財務はどんなキャリアプランがある?必要スキルや経験、プランの立て方

           

編集者
佐藤達也
【キャリアアドバイザー】国弁護士・公認会計士・税理士等の士業や、管理部門特化の転職サポートを行う人材紹介会社に在籍。士業・バックオフィスに特化した転職ノウハウ・企業調査を担当しています。分野特化だからこその、勘所を押さえたリアルな情報を発信できるよう心がけています。
財務のキャリアプラン
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財務は資金調達や財務戦略の立案、予算編成および管理など企業の「未来」のお金を扱う仕事です。企業利益に直結する重要度の高い部署・職種であり、専門性も高いため、財務領域での経験があると多様なキャリアを展開できます。

とはいえ、具体的にどのようなキャリアがあるのか知らない、キャリアプランを立てようと思っても立て方が分からないといった方もいるでしょう。

この記事では、財務職として働く方に向けて、キャリアプランの選択肢や身につけておくとよいスキル、キャリアプランの立て方などについて解説します。

目次

財務の王道キャリアプラン

まずは、財務で目指す方が多い王道のキャリアプランについて解説します。

自社で管理職を目指す

財務でもっとも王道のキャリアプランは、自社で管理職を目指す道です。主任やリーダーから始まり、マネージャーや課長・部長へとステップアップしていきます。

財務部は企業の中でもエリート集団と呼ばれることのある部門なので、その中での管理職への昇進は簡単ではないかもしれません。

しかし、転職や起業で起こりがちなリスクを取らずにキャリアアップが実現可能な方法です。

CFOを目指す

財務からCFO(最高財務責任者)を目指すキャリアプランもあります。

CFOは経営幹部の一人で、財務戦略を経営戦略に取り込み、財務面から企業活動をマネジメントしていくポジションです。財務領域の知見が不可欠なので、財務畑出身の方がなるパターンはよくあります。

ただしCFOになるには総務や人事、法務などほかの管理部門系の知見が問われることもあります。とくにベンチャー企業のCFOの場合は、その傾向が強いです。

したがって、現在大企業の財務で働いている方がベンチャーCFOを目指す場合は、中小企業やベンチャー企業への転職を通じて多様な経験を積む必要があります。

自社でCFOを目指すこともできますが、大企業のCFOになるには自社にポジションがあることと昇進していくことが前提なので、ハードルが高いです。転職してCFOを目指すほうが現実的かもしれません。

大企業の財務部へ転職する

現在、中小企業の財務部あるいは経理・財務兼任で働いている方は、大企業の財務部へ転職するというキャリアプランもあります。

一般に、中小企業から大企業への転職では年収が上がりやすく、社会的信頼や安定性があるといった点をメリットに感じる方も多くいます。

外資系企業へ転職する

グローバル志向の方や、実力主義の世界で活躍したい志向の方は、外資系企業へ転職するキャリアプランもあります。

外資系企業は業務ごとの専門性が高いため、専門性を極めたい方に適したプランです。転職後は、外資系企業のコントローラーやCFOを目指すこともできます。また一般に日系企業と比べて年収水準が高いので、年収にこだわりがある方にもおすすめです。

外資系企業の財務への転職を実現するには語学力に加え、米国公認会計士(USCPA)などがあれば有利に働きます。

財務の知見を活かせる別の職種になるキャリアプラン

財務領域の知識やスキルは、どんなビジネスをするうえでも役に立ちます。そのため、財務の知見を活かしてほかの職種にキャリアチェンジするプランもあります。

経営企画

財務の代表的なキャリアとして、経営企画へのキャリアチェンジがあります。

経営企画では数字をもとに自社の経営状態を分析し、経営戦略を立案するなど経営層をサポートする役割を担います。財務の知見を活かせる職種なので、より経営層に近い立場で自社のビジネスに関与したい場合に適したキャリアです。

自社に経営企画室があれば異動でなれる可能性もありますが、難しい場合は財務経験を評価してもらえる求人に応募して転職を目指すことになります。

IR担当

財務からIR担当になる、というキャリアプランもあります。

IR担当は広報のひとつですが、自社の商品やサービスをマスコミなどにPRする広報ではなく、投資家向けに自社の財務状況や経営状態を報告する広報です。そのため、財務諸表など自社の経営状況を示す数字を読み解く力が不可欠であり、まさに財務職の能力を活かせる職種です。

実際、財務とIR担当が兼任している企業もあります。ただし財務能力に加えて高いプレゼンスキルや発信力、取材対応力なども必要です。

財務・会計コンサルタント

企業の財務担当から、財務・会計のコンサルタントに転身するパターンがあります。

財務・会計コンサルタントは、クライアントの資産状況を分析し、アドバイスや提案を行う職種です。業務プロセスの改善や財務・会計フローの最適化、余剰資金の運用方法に関するアドバイスなども含まれます。

コンサルティングファームに所属するパターンと、個人で活動するパターンがあります。財務・会計の知見を活かせるので、財務出身者が目指しやすい職種です。

ファイナンシャルプランナー

組織全体の財務を担うポジションから、個人に寄り添うファイナンシャルプランナーに転身するパターンがあります。

人生の夢や目標の達成に向けて経済的な視点から分析、アドバイスをするのがファイナンシャルプランナー(FP)です。

FP試験の勉強を通じて、ライフプランニングやタックスプランニング、金融資産の運用や相続など個人の「お金」に関する幅広い知識を習得できます。試験は1級から3級までありますが、財務経験者であれば2級と3級を取得するのはそれほど難しくないはずです。

