「試用期間中だけど会社を辞めたい……」
「試用期間中に辞めたら迷惑になる？」

このような悩みをお持ちではないでしょうか。

入社したばかりでまだ試用期間中ながら、退職を考える方もいるでしょう。

試用期間での退職は法律上問題ありませんが、メリット・デメリットの両方が存在するため、注意点を理解しておくことが重要です。

この記事では、試用期間でも退職できる理由や、試用期間に退職するメリット・デメリットを解説します。

円満退職のためのポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてください。

試用期間の退職は可能！

そもそも、試用期間中の退職に問題はあるのでしょうか。

法律と就業規則の両方の観点から、くわしく見ていきましょう。

法律上は2週間前までの通知で問題ない

法律上、2週間前までに退職を通知すれば、辞めることに問題はありません。

民法627条において、無期雇用の労働者、つまり一般的な正社員は、退職の申し入れから2週間で退職できると定められているためです。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

（引用：民法第627条）

実際に、就職後1〜6ヵ月未満で辞める人は4〜10％程度いるというデータもあり、試用期間中に辞める人は決して珍しい存在ではありません。

引用元：リクルートワークス研究所

関連記事：2週間前に退職を申し出るのは非常識って本当？スムーズに辞めるコツを解説

就業規則の記載よりも民法が優先される

一般的な感覚でいうと、「2週間前の通知は急すぎる」と感じる方も多いでしょう。

実際に、多くの会社の就業規則では、「1〜3ヵ月前までに退職通知すること」と定められています。

しかし、就業規則には「会社のお願いごと」程度の効力しかないため、民法のほうが優先されます。

とはいえ、可能であれば就業規則で決められた期間にのっとって退職手続きを進めるほうが、引き継ぎもスムーズに進むでしょう。

雇用形態によっては辞められないケースもある

一方、派遣社員やパートなどで有期雇用されている場合は、原則として契約期間の終了までは働く必要があります。

しかし例外として、民法第628条において「やむを得ない事情がある場合は即日退職できる」と定められています。

（やむを得ない事由による雇用の解除）

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

（引用：民法第628条）

やむを得ない事情とは、主に次のような場合です。

また、有期雇用の場合でも、労働基準法第137条において、契約期間の初日から1年以上経過していれば、2週間前までの通知で退職は可能です。

そもそも試用期間とは何？

試用期間は、社員が採用されたあと、正社員として働いていくための適性や能力をはかるための期間のことを指します。

「従業員の採用と退職に関する調査」によると、約87％の企業で導入されており、お互いに長く働いていけるかどうか見極めるための重要な制度だといえるでしょう。

労働条件は本採用と変わらないこともあれば、給与を低く設定されている場合もあります。

また、試用期間を経て採用見送りとなる可能性もゼロではありません。

期間は一般的に3〜6ヵ月程度に設定される場合が多く、最長でも1年程度です。

長過ぎる試用期間の設定は、社員にとっては不安定な待遇や、いつ解雇されるかわからない状況が続くことになるため、注意してください。

試用期間に退職を考える理由

試用期間に退職を考える理由は、次のとおりです。

仕事内容が自分に合わなかった

試用期間を経て、仕事内容が自分に合わないと感じることが、辞める大きな理由のひとつです。

就職において、そもそもやりたい仕事ではなかったり、希望と違う部署に配属されたりすることもないとはいえません。

知識や興味がないジャンルの業務ではモチベーションも上がらないため、この先の成長も見込めない可能性が高いといえます。

自分に合った仕事ができることを優先したい方にとって、業務内容の不一致は致命的な問題に感じるでしょう。

人間関係が合わなかった

エン転職の「職場の人間関係意識調査」によると、転職経験者の半数以上が「人間関係が転職のきっかけになったことがある」と回答しています。

それだけ、多くの人にとって人間関係は、会社選びや仕事に大きく影響する問題です。

パワハラにあったり、どうしても気が合わない人がいたりと、会社の中でもさまざまな人間関係の問題が存在します。

心身を病んでしまう原因にもなりかねないため、部署異動や在宅勤務などの方法でも解決できなければ、退職も選択肢のひとつになるでしょう。

はじめに聞いていた労働条件と違った

はじめに聞いていた労働条件と、実際の労働条件が違うこともありえます。

この場合は会社側の労働基準法第15条違反となり、労働者は即日退職が認められています。

思っていたより給与や休日が少ない、残業が多い、研修期間が長いまたは延長されたなど、不当な条件で働かされている場合は、より希望に合った会社を探すといいでしょう。

ほかにやりたいことができた

ほかにやりたいことができた場合も、試用期間のうちに退職を考える理由になります。

なるべく早く辞めて、進みたい道ややりたい仕事に就きたいと考えるのは自然なことです。

嫌々働き続けるよりもモチベーションもアップし、今後の自分のためになると思えるなら、試用期間中であっても退職を検討するべきでしょう。

試用期間に退職するメリット・デメリット

試用期間に退職する際は、メリットとデメリットの両方を把握しておくことが大切です。

それぞれくわしく見ていきましょう。

メリット

試用期間中に辞めるメリットは次のとおりです。

まず、現在の会社で渋々働き続けるのではなく、早い段階でやり直しがきくことが一番のメリットです。

