「弁護士になってうつ病になるのは嫌だ」
「事前にうつ病になる人の原因を知りたい」
といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
弁護士の働き方は、一概に激務というわけではありません。しかし、仕事内容によっては、ストレスを感じ「辛い」「苦しい」と思う方もいます。
そのため、弁護士になる前にうつ病になりやすい理由を把握していないと予防できません。そこで本記事では、弁護士がうつ病になりやすい理由と対処方法も解説します。
これから弁護士を目指す方や継続される方は、ぜひ参考にしてください。
目次
弁護士がうつ病になりやすい理由
うつ病とは、気分が落ち込んだり、眠れなかったり、心が病むなど、精神的な情緒が安定しない症状です。
弁護士がうつ病になりやすい理由のひとつは、仕事でのプレッシャーが大きくなり、精神的に耐えられなくなるからです。
弁護士の仕事は、人や企業の未来を左右することが多いため、大きな責任感が降りかかります。責任が大きい業務を続けていると、ストレスが溜まり、うつ病になってしまうケースがあります。
厚生労働省によると、うつ病は100人に6人程がかかる病気です。
もちろん、弁護士だからと言ってうつ病になるわけではありませんが、日頃からクレーム処理や刑事・民事案件を扱っているため、精神的な疲労は通常より多くなると考えられるでしょう。
これから弁護士になる方や弁護士の仕事を長く続けたいと考えている方は、自分もうつ病になる可能性があることを忘れてはいけません。弁護士がうつ病になる原因を理解して、事前に対処できるようにしましょう。
次の章では弁護士がうつ病になる原因を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
近年のうつ病や精神疾患の状況
まず、近年のうつ病の患者の状況について確認しておきましょう。
厚生労働省が令和4年に発表したデータによると、近年うつ病の外来患者数は増加を続けており、平成29年度の気分[感情]障害の外来患者は124.6万人で15年前から約1.8倍に増加しています。
うつ病を患う人が増えている原因として、社会の急速なIT化による情報処理量の増加によるストレスと、昔と比較して求められる能力の多角化が原因と言われています。
現代社会では、情報処理能力に加えて良好な人間関係の形成などが求められることもあり、徐々に精神的なストレスが蓄積していくことでうつ病に繋がるのではないかと予測されています。
引用元:大阪メンタルクリニック梅田院
IT化が進むことで遠隔でもコミュニケーションが取れ、仕事や趣味などの活動ができるようになったメリットはあるかもしれません。
しかし、対面で直接相手の反応がわからないことによる不安や心配を感じたことがある人は多いのではないでしょうか。その積み重ねが、うつ病になる要因となります。
もし自身がうつ病かもしれないと感じた場合は、早めの医療機関の受診をおすすめします。
弁護士がうつ病になる4つの原因
弁護士がうつ病になる原因は以下のとおりです。
- 仕事の内容からストレスを感じる
- 長時間労働が求められる
- 人間関係で悩みを抱える
- 労働に対しての収入が低い場合がある
大前提として、うつ病の原因は個人によって異なります。「自分はならないだろう」と思っていても、知らないうちにうつ病になっているケースは少なくありません。
誰でもうつ病になる可能性があることを理解して、うつ病になる原因を確認しましょう。
仕事内容にストレスを感じる
弁護士の場合、仕事内容にストレスを感じ、うつ病になるケースは少なくありません。
弁護士の仕事は、案件によっては1年以上続くものもあります。長期の案件を持ちながら他の案件も並行して進めなければならず、常に仕事に追われている状態になりがちです。また、案件の中には、殺人事件や不倫・離婚など、精神的に疲れるものがあります。
長期化している案件や精神的に苦痛を感じるような案件を並行して複数抱えていると、弁護士自身が精神的に病むことがあります。また、友人や家族にも仕事の内容について公言できないため、ストレスの発散方法が限られるのではないでしょうか。
こうした状況が続くと、うつ病になりやすいのです。
自分自身の精神状態や健康状態に不安を感じたら、仕事場の上司に相談をして、案件数を減らしてもらったり、違う案件に取り掛かるようにして対策をしましょう。
長時間労働が求められる
弁護士の仕事は長時間に及ぶ場合が多く、うつ病の原因のひとつとされています。
弁護士の年間労働時間は、2020年時点で平均2,321.2時間で、10年前と比較すると約52時間増加したという調査結果が出ています。
産業全体の年間労働時間が1,642.8時間であったことを考えると、弁護士は格段に労働時間が長いことが分かります。
弁護士の仕事は長期化しやすいため、労働時間が増えてしまいがちです。労働時間が増えることで、ストレスを発散する暇もなくなり、長時間労働からうつ病になりやすくなります。
