損害賠償請求は弁護士なしでもできる? 請求方法・デメリット・弁護士費用を抑える方法などを解説

損害賠償請求は弁護士なしでもできる? 請求方法・デメリット・弁護士費用を抑える方法などを解説

損害賠償請求は弁護士なしでもおこなうことができますが、本人だけで対応するのは非常に大変です。

適切な対応ができないと、本来であれば獲得できるはずの損害賠償が受けられなくなるおそれがあります。

弁護士費用の金額は、弁護士の選び方などを工夫すれば抑えられる可能性があります。

さまざまなルートで弁護士を探し、合理的な費用で依頼できる弁護士に依頼しましょう。

本記事では、弁護士なしで損害賠償を請求する方法やデメリット、費用を抑えながら弁護士に依頼する方法などを解説します。

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この記事を監修した弁護士
阿部 由羅
阿部 由羅弁護士(ゆら総合法律事務所)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

損害賠償請求ができるケースの例

損害賠償請求は、さまざまなトラブルについておこなうことができます。

以下に挙げるのは、損害賠償請求ができるケースの一例です。

  1. 債務不履行に基づく損害賠償請求
  2. 不法行為に基づく損害賠償請求
  3. 使用者責任に基づく損害賠償請求
  4. 工作物責任に基づく損害賠償請求
  5. 製造物責任に基づく損害賠償請求

債務不履行に基づく損害賠償請求

「債務不履行」とは、契約によって約束した義務を果たさないことをいいます。

たとえば業務委託契約の場合、受託者は委託者のために何らかの業務をおこない、委託者は受託者に業務の対価として報酬を支払います。

業務を遂行することは受託者の義務、報酬を支払うことは委託者の義務です。

受託者が業務を遂行する義務を怠れば、委託者は業務が停滞することにより損害を被ります。

この損害につき、委託者は受託者に対して、債務不履行に基づく損害賠償を請求可能です(民法415条1項)。

また受託者が業務を遂行したにもかかわらず、委託者が報酬を支払わなければ、受託者は受け取れるはずだった報酬を利用できない損害を被ります。

この場合、受託者は委託者に対して、債務不履行に基づく損害賠償(遅延損害金)を請求できます。

不法行為に基づく損害賠償請求

「不法行為」とは、故意または過失によって、他人の権利または法律上保護される利益を侵害して損害を与える行為です(民法709条)。

不法行為の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求できます

たとえば以下の場合には、不法行為に基づく損害賠償を請求可能です。

  • 知的財産権(特許権、商標権、著作権など)を侵害された場合
  • 交通事故の被害に遭った場合
  • 配偶者が不貞行為をした場合
  • インターネット上で誹謗中傷を受けた場合 など

使用者責任に基づく損害賠償請求

「使用者責任」とは、被用者が事業の執行について第三者に加えた損害につき、使用者が負う責任です(民法715条)。

被用者の選任および事業の監督について相当の注意をしたこと、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを証明しなければ、使用者は使用者責任を免れません

また、使用者に代わって事業を監督する者も、同様に使用者責任を負います。

たとえば以下の場合には、使用者責任に基づく損害賠償を請求できます。

  • 他社の従業員が、その会社の業務の一環として、自社のコンテンツを盗用した場合
  • 上司のパワハラによって精神疾患を患った場合
  • 医師の過失によって医療ミスが発生した場合(医療機関が使用者責任を負う) など

工作物責任に基づく損害賠償請求

「工作物責任」とは、土地の工作物の設置・保存に瑕疵があることによって生じた損害につき、その工作物の占有者または所有者が負う責任です(民法717条)。

原則として占有者が工作物責任を負いますが、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が工作物責任を負います。

所有者の工作物責任は、過失を要件としない「無過失責任」とされています。

また、竹木の植栽・支持に瑕疵がある場合にも、竹木の占有者・所有者が工作物責任を負います。

たとえば以下の場合には、工作物責任に基づく損害賠償を請求可能です。

  • 道路を通行していたところ、建物に備え付けられた看板が落下してきてケガをした場合
  • 私立学校の運動設備を用いて運動していたところ、設備が破損してケガをした場合

※国公立学校の場合は、国家賠償責任が問題となる など

製造物責任に基づく損害賠償請求

「製造物責任」とは、引き渡した製造物の欠陥によって生じた損害につき、製造業者等が負う責任です(製造物責任法3条)。

なお、欠陥があった製造物が壊れただけの場合は製造物責任の対象外で、それ以外の損害が生じたことが必要です。

製造物責任の免責要件は、通常の不法行為よりも非常に厳しくなっています。

以下のいずれかの事実を証明しなければ、製造業者等は製造物責任を免れることができません(製造物責任法4条)。

①開発危険の抗弁

製造物を引き渡した時における科学または技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識できなかったこと

②部品製造業者の抗弁

当該製造物が他の製造物の部品または原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者がおこなった設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと

たとえば以下の場合には、製造物責任に基づく損害賠償を請求できます。

  • ノートパソコンのバッテリーが発火して火災が生じ、自宅の一部が燃えた場合
  • 石鹸の中に表示されていないアレルギー物質が含まれており、使用したところアナフィラキシーショックを発症した場合 など

弁護士なしで損害賠償請求をする方法

損害賠償請求は、弁護士なしでもおこなうことができます。

弁護士なしで損害賠償を請求する際には、以下の方法を検討しましょう。

  1. 相手方に連絡する|内容証明郵便などで請求書を送付
  2. 民事調停を申し立てる
  3. ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する
  4. 本人訴訟を提起する

相手方に連絡する|内容証明郵便などで請求書を送付

相手方との話し合いがまとまれば、早期に損害賠償を受けられます。

損害賠償請求の交渉をおこなうに当たっては、まず相手方に対して連絡をとる必要があります。

メールなどでメッセージを送ることも考えられますが、正式な請求であることを明確化したい場合は、内容証明郵便で請求書を送付するのがよいでしょう。

内容証明郵便による請求書には、消滅時効の完成を6か月間猶予させる効果もあります(民法150条1項)。

請求書の送付などによって相手方と連絡をとったら、損害賠償請求の交渉を始めましょう。

相手方との間で条件を提示し合い、状況に応じて歩み寄って合意を目指します。

合意が成立したら、その内容を和解合意書(示談書)にまとめて締結しましょう。

その後、合意内容に従って損害賠償金を精算します。

民事調停を申し立てる

弁護士に依頼せずに損害賠償を請求する際には、民事調停を利用することも有力な選択肢の一つです。

民事調停とは、簡易裁判所で実施される紛争解決手続きです。

調停委員による仲介の下で、当事者間で紛争解決の合意を模索します。

民事調停では、客観的な立場にある調停委員に、紛争解決に向けた調整をサポートしてもらえます。

代理人の弁護士がいない状況では、調停委員のサポートが大きな助けとなるでしょう。

ただし、調停委員はあくまでも中立的な立場であり、代理人弁護士とは違って味方ではない点にご注意ください。

ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する

客観的な立場から紛争解決をサポートしてもらうには、ADR(裁判外紛争解決手続)を利用することも考えられます。

ADRとは、裁判所以外の第三者機関が取り扱う紛争解決手続きです。

ADRの手続きは、特定の事件の種類に特化されていることが多いため、専門的な紛争解決サポートを受けられるメリットがあります。

以下に挙げるのは、ADRの一例です。

①交通事故ADR
【参考】
公益財団法人交通事故紛争処理センター
公益財団法人日弁連交通事故相談センター

②医療ADR
【参考】医療ADR|日本弁護士連合会

③金融ADR
【参考】金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)|金融庁

本人訴訟を提起する

示談交渉・民事調停・ADRによる紛争解決は、相手方の協力がなければ成立しません。

相手方との間で歩み寄りの余地がない場合は、裁判所に訴訟を提起する必要があります。

弁護士を代理人とせず、本人が自ら提起する訴訟を「本人訴訟」といいます。

弁護士費用をかけたくないなどの理由から、本人訴訟を選択する方も一定数いらっしゃいます。

特に少額の請求の場合は、zぁ弁護士に依頼すると費用倒れになることが多いため、本人訴訟が提起される傾向にあります。

60万円以下の請求であれば、審理が原則1回で終結する「少額訴訟」を利用できるため、本人訴訟を提起する際には少額訴訟もご検討ください。

【参考】少額訴訟|裁判所

弁護士なしで損害賠償請求をすることのデメリット

弁護士なしで損害賠償を請求するのは、実際のところ非常に大変です。

特に以下のデメリットには注意が必要で、懸念がある場合は弁護士への依頼をご検討ください。

  1. 法的に適切な主張・立証をするのが難しい
  2. 請求する損害額の把握漏れが生じやすい
  3. 書類などの準備が大変
  4. 調停・ADR・訴訟など、専門的な手続きへの対応が難しい

法的に適切な主張・立証をするのが難しい

損害賠償請求を成功させるには、法的な根拠に基づく主張をすることが大切です。

また、損害賠償請求訴訟に発展した場合は、主張する事実を証拠に基づき立証しなければなりません。

適切に主張・立証をおこなうためには、法的な観点からの検討が必要になります。

しかし弁護士に依頼せず、適切に法的な検討をおこなうことは非常に難しいです。

主張・立証に不備があると、損害賠償請求が認められないおそれがあります。

請求する損害額の把握漏れが生じやすい

不法行為などによる損害の種類は1つではなく、具体的な事情に応じてさまざまな種類の損害が発生します。

たとえば交通事故の場合、以下に挙げるような損害の賠償を請求可能です。

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 装具、器具の購入費
  • 付添費用
  • 介護費用
  • 入院雑費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料
  • 葬儀費用
  • 逸失利益
  • 車の修理費(買替費用)
  • 車の評価損
  • 休車損害 など

