法テラスは、経済的に困窮する方の法律トラブルを解決するために国が運営している法律総合案内所です。
法テラスでは、さまざまな法律に関する悩みの相談を受け付けており、借金問題についても例外ではありません。
そこで本記事では、法テラスで相談できる借金問題の具体例や法テラスに相談するメリット、法テラスを利用するための条件について詳しく解説します。
「借金の返済ができずに困っている」「多重債務から抜け出したい」といった悩みを抱えている方は、ぜひ本記事をきっかけに問題解決に向けて動き出してみてください。
法テラスで受け付けてもらえる借金問題の典型例4選
法テラスでは、さまざまな種類の借金問題について相談することができます。
ここでは、4つの代表的な相談内容について紹介します。
1.借金の返済が苦しい(債務整理)
法テラスでは「債務整理」という、借金を減らしたり、支払い方法を見直したりする手続きについて、弁護士や司法書士に相談できます。
債務整理は、借金で困っている人が生活を立て直すための法的な手続きです。
債務整理には、以下のような種類があり、それぞれで特徴やメリット・デメリットが異なります。
任意整理 | お金を貸してくれた会社(債権者)と交渉して、将来の利息をカットしたり、無理のない返済計画を立てたりする方法です。裁判所を通さずに手続きが進められます。 |
個人再生 | 裁判所に申し立てて、借金を大幅に減額してもらい、残りの借金を原則3年間で分割して返済していく方法です。住宅ローンがある場合でも、家を残せる可能性があります。 |
自己破産 | 裁判所に申し立てて、法律で定められた一定の財産を除き、借金の返済義務を免除してもらう方法です。債務を完全に免除する方法ですが、財産が全て没収されるデメリットがあります。 |
債務整理をおこなう際は、借金や収入、財産などの状況を踏まえて適切な手続きを選択しなければなりません。
そのため、まずは法テラスに相談して、専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。
2.利息を多く払っていた(過払い金請求)
法テラスでは、過払い金請求についても弁護士や司法書士に相談することが可能です。
2010年以前に高い金利でお金を借りていたことがある方は、「過払い金」という、払いすぎた利息が戻ってくる可能性があります。
しかし、過払い金の計算方法や請求の手続きには専門的な知識が必要になるため、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
3.昔の借金を請求された(消滅時効援用)
法テラスでは、消滅時効の援用についても相談が可能です。
時効の援用とは、借金などの返済義務について一定期間が経過したのち「時効なのでもう返済はしません」と債権者に通知する手続きのことです。
仮に時効期間が経過していたとしても、時効の援用がおこなわれていない場合は、返済義務はなくなりません。
もしも時効間近や時効期間の経過後に過去の借金について返済を請求された場合は、直ちに弁護士へ相談し、対応を検討した方がいいでしょう。
債権者に連絡を取る前に、まずは法テラスに相談して、適切な対応方法についてアドバイスをもらうようにしましょう。
4.闇金業者からお金を借りてしまった(闇金対応)
法テラスでは、闇金業者などによる違法な貸し付けに関する相談も可能です。
もし、違法な高金利で貸し付けをおこなう「闇金」業者からお金を借りてしまい、困っているなら、すぐに法テラスに相談してください。
法テラスでは、闇金問題に詳しい弁護士を紹介してくれたり、必要に応じて警察などの関係機関と連携して、問題解決をサポートしてくれたりします。
法テラス経由で借金問題を弁護士に相談・依頼する3つのメリット
法テラスを通じて弁護士に借金問題を相談したり、実際に依頼したりすることには、以下のようなメリットがあります。
- 弁護士に3回まで無料で相談ができる
- 法テラスに弁護士費用を立て替えてもらえる
- 生活保護受給者なら費用を免除してもらえる可能性がある
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
1.弁護士に3回まで無料で相談ができる
法テラスでは、借金問題について3回まで弁護士や司法書士に無料で相談することができます。
借金に悩む方にとって、お金の心配をせずに専門家の意見を聞けるのはとても大きなメリットです。