参照元:毎月勤労統計調査 令和2年12月分結果確報|厚生労働省
人間関係で悩みを抱える
人間関係も弁護士がうつ病になる原因です。弁護士になる人の多くは、真面目で責任感が強く、仕事熱心です。また、仕事の話を家族や友人にできないため、ひとりで悩みを抱えやすくなります。
弁護士以外の職業でも当てはまりますが、こうした状況が続くと、解決できない悩みが増えてストレスになり、うつ病を発症します。
また、組織内で働くため同期や先輩社員との人間関係で悩むケースも少なくありません。
仕事内容が民事や刑事裁判になるため、弁護士側でのミスがあると大きな問題になります。自分のミスによって裁判の結果が変わってしまうと、責任を取るのが難しいため、事前に問題が起こらないように厳しい確認があります。その結果、精神的に耐えられなくなり、うつ病になるケースも考えられるでしょう。
人間関係で精神的に疲労が溜まるときは、転職の検討がおすすめです。同じ職種でも、職場によって働きやすい環境があります。
仕事内容や労働時間に対して収入が低い
弁護士がうつ病になる原因として、仕事内容や労働時間に対して適切な収入が得られない場合が挙げられます。弁護士に限らず、会社で働いていると、給与以上の仕事を任されるときがあるのではないでしょうか。
近年は労働環境の整備が急がれているものの、低い給料で長時間労働を求められるケースは少なくありません。給与に対して労働力が合わないと「辞めたい」「つらい」「楽しくない」といった、ネガティブな感情が生まれます。こうした感情が溜まっていくと、精神的な疲労が増え、うつ病になる可能性が高くなるでしょう。
前述の通り、弁護士の仕事は長期化しやすく、労働時間が平均より長くなっています。その一方で、弁護士の年収は高いと言われていますが、年々平均年収は減少傾向にあります。
仕事を頑張ってもなかなか給与が上がらない、目に見える成果が出ないことで精神的に病み、うつ病を発症することがあります。
参考:弁護士白書2021年版 近年の弁護士の活動実態について
弁護士でうつ病になりやすい人の3つの特徴
弁護士でうつ病になりやすい人の特徴は以下のとおりです。
- 責任感が強すぎる人
- ストレスを感じやすい人
- 完璧主義な人
弁護士でうつ病になる原因を理解した次は、特徴を把握する必要があります。うつ病になる人の特徴が把握できていないと、自分が病む可能性があるのか判断できません。
自分がうつ病にならないためにも、なりやすい人の特徴を把握しましょう。
責任感が強すぎる人
うつ病になりやすい人の特徴として責任感が強い人が挙げられます。弁護士の人は「責任感が強い」「真面目」「努力家」といった性格の方が多い傾向です。責任感が強いのは仕事をする上で大切です。
しかし、責任感が強すぎるため、周囲に相談しようとせずひとりで問題を解決しようとします。1つの案件であればひとりで解決できる可能性もありますが、弁護士の仕事は複数の案件を一度に抱えるケースがほとんどです。
また、弁護士の仕事は、民事・刑法と難しい内容が多いため、こうした問題をひとりで解決するのは困難です。そのため、先輩社員や同期に相談し、時には助けをもらう必要があります。
責任感が強いことは仕事をする上で大切です。しかし、責任感が強すぎるとすべての問題をひとりで解決しようと抱え込んでしまうため、精神的に病む可能性が高くなります。
こうした状況を解決するためにも、不安や不満があれば相談するようにしましょう。
ストレスを感じやすい人
弁護士の仕事は、殺人事件や不倫・離婚など暗いテーマの案件が多いため、ストレス耐性がない人は、うつ病になる可能性が高くなります。
また、日頃からプレッシャーを感じる業務をするので、仕事がない日も案件のことを考えてしまいがちです。プレッシャーを感じる日々が続くと、徐々に精神的に病み、うつ病になりやすいのです。
こうした状況を避けるために、ストレスを感じやすい人は以下の方法がおすすめです。
- 短期で片付くように調整する
- 他の弁護士と業務を分担する
- 先輩や同期に相談する
- こまめにストレスを解消する
完璧主義な人
完璧主義な人は弁護士でうつ病になりがちです。完璧主義な人は、仕事でのケアレスミスや細かい点に気づけて優秀な人材です。しかし、完璧主義の人はひとつの案件に入り込んでしまう可能性があります。
仕事に入り込んでしまうと、休む時間すら忘れて案件に取り掛かってしまうため、休む暇がなくなります。一度に数十件の案件を抱えた状態で休みなく働くと、仕事のストレスが増え、心のケアができずにうつ病になりがちです。
そのため、弁護士で完璧主義な人は、案件の規模や数で絞って活動するのがおすすめです。案件の規模が大きいと、自然と並行して抱える案件数が少なくなり、自分の時間を作れて気持ちに余裕ができます。
完璧主義な人は仕事において大切な人材です。しかし、弁護士という仕事においては完璧主義であるとうつ病になってしまう可能性があるので、マイペースで仕事ができる環境を作れると、事前に予防できます。
