機械系エンジニアについて調べると「やめとけ」「つらい」などの意見を見かけます。たしかに機械設計の仕事は楽な仕事ではありません。

この記事では、機械エンジニアが「やめとけ」と言われる理由や、機械系エンジニアに向いている人の特徴について、経験者の視点から考えてみます。

機械系エンジニアへの転職を目指している方、またはやめようか悩んでいる方はぜひご一読ください。

「機械系エンジニアはやめとけ」と言われる理由

「機械系エンジニアはやめとけ」と言われる理由として、次の6つが挙げられます。

設計以外の調整業務がストレス

機械設計者の仕事は製図や組立だけではありません。

たとえば筆者のいた部署では、以下も設計担当者の仕事でした。

案件の規模が大きくなるほど、関係者の人数も関係部署の数も増えるものです。職場にはさまざまなタイプがいるため、関係者の調整に苦慮することがよくありました。

検収完了までプレッシャーが続く

機械設計・製作には長い時間を要します。

筆者はおもに研究所の実験設備を担当していましたが、実験用の小型部品でも据付まで2、3か月かかることがよくありました。

「設計ミスで取り付けられなかったらどうしよう」「設備に不具合が出たらどうしよう」とハラハラしながら検収までの期間を過ごすのは、なかなかのストレスです。

気軽に試したりやり直したりができない点は、機械設計のしんどい所ではないでしょうか。

ミスしたときの影響が大きい

設計したモノに想定外のミスやトラブルが発生する場合もあります。

設計段階で何度も確認し、図面上は問題ないように見えても、現場に導入してはじめてわかるミスはあります。

設計ミスで作り直しや再加工、再調整となれば、予算やスケジュールに大きな影響が出てしまい、設計担当者は肩身が狭い状況に陥りがちです。

残業や休日出勤、出張が多い

職場にもよりますが、機械系エンジニアは残業や休日出勤、出張が比較的多い仕事です。

その理由は次の3つが挙げられます。

たとえば完成した部品を生産設備に取り付ける場合、生産計画に影響のない日時を狙って取り付けます。設計担当者が日勤で働いていようが、設備側が深夜しか空いていないならその時間帯に作業するしかありません。

近年は業務量過多による残業は改善されつつあると聞きますが、設備側の都合でスケジュールが決まる部分は残っているようです。

仕事の内容的に仕方のないことですが、プライベートを重視したい方にはストレスになるポイントではないでしょうか。

教育担当（師匠）の当たり外れが大きい

日本企業では新人教育をOJTで実施するところが多く、これは機械設計の現場でも同じです。OJTでは、教育担当の仕事の一部を任せてもらいながら、業務のやり方や社内ルールなどを覚えていきます。

しかし、設計のプロが社員教育のプロとは限りません。むしろ、優秀な機械設計者は職人気質なタイプが多いため、教育者には向かないケースがよくあります。

たとえば筆者の同期は、機械設計のスキルは抜群なもののパワハラ気質な教育担当に当たってしまい、精神的に参ってしまいました。

機械設計の場合、一緒に現場へ行ったり毎日図面を見てもらったりするため、教育担当とは師匠と弟子に近い距離感になります。

師匠と信頼関係を築けないと仕事のすべてがつらくなり、辞めたい気持ちが膨らんでしまうでしょう。

最初はついていけなくて挫折しがち

専門学校や大学などで機械設計を専門的に学んだ方でも、1回は挫折すると言われます。

筆者は専門外の状態から機械設計の仕事についたため挫折は当たり前ですが、機械工学科出身の同期も同じくらい苦戦していました。

挫折しやすい理由として、以下が挙げられます。

はじめは力不足を感じる場面が多く、ミスを連発して「ついていけない」と自信喪失する人がほとんどでしょう。

逆に言うと一度くじけてからが本番なわけですが、そのまま自分の適性に疑問を持ち、別業種に転職を考える方がいるのも仕方ありません。

そもそも機械系エンジニアとは？

機械系エンジニアとは、機械設備の設計、制作、改造などを行う専門職を指します。おもな就職先は機械設計事務所のほか、製造業（メーカー）の製品開発、または設備開発・保守管理部門です。

