税理士科目合格者は一般企業への転職に有利?市場価値が高い科目や転職成功のポイントを解説
近年、一般企業において税理士科目合格者の需要が高まっています。合格科目や職歴によっては、かなり転職しやすい状況になっています。
本記事では、税理士科目合格者の市場価値や、一般企業で需要がある科目の種類・数について解説します。あわせて、税理士科目合格の転職に役立つ転職先やアピールポイントなどの転職情報を掲載しています。
税理士の科目合格者もしくは受験予定の方で一般企業への転職を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。
目次
税理士科目合格者の市場価値
税理士試験の科目合格者は、一般的に市場価値が高いとされています。税理士科目合格者の市場価値が高い背景について解説していきます。
科目合格者数減少により市場価値が上昇
税理士科目合格者の価値が高い理由の一つとして、科目合格者数の減少が挙げられます。
国税庁によると、2010年から税理士試験の一部科目合格者数が大きく減少していました。2023年は一部科目合格者数が急増していますが、過去5年間減少したことで、いま市場に科目合格者が少ない状況です。
5科目到達者数は、増減を繰り返していますが総合的にみると減少傾向にあります。試験の合格者数が全体的に減っている状況です。
税理士の登録者数は毎年増加していますが、以前より増加幅が減少しており、横ばいの状況です。税理士を目指す人自体が少なくなってきているのかもしれません。
税理士の数が増えないことも、税理士と近いスキルをもつ科目合格者の需要が伸びる一因となっているでしょう。
科目合格者は転職において売り手市場
税理士試験の科目合格は、転職を有利に進める要素のひとつです。
税理士試験は非常に難易度が高く、科目合格であっても多くの知識が問われます。会計・税務部門や財務の強化を図りたい企業では、税理士試験の科目合格者を積極的に採用する傾向にあります。
また科目合格者の数が減少傾向にあるため、ほかの求職者と差をつけられる資格といえるでしょう。
簿記より科目合格のほうが市場価値が高い?
税理士試験の科目には簿記論があり、日商簿記試験の出題範囲と重なる部分があります。必要な知識は似ていますが、市場価値はどちらが高いのでしょうか。
税理士の簿記論と簿記1級の出題範囲は8割~9割程度が重なり、勉強時間はどちらも500時間~1,000時間ほど必要とされています。どちらがより難しいと感じるかは個人差がありますが、簿記論のみの科目合格者と日商簿記1級合格者は同程度の価値と考える企業が多くいます。
簿記論を含めた2科目以上に合格していると、簿記2級・1級の合格者よりも高く評価される可能性があります。
税理士科目合格者は一般企業で需要あり
一般企業における税理士科目合格者の需要が、上昇傾向にあります。
ただし実務経験や合格している科目によって企業の評価が分かれるため、注意が必要です。以下の評価ポイントを、頭にいれておきましょう。
- 一般企業の税務・会計に転職するなら科目合格者は有利
- 1・2科目合格:会計科目に合格していると有利
- 3科目合格:一般企業への転職でかなり有利
- 4科目以上合格:キャリアアップや年収アップが狙える
- 科目合格以上に実務経験が重視される
詳しく解説します。
一般企業の税務・会計に転職するなら科目合格者は有利
税理士科目合格者は、一般企業のなかでもとくに税務・会計部門で高い評価を受けやすい傾向があります。
税理士試験の勉強で得た専門知識は、日常の会計業務から複雑な税務計画の策定・税務調査の対応など、幅広い場面で活用できるからです。
さらに合格している科目数が多ければ、勤勉さをアピールできます。税法の改正や会計基準の更新に対応できる能力を持つ人材として評価されるでしょう。
1・2科目合格:会計科目に合格していると有利
会計科目に合格していると、一般企業における基本的な会計や税務の知識がある証明となります。簿記論や財務諸表論が会計科目にあたります。
1・2科目合格で一般企業へ転職に挑むなら、会計科目の合格がベストです。ほかの科目は一般企業では活かしづらく、即戦力としてみなされません。