弁護士がうつ病になったときの対処法5選
弁護士がうつ病になったときの対処法は、以下のとおりです。
- うつ病の原因を知る
- 休暇を取る
- 福利厚生や制度を使う
- 就業先を変える
- 転職する
うつ病の対処方法を知らないまま活動を続けてしまうと、さらに悪化して、病院に通院する可能性も考えられます。
こうした状況を避けるためにも、前もってうつ病になったときの対処方法を覚えておきましょう。
うつ病の原因を知る
うつ病になったときは、その原因を確かめるのが重要です。うつ病になっても原因を知らないと解決方法も見つからなければ、再発してしまう可能性があります。
たとえば、うつ病になった原因が、仕事内容ではなく人間関係と診断された場合、転職や就業先を変える必要があります。仕事場を変えなければ復職しても再発する可能性があります。
うつ病の原因はさまざまです。「自分は大丈夫」と思っていても、知らぬ間にストレスを抱え、うつ病になっている場合もあります。
少しでも仕事に対してネガティブな感情になり始めたら、病院で診断してもらうのがおすすめです。
休暇を取る
仕事中に精神や体調に不調を感じたら、まず休暇を取りましょう。うつ病の症状が出ると、判断力や思考力が鈍るため、かえって迷惑をかけてしまう可能性があります。仕事の内容によっては取り返しのつかないミスにつながる場合もあるので、上司に相談し、ゆっくり休暇を取るのがおすすめです。
もちろん、弁護士は多忙を極めるため、休暇をもらうとき話しづらいと思う場面もあります。しかし、体が資本である以上、うつ病になって仕事で迷惑をかけるより、しっかり休んで、万全の状態で働いた方が事務所としても安心できます。
また、休暇中は仕事のことは忘れて、旅行や趣味、娯楽などで気持ちをリフレッシュしましょう。
福利厚生や制度を使う
うつ病が原因で休暇や病院に通院するときは、福利厚生を活用しましょう。うつ病で働くことが困難だと判断された場合、以下のような制度が利用できます。
- 収入や生活費を保証する制度
- 医療費を助成する制度
- 税金が安くなる制度
制度は大きく分けて上記の3つです。制度によって、受けられる内容は異なりますが、お金に関する負担を軽くできます。また、厚生労働省でも、うつ病に関する制度を設けています。
企業内弁護士(インハウスローヤー)の場合は、休職制度は就業規則にもとづく会社・事務所独自のものになります。もし、企業内弁護士(インハウスローヤー)の方がうつ病になった場合は、就業規則などで、賃金の支払いや休職制度の有無を確認してださい。
うつ病になったときは、できる限りの制度を活用しましょう。
転職して働き方を変える
弁護士がうつ病になった場合、転職して働き方を変えるのも手段のひとつです。
たとえば、現在は民事訴訟の案件を担当しており、大きなトラブルに深く関わったことで精神的にストレスを感じた場合には、業務内容が安定的な企業内弁護士に転向するという方法があります。
また、弁護士のスキルや知識を活かして法務弁護士になる手段も存在します。企業にとって弁護士資格を保有している人材は重宝されるため、いままでの経験を活かした転職が可能です。
同じ弁護士でも、就業先を変えることで働き方が変わることがあるため、転職という選択肢を持っておきましょう。
職種を変える
仕事内容や職場環境が合わずうつ病になった場合、思い切って違う職種に転職するのも手段のひとつです。
弁護士資格を取得するのに、学生生活やその後の活動も含め多大な時間を費やしたため、もったいないと思う気持ちもあると思います。しかし、うつ病になって弁護士に復職できないのであれば、転職もひとつの手段です。
弁護士から違う業界や職種に転職するのは不安が多いと思いますが、弁護士資格を保有していることで、どの企業でも一目置かれて採用されやすい傾向にあります。
弁護士資格を獲得するのに必要な時間は約1万時間と言われています。その時間を費やして弁護士資格を取得した経歴は、どの企業でも評価されます。
ただし、弁護士資格だけに頼って転職活動をするのはおすすめしません。転職活動で大切なのは、自分が希望する条件が叶えられるかどうかです。
たとえば、将来の目標が叶えられる企業なのか、挑戦してみたかった職種なのか、といったように明確な転職理由を作るのが重要です。
弁護士資格に頼って就職をしてしまうと、また条件がミスマッチの環境で働くことになる可能性があるので、明確な転職理由を持った上で転職先を決めましょう。
弁護士でがうつ病と感じたらすぐ対処すべき
弁護士の仕事は時間も精神も費やすため、誰がうつ病になってもおかしくありません。「自分は大丈夫」と思っている人こそ、気づかずに長時間労働を続け、悪化してしまう危険性があります。
そのため、誰でもうつ病になる可能性があることを常に頭に入れておく必要があります。もし、少しでも仕事に対して「つらい」「きつい」「辞めたい」と思ったら無理をせず、先輩弁護士に相談しましょう。
時には、休暇を取り体と心を休ませるのも大切です。