法務人材の価値を高めるおすすめ資格10選と資格以外にも磨くべきスキル・知識

編集者
佐藤達也
【キャリアアドバイザー】国弁護士・公認会計士・税理士等の士業や、管理部門特化の転職サポートを行う人材紹介会社に在籍。士業・バックオフィスに特化した転職ノウハウ・企業調査を担当しています。分野特化だからこその、勘所を押さえたリアルな情報を発信できるよう心がけています。
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法務人材としての価値を高めて昇進や年収アップにつなげたい、よりよい環境へ転職したいと考える方は少なくないでしょう。そのための有効な方法のひとつに資格の取得があります。

本記事では法務人材の価値を高める資格を10個紹介します。あわせて、資格の必要性や資格以外に磨きたいスキル・知識についても解説します。

目次

そもそも法務として働くのに資格は必要なのか?

法務として働くのに資格は必須ではありません。実際、多くの企業では、法務部門で働くために特定の資格を要求することは少ないです。もちろん弁護士資格や司法書士資格などは専門知識を証明するものとして評価されますが、それらはあくまで加点要素であり、必須条件ではありません

法務では、実務経験が豊富であれば資格がなくてもキャリアを築くことが可能です。企業は実務で培われた問題解決能力や交渉スキル、法的文書の作成能力などを重視します。したがって、法務として成功するためには実務経験を積むことがもっとも重要であり、資格はその経験を補完するものと考えるべきです。

法務担当者の市場価値が上がるおすすめの優良資格5選

士業資格を取得するメリットは専門性が高く転職や昇進に有利であること、独立も可能でキャリアの幅が広がることなどが挙げられます。デメリットは試験の難易度が高く、取得するまでに時間とお金がかかることです。以下では、士業の中でもとくに法務としての価値を高める資格を5つ紹介します。

弁護士資格

弁護士は言わずと知れた国内最高峰の資格です。近年は企業内弁護士として法務部門で働く弁護士が増えています。合格率は、予備試験が例年3~4%、司法試験が20~40%です。司法試験の合格率だけ見ると高いと感じるかもしれませんが、そもそも受験資格を得るための難易度が高く、それをクリアした人の中での合格率です。

弁護士資格を取得するには、まず受験資格を得るために法科大学院を修了するか、予備試験に合格する必要があります。そのうえで司法試験に合格し、1年間の司法修習を受けて試験(司法修習生考試)に合格すると晴れて資格を取得できます。試験の難易度も極めて高く、勉強時間は3,000~8,000時間とも言われています。

その分、職域が広く法律全般の業務をおこなえること、社内外からの高い信頼を勝ち取れることなどさまざまなメリットがあります。転職の際にも弁護士資格があれば高い評価を受けるため、年収を大きく上げることが可能です。

司法書士

司法書士は登記や供託手続き、法務局へ提出する書類作成代行などをおこなえる資格です。受験資格がなく、誰でも受験できます。ただし難易度は非常に高く、合格率はここ数年4%台で推移しています。3,000時間前後の勉強時間が必要と言われています。

司法書士の試験は商法や民法なども含む幅広い法律から出題されるため、司法書士は法律知識が豊富です。認定司法書士の場合は、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟や民事調停などの代理や相談もでき、弁護士に近い業務をすることもあります。

専門性の高さや職域の広さから一定の評価は受けますが、登記の専門家というイメージが強いことから企業の法務で働く司法書士は少ないのが現状です。法務人材が取得した場合、登記業務がある企業であれば資格を直接活かせますが、そうでない場合は法律の素養を活かすという方向性になるでしょう。

弁理士

弁理士は特許や実用新案、商標登録などに関する特許庁への手続きや審査請求などの代理をおこなえる資格です。受験資格がないため誰でも受験可能ですが、試験の難易度は高く、合格率は例年6~8%ほどで推移しています。勉強時間は2,000~3,000時間が目安です。

弁理士は知的財産の専門家なので、企業の法務でおおいに知識を活用できます。とくに知財戦略に注力している企業や知的財産部門がある企業などから高い評価を受けるでしょう。近年は国際出願のニーズが高いため、弁理士資格に加えて英語力もあると市場価値が大きく上がります。

行政書士

行政書士は官公署に提出する許認可申請書類や契約書の作成、行政不服申立て手続き代理などをおこなえる資格です。行政書士も受験資格がないため誰でも受験できます。合格率は年によって差がありますが、12~13%ほどと難易度は高めです。合格までに必要な勉強時間は800~1,000時間と言われています。