設計する機械は産業用ロボット、工場設備・機器、自動車関連の製品、家電など多岐に渡ります。

機械系エンジニアの年収

厚生労働省の「職業情報提供サイト」によると、日本の機械設計技術者の平均年収は606.2万円となっています。

国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」では給与所得者の平均年収が458万円のため、数字だけ見ると一般よりも高収入の職種と言えます。

とはいえ日本企業で職種ごとに給与を設定しているケースは少なく、企業規模や勤続年数で年収が決まるほうが多いはずです。

実際、筆者の勤めていたメーカーはほぼ年功序列で給与が決定していましたし、別の業界で機械系エンジニアをしている友人もその業界水準の給与をもらっています。

参考：職業情報提供サイト│厚生労働省
令和4年分民間給与実態統計調査│国税庁

機械系エンジニアのやりがい

機械系エンジニアのやりがいは、設計したモノが完成した喜びを味わえることです。

設計したモノが形になり、課題を解決できたときは、それまでのストレスや苦しみが帳消しになるくらいの達成感を味わえます。

機械系エンジニアが設計する対象や規模はさまざまですが、自分の設計が形になった瞬間の感動はみんな同じではないでしょうか。

機械系エンジニアに向いている人の特徴

機械系エンジニアに向いている人の特徴を4つ紹介します。

新しい知識やスキルの習得に前向き

機械系エンジニアは、日々新しい技術を取り入れていく必要があります。よって新しい知識やスキルの習得に前向きに取り組める人、勉強に対してハードルをあまり感じない人は、適性があると考えます。

たとえば筆者が入社した頃は、ちょうど部署で3DCADの導入数を増やしている最中でしたが、第一線で活躍している方ほど3DCADを積極的に触っていました。

またハードウェアをメインで扱う仕事ながら、ソフトウェアに詳しい方も多いのも印象的でした。

幅広い分野に興味関心を持てる方は機械系エンジニア向きと言えるでしょう。

課題解決に向けた発想力と創造力がある

課題解決に向けた発想力と創造力も、優秀な機械系エンジニアの特徴です。課題に対して「ここをこうすれば良い」とイメージできなければ設計はできません。

とはいえ、生まれ持った天才的な発想力と創造力が必要というわけではありません。前向きに機械設計の経験を積むことで、発想力と創造力は徐々に養えます。

折衝業務が苦痛ではない

前の項で述べた通り、機械系エンジニアは設計以外の業務が少なくありません。

そのなかで、とくに避けて通れないのが折衝業務です。具体的には、設計に関係する部署の利害関係を調整し、自部署の方向性とすり合わせて合意を形成します。

考えの合わない相手とも交渉する機会もあるため、他人とのコミュニケーションが苦手な方、黙々と製図だけしていたい方は苦痛を感じるかもしれません。

裏方の地味な作業が好き

企業にもよるのかも知れませんが、少なくとも筆者の経験した機械設計の仕事は、決して花形ではありませんでした。

とくに保守やメンテナンスに近い仕事は、トラブルなくスケジュール通りに完遂することが“当然”と捉えられる傾向があります。表に出て注目を浴びる機会はほぼありません。

よって裏方作業が好きな方には向いていますし、そうではない方は不満を感じやすくなります。

機械系エンジニアになるには？未経験でもなれる？

機械系エンジニアはどのような学歴の人が多いのか、また未経験や女性、無資格者でもなれるのかについて解説します。

多いのは高専卒や機械工学科出身者

機械系エンジニアに特別な資格は不要ですが、4力学などの知識は必要になります。したがって、筆者の配属された部署では、新入社員は高専（高等専門学校）卒または大学・大学院卒ばかりでした。

また専攻は機械系が多く、ほかに電気・電子系の専攻を卒業した人がいました。機械系エンジニアと電気系エンジニアが混在している部署だったため、機械系以外の専攻出身者も幅広く採用していたのだと考えられます。

なお中途採用で入社される方は、すべて機械設計または関連する技術の経験者でした。

若手は未経験でも採用される可能性あり

未経験でも機械系エンジニアへ転職は可能なのでしょうか。

結論を言うと、20代のうちであれば可能だと考えます。実務のなかでスキルを獲得していく職種のため、育成対象として採用される可能性があります。

ただし、高専卒や機械専攻卒、またはポリテクセンターなどで機械設計を学んだ方という条件は付くでしょう。

なお、30代後半から40代以上の方の転職では、他の職種と同様にリーダー経験やマネジメント経験が求められます。とくに正社員での転職となると、未経験での採用はハードルが高いと考えます。