相談場所は、法テラスの事務所だけでなく、契約している弁護士や司法書士の事務所でも可能な場合があります。
法テラスの相談には電話で予約が必要なので、まずは法テラスのサポートダイヤルに連絡してみましょう。
2.法テラスに弁護士費用を立て替えてもらえる
無料相談だけでは問題が解決せず、弁護士に正式に依頼する必要がある場合でも、法テラスが弁護士費用を立て替えてくれる制度があります。
これは「民事法律扶助」という制度で、一定の条件を満たすことで利用可能です。
立て替えてもらった費用は、原則として月々5千円から1万円程度の分割払いで、法テラスに返済していくことになります。
なお、分割払いには利息がつかないのも大きなメリットです。
ただし、この制度を利用するためには、収入や資産などの条件をクリアしなければなりません。
3.生活保護受給者なら費用を免除してもらえる可能性がある
生活保護を受けている場合、法テラスに立て替えてもらった弁護士費用の返済が免除される可能性があります。
ただし、免除を受けるためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。
例えば、生活保護を受けていることや、事件の結果得た利益の一定割合を返済すること、免除が相当と認められることなどです。
詳しくはお近くの法テラスに問い合わせて確認してみましょう。
法テラス経由で借金問題を弁護士に相談・依頼するための3つの条件
法テラスの民事法律扶助制度を利用するためには、以下の3つの条件を全て満たす必要があります。
1.資力基準を満たしていること
法テラスの無料相談や弁護士費用の立て替え制度を利用するには、収入と資産が一定の基準以下である必要があります。
この基準は、住んでいる地域や家族の人数によって以下のように異なります。
家族人数 | 収入基準 ()内はその他の地域 | 資産基準 ()内はその他の地域 |
1人 | 200,200円以(182,000円以下) | 180万円以下(180万円以下) |
2人 | 276,100円以下(251,000円以下) | 250万円以下(250万円以下) |
3人 | 299,200円以下(272,000円以下) | 270万円以下(270万円以下) |
4人 | 328,900円以下(299,000円以下) | 300万円以下(300万円以下) |
なお、家賃や住宅ローンの支払いがある場合は、資力・資産基準が緩和されることもあります。
詳しくは法テラスに問い合わせて確認してみましょう。
2.勝訴の見込みがないとはいえないこと
法テラスの民事法律扶助制度を利用するには、借金問題を解決できる見込みがあることも条件です。
例えば、自己破産の場合は、免責が許可される見込みがあることが目安となります。
明らかに解決の見込みがないようなケースでは、制度の利用が認められない場合があるので注意しましょう。
3.民事法律扶助の趣旨に当てはまること
法テラスの民事法律扶助制度は、経済的に困っている人が法的トラブルを解決し、生活を立て直すことを目的としています。
そのため、単なる嫌がらせや自分の宣伝のために訴訟を起こしたいといった目的での利用は認められません。
とはいえ、借金問題で生活が困窮している状況で債務整理をおこなう場合は、基本的にこの条件はクリアできる可能性が高いでしょう。
法テラスで借金問題を解決する際の費用目安
法テラスを利用して借金問題を解決する場合、費用は手続きの種類や借金の額などによって異なります。
下記では、一般的な費用の目安を紹介します。
手続きの種類 | 費用の目安 |
任意整理 | 債権者1社あたり4万円程度 |
個人再生 | 20万円~25万円程度 |
自己破産 | 15万円~20万円程度 |
任意整理にかかる費用目安
法テラスを通じて任意整理をおこなう場合、以下のような弁護士費用と実費がかかります。
債権者数 | 着手金 | 実費 | 合計 |
1社 | 33,000円 | 10,000円 | 43,000円 |
2社 | 49,500円 | 15,000円 | 64,500円 |
3社 | 66,000円 | 20,000円 | 86,000円 |
4社 | 88,000円 | 20,000円 | 108,000円 |
5社 | 110,000円 | 25,000円 | 135,000円 |