法務部のメイン業務に契約書の作成やチェックなどの契約法務があります。行政書士は契約書をはじめとする書類作成の専門家なので、契約法務でその知識を活かせるでしょう。一定の評価は受けられる資格ですが、法律系の入門資格といったイメージをもたれることが多く、ほかの士業資格と比べると評価されにくい傾向があります。

社会保険労務士

社会保険労務士は労働社会保険手続きや労務管理の指導相談、年金相談業務などをおこなえる資格です。合格率は6~7%と難易度が高く、勉強時間の目安は1,000時間と言われています。受験資格として学歴・実務経験・厚生労働大臣の認めた国家試験合格のいずれかを満たす必要があります。

社会保険手続きの専門家というイメージがありますが、労働問題の専門家でもあります。労働基準法をはじめとする労働法に精通しており、労使トラブルの防止や法律にもとづく就業規則や雇用契約書の作成といった業務で知識を活かせます。

法務部門でも労働問題や雇用契約などの対応業務で評価される資格です。しかしどちらかというと法務よりも人事部門でのニーズが高い傾向があります。

法務担当者の実務に役立つ資格おすすめ5選

民間の検定試験など法務の仕事に役立つ資格を紹介します。短期間で取得しやすく難易度もそれほど高くないものが多いものの、すぐに使える知識が身につくのがメリットです。デメリットは士業資格と比べると知名度が下がることから、直接的な評価につながらないことも多い点です。

ビジネス実務法務検定

ビジネスで役立つ実践的な法律知識の基本を学べる検定です。合格率は3級が60~70%、2級が40~50%、1級が10~20%です。勉強時間の目安は3級が50~60時間、2級が60~90時間、1級が250時間と言われています。

以前は1級のみ2級試験合格者という受験資格がありましたが、2022年度から受験資格は撤廃されています。1級の難易度が高いですが、法務部門での経験がある方は1級でも十分に合格可能でしょう。法務関連資格の中でも知名度が高く、法務でも評価されやすい資格です。

ビジネスコンプライアンス検定

ビジネスに欠かせないコンプライアンスへの深い理解と活用能力を証明する資格です。合格率は初級と上級をあわせて50~60%ほどです。勉強時間の目安は初級20時間、上級40時間とされています。受験資格はありません。

短期間の学習で受験でき、難易度もそれほど高くありませんが、すべてのビジネスパーソンに求められるコンプライアンスに関する知識を学べる実践的な資格です。法務経験が浅い方などは挑戦してみてもよいでしょう。

個人情報保護士認定試験

個人情報保護に関する知識を有し、個人情報を適切に管理できるスキルを証明する資格です。受験資格はありません。過去の合格率は平均37.3%、勉強時間の目安は30~50時間です。

近年、企業や自治体の個人情報漏洩事件が後を絶ちません。そうした背景を受け、従業員教育の一環として団体受験する企業もあるなど知名度が高まっている資格です。

知的財産管理技能検定

知的財産を管理するスキルの習得度を評価する検定で、技能検定の知的財産管理という職種に関する国家試験です。合格率は3級が60~70%、2級が40%前後、1級が約8%(学科)と1級の難易度が突出して高いです。勉強時間は3級が20時間、2級が50時間 1級は400時間が目安とされています。受験資格は級ごとに定められていますが、原則として、知的財産管理職種での実務経験が必要です(3級は不要)。

現代ビジネスにおいて知的財産は企業の競争力の源泉となっており、非常に価値が高いものです。この検定に合格することで知財マネジメントに関するスキルを客観的に証明できるため、知財領域に興味がある方は挑戦してみましょう。

マイナンバー実務検定

マイナンバー制度に関する理解を深め、特定個人情報の保護と適正な取り扱いができるスキルを習得できる試験です。受験資格はありません。合格率は公開されていませんが3級は易しいレベル、2級と1級でも少し難しいという程度で難易度は低めで、勉強時間も10時間程度が目安となっています。

マイナンバーは非常に秘匿性の高い情報なので企業が情報漏洩をした場合には大きな責任がともないます。法務部門で従業員のマイナンバーを扱う場合には受けておくとよいでしょう。

法務の資格を取得するメリット

法務のキャリアにおいて資格取得は必須ではありませんが、取得する意味はあります。法務の資格を取得するメリットは主に以下の3つです。

スキルアップできる

資格を取得する過程で知識が深まり、法律の理解がより具体的かつ実践的なものになります。これにより、事業部に対してより価値の高いアドバイスを提供できるようになり、信頼性も高まるでしょう。また資格の勉強は法務人材が常に最新の法律知識を維持するための動機付けとなり、絶えず変化する法的環境に対応する能力を高めます。

