就職ができない可能性があります。

また通所日が少ないと、事業所のスタッフとコミュニケーションをとる機会も自然と減ってしまうので、トラブルに発展することもあります。

心身の状態が不安定な方は、医療機関と相談しながら通所するかどうかを決めるのがおすすめです。

2年以内に就職先を見つける予定のない人

就労移行支援は2年間の利用期限を過ぎると原則として再度利用することができなくなります。

その場合、今後就職先を見つけようとしたときに独力で探すしかなくなってしまうので、就職意思がまだ明確でない方に関しては、今は控えておいたほうがよさそうです。

「居場所が欲しい」を理由に就労移行支援事業所に通うケースもまれに見られますが、就労移行支援事業所はあくまでも就職口を見つけるための手助けをする機関なので、居場所づくりとしては利用しない方がいいでしょう。

就労移行支援を上手に選ぶポイント

就労移行支援事業所に安心して通うには、事業所と利用者とのマッチングが大切です。

自分自身に合った事業所を見つけるために、以下の3点を意識して事前に事業所の下調べを行いましょう。

評判・口コミをチェック

その事業所を実際に利用している人から率直な意見が手に入るため、貴重な情報です。

1人ー2人では感想に偏りがある可能性もあるので、なるべく多くの人からの口コミを参考にしましょう。

もし口コミを読んでいて何か疑問に思う点があれば、直接事業所に問い合わせるとスムーズに解決することが多いです。

事業所に事前訪問する

多くの事業所は、HP上で見学会・説明会の案内を出しています。

積極的に参加して、事業所の雰囲気が自身にあっているかどうかチェックしましょう。

このような契約以前の説明会や体験に関しては、利用料金の必要不要にかかわらず無料で実施されています。

心配な方は、申し込み前に直接事業所に問い合わせると不安なく参加できるでしょう。

実績のある事業所を選ぶ

就労移行支援の目的は、利用者が就職して、その職場に定着することです。

実績がしっかりとある事業所は、これからの利用者に対しても最後までサポートしてくれるとみなしてよいでしょう。

事業所によっては、「○○系の職種で就職者が多い」「▽▽の障害を持つ方の就職率が高い」といった特定のジャンルで高い実績を上げている事業所もあるので、自身の適性や希望就職先と照らし合わせながら実績を調べると、事業所探しに効果的です。

タイプ別に紹介！おすすめの就労移行支援事業所

ここではいくつかの事業所を特徴とともに紹介します。

デイゴー求人ナビ

ウェルビー

事業所は北海道から九州まで、障害をお持ちの方を幅広くサポートし、様々な職種への就職実績があります。

どんな方にもおすすめの就労移行支援事業所です。

サービス概要
サービス名	ウェルビー
運営会社	ウェルビー株式会社
対応している障害（コース）	発達障害、精神障害を持つ方を中心に幅広く対応
対応地域	全国（一部の県を除く）
公式サイト	https://www.welbe.co.jp/

atGP

うつ病コース・発達障害コース・総合失調症コース・聴覚障害コース・難病コースの5つの障害別コースがあり、それぞれの症状に特化したサポートが受けられます。

事務職で活躍できるスキルを身につけたい方に特におすすめです。

サービス概要
サービス名	atGPジョブトレ
運営会社	株式会社ゼネラルパートナーズ
対応している障害（コース）	うつ病コース発達障害コース総合失調症コース聴覚障害コース難病コース
対応地域	東京・神奈川・愛知・大阪
公式サイト	https://www.atgp.jp/training

就労移行支援のほかに求職支援をしてくれるところはある？

ここからは「就労移行支援に向いていないかもしれない」もしくは「実際に就労移行支援を利用してみたけれど就職できなかった」方に向けて、ほかの求職方法を紹介します。

就労継続支援A型・B型

「就労移行支援」は、利用者が一般就職を実現することをサポートする制度であり、就職にあたって必要になる基本的なスキルを学ぶことができます。

それに対して「就労継続支援（A型・B型）」は、利用者に働く場所を実際に提供する制度です。

就労移行支援などを利用したけれど、就職に結びつかなかった人は利用してみるのがおすすめです。就労継続支援は利用期間に制限がありません。

A型は雇用関係に基づく就労の機会を提供してもらえます。そのため原則65歳未満の人が対象で、最低賃金以上の給与が発生します。

B型は雇用関係を結ぶことが難しい人を対象に、雇用関係を結ばずに就労機会を提供してもらえます。そのため利用者に年齢制限はなく、工賃が発生します。

【参考】就労系障害福祉サービスの概要｜厚生労働省

自力で就職を目指すのも一つの道

就労移行支援が自身の適性に合っていなくても、独力で一般就職を目指すことができます。

この場合は転職エージェントなどを利用して、採用情報を手に入れるのが近道です。

事業所である程度のスキルをすでに身につけたなら、転職サービスのウェブサイトで再度自己分析をすると、自身の今の能力で最適な仕事を見つけられるかもしれません。

就労移行支援を辞めたいときの対処法

この章では、「現在就労移行支援を利用しているけどもう辞めたい」方に向けて、その対処法をいくつか紹介します。

事業所に通っているのを在宅サービスに変更する

事業所によっては、通所しなくても在宅でオンライン訓練が可能なところもあります。

支援内容には満足しているけれど、通所にストレスを感じるという方はオンライン訓練も検討してみるとよいでしょう。

通所は通勤の練習にもなるので継続したい方もいるかもしれません。

そのような場合は、自宅からもっと通いやすい事業所はあるかどうか探してみるのがおすすめです。

ただ、近いからと言ってすぐに事業所を変更するのではなく、最初に事業所を決めるときと同様に入念な下調べを行いましょう。

支援そのものをやめる

「これ以上訓練できないほどに心身の状態が悪化した」または「契約した事業所と自分自身の適性が合わなかった」場合には一度利用を辞めるのも一つの手段です。

健康状態が回復するまでは利用をやめ、再度利用したくなったら自分自身のペースで無理なく再開しましょう。このようなときは医療機関からの助言も参考にしてください。

一度辞めた場合でも、所定の支援期間が残っていたら再度利用できる

就労移行支援の利用を途中でやめることは決して悪いことではありません。

自分自身がどのような求職活動を希望しているのかもう一度考え直し、また必要があればフレッシュな気持ちで就労移行支援に戻るとよいです。

2年間という利用期間を有効活用しましょう！

まとめ｜「就労移行支援はやめとけ」といわれる主な原因はマッチングミス

就職に対して不安があるのはみな同じです。

その不安を払拭する手段の一つとして就労移行支援は存在します。

大部分の事業所は利用者が安心して就職できるように寄り添ってくれます。

その中で「就労移行支援はやめとけ」「意味ない」などのネガティブな意見は、求めていたものと、事業者が提供するサービスとが一致していないために生まれてしまったのです。

就労移行支援を利用するにあたって最も重要なことは、事業所選びです。
体験や見学などの機会を利用して様々な事業所に実際に足を運び、目標に向かって無理なく学んでいける事業所を見つけることが大きな一歩になるでしょう。