女性エンジニアもいるが人数は少なめ

女性の機械系エンジニアもいますが、正社員で働いている方の人数は少なめです。

この理由は以下の2つが関係しています。

休日出勤や定時以降の業務、出張が多い仕事のため、家庭との両立ができずに退職する方は少なくありません。

近年は産休や育休制度、時短勤務制度が整っている企業も増えていますが、子育てをしながら産前と同じ働き方を継続できる方は限られるでしょう。

とはいえ比較的大きな企業であれば、機械設計の知識を生かせる別の部署へ転属できる可能性はあります。

資格の有無はほとんど重視されない

機械系の資格として「技術士（機械部門）」や「機械設計技術者」などが挙げられますが、実際の仕事において資格の有無が重視されていた記憶はまったくありません。

実績と経験が物を言う職種のため、資格よりも「これまで何を設計してきたか」が重要になります。設計担当者を決める際も過去の経験により決定されていました。

ただ、未経験の方が機械系エンジニアへ転職する際には、専門知識を学んだ証として資格がプラスに働く可能性はあります。

機械系エンジニアに必要な知識

機械系エンジニアに必要な知識を紹介します。実際に筆者も教育担当や上司から下記を勉強するよう指示されました。

4力学の基礎知識

4力学は以下の4つの力学を指します。

4力学は設計物の強度や性能を計算するうえで必要となる知識であり、機械工学専攻の必修科目です。

勉強には高校数学や高校物理の知識を使いますが、教科書や参考書は多く出版されているため、比較的独学で勉強しやすい分野と言えます。

製図と機械要素の知識

製図は、実際に設計図面を書くための知識です。製図には決まったルールや規格（JISなど）が存在しているため、製図を理解していないと設計図面は書けませんし、読めもしません。

筆者が新卒で配属されたときはこの知識が皆無だったため、初心者向けの製図の教科書を片手に図面を読み解くところからはじめました。

また機械要素は、機械を構成しているバネや軸受などの部品の知識であり、やはり機械系エンジニアには必須の知識です。この知識が不足していると、図面が描けないか、描けても無駄に加工が多い図面になってしまいます。

部品の細かいバリエーションまで覚える必要はありませんが、機械設計に使う部品にどのような種類があるかくらいは頭に入れておきましょう。

CADやCAM、CAEなどツールの知識

機械設計で使用するツールの知識も必要です。

CADは製図で使用するツールであり、2DCADと3DCADに大別されます。また、CAMは工作機械用の数値制御プログラムを作成するツール、CAEは設計したものが機能的に問題がないかシミュレーションするツールです。

ツールの操作方法は実務で覚えるとして、それぞれがどのような役割のツールであり、作成したデータをどのように活用するかくらいは知っておくと良いでしょう。

（仕事内容によっては）英語力や知財関係の知識

職場によっては設計と関係のない知識も求められます。たとえば筆者のいた部署では、開発もおこなっていた関係で特許出願に関する知識が必須でした。

また、海外に工場のあるメーカーの場合は英語力も必要になります。TOEIC◯点以上のように社内基準が決められている企業も珍しくありません。

機械設計以外の勉強も求められる仕事だと考えてください。

機械系エンジニアの将来性は？明るいと考える理由

機械設計の現場でも、AIによる一部業務の自動化が進みつつあります。AIと聞くと「機械系エンジニアの仕事もAIに代替されてしまうのでは？」と不安になりますが、 機械系エンジニアは将来性がある仕事だと筆者は考えます。

その理由は以下の2つです。

AIロボットや自動化の促進には機械系エンジニアが不可欠だから

機械系エンジニアが手作業でおこなってきた製図作業や部品選定といった領域は、AIにより効率化される可能性が高いでしょう。しかし、これらの作業は機械系エンジニアの仕事のほんの一部です。