知識やスキルの証明になる

資格は、法務人材として必要な知識とスキルが一定の基準に達していることを客観的に示すものであり、キャリアを展開するうえで有利にはたらきます。企業内で評価されれば昇進や年収の増加につながり、転職する場合にはほかの候補者との差別化を図ることができます。

学習意欲の高さが評価の対象になる

法務部門は度重なる法改正や制度の変更に適時対応し続けなければなりません。そのため学習意欲の高さは、企業や法律事務所などにおいて高く評価される要素です。

また意欲的に学習を続けることでより複雑な案件に対応できるようになり、高い専門性を身につけることができます。結果として法務人材としての市場価値を高め、よりよいキャリアを選択できるようになるでしょう。

資格の取得以上に重要!法務職が磨くべき7つのスキル・知識

資格を取得すること以外にも、法務人材としての価値を高める方法はあります。とくに以下のスキルや知識を磨くことが役に立つでしょう。

契約書レビューの経験

法務担当として、転職時に最も評価される仕事・スキルは契約書レビュー経験』です。これ一本で勝負できる世界と言っても過言ではないでしょう。

契約書レビューの種類として、主に下記の5種。

  • 売買契約書
  • 秘密保持契約書(NDA、機密保持契約書)
  • 請負契約書
  • 寄託契約書(倉庫寄託契約書、混合寄託契約書等)
  • 賃貸借契約書(テナント契約書、サブリース契約書等)

これに加えて利用規約のドラフト・レビューなどがあればほぼ網羅できる状態といえます。さらにポイントとしては、月間に何件の契約書レビューを捌けるか、それを1人で何年続けているかという点です。

機関法務やコンプライアンス対応、戦略法務、パブリックアフェアーズなどが注目されがちですが、個人情報保護法、著作権法、景品表示法に関する契約、利用規約まわりの対応は不変ですので、転職で年収を上げたいかたはこのあたりを磨いていくことをおすすめします。

自社のビジネスに関する知識

法務担当者は、企業のビジネスモデルや市場環境、競合他社の動向に精通している必要があります。これにより、リスクを適切に評価し、ビジネス戦略に法的観点からの洞察を提供することができます。また、新しい規制や法律が自社のビジネスに与える影響を理解し、適応策を講じることも重要です。

コミュニケーションスキル

法務には、法的な複雑さを理解するだけでなく、それを明確かつ効果的に伝えるコミュニケーションスキルが求められます。交渉やトラブルの解決、企業内外の関係者との協力を円滑に進めるためにとくに重要なスキルです。

語学力

グローバル化が進む現代において、法務担当者は多様な文化や法制度に触れる機会が増えています。そのため、異なる言語を理解し、適切にコミュニケーションを取る能力は国際的な契約交渉や法的トラブルの解決において大きなアドバンテージとなります。語学力を高めることで、文書の正確な翻訳や解釈が可能になり、法的なコミュニケーションエラーを防げます。

デジタル・ITに関する知識

デジタル・ITスキルは法務業務の効率化とリスク管理に貢献します。たとえばAIを活用した文書分析ツールは、大量の契約書や法的文書のレビューを迅速かつ正確におこなう手助けをしてくれます。これらの技術を理解し、活用することで、企業の成長を支える重要な役割を担うことができます。

文書や資料の作成スキル

文書や資料の作成スキルは法務部門における日々の業務において不可欠です。これらのスキルを磨くことで、法務担当者は契約書や社内規定などの重要文書を作成し、組織の法的リスクを最小限に抑えることができます。また、より効率的かつ効果的に業務を遂行し、組織全体の生産性向上に貢献することが可能です。

調査スキル

調査スキルは、新しい法律や規制の反映、契約書の精査や訴訟における証拠収集など多岐にわたる業務を遂行するための基盤となります。調査スキルを磨くことでリスクを正確に評価し、企業が直面する法的課題に対してより戦略的なアプローチを取ることができます。

まとめ

法務に役立つ資格は士業資格や民間の検定資格などさまざまな種類があります。法務のキャリアで資格は必ずしも求められませんが、資格を取得することは法務人材としての市場価値を高めるための戦略的なステップとなるはずです。

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佐藤 達也

弁護士・公認会計士・税理士等の士業や、管理部門特化の転職サポートを行う人材紹介会社に在籍。士業・バックオフィスに特化した転職ノウハウ・企業調査を担当しています。分野特化だからこその、勘所を押さえたリアルな情報を発信できるよう心がけています。