働き方や市場の多様化、テクノロジーの発展などによりビジネスを取り巻く環境がめまぐるしく変わる中、部下を管理する管理職の転職にはどんな考え方が必要なのでしょうか。
管理職が転職するメリットやよくある失敗例、企業選びや応募時のポイントなどについて解説します。
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目次
管理職の転職市場
最初に、管理職の転職市場について解説します。
課長クラス以上の経験があれば40代・50代でも転職できる
転職市場では以前と比べて年齢による壁は低くなり、ある程度年齢が上がっても転職しやすくなっています。とはいえ、年齢が上がるほど求められる要素も増えて求人自体も減るため、転職が厳しさを増すのは否めません。
しかし管理職の転職であれば年齢や経験値がプラスに働くため転職のチャンスがあります。40代・50代でも転職は十分に可能です。特に課長クラス以上の経験があると管理職としての転職にも期待できます。
マネジメント経験などがあれば管理職候補としての転職が可能
課長クラス以上の経験がなくても、マネジメント経験があれば管理職候補としての転職が可能です。たとえばプロジェクトリーダーや責任者などとして部下の指導や育成を行ってきた経験があれば、管理職としての素養があると判断される可能性があります。
管理職候補の場合はメンバークラスとしての採用になりますが、通常のメンバーと違って将来的に管理職になることを期待されている人材です。そのため転職して短期間のうちに管理職に登用されるケースも少なくありません。
また、最初から管理職として採用されるよりもプレッシャーが少なく、メンバーとコミュニケーションを深めやすいというメリットもあります。
管理職を求めているのは中小またはベンチャーが中心
管理職の求人を出しているのは中小企業やベンチャー企業が中心です。これらの企業の管理職は、指示や管理だけでなく実務もこなす必要があります。自らも現場で実務を行いながら部下のマネジメントも行うプレイングマネージャーとしての役割が求められます。
そのため実務から離れており、最近は管理のみを行っているという方は改めて現場の実務を確認し、最新の手法なども学んでおくほうがよいでしょう。
一方、大手では管理職の欠員が出たら異動や昇格によって補充されるのが通常です。管理職を外部から招き入れるのは業界で名の知れた人や突出した実績がある人をサプライズで招聘するなど特殊なケースに限られます。
もっとも、大手企業の管理職求人がないわけではありません。たとえば新規事業の立ち上げに際し、社内で専門的な知見やノウハウをもつ人材がいないケースなど事業部の管理職を中途採用する場合があります。
同業界で転職するほうが有利
管理職の転職は同業界で転職するほうが有利に働きます。その業界で管理職になれるだけの知識や経験があるわけですから、その知識・経験を最大限に活かせるのはやはり同業界です。
採用側としては、同業界で実績がある人を管理職として迎えるほうが活躍してもらいやすいと考えます。
ただし、業界を変える場合でも前職との共通点があれば転職は可能です。たとえばスタッフの大半がパートタイマーを占めるスーパーでマネジメントをしていた人が、同じようにパートタイマーが多い飲食業界で管理職として転職する、といったケースが考えられます。
マネジメントの対象がパートタイマーで共通していることから、前職でのマネジメント経験を活かしやすいためです。
管理職の転職活動が難しいと言われる5つの理由
管理職の転職活動は一般の転職活動と比べて難しい部分があります。どんな点が難しいのかを理解し、転職活動の心構えや活動方法の選定に役立てましょう。
転職サイトには求人が少ない
管理職は社内で限られた人にしか与えられないポジションなので、スタッフ・メンバークラスのポジションと比べると管理職は求人自体が少ないです。また管理職は経営者に近く事業運営に関わる重要ポジションなので、求人が一般に公開されないケースが多くあります。
そのため転職サイトなどで求人検索をしても自分に合う求人が見つからず、応募先を探す段階で苦戦を強いられる場合もあります。
今よりも条件を上げるのが難しい
現在でも相応の給与や待遇を受けている方の場合、転職しても条件が上がる求人がなかなか見つからない場合があります。結果的に、今の職場のほうが「まだマシ」という理由で転職を断念せざるを得ないかもしれません。
また、ポジションを上げて転職する場合は残業代がなくなり、かえって年収が下がる場合もあります。
労働基準法上の管理監督者にあたるポジションで転職する場合は広い裁量権が与えられるものの、その分法律で守られる部分が減ることにもなるので少し注意が必要です。
選考のハードルが高い