課題をヒアリングし、必要な機能を把握して設計のコンセプトや仕様を決定していく業務では、設計者の専門的な知識と経験がカギとなります。

AIロボットや自動化のニーズが高まるにつれ、これまでなかった設計思想を生み出せる機械系エンジニアの力がより必要になるはずです。

仕事がAIに奪われるよりも、CADやCAEのような設計ツールのひとつとしてAIが活用される可能性のほうが高いと考えます。

すべてをAIに代行させるのは不可能な仕事だから

機械設計のプロセスでは、「どんな形状にしようかな」という概念設計からはじまり、強度、安全性、予算、制作期間、納品先のニーズなどを加味して詳細設計まで落とし込みます。

具体的な構造が固まったあとの工程をAIへ任せることは可能かも知れませんが、不明瞭なイメージを形にしていく業務は、人間のエンジニアでなければ不可能です。

また、設計した装置が完成したあとのチェックや組立作業も、人間のエンジニアの仕事として残るでしょう。

AIがエンジニアの代行をするよりも、人間とAIが協業する形で機械設計をおこなっていくほうが現実的にあり得る未来だと考えます。

成長できているか不安になったら転職がおすすめ

機械系エンジニアは将来性のある仕事ですが、会社から必要とされるエンジニアになるにはそれ相応の経験と実績が求められます。

しかし、設計者としてどのような案件に携われるかは企業によって異なりますし、人材育成に消極的な職場や教育担当に当たってしまうと成長も限定されてしまいます。

もし「機械系エンジニアとしてこのままでいいのかな？」と不安に感じたら、思い切って転職活動を試してみるのも一案です。

機械系エンジニアや技術者におすすめの転職サービスを3つご紹介します。

マイナビメーカーAGENT

マイナビメーカーAGENTは、マイナビが運営するエンジニアや技術者を対象としたメーカー業界専門の転職エージェントサービスです。

マイナビのブランド力を生かした多彩な求人ラインナップが特徴で、非公開求人や独占求人も多く取り扱っています。

メーカー業界に精通したキャリアアドバイザーが、キャリア相談から求人紹介、応募書類・面接対策まで親身に支援してくれるため、はじめて転職する方も安心して利用できるサービスです。

業界情報・企業情報に詳しく、無料の個別相談会も受けられます。今後のキャリアに悩んでいる方は相談してみてはいかがでしょうか。

メイテックネクスト

メイテックネクストは常時1万件以上（※1）の求人を扱うエンジニア特化型の転職支援サービスです。とくに機械メカトロ分野とIT分野の求人が充実しています。

アドバイザーの半数以上がメーカーの技術者出身であり、豊富な技術的知識に基づく深いキャリア分析が魅力です。

製造業系のエンジニア派遣で歴史のある「メイテックグループ」のグループ企業のため、各業界・各企業の内情に詳しいことも強みです。専門性の高いアドバイザーのもと、最適な求人に出会えます。

（※1）メイテックネクストの公式ホームページより

リクルートエージェント

リクルート運営のリクルートエージェントは、転職支援実績No.1（※2）の転職エージェントサービスです。

エンジニア向け求人のほか、幅広い業種・職種の求人を取り扱っています。登録するとキャリアアドバイザーによるキャリア相談のほか、書類添削や面接対策など丁寧なサポートが受けられます。

メーカー業界専門ではないからこそ「機械系エンジニアから別の職種へ転職したい」「メーカー以外で経験やスキルを生かしたい」といった方にもおすすめです。

（※2）リクルートエージェントの公式ホームページより

機械系エンジニアは、ストレスも大きいがやりがいも大きい仕事

機械系エンジニアはプレッシャーが大きく、折衝業務など設計以外の仕事で悩むことも多い仕事です。しかし、設計したものが完成して課題解決に役に立ったときは、他にない達成感を味わえます。

ストレスが大きい分、やりがいも非常に大きい仕事と言えるでしょう。

とはいえ、機械設計は経験が重視される世界です。新人の方や若手の方ほど悩むことも多いでしょう。

もし「しっかり経験を積ませてもらえない」「上司からきつく当たられてつらい」などの悩みを抱えている場合は、転職も有効な選択肢のひとつです。

機械設計の知識やスキル、経験は幅広い企業・業界で必要とされるため、きっと最適な職場に巡り会えます。