精神障害を抱える方にとって、就職活動は大きな壁と感じられることがあるでしょう。実際に、厚生労働省が公表した令和5年度の精神障害者の就職率は43.9％です。

職場での理解不足や、体調の変化による勤務の難しさ、障害者枠の求人が少ないことなど、多くの課題があります。

しかし、近年は障害者雇用促進法の改正や支援サービスの充実により、精神障害者が働きやすい環境が少しずつ整備されつつあります。

本記事では、精神障害者の就職が難しい理由を明らかにしながら、就職活動を成功に導く具体的な方法と活用すべき支援制度について解説します。

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数値引用元：令和５年度　ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します｜厚生労働省

精神障害者の就職が難しい理由3選

精神障害を抱える方にとって、就職活動は多くの壁に直面することがあります。

社会全体で障害者雇用が進んでいる中でも、精神障害者にとっては、就職や職場での適応を難しくしている現状もあるでしょう。

本章では精神障害者の就職が難しい理由を3つ解説します。

職場での理解不足や偏見がある

精神障害に対する職場での理解不足や偏見は、就職活動や職場定着を難しくする要因の一つです。

厚生労働省によれば、精神障害者を雇用するにあたって、任せる業務や周りの理解が重要だと明記されています。

周囲の理解不足が原因で、職場でのコミュニケーションや業務において摩擦が生じることがあります。

職場内での偏見により、精神障害者が能力を発揮する機会を制限される場合もあります。これらの状況は、本人のモチベーション低下や退職意向を高めるリスクがあります。

【参考】障害者の雇用管理上の留意点｜厚生労働省

精神障害特有の体調変化による安定した勤務が難しい

精神障害の症状として、体調の変化が激しいことが挙げられ、就職や勤務に影響を及ぼす恐れがあります。

精神障害者の体調変化に対応するためには、企業は柔軟な勤務体制を整えることが必要です。

時短勤務や在宅勤務ができると、通勤ストレスが軽減され、体調に合わせた働き方が可能になります。

また、定期的な休憩時間の確保や医療機関への通院を考慮したスケジュール設定も重要です。

障害者枠の求人が少なくミスマッチがおきる

障害者枠の求人が少なくてミスマッチが起きやすいことも、就職を難しくする要因になり得ます。

【引用】令和５年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します｜厚生労働省関連記事：精神障害者におすすめの転職エージェント比較ランキング｜選び方や最大限に活用するコツを徹底解説

障害者枠の就職件数は、精神障害者の就職件数が過半数を占めているので、求人数を心配する必要はあまりないですが、それでも精神障害者が希望する業務内容や勤務条件が求人と合わずにミスマッチが発生することがあります。

ミスマッチを防ぐために、障害者雇用専門の転職エージェントを活用する方法があります。専門の転職エージェントは、精神障害の特性を理解した上で、適切な求人を紹介してくれます。

また、就職後の職場定着支援もおこなってくれるため、長期的な勤務を目指すことができます。

精神障害者が就職活動を成功させる4つのポイント

精神障害を抱える方が就職活動を成功させるには、自分の特性を理解し、それに合った環境やサポートを活用することが重要です。

以下に、自分の特性を生かし、精神的な負担を軽減しながら働き続けるための4つのポイントを解説します。

自分の特性に合った働きやすい職場環境を探す

精神障害を抱える人が無理なく働ける環境を見つけるためには、特性に応じた業務内容や働き方を考慮することが重要です。

たとえば、統合失調症やうつ病の方は、一人で集中して取り組む仕事やストレスが少ない業務が向いているでしょう。

軽作業や事務、バックヤード業務、清掃などは、自分のペースで作業が進められます。特にバックヤード業務や清掃は、直接的なコミュニケーションが少なく、精神的な負担が軽減されるかもしれません。

また、職場見学や実習を活用し、働く環境や雰囲気を事前に確認することも効果的です。事前に職場を知ることで、自分に合うかどうかを判断しやすくなります。

支援機関や就労支援サービスを活用する

精神障害者の就職活動では、支援機関や専門のサービスを活用することが成功への近道です。

これらの機関は、障害特性を考慮した求人紹介や面接対策、就労後のフォローアップなどをおこなってくれます。

障害者雇用専門の転職エージェントは、応募者の特性に合った企業とのマッチングを提供し、職場定着を支援してくれます。転職エージェントを活用することで、ミスマッチを防ぎ、働きやすい職場を見つけやすくなるでしょう。