企業は管理職に対して、そのポジションや待遇に見合うだけの成果を求めます。
また管理職はほかのメンバーに与える影響が大きいポジションなのでその分採用に失敗するリスクも高いです。そのため採用側も慎重にならざるを得ず、選考の厳しさはメンバークラスの比ではありません。
ただでさえ求人が少ない管理職ポジションですが、求人が見つかったとしても選考のハードルを越えられず転職に至らないケースが多々あります。
実績の可視化・アピールが難しい
管理職は部下の指導・育成、他部署や外部との折衝・交渉などの業務を行うポジションです。こうした業務は実績の可視化や定量的なアピールが難しく、応募書類や面接で伝わらない場合があります。実績をしっかりアピールできなければ採用されるのは難しいでしょう。
管理職・マネージャポジションの人が転職する5つのメリット
転職を迷っている管理職の方は、転職するメリットを改めて整理してみましょう。
年収や待遇がアップする
大きなメリットのひとつは年収アップや待遇の改善です。現在管理職として活躍していても、納得のいく評価が受けられなかったり、経営状態が悪かったりして年収や待遇に不満がある方がいるかもしれません。
経営陣の評価や経営状態をすぐに変えるのは難しいですが、転職すれば給与水準や評価基準そのものが変わるため年収アップや待遇の向上は難しくありません。
裁量権が広がり、やりがいを感じやすくなる
管理職にどこまでの裁量権を与えるのかは企業や経営者の考えによるところが大きいため、環境が変わり、異なる経営陣の下で働くことで裁量権が大きく広がることは珍しくありません。
裁量権が広がれば、自分がやりたいことを実現しやすくなります。やりがいも感じやすくなるでしょう。
自分と価値観の近い人と一緒に働ける
転職すれば一緒に働く人も変わります。自分のビジョンに合った企業を選べば、そこで働く人も自分と価値観の近い人である可能性が高く、そうした人と一緒に働くことで円滑に業務を進めやすくなります。
経営に近いポジションで働ける
管理職とひとくちにいってもポジションは複数ありますが、今の会社でこうしたポジションに昇格するには、そもそもポジションに空きがあるのか、経営者からの高い評価を得られるのかなど超えるべきハードルが多数ありいつ昇格できるのか分かりません。
一方、転職ならそのポジションで採用されれば一気にポジションを上げることも可能です。経営に近いポジションで働くことでキャリアを充実させられ、経営者視点を持てるようになるなど大きなメリットを享受できます。
CXO候補になれる可能性が高い
企業によってはCXOやCFOなど経営に近いポジションで募集が出ている場合があります。社外からCXO候補を採用することで自社にはなかった発想や施策、人脈を確保できますので、年収が上がるだけではなく、企業にとってもプラスに働きます。
管理職の転職でよくある失敗
管理職の転職は失敗するケースもあります。事前によく確認しておくことで避けられる失敗も多いので、どんな点を確認するべきかの参考にしてください。
社風が合わない
社風と自分の価値観が合わないと、強いストレスを感じ、退職の原因となってしまいます。
たとえば部下の教育や評価に関して、自分は仕事への姿勢や過程を大事にして評価したいと思っても、転職先が結果のみを追い求める社風であれば疑問に感じる可能性があります。
社風は募集要項などからは見えにくい部分ですが、転職ではよくある失敗なので事前にチェックしておきましょう。
経営陣と考え方が合わない
管理職は自社の理念や経営陣の考えを社内に浸透させる役割を求められます。その際、経営陣の考え方に納得できなければ会社への不信感や将来の不安を感じる可能性があります。
経営陣がどんな考えを持っていて自分の考えとの相違はあるのか、あるとして納得できるものなのかは転職前に確認しておくべきです。
業務上のミスマッチ
企業が管理職にしてほしい業務と、自分が思い描いていた業務にミスマッチが起こると早期退職につながります。
これは、応募先が情報提供を怠ったことが原因のひとつですが、応募者が事前に業務内容についてよく確認していなかった可能性もあります。
高い成果を求められてプレッシャーを感じる
経験豊富な管理職とはいえ、新しい環境では仕事の進め方も部下の性格も分からない状態なのでストレスを感じやすい状況です。しかし企業は管理職に対して転職直後から高い成果を求めます。
新規事業の成功や組織の立て直しなど、管理職に求められる成果は通常より高いため、大きなプレッシャーがあるでしょう。
こうしたプレッシャーも楽しめる人ならよいのですが、実力を超えた成果を求められると精神的につぶれてしまうリスクがあります。
管理職の転職は自分が思っている以上の待遇で迎えられる場合もありますが、自分の実力は客観的に判断したうえで、企業に求められる役割を果たせるかどうかを考えておきましょう。
