求職者が就職に必要な技術・知識を学べる職業訓練校には、Webデザイナーを目指す講座もあります。
昨今、Webデザイナーの仕事は人材不足やインターネットの発展などで需要が高まっているだけでなく、リモートワークやフリーランスという働き方を選びやすいことからも注目が集まっており、数ある職業訓練校の講座の中でも人気の講座です。
それゆえに倍率が高い傾向にあり、「自分が受講することができるのだろうか……」と心配な方も多いと思います。
そこでこちらの記事では、職業訓練校でWebデザインを学ぶ方法やメリット・デメリット、向き不向きの判断基準などをお伝えします。
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目次
Webデザインの職業訓練校とは?講座の特徴・種類
職業訓練校とは、求職者が就職に必要な技術や知識を学ぶ、国や自治体が運営する施設です。基本的には求職者が利用できる制度ですが、在職中の方でもキャリアアップ等の目的で利用できる場合があります。
まずは、職業訓練がどのようなものかを簡単に説明します。
職業訓練の種類
職業訓練には、「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があります。簡単にいうと、雇用保険の受給資格がある人とない人とで2種類に分けられています。
どの種類の講座も基本的にはハローワークを通して受講申し込みをおこないますので、ハローワークで詳細をお尋ねください。
参考:ハロートレーニング|厚生労働省
職業訓練の申込みを検討しておられる雇用保険受給資格者の皆さんへ|ハローワーク神戸
- ≪共職業訓練の受講条件≫
-
- 失業保険の給付期間が3分の1以上残っている(自己都合退職の場合)
- ハローワークからの認可がある
- 過去の公共職業訓練の終了から1年以上が経過している
- ≪求職者支援訓練の受講要件≫
-
- 失業保険受給者資格以外
- ハローワークで求職をしている
- ハローワークからの認可がある
- 労働する意思と能力がある
職業訓練で学べるWebデザインの講座と探し方
一口に「職業訓練でWebデザインを学ぶ」といっても、さまざまな講座があり、講習内容も実施期間も地域によって異なります。Webデザインに関しての知識や技術を学ぶ講座を受けたい場合は、ハローワークインターネットサービスの【訓練検索・一覧】から探すことができます。
その中でも、主にWebデザイナーと関係性が高い講座をいくつか紹介します。
Webデザイナー養成科
Webデザイナーに必要な技術や知識を一通り学べる講座には、「Webデザイナー養成科」があります。Webデザインに必要なコーディングスキルだけでなく、Webマーケティングや色彩、印刷製版の知識も学べます。
Webデザインに関する講習はオンラインでの実施が多く、全国どこからでも受講しやすいのが特徴です。また、訓練期間中に「Illustrator®クリエイター能力認定試験」や「Webクリエイター能力認定試験」などの資格を取得することも可能です。
参考:Webデザイナー養成科|厚生労働省
※過去の講習の資料です
Webクリエイター養成科
「Webデザイナー養成科」は、主にデザインを中心に学ぶ講座ですが、類似の職業訓練に「Webクリエイター養成科」などがあります。
Webクリエイター養成科は、デザインだけでなく、コンテンツを作るまでの企画や、作ったコンテンツをどのように発信していくかのマーケティングまで学べる職業訓練です。
参考:デザイン分野の職業訓練(求職者支援訓練)」を受講しませんか|厚生労働省
Webデザイン講座の特徴
実施される訓練の種類や自治体によっても違いますが、Webデザインに関する職業訓練の特徴をまとめると次の傾向があります。
定員 | 20名前後 |
倍率 | 2〜4倍 |
受講資格 | 基本的なPCスキル |
受講料 | 無料が多い。 教科書代等は自費 |
受講期間 | 3〜6ヶ月 |
PC貸出 | 貸出してくれる場合が多い |
取得可能資格 | Illustrator®クリエイター能力認定試験 Webクリエイター能力認定試験 など |
想定職種 | Webデザイナー UIデザイナー マーケティングデザイナー など |
定員と倍率
Webデザインの職業訓練では、20名前後の定員が設定されていることが多いです。人気の講座が多く、倍率も2〜4倍と高い傾向があります。受講するために筆記試験や面接が設けられており、場合によっては受講できないこともあり得るでしょう。