6~10社 | 154,000円 | 25,000円 | 179,000円 |
11~20社 | 176,000円 | 30,000円 | 206,000円 |
21社以上 | 198,000円 | 35,000円 | 233,000円 |
費用の目安としては、債権者1社あたり4万円程度となることが多いです。
そのため、債権者の数が増えるほど、費用も高くなることを覚えておきましょう。
個人再生にかかる費用目安
法テラスを通じて個人再生をおこなう場合も、弁護士費用と実費がかかります。
債権者数 | 着手金 | 実費 | 合計 |
1社~ 10社 | 35,000円 | 165,000円 | 200,000円 |
11社~ 20社 | 35,000円 | 187,000円 | 222,000円 |
21社以上 | 35,000円 | 220,000円 | 255,000円 |
【参考元】法テラス‐別表3 1.代理援助立替基準
費用の目安としては、20万円~30万円程度となることが多いようです。
個人再生は任意整理よりも手続きが複雑なため、費用もやや高くなる傾向があります。
ただし、一般的な弁護士事務所に依頼するよりも、大幅に費用を抑えられる可能性が高いです。
なお、裁判所に納める予納金が別途必要になる場合があることに注意が必要です。
自己破産にかかる費用目安
法テラスを通じて自己破産をおこなう場合も、弁護士費用と実費がかかります。
債権者数 | 着手金 | 実費 | 合計 |
1~10社 | 132,000円 | 23,000円 | 155,000円 |
11~20社 | 154,000円 | 23,000円 | 177,000円 |
21社以上 | 187,000円 | 23,000円 | 210,000円 |
費用の目安としては、15万円~20万円程度となることが多いようです。
自己破産の場合も、法テラスを経由することで直接弁護士事務所に依頼するよりも、費用を大幅に抑えることができます。
ただし、裁判所に納める予納金が別途必要になる場合があること、特に管財事件となる場合は費用が高くなることに注意が必要です。
なお、生活保護受給者の場合は、予納金も立て替えてもらえる可能性があります。
法テラス経由で借金問題の解決を弁護士に依頼する際の4つの注意点
法テラスは非常に頼りになる機関ですが、利用する前に知っておくべき注意点もあります。
1.担当弁護士が借金問題を得意としない場合がある
法テラスで相談する場合、必ずしも借金問題に詳しい弁護士が担当になるとは限りません。
法テラスには、さまざまな分野の法律問題に対応する弁護士が登録しているため、場合によっては借金問題に詳しくない弁護士にあたってしまう可能性もあるでしょう。
もし、どうしても特定の分野に強い弁護士に相談したい場合は、「持ち込み方式」という方法で、法テラスと提携している弁護士に直接相談することも可能です。
持ち込み方式を希望する場合は、事前に法テラスに確認し、法テラスと契約している弁護士事務所に直接問い合わせてみましょう。
なお、法テラスが特定の弁護士を紹介することはできません。
2.裁判所費用や予納金は自分で用意する必要がある
法テラスが立て替えてくれるのは、原則として弁護士費用です。
自己破産や個人再生などで裁判所に納める費用(予納金や印紙代など)は、原則として自分で用意する必要があります。
特に、自己破産の管財事件となる場合は、予納金が高額になることがあるので、注意が必要です。
ただし、生活保護受給者の場合は、自己破産の予納金も立て替えてもらえる可能性があります。
3.法テラスの利用可否の審査のために多くの時間がかかる
法テラスの民事法律扶助制度を利用するには、収入や資産などの審査を受ける必要があります。
この審査には、通常2週間から1ヵ月程度かかることが多いようです。
書類に不備があったり、申請が混み合ったりしている場合は、さらに時間がかかることもあります。
そのため、すぐにでも弁護士に相談して手続きを進めてほしい場合は、法テラスの利用が必ずしも最適とは限りません。
さいごに|借金問題で困っているなら一度弁護士に相談するのがおすすめ!
借金問題は、誰にも相談できずに一人で悩んでしまうことが多いかもしれません。
しかし、専門家である弁護士に相談することで、解決の道がみえてくるはずです。
お金がなくて悩んでいるときは、まず法テラスに相談し、専門家と一緒に解決策を探ってみましょう。