さらに、行政が提供する「障害者トライアル雇用」などの制度も活用可能です。これは、3か月の試用期間を設けて、雇用者と障害者が互いの適性を確認するための制度であり、初めて就職活動をする精神障害者におすすめです。

支援機関を利用して、安心して就職活動を進めましょう。

関連記事：おすすめの就労移行支援をタイプ別に紹介！選び方のポイントや利用時の注意点も押さえよう

【参考】｢障害者トライアル雇用｣のご案内｜厚生労働省

面接で無理のない自己開示を心がける

面接は、就職活動における重要なステップですが、精神障害を抱える方にとっては大きなハードルになることがあります。

まず、自己開示の範囲を事前に決めておくことが大切です。

たとえば、「通院が必要な曜日がある」「過去の経験から短時間勤務が適している」など、業務に影響を及ぼす具体的な事柄に絞ることで、面接官に理解してもらいやすくなります。

しかし、障害のことばかり面接で話すのではなく、企業にどのように貢献できるのか、自分自身の魅力をしっかりアピールすることが重要です。

さらに、事前に想定される質問への回答を準備しておくと安心です。

就労移行支援事業所や転職エージェントでは、模擬面接のサポートを受けることができるため、これらを活用して練習を重ねると効果的です。

面接中は、相手の目を見て話し、リラックスした姿勢を保つことで、良い印象を与えられるでしょう。

長く働くために職場とのコミュニケーションを意識する

就職後、精神障害を抱える方が長く働くためには、職場でのコミュニケーションが重要です。上司や同僚との適切なやり取りを通じて、自分の状態を共有し、必要な配慮を得ることができます。

体調が優れない日には無理をせずに休暇を取りましょう。そのためには、あらかじめ上司に相談し、休暇の申請手続きや体調報告の方法を決めておくと安心です。

また、業務上の困り事や負担が大きいと感じた際には、早めに相談しましょう。これにより、トラブルを未然に防ぎ、働きやすい環境を維持することができます。

さらに、障害者雇用に積極的な企業では、メンター制度を導入している場合があります。メンターは、日々の業務や精神的なサポートを提供する役割を担うため、職場での相談役として活用することができます。

職場との良好なコミュニケーションは、安心して働き続けるための基盤です。積極的に対話を重ね、信頼関係を築きましょう。

【参考】メンター役を担う上司が中心となって障害のある従業員を支える企業｜独立行政法人高齢・障害・求職者雇用機構

精神障害者が活用できる支援制度

精神障害を抱える方が就職を目指す際、支援制度を活用するのがおすすめです。

以下で、精神障害者が利用できる代表的な支援制度について具体的に解説します。

就労移行支援事業所を利用する

就労移行支援事業所は、障害者総合支援法にもとづく福祉サービスで、精神障害を抱える方が働くためのスキルや習慣を身につける場として活用されています。

主に、日常生活の改善から就職活動、職場定着までの一貫した支援を提供してくれます。

就労移行支援事業所には、日常生活リズムを整えるためのプログラムがあり、定時出勤の練習や生活習慣の改善をはかることができます。また、パソコンスキルや接客スキルなど、希望する職種に応じた職業訓練も実施されます。

就労移行支援事業所の利用は、就職活動に不安を抱える精神障害者にとって、安心して社会復帰を目指せる有効な手段といえるでしょう。

関連記事：おすすめの就労移行支援をタイプ別に紹介！選び方のポイントや利用時の注意点も押さえよう

ハローワークの障害者支援窓口を活用する

ハローワークには、障害者専用の支援窓口が設置されており、精神障害者向けの就職支援を受けられます。これらの窓口は、求人紹介だけでなく、就職活動全般の相談やサポートも提供してくれます。

具体的なサポート内容として、個々の特性に合った求人を紹介してもらえ、また、応募書類の作成支援や面接対策などの就職準備もサポートしてくれます。

ハローワークの障害者支援窓口を活用することで、精神障害者が抱える就職活動のハードルを下げ、適切な職場を見つける可能性が広がります。

障害者雇用率制度を活用する

障害者雇用率制度は、一定の障害者の雇用率を満たすことを企業に義務付ける制度です。

従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。（障害者雇用促進法43条第1項）

【引用】障害者雇用率制度｜厚生労働省

精神障害者もこの制度の対象となり、精神障害者が就職しやすい環境で障害者枠として応募することができます。障害者枠の求人は、通常の求人とは異なり、業務内容や職場環境において配慮がおこなわれています。