受講資格
厳格な受講資格を設けていない講座がほとんどです。最低限のPCスキルとデザインやコーディングの知識を持っていれば受講できることが多いです。
受講料
Webデザインの職業訓練では、受講料が無料のところが多いです。教科書代(1万円前後)と、資格を受験する場合の受験料(5千円前後)は自己負担になります。
受講料がかかる講座もありますが、一般的なWebデザインスクールに比べると、格安で受講することが可能です。
受講期間
Webデザインの講座では、講習期間が3〜6ヶ月の講座が多いです。受講時間も9時〜16時などと学校と同じようなスケジュールで講習を受けますので、日中働きながら講習を受けることはできません。現在求職中の方は、職業訓練が終了してから就職活動を再開する流れになります。
必要な機器や環境
Webデザイン講座の受講に必須のPCは貸し出してくれることが多いです。ただし、将来的にWebデザイナーを目指すのであれば、早い段階で自身のパソコンを購入しておく必要があります。
職業訓練校に入学して学生証が手に入れば、格安でPCが購入できる場合があります。また、Adobeなどのツールが必要な場合がありますが、こちらも割引価格で導入できます。
取得資格
受験料の5,000〜10,000円程度が自費になりますが、「Illustrator®クリエイター能力認定試験」「Webクリエイター能力認定試験」などの資格を訓練期間中に取得することも可能です。受講する資格は任意で選べます。
Webデザインの職業訓練を受けるメリット・デメリット
こちらの項目では、職業訓練でWebデザインを学ぶメリットとデメリットについて説明します。メリットもデメリットも知ったうえで、本当に職業訓練でWebデザインを学ぶかどうかを判断しましょう。
メリット | デメリット |
・無料・低価格でWebデザインが学べる ・初心者でも学びやすい ・失業保険の恩恵を受けやすくなる ・学割でツール等が購入できる場合がある | ・倍率が高く、受講できるとは限らない ・訓練期間中は働きにくい ・初歩的なことしか学べない ・モチベーション維持が難しい |
Webデザインの職業訓練を受けるメリット
職業訓練でWebデザインを学ぶメリットとして、次の内容が挙げられます。
- 無料・低価格でWebデザインが学べる
- 初心者でも学びやすい
- 失業保険の恩恵を受けやすくなる
- 学割でツール等が購入できる場合がある
無料・低価格でWebデザインが学べる
Webデザインに関する職業訓練では、多くが無料での受講が可能です。かかる費用は、教科書代や使用するツールの料金などで、トータル10万円もかからないことがほとんどでしょう。
初心者でも学びやすい
職業訓練のWebデザイン講習では、デザインの基礎やWebの成り立ちなど、基本的な部分から学習していきます。受講資格に厳格な技術や資格も求められませんので、これまでWebデザインに触れてこなかった方でも新たにWebデザイナーに挑戦しやすいのが特徴です。
失業保険の恩恵を受けやすくなる
失業保険の受給資格がある人向けの「公共職業訓練」の場合、失業保険を受給しながら講習を受けることができます。職業訓練に通っていない場合は、ハローワークに定期的に通って、職員と面談することで失業保険の受給が開始されます。また、自己都合退職の場合、失業手当の給付が2ヶ月後になります。
職業訓練校に通っている方は、職員との面談なしですぐに手当が受けられるようになるだけでなく、手当がもらえる期間が職業訓練校卒業までに延長されますので、通常より長く失業手当を受けられる人も出てくるでしょう。
学割でツール等が購入できる場合がある
半年以上の長期間の講座を受ける場合、職業訓練校に入校することで学生証をもらうことができます。この学生証を使えば、普段利用にするサービスを学割価格で利用することができます。代表的なものは交通機関の学割です。
また、Webデザイナーになるためには、自身のパソコンと「Adobe CC」というツールが必要です。これらも学割価格での購入が可能ですので、職業訓練受講中に購入しておくことをおすすめします。購入するものにもよりますが、だいたい30%オフの価格での購入が可能です。
ただし、Webデザインの講座は、受講期間3〜6ヶ月のものが多いため、学生証が発行されないことも多い点に注意してください。