より高度な税務知識や実務経験が求められる職種に転職する場合、1・2科目だけでは評価されないかもしれません。
科目合格を転職に活かすなら、転職先にあわせた受験科目の選択が必要です。
3科目合格:一般企業への転職でかなり有利
税理士試験の3科目合格は、企業からの評価が大きく上がる境目です。
大手会計事務所でも「3科目以上合格」を条件としている求人が多くあります。専門職でも3科目合格が必要とされるため、一般企業ではなおさら高く評価されます。
ただし合格科目によっては企業が求める知識や経験に合致せず、評価対象にならない可能性があるので、注意が必要です。
4科目以上:大幅な評価アップや年収アップが狙える
4科目以上に合格している税理士科目合格者は、一般企業において高く評価されるでしょう。
4科目合格者や税理士試験合格者(5科目合格)は、税理士有資格者と同等レベルの知識をもつと判断されます。企業会計や税務において高いパフォーマンスを発揮できると期待されて、採用されるでしょう。
また4科目以上合格するためには相当な努力と勉強時間が必要です。その努力自体も評価されるでしょう。
ただし一般的な転職と同様、年齢やその他スキルも含めて評価されるため、多くの科目に合格したら必ず転職が成功するわけではありません。社会人としての総合的なスキルも高めましょう。
科目合格以上に実務経験が重視される
税理士科目合格者の需要は高いものの、一般企業の転職では実務経験がもっとも重要視されることが多いでしょう。
実際の求人や転職事例でも、税理士試験の科目合格者が実務未経験で一般企業に入社するケースは多くありません。
実務未経験の税理士科目合格者が一般企業への就職を目指す場合は、士業事務所や資格が重視されない中小規模の企業に所属することをおすすめします。ある程度実務経験を積んだら、大手企業への転職も実現するかもしれません。
未経験でも、20代前半~半ばまではポテンシャル採用枠で応募できる可能性があります。若手のうちに合格できると、早い段階で理想のキャリアを積むことができます。
税理士科目合格者の需要がある転職先
税理士科目合格者は会計や税務の専門知識をもつことから、以下のような業種・職種で需要があります。
- 一般企業の会計・税務
- 税理士事務所・税理士法人
- コンサルティングファーム
科目合格を武器に就職・転職活動をするなら、自身の専門性を活かせる環境を選びましょう。
転職先について、それぞれ解説していきます。
一般企業の会計・税務
一般企業の会計・税務部門も、税理士科目合格者の需要が高い転職先の一つです。
大企業や国際的なビジネスを展開する企業では、複雑な税務処理や国際税務の知識が求められる場合が多く、科目合格者の専門性が強みとなります。
企業の社内体制や方針によって求めている人材が異なるため、スキルを活かすなら合格している税理士科目と業務内容の相性が良い転職先を選択するとよいでしょう。
科目と関係ない業種や部門への転職は難易度が上がるため、おすすめできません。また実務経験がない場合は経験者の採用が優先される可能性があるため、注意が必要です。
税理士事務所・税理士法人
税理士科目合格者にとって、もっとも一般的な転職先は税理士事務所や税理士法人でしょう。
主に20代~30代の科目合格者を税理士補助として採用しています。実務経験をもとに税務・会計スキルを磨けるため、働きながら税理士資格取得を目指す科目合格者の転職先として人気です。
実務経験が求められる大企業の会計・税務に転職したい人にもおすすめです。
コンサルティングファーム
財務や税務・経営戦略に関連するコンサルティングファームであれば、税理士科目合格者の需要があります。
ただし、コンサルタントになるには専門性のほかに企画力や営業力、コミュニケーション能力なども求められます。スキルの棚卸をおこなって、コンサルタントという職種に求められる素養が自分に備わっているかどうかを判断しましょう。
多少の税務知識は無資格の経営コンサルタントでも把握しています。自分の価値をアピールするためには、最先端の知識や分析力を備えて転職に挑みましょう。
税理士科目合格を活かすアピールポイント