また、採用後も定期的な面談や支援が提供される場合が多く、安定して働ける環境が整っているでしょう。

職場定着支援サービスを活用する

職場定着支援は、精神障害者が就職後に安定して働き続けるための支援を提供する制度です。このサービスは、就労後のトラブル防止や円滑な職場適応を目的としており、多くの事業所で利用されています。

この支援では、事業所のスタッフによる定期的なカウンセリングや職場訪問がおこなわれます。精神障害者が業務や人間関係で困難を感じた場合、支援員が状況をヒアリングし、具体的な改善策を提案します。

また、職場定着支援サービスを利用することで、雇用主と障害者の間でスムーズな意思疎通が図れます。

支援員は、雇用主に障害の特性や適切な配慮について説明し、双方が納得できる解決策を提案します。これにより、職場での摩擦を最小限に抑えることができるでしょう。

精神障害者の就職が難しい時におすすめ転職エージェント

以下では、精神障害者の就職が難しい時におすすめ転職エージェントについて紹介します。

LITALICO仕事ナビ

デイゴー求人ナビ

dodaチャレンジ

dodaチャレンジは障害者に特化した就職エージェントです。

厚生労働省の人材サービス総合サイトに登録されているもののなかで、2023年度最も転職支援を成功させています。6ヶ月就業継続率も2023年度に95%を達成しており、求職者に見合った求人を紹介できていることがわかります。

また、転職者の多さや定着率の高さは、障害の特性にあわせたキャリアアドバイザーの存在も大きいといえるでしょう。

dodaチャレンジのキャリアアドバイザーには、身体障害・精神（発達）障害・知的障害など各種障害の専門家が揃っています。障害の特性を理解した人が就職を支援してくれるため、求職者の強みを引き出してくれるはずです。

精神障害者の就職に関するよくある質問

以下では、精神障害者の就職に関するよくある質問について紹介します。

同様の疑問がある人は本章で解決しましょう。

精神疾患だと就職できない？不利？

精神疾患を抱えていても、就職は可能です。しかし、精神疾患に対する理解が不十分な職場が一部に存在し、不利に感じる場面もあるかもしれません。

近年では、障害者雇用促進法の改正により、精神障害者を対象にした求人や支援制度が増えています。

また、就労移行支援事業所やハローワークの障害者支援窓口を活用すれば、自分に合った職場環境を見つけやすくなるでしょう。

関連記事：うつ病だと就活できない？バレる？隠さずに最短で内定をもらう方法を解説

精神障害者は仕事が続かないから採用されないって本当？

精神障害者が仕事を続けることが難しい場合があるのは事実ですが、採用において不採用の原因になるわけではありません。

就労移行支援や職場定着支援を利用することで、職場での困難を軽減し、長期的に働き続けられるポイントを自分なりに探すことができるでしょう。

面接時に無理のない範囲で自己開示を行い、必要な配慮を説明することで、ミスマッチを防いで内定をもらうことができるでしょう。

精神疾患でもハローワークで仕事を紹介してもらえる？

ハローワークで障害者枠での求人を紹介してもらえます！

ハローワークには、障害者専門窓口が設置されていて、障害者が就職することに関しての不安や、仕事の捜し方、選考対策を受けることができます。

就職がうまくいくか、職場に定着できるか不安な人は、ハローワークの支援を受けながら自分のペースで就職を目指しましょう。

【参考】障害のある皆様へ｜ハローワークインターネットサービス

まとめ｜精神障害者の就職が難しい理由とは

本記事では、精神障害者が就職で直面する主な課題と、その解決に役立つ方法を解説しました。

就労移行支援事業所やハローワークの活用、障害者雇用率制度を理解することは、就職活動を効率化する助けになるでしょう。

また、職場での長期的な定着を目指すには、職場との適切なコミュニケーションが重要です。

精神障害者が就職活動を成功させるためには、自分の特性に合った職場環境を選び、支援制度を活用しながら段階的に進めていくことが重要です。