Webデザインの職業訓練を受けるデメリット
一方で、職業訓練でWebデザインを学ぶデメリットには、次のようなものがあります。
- 倍率が高く、受講できるとは限らない
- 訓練期間中は働きにくい
- 初歩的なことしか学べない
- モチベーション維持が難しい
倍率が高く、受講できると限らない
Webデザインの職業訓練は非常に人気で、定員20名程度に対して2〜4倍の倍率になっていることが多いです。初心者でも受講可能とはお伝えしましたが、選考段階である程度ふるいにかけられてしまうことは理解しておきましょう。
特に、受講前の面接で受講理由が「Webデザイナーになりたいから受講しました」という漠然としたものだと、選考から外れてしまう可能性が高くなります。
どのような理由でWebデザイナーになりたいのかを詳しく伝えられたり、Webデザイナーになるために独学で何をしてきたのかを説明できたりしないと簡単には受講できないでしょう。
訓練期間中は働きにくい
Webデザインの職業訓練では、9時〜16時の受講時間を約半年間みっちり学んでいくものが多いです。その期間中はフルタイムで働くことができないため、貯金や失業手当、家族からの支援などを受けながら生活をする必要があります。
就職活動を再開する時期も職業訓練が終了する半年後以降になりますので、すぐには就職できないということを理解しておきましょう。
初歩的なことしか学べない
講座にもよりますが、職業訓練のWebデザイン学習では、初歩的なことを中心に学んでいきます。Webデザイナーとしてのキャリアアップや独立などの目的には向いていません。
モチベーション維持が難しい
上記の内容と関連していますが、モチベーション維持が難しいことも職業訓練の特徴に挙げられます。
まず、学習内容ですが、最初の1ヶ月はWebの成り立ちやデザインの基礎知識など、初歩中の初歩の内容を学びます。この段階で「就職に役に立たない」と見切りを付けて講習に来なくなる人もいます。
また、20名程度の学校のクラスのような環境での学びは、良くも悪くも周囲の人間に影響されることも想定しておきましょう。
周りにやる気がない人や初歩段階でつまずいている人がいると、こちらまでやる気が削がれてしまうこともあります。
Webデザインの職業訓練がおすすめの人・おすすめでない人
上記で紹介したメリット・デメリットをふまえて、職業訓練校でWebデザインを学ぶのに向いている人と向いていない人の特徴は以下のとおりです。
おすすめの人 | おすすめしない人 |
・Webデザイン初心者 ・Webデザインを学ぶ目的意識がある人 ・職業訓練に専念できる人 | ・自分のペースで学びたい人 ・より高い技術・知識を学びたい人 |
Webデザインの職業訓練がおすすめの人
職業訓練でWebデザインを学ぶことに向いている人は、次のような人が挙げられます。
- Webデザインに初めて触れる人
- Webデザイナーで働くイメージや目標が定まっている人
- 職業訓練に専念できる人
Webデザインに初めて触れる人
職業訓練のWebデザイン講座では、初歩的な内容を中心に学んでいきます。受講資格も厳しいものがありませんので、これから初めてWebデザインを学びたいと考えている方でも挑戦しやすいです。
Webデザイナーとして働くイメージや目標が定まっている人
Webデザイナーを目指す理由がはっきりしていて、Webデザイナーになるためにどのような努力をしてきたかを具体的に示せる人であれば、倍率が高い講習でも受講できる可能性が高いでしょう。またそのような人であれば、他の受講生から悪い影響を受けてモチベーションがダウンしてしまうことなく前向きに努力できるはずです。
職業訓練に専念できる人
職業訓練の講習は、学校のように日中をまるまる使って6ヶ月程度行われます。フルタイムでの仕事や育児などと両立することは難しいため、他のことと並行してWebデザインを学びたい方には向いていません。
Webデザインの職業訓練をおすすめしない人
一方で、職業訓練のWebデザイン講座をおすすめしない人には次の特徴があります。
- 自分のペースで学びたい人
- より高い技術・知識を学びたい人
自分のペースで学びたい人
何度かお伝えしていますが、職業訓練校のWebデザイン講座では、一定期間が拘束されてしまいます。働きながら・育児をしながらWebデザインを学びたいという方には不向きですので、独学や時間の融通が利きやすい民間のWebデザインスクールをおすすめします。