税理士科目合格者が自身の価値を最大限に活かすためには、適切なアピールをおこなうことが重要です。
伝え方を間違えるとマイナスの影響を与えてしまう可能性もあるため、以下のポイントをしっかりと押さえておきましょう。
- 税理士科目合格とキャリアプランとの関連性
- 実務経験
- 科目知識の具体的な活かし方
- 「税理士を諦めた」とは伝えない
それぞれのアピール方法について、次で具体的に解説していきます。
税理士科目合格とキャリアプランとの関連性
税理士試験の科目合格を転職で活かすには、自身のキャリアプランと科目合格の関連性を明確に伝える必要があります。
たとえば、一般企業への転職の場合は「税務や財務によって企業経営に携わりたかったため、税理士試験の勉強をすることで知識を得て、今回の転職に挑みました」など、税理士科目合格がキャリアプラン達成に向けた手段であることを伝えます。
具体的なビジョンを示すことで、企業の成長や業務に貢献してくれる人材としてプラスの印象を与えられるようになります。
実務経験
税理士科目合格の知識だけでなく、実務経験を積極的にアピールすべきです。実務経験があると即戦力としての活躍を期待され、採用確度が上がります。
税理士科目合格の知識を活かした具体的な業務エピソードを話せると、より説得力が増して評価を高められるでしょう。
転職先の業務内容に直結する実務経験がない場合には、これまでの経験を今後の業務にどう活かせるのかを話せるように準備しましょう。
科目知識の具体的な活かし方
転職時の面接では、取得した税理士試験科目の知識を活かす方法を、具体的に示しましょう。
たとえば「法人税法の知識を活用して、企業の税務計画に有用な提案ができる」「簿記論の知識を活用して、会計処理の効率化に貢献できる」などが挙げられます。
人事の採用担当者が税理士試験に詳しくない可能性があるため、業務の具体例を提示することで科目合格の有用性を理解してもらえるでしょう。
「税理士を諦めた」とは伝えない
自己PRの際は、自分のキャリア選択における後ろ向きな表現は避けるべきです。
税理士科目合格をした優秀な人材であっても、ネガティブな理由で一般企業を選択したと思われてしまうと採用されません。
「税理士を諦めた」といった言い方ではなく、今までの経験を活かしてどのようなキャリアを築いていきたいかを前向きに伝えましょう。
税理士科目合格の価値を高める方法
税理士科目合格だけでは転職先で評価してもらえないと感じている場合は、以下のような税理士科目合格の価値を最大限に高める方法を試してみてください。
まずは税理士事務所・税理士法人で経験を積む
一般企業の採用では、実際経験がなければ選考に進めない可能性が高いです。科目合格はプラス評価にはなりますが、必須条件ではないことが多いでしょう。
すでに一般企業での実務経験があれば、高評価を得る可能性が高いです。そのほか、税理士事務所や税理士法人での実務経験は歓迎されます。要するに、税務や会計の専門知識を業務で使用した経験があるかどうかが重要な指標となります。
税理士事務所や税理士法人では、インターンシップや短期雇用の制度があります。スタッフや税理士補助までいかなくても、まずは実務経験が詰める求人に応募してみるとよいでしょう。
実務経験者という採用の最低基準にのってから転職すると、成功率が格段にアップします。
業務と関連性が高い科目の合格を目指す
税理士試験の科目のなかには、とくに需要が高いとされる科目が存在します。
たとえば、会計科目の簿記論と財務諸表論の2科目に合格していると税務・会計の基礎知識を習得していることを示せます。これによって税理士事務所や一般企業の税務・会計部門の採用で評価されやすいでしょう。
より多くの転職機会を得るためには、会計2科目にプラスしてもう1科目~2科目取得に焦点を当てた学習プランを立てるのがおすすめです。3科目以上合格者は、より歓迎されます。
税務以外の経験・スキルを身につける
税理士科目合格と掛け合わせると高評価になるスキルとして、以下のようなものが挙げられます。
- 語学力
- ITスキル
- マネジメントスキル
- 税理士以外の資格取得