より自分の希望に近い会社や仕事に出会える可能性があるため、今後のキャリアアップにも期待できるでしょう。

また、入社して数ヵ月程度であれば、業務の引き継ぎが発生するようなこともありません。

新たに仕事を覚えたり、人間関係を構築したりする必要もないため、通常より容易に辞めることが可能です。

デメリット

反対に、試用期間に辞めるデメリットは次のとおりです。

就職から数ヵ月で辞めてしまうと、転職活動においてマイナスイメージがつくことは否めません。

また、働いた期間が短い場合は失業手当や賞与がもらえない可能性が高く、辞めたあとの生活が苦しくなる恐れもあるでしょう。

加えて、試用期間のうちに辞めることは、本当に自分に合った仕事が何なのか見極められない可能性があります。

さらに、早い段階で辞めると転職が癖になってしまい、短期間で就職と離職を繰り返す方もいるため、将来への影響をしっかり考えてから決断しましょう。

試用期間でも円満退職するためのポイント

試用期間でも円満退職するためには、次のポイントを意識してみてください。

納得してもらいやすい退職理由にする

試用期間中の退職により、悪い印象を少しでも減らすためには、上司に納得してもらいやすい退職理由にしましょう。

「他にやりたいことができた」「働いてみたかった業種で採用が決まった」などのポジティブな理由であれば、早い段階での退職となっても応援してもらえる可能性が高まります。

そのほか、「うつ病になった」「家族の介護が必要になった」のような緊急性の高い理由の場合は、上司も納得せざるを得ないでしょう。

ただし、嘘をつくのはご法度です。必要に応じて、医師の診断書も一緒に見せるといいでしょう。

実際は会社への不満で辞める場合でも、社会人として円満にやり過ごすための対応をしましょう。

退職を伝える際はメールや電話を使わない

退職を伝える際は、メールや電話を使わないようにしてください。

上司に時間をもらったうえで、直接伝えるのがベストです。

ただでさえ早い段階で辞めるため、なるべく悪い印象を持たれないよう、誠意を見せるのがコツです。

転職先を決めておく

先に転職先を決めてから退職を伝えれば、引き止められたり文句を言われたりする可能性を減らせます。

入社後数ヵ月で、仕事と平行しながら転職先を決めるのは大変ですが、週末などを利用して転職活動を進め、内定をもらうのが理想的です。

退職日と再就職日の空白期間ができないようにすると、職歴としても有利になるため、ほかにやりたいことが決まっている場合はぜひ転職活動を進めておきましょう。

次の記事では、年代・業界・職種別におすすめの転職サイトをまとめているため、ぜひ活用してみてください。

試用期間に辞めづらい場合は退職代行を利用しよう

試用期間に辞めるとは言いづらい、なるべく早く辞めたいと考えているなら、退職代行を利用して退職しましょう。

退職代行は、会社への退職の通知を代行してくれるサービスです。

会社とのやりとりも業者が間に入ってくれるため、気まずさを感じたり、有休や必要書類の申請がしにくかったりすることもありません。

業者によっては即日対応もしており、有休と組み合わせれば2週間まったく出社せずに辞めることも可能です。

おすすめの退職代行サービスについては、以下の記事でくわしく解説しているため、参考にしてください。

関連記事：退職代行おすすめ23社比較ランキング｜サービス内容や料金・評判を解説

関連記事：退職代行は試用期間中でも利用できる？退職手順や辞めるリスクを解説！

試用期間での退職に関するよくある質問

ここでは、試用期間での退職に関するよくある質問に回答します。

試用期間の1ヵ月で退職できる？

働いた期間にかかわらず、無期雇用の労働者には自由に退職する権利が認められています。

試用期間であろうと、働いた期間が1ヵ月であろうと退職に問題はなく、会社側に引き止める権限もありません。

もし暴言を吐かれたり引き止められたりしそうな場合は、退職代行の利用を検討してみてください。

試用期間の退職でも履歴書には書いたほうがいい？

たとえ試用期間中の退職であっても、雇用契約を結んで働いていたため、履歴書に書かないと経歴詐称になります。

転職活動の際は下手に隠したりせず、なぜ試用期間中での退職に至ったのか、前向きな理由を説明できるようにしておきましょう。

試用期間に辞めても給与はもらえる？

実際に働いた日数分の給与は支払われます。もちろん、残業代などの手当も同様です。

「試用期間だから」と会社側が払おうとしないのは違法となるため、損をしないように注意してください。

試用期間に辞めると気まずい？

気まずく感じる必要はありません。

そもそも試用期間は、会社と社員がお互いを見極めるという目的で設定されるものです。

自分に合わないと感じたら退職するのは悪いことではなく、労働者には辞める権利があります。

無駄に長く働くよりも、むしろお互いにメリットが大きいため、過度に気にすることはないでしょう。

試用期間に解雇されることはある？

試用期間であっても労働契約は交わしているため、「無断欠勤や遅刻が多い」「明らかに仕事の能力が劣っている」「態度が著しく悪い」など、解雇に足る十分な理由があれば可能性はあるでしょう。

ただし、会社側の教育体制が不十分だった場合は、会社の責任を問える可能性があるため、労働組合や労基に相談してみてください。

まとめ

試用期間中であっても、無期雇用であれば、2週間前までの通知で退職は可能です。

試用期間は会社と社員がお互いを見極める期間であり、仕事内容や人間関係が合わない、労働条件が違うなどの理由で辞めても問題ありません。

早い段階でやり直しがきくのがメリットですが、職歴としてマイナスイメージがつく可能性も覚えておきましょう。

円満退職のためには、納得してもらいやすい理由にし、直接会って退職を伝えるのがコツです。

それでも言いづらい場合は、退職代行サービスの利用も検討してみてください。