より高い技術・知識を学びたい人
職業訓練ではWebデザインの基本的な部分から学んでいきます。既にWebデザインの基礎を習得している人やWebデザイナーの高い技術を求めている人は、職業訓練校での受講内容が物足りなく感じられることでしょう。
また、職業訓練で学ぶ内容は初歩的なものですので、卒業したからといってWebデザイナーになれるとは限りません。
高い目的意識がある方は、独学や民間のWebデザインスクールで知識・技術を磨いたり、自力でWebデザイン会社に入社して現場でWebデザインを学んだりする方法が向いていると考えられます。
職業訓練以外におすすめのWebデザインスクール
これまで説明したとおり、職業訓練校のWebデザイン講座には向き・不向きがあります。職業訓練校でのWebデザイン講座が向いていない方は、独学でWebデザインを学んだり、民間Webデザインスクールを受講したりする方法があります。
こちらでは、職業訓練校以外のおすすめのWebデザインスクールを3つご紹介します。
日本デザインスクール|最短45日で学べるWebデザインスクール
【公式サイト】https://japan-design.jp/design-school/
「日本デザインスクール」は、最短45日でWebデザイナーが目指せる、プロのWebデザイナーに必要な知識と技術が効率的に学べるデザインスクールです。
講師は現役のWebデザイナーで、リアルな情報や技術を吸収することが可能です。また、卒業後も卒業生同士での交流があったり、目標・計画をシェアしあったりする機会があり、Webデザイナーの仕事を持続しやすいようなアフターフォローも充実しています。
対象 | 全員 |
費用 | 約60万円~ |
無料お試しの有無 | あり |
卒業までの最短期間 | 45日 |
卒業後のサポート | 卒業生コミュニティ『ゼロイチクラブ』 |
Find me!|女性専用の未経験者向けWebデザインスクール
【公式サイト】https://findme-school.com
Find me!(ファインドミー)は、女性専用のWebデザインスクールです。基本的に動画カリキュラムによって学んでいきますので、お仕事や育児などの自身の都合に合わせて学習がしやすいのが特徴です。
また、24時間対応のチャット相談サービスを利用することができます(スタンダードプラン以上)ので、わからない部分を放置せずに解決していくことができます。
対象 | 女性 |
費用 | 月額4,980円~ |
無料お試しの有無 | あり |
卒業までの最短期間 | 1ヶ月 |
卒業後のサポート | 就職サポートあり |
Famm|主婦・ママ向けWebデザイナースクール
【公式サイト】https://famm.us/ja/school
Famm(ファム)は、主婦やママ向けのWebデザインスクールです。ベビーシッターサービスを無料で利用でき、小さなお子さんがいてもしっかり学べる点や1ヶ月&オンラインで完結する手軽さから3,000人以上の卒業生を輩出しています。
Webデザイン以外にも在宅ワークで活かせるスキルを身につけられ、講座後のアフターサポートも万全です。卒業生もママばかりなので、横のつながりでのコミュニケーションも取りやすいでしょう。
対象 | 女性 |
費用 | 月額8,900円~ |
無料お試しの有無 | あり |
卒業までの最短期間 | 1ヶ月 |
卒業後のサポート | ・就職サポート(最大5件保証) ・キャリアカウンセリング ・100スキルの無料講座 ・卒業生コミュニティ |
まとめ
本記事では職業訓練校のWebデザイン講座の特徴やメリット・デメリットについて説明しました。
無料や低価格でWebデザインが学べることは非常に魅力的な制度なのですが、職業訓練校でのWebデザイン講座は人気が高いため受講できない可能性があります。また、講座受講後にWebデザイナーとして就職できるかわからないことや、職業訓練校での講座を受講中は就職が難しい点にも注意が必要です。
「本格的にWebデザイナーを目指したい」「仕事や育児と両立しながらWebデザインを学びたい」という方は、民間のWebデザインスクールで学ぶことを検討するのもおすすめです。ライフスタイルや今後の計画・目標などから、自身に合った勉強方法を見つけていきましょう。