管理職が転職する際の注意3つ
管理職の転職で気をつけたい点について解説します。
後任に引き継げる体制を整えておく
内定を獲得した後に現職で引き留めにあい、入社時期が後倒しになるなどのトラブルに発展するケースは少なくありません。特に管理職はプレイヤー以上に引き留められる可能性が高いため注意しましょう。退職を切り出すのは内定を得た後で問題ありませんが、事前に後任に引き継げる体制を整えておく必要があります。引き継ぎがスムーズにいけば引き留められる可能性も下がります。
管理職の転職には家族の理解も必要
管理職は家族がいる人も多く、年齢的にも住宅ローンや教育費などで私生活のお金がかかる世代でしょう。転職後の年収や待遇は家族の生活にも影響があるため、自分のキャリアといえども家族の理解は不可欠です。
内定を得ても家族の反対で結局転職できない場合もあるので、転職しようと思ったタイミングで家族に相談しておくのがよいでしょう。
条件の優先順位を決める
条件とは業界や企業規模、給与や勤務地、組織風土など転職で譲れないあらゆる条件のことです。譲りたくない条件は複数ある方が多いかもしれませんが、条件にこだわりすぎると応募先を選定すること自体が難しくなります。
また転職した後に希望条件とのミスマッチが生まれやすく、不満を感じやすくなります。そのため特に重視したい条件は何かを考え、優先順位を決めましょう。
本当に譲れない条件だけに絞ることで、複数企業への応募が可能となり、転職後も納得感をもって働くことができます。
管理職の企業選びと応募の際のポイント
応募する企業の選び方や応募する際のポイントを解説します。
企業理念に共感できる企業を選ぶ
管理職は全体を俯瞰して見るポジションなので、経営陣の考え方との間に溝が生まれないよう、企業理念に共感できる企業を選ぶことが大切です。企業理念を理解するには企業の情報収集・分析が必要です。
企業ホームページはもちろん、経営者のインタビュー記事や転職エージェントからの情報など幅広く情報を得ておきましょう。
また、人材教育や人事評価に関する企業の考え方も確認が必須です。自らのマネジメント方針と企業の人材に関する考え方が合わないと、はやい段階で不満が生じてしまいます。
これまでの経験を活かすには、まずは活かせる環境に身を置くことが大切です。
募集背景を把握する
応募先が管理職を募集する背景をしっかり把握しましょう。それによって、管理職に求められる役割も異なります。
たとえば欠員募集であれば前任者の業務を引き継ぐことになり、新規事業の立ち上げにともなう募集であればその事業に関する知見や革新的な姿勢といったものが必要になります。
募集背景が見えにくい場合、単に残業代を抑制するためのプレイングマネージャーを探しているだけかもしれません。その場合は業務や条件といったあらゆる面でミスマッチが生じる可能性があるため注意が必要です。
転職エージェントを活用するなどして応募先の内情を確認しておきましょう。
応募先が求める人材を把握する
管理職にどんな人材を求めているのか、どんな役割を期待しているのかは企業によって異なります。
いくら優秀で実績が豊富な人でも、応募先が求める人材像との差が大きければマッチングは成立しません。そのため企業研究を通じ、応募先が求める人材像を把握しましょう。
過去の実績やキャリアを具体的に伝える
管理職としての部下をどのようにマネジメントしてきたのかを具体的に伝えます。
部下やチームの人数、若手・中堅・正社員・派遣といった対象者の層、部下とのコミュニケーションの取り方や進捗管理といったマネジメント手法を整理して伝えましょう。
具体的なエピソードを交えて話すと効果的です。こうすることで、採用側は応募者がどんなマネジメントを行ってきたのかをイメージできます。
年収や待遇をしっかり確認しておく
管理職の年収や条件は企業ごとに大きく異なるので、しっかり確認しておかないと大幅ダウンもあり得ます。また、年収だけを見て転職したところ、求められる成果が大きすぎて対応できない場合もあります。年収や待遇などの条件面だけでなく、どんな成果を求められているのか、自分にそれが達成できるのかもあわせて確認しておきましょう。
管理職の転職活動方法は大きくわけて3つ
管理職の転職活動方法は、大きく「人脈を使った活動」「ダイレクトリクルーティング」「転職エージェント」の3つにわけられます。それぞれの特徴を確認しましょう。
人脈を使った活動
これまで培ってきた人脈を利用して転職する方法です。たとえばすでに転職している元上司・元同僚などの紹介を受けて管理職として転職するようなケースがあります。
人脈を使う場合、少なからず自分の人となりを理解してもらえているため、自分に合った企業で働ける可能性があります。書類選考などが省略され、いきなり面接に進めるケースもあります。