とくに未経験で転職に挑戦する場合は、転職先の業務につながる経験・スキルが必要です。業務内容をよく理解したうえで、これまでの経験や身につけたスキルをどう活かせるかを考えましょう。
税理士科目合格者におすすめの転職方法
税理士科目合格者におすすめの転職方法を2つご紹介します。
税理士・科目合格に特化した転職サイトの利用
税理士科目合格者が転職するなら、税理士や科目合格者に特化した転職サイトを利用するのがおすすめです。
職種特化型の転職サイトであれば、会計や税務など専門職向けの求人情報が豊富なため、税理士科目合格者に適した求人が見つけやすくなります。
求人を自分で探したい場合や自分のペースで転職活動をおこないたい場合には、転職サイトが適しているでしょう。
税理士・科目合格に特化した転職エージェントの利用
転職エージェントでは、キャリアカウンセリングを通じて、個人のスキルやキャリアプランに合った適切な求人を紹介してくれます。
税理士・科目合格者の転職に精通したエージェントを選ぶと、税理士科目合格者としての強みを最大限に活かせる求人を紹介してもらえるでしょう。
履歴書や職務経歴書の作成支援、面接対策などのサポートを受けながら転職活動を進めたい場合は、転職エージェントを利用するのがおすすめです。
税理士科目合格者におすすめの転職支援サービス3選
税理士科目合格者におすすめする転職支援サービスを3つご紹介します。
ハイスタ税理士
ハイスタ税理士は、税理士・科目合格者のための転職エージェントです。
税理士事務所・税理士法人やコンサルティングファームのほか、一般企業への転職支援実績も豊富です。フルリモート可・フレックスタイム制など、働き方を選択できる求人を多数取り揃えています。
税理士科目合格を活かせる業務にあたりたい・年収アップしたいなど、まずはキャリア面談で転職相談をしてみましょう。
公式サイト:https://hi-standard.pro/tax/
BEET
一般企業の税務・会計部門に転職するなら、BEETがおすすめです。
バックオフィスの転職に特化しており、企業内税理士や科目合格者の税務・会計への転職実績が豊富です。
BEET内部には企業研究専門チームが存在し、コーポレートサイトや求人サイトでは知りえない企業の内情を知ることができます。求人選定に役立つほか、企業ごとの面接対策や条件交渉も有利に進めることができます。
公式サイト:https://beet-agent.com/
MS Agent
MS Agentは、管理部門・士業に特化した転職エージェントです。
税務・会計などの管理部門と、税理士などの士業の両面をサポートしているため、科目合格者が一般企業への転職を目指す際にぴったりです。
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
さいごに|科目合格は一般企業への転職が「有利」になる
税理士試験の科目合格者は、一般企業での転職において有利になる可能性があります。ただし、確実に転職できるわけではありません。
科目合格の価値を最大限に発揮するなら、実務経験やそのほかのスキルと組み合わせるのが有効です。
スムーズに転職を進めたい場合は、税理士に特化した転職サイトや転職エージェントの利用を検討してみてください。
運営者情報
会社名 |
株式会社アシロ(ASIRO Inc.) 2021年7月20日 東証グロース上場(7378) |
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URL | https://asiro.co.jp/ |
本社所在地 |
160-0023 東京都新宿区西新宿6丁目3番1号 新宿アイランドウイング4F |
法人番号 | 9011101076787 |
設立日 | 2009年11月 |
代表者(代表取締役社長) | 中山博登 |
主な事業内容 | HR事業、インターネットメディア事業(リーガルメディア、派生メディア)、少額短期保険事業 |
許認可 | 有料職業紹介事業(厚生労働大臣許可 許可番号13-ユ-313782) |
グループ会社 |
株式会社アシロ少額短期保険 株式会社ヒトタス |