適正額の損害賠償を請求するためには、被害者に生じた損害を漏れなく集計しなければなりません。

しかし、初めて直面するトラブルについて、損害を漏れなく把握することは非常に難しいでしょう。

損害の把握漏れが生じると、適正額の損害賠償を受けることができません

書類などの準備が大変

損害賠償請求に当たっては、主張の根拠となる資料を揃えて提示しなければなりません。

民事調停やADRを利用する際には申立書など、訴訟を提起する際には訴状などの作成も必要です。

不慣れな方にとって、これらの資料を準備するのは非常に大変な作業です。

資料の内容が不適切だと、損害賠償請求が失敗してしまうおそれもあります。

調停・ADR・訴訟など、専門的な手続きへの対応が難しい

調停・ADR・訴訟などの手続きは専門性が高く、一般の方には戸惑う部分が多いと思われます。

ご自身でルールを調べながら、これらの手続きについて適切に対応するのは困難でしょう。

不適切な対応をしてしまうと、調停委員・ADR委員・裁判官の心証を害し、不利な立場に置かれてしまうおそれがあります。

費用負担を抑えながら弁護士に依頼する方法

損害賠償請求を弁護士なしでおこなうのは非常に大変であるため、可能であれば弁護士に依頼することが望ましいです。

弁護士費用について懸念がある方は、費用を抑えながら弁護士に依頼するため、以下の方法をご検討ください。

  1. 無料法律相談を利用する
  2. 複数の弁護士に相談して、見積もりを比較する
  3. 着手金を後払い・分割払いにしてもらう
  4. 着手金と報酬金の配分を交渉する
  5. 法テラスを利用する

無料法律相談を利用する

弁護士の法律相談は、有料の場合と無料の場合があります。

少しでも弁護士費用を抑えたい場合は、無料法律相談を利用した方がよいです。

弁護士の無料法律相談は、依頼するか否かにかかわらず利用できます。

複数の弁護士の無料法律相談を利用することも可能です。

弁護士ポータルサイト(「ベンナビ」など)を活用して、無料相談を受け付けている弁護士を探してみましょう。

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複数の弁護士に相談して、見積もりを比較する

弁護士費用の金額は、依頼する弁護士によって異なります。

少しでも弁護士費用を抑えたい場合は、複数の弁護士に見積もりを依頼して比較するのがよいでしょう。

「ベンナビ」などの弁護士ポータルサイトを利用すれば、相談内容や地域に応じて弁護士をスムーズに検索できます。

何人かの弁護士をリストアップした上で、電話やメールで直接問い合わせれば、複数の弁護士をスムーズに比較できます。

着手金を後払い・分割払いにしてもらう

弁護士に依頼する際には、原則として着手金を支払う必要があります。

着手金は依頼時の一括払いが原則ですが、弁護士に相談すれば、後払いや分割払いを認めてもらえることもあります。

経済的な事情により、着手金を一括で支払うのが難しいことを説明して、後払いや分割払いをお願いできないか交渉してみましょう。

【関連記事】弁護士に支払う着手金の後払いは可能? 弁護士費用が支払えない場合の対処法

着手金と報酬金の配分を交渉する

成功率が高いと思われる損害賠償請求については、弁護士に相談すれば、着手金と報酬金の配分を変えてもらえる可能性があります。

報酬金を増額する代わりに、着手金を減額してもらえば、依頼時の経済的負担は減ります。

ただし、着手金と報酬金の配分変更に応じるかどうかは、弁護士の方針によって異なる点にご留意ください。

法テラスを利用する

収入や資産が一定水準以下の方は、法テラス(日本司法支援センター)を利用できます。

法テラスでは、弁護士による無料法律相談や、弁護士費用の立替払い制度を提供しています。

立替金は後で返済が必要ですが、通常の弁護士費用よりも安く済むことが多いです。

法テラスの利用を希望する方は、お近くの地方事務所にご相談ください。

なお、法テラスの契約弁護士を自分で探して相談すれば、その弁護士を通じて法テラスの利用を申し込むことも可能です。

この場合、依頼する弁護士を自分で選べるメリットがあります。

「ベンナビ」には、法テラスの契約弁護士も多数登録されています。

電話やメールで直接問い合わせることができますので、法テラスを利用できるかどうかご確認ください。

【参考】お近くの法テラス(地方事務所一覧)|法テラス

法テラスの無料法律相談はどこまで無料?利用条件や利用方法、注意点を解説

まとめ

損害賠償請求を弁護士なしでおこなうことはできますが、適切に対応するのは非常に大変です。

弁護士ポータルサイトや法テラスなどを活用して、費用を抑えながら依頼できる弁護士を探しましょう。

「ベンナビ」には、無料相談を受け付けている弁護士や、法テラスの契約弁護士が多数登録されています。

複数の弁護士の比較もスムーズにおこなえますので、損害賠償請求をご検討中の方は「ベンナビ」をご活用ください。

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この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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