ただし、条件面の確認がおろそかになりやすい、断りにくい・辞めにくいなど注意点もあります。
ダイレクトリクルーティング
職務経歴書などの情報を登録しておき、それを見た企業やヘッドハンターからスカウトを受けて応募に移行するのがダイレクトリクルーティングです。
求職者は気になるスカウトにのみ応募すればよいため、主体的に転職活動を進められます。また、スカウトの数や内容を見ることで、現在の市場価値を把握することもできます。
一方、スカウトをきっかけとして転職活動が本格化するため、スカウトされるだけの実績やキャリアがある人でないと難しい場合があります。
管理職に強い転職エージェント
あらかじめ転職の希望を伝えておき、希望に合った求人があれば紹介してもらえるのが転職エージェントです。
応募書類の添削や面接対策、日程調整等、転職全体をサポートしてもらえます。特に管理職に強い転職エージェントであれば、企業の内情に詳しく企業が管理職に求める要素も把握しているため、自分にマッチする求人に出会える可能性が高まります。
可視化が難しい管理職の実績のアピール方法に関するアドバイスももらえます。
管理職の転職でおすすめの転職エージェント・ダイレクトリクルーティグサービス
最後に、管理職の転職におすすめの転職サービスを紹介します。
BEET-AGENT
「BEET-AGENT」は、管理部門職種・ハイクラス向けの転職エージェントです。
- 法務求人・ガバナンス・コーポレート職種の転職に特化
- 法務部リーダークラス、CLOを含む企業法務求人を専門に扱う
- 上場企業、IPO準備中の法務などの求人多数
- ストックオプションあり、年収800万円以上の方におすすめ
企業の法務求人を専門に紹介している点、特化型のため非公開法務求人、業務内容に精通したアドバイザーが在籍し、ミスマッチのない求人紹介ができる点です。
未上場でも、最近話題のリーガルテック企業やIPO準備中で法務部強化をしているリーダーポジションなど、法務部でキャリアを積んだ方一人ひとりとマッチした求人を紹介するため、しっかりとした面談を設定。
スキルマッチと転職で叶えたい要望に対するミスマッチのない求人提案に定評があります。
公式サイト:https://beet-agent.com/
リクルートダイレクトスカウト
大手リクルートが運営する、ハイクラス向けのダイレクトリクルーティングサービスです。
登録後はヘッドハンターからのスカウトを待ち、気になるスカウトがあれば相談・応募という流れになります。管理職や事業責任者などをターゲットにした年収800万~2000万円の求人が多数あるため、年収にこだわりたい管理職の方におすすめです。
公式サイト:https://directscout.recruit.co.jp/
ランスタッド
ランスタッドは世界39カ国でサービスを展開しているハイクラス求人向けの転職エージェントです。
国内企業はもちろん、グローバルや外資系企業の求人を多数取り揃えています。
コンサルタントは各業界に精通しており、専門性の高いアドバイスを受けることができます。
公式サイト:https://www.randstad.co.jp/
ビズリーチ
ダイレクトリクルーティングの先駆者的な存在として、圧倒的な知名度と求人数があるのがビズリーチです。経営幹部や管理職などのプロフェッショナル人材を対象にしており、年収1000万円以上の求人が3分の1以上あります。
転職サービスとしては珍しい有料タイプですが、その分ヘッドハンターや企業にとって都合のよいサービスにならず、求職者にとっても公平性の高いサービスになっています。
公式サイト:https://www.bizreach.jp/
パソナキャリア
「パソナキャリア」は人材派遣のリーディングカンパニーであるパソナが運営するハイクラス向けの転職エージェントです。ハイクラス求人の転職に特化した専任のコンサルタントが企業への推薦や面接の日程調整、情報提供など全面的にサポートしてくれます。
パソナキャリアは求人の約半数が年収800万円以上の求人です。
年収アップ率も67.1%と高いため年収アップを目指すハイクラス人材におすすめです。パソナキャリアだけの独占求人が800件以上あるので、ほかのエージェントにはない求人を探している人もチェックしましょう。
公式サイト:https://www.pasonacareer.jp/
まとめ
管理職の転職は年収やポジションが上がるなどのメリットがありますが、応募先とのすりあわせがうまくいかずにミスマッチが生じる場合も少なくありません。また求人自体が少ないので、一般的な転職サイトではなかなか求人が見つからない場合もあります。管理職の転職に強みがある転職サービスを使いながら、ミスマッチのない転職を実現させましょう。