FPとして独立するなら、1級の取得または同程度の知識・経験に加え、営業力や高いコミュニケーション能力なども必要です。

税理士

財務で経験を積みながら、税理士などプロフェッショナルへのキャリアを展開される方もいます。

税理士試験は難易度が高いですが、税務申告代理や申告書類の作成代理など税理士にしかできない業務があります。また独立・開業も可能なので定年がなく、企業の財務で働くよりも長く働くことができます。

財務部門にいても税務の経験は積めないケースも多いので、資格取得後は税理士事務所や税理士法人に転職するのが一般的です。

公認会計士

財務領域の最上位資格にあたる、公認会計士を目指すキャリアプランもあります。

公認会計士になると監査法人や事業会社、コンサルティングファームなど多様な選択肢の中でキャリアを展開できます。希望のキャリアによっては、大きな武器になる資格です。

財務として働きながら公認会計士を目指している方は多くいらっしゃいます。しかし実際のところ、公認会計士は働きながら取得するのはかなりハードルが高い資格なので、いったん企業を退職して勉強に専念するほうが近道である可能性があります。

難易度が極めて高い資格であることを踏まえ、ご自身のキャリア実現に必須の資格かどうかは、資格の勉強を始める前によく検討するほうがよいでしょう。

起業家

企業を辞めて、起業家になるパターンもあります。

起業家といってもいろいろですが、財務経験者の場合、企業の財務業務の一部を受注するビジネスを展開しているケースがあります。

たとえばベンチャー企業など財務機能が未整備の企業で業務の一部をアウトソーシングする場合があり、そうした企業の受け皿になるタイプのビジネスです。

もちろん、ほかの新しいアイデアやビジネスモデルを生み出し、起業することも可能です。

企業規模に見る財務のキャリアプラン

ここからは現在勤務されている企業の規模別に、どのようなキャリアが考えられるのかを解説します。

中小企業

中小企業で働いている方は、財務部長など管理部門系のトップや、役員になるというキャリアプランが考えられます。

中小企業の場合、経理と財務が兼任というケースがよくあります。経理や財務以外に、総務や人事などほかの管理部門系業務を担うことも珍しくありません。

こうした幅広い経験を積むことは、財務の専門性を極めたい方には向いていませんが、管理部門系のトップになるキャリアプランを描いている方には適しています。

幅広い業務ができるようになったり、マネジメント経験を積んだりすることで、市場価値を高め大企業へ転職するというキャリアもあります。

ベンチャー・スタートアップ企業

ベンチャー・スタートアップで働いている方は、財務を含めた管理部門業務を横断的に経験し、CFOになるプランが考えられます。

また管理部門体制をゼロから構築するケースが多いベンチャー・スタートアップでの経験は、非常に市場価値が高いため、転職してキャリアアップするパターンもあります。

大企業・上場企業やベンチャーキャピタル、コンサルティングファームなど、さまざまな選択肢が生まれます。

大企業・上場企業

大企業・上場企業で働いている方は、最終的に取締役など経営のボードメンバーになるキャリアプランが考えられます。

また大企業・上場企業の財務を経験している方は市場になかなか出回らないので、優良中小企業や成長著しいベンチャー企業などへの転職でも採用される可能性があります。

財務のキャリアアップにつながる資格・検定

希望のキャリアプランを実現するために、資格や検定試験の勉強を始めようと考えている方もいるでしょう。

財務のキャリアアップにつながる、おすすめの資格や検定を紹介します。

日商簿記

簿記は会計を学ぶ資格ですが、財務業務を遂行するにあたり最低限の会計知識は必要です。

日商簿記検定試験は1級から3級まであります。経理の専門性を突き詰めるなら1級を目指す価値はありますが、財務の場合は2級程度があればよいでしょう。

FASS検定

FASS検定は、経理・財務分野における実務知識とスキルの習得度を測る検定試験です。合否を問うわけではなく、実務レベルをA~Eの5段階で評価します。

経理・財務の実務家が開発した検定で実践的な内容を学べるので、財務領域での実務能力を上げるのに役立ちます。

ビジネス会計検定試験

ビジネス会計検定試験は、財務諸表に関する知識や分析力を問う試験です。ビジネスパーソンとしての会計知識レベルを証明できるので、転職の際にもアピールできます。

1級~3級があるので、自分のレベルに応じてステップアップしていけます。

TOEIC

TOEICのスコアが高いと、英語力の証明になるため市場価値が高まります。とくにグローバル志向の方や、マネージャー候補としての採用を目指す方は学ぶとよいでしょう。

希望するキャリアや求人によって必要なスコアレベルは異なりますが、海外子会社や海外企業との取引があるグローバル企業の財務で働きたい方は800点以上が目安です。

公認会計士・税理士

財務会計領域の上位資格である公認会計士や税理士の資格を取得すると、市場価値が格段に高まります。加えて、企業の財務部だけでなく会計事務所や監査法人、コンサルティングファームに独立・開業など選択できるキャリアが一気に広がります。

外資系企業などでグローバルに活躍したいなら、USCPA(米国公認会計士)も有効です。

いずれも難易度は高いですが、希望するキャリアの実現に必要だと判断した場合はチャレンジする価値はあります。

財務職の市場価値を押し上げる経験・スキル

いずれ転職したいと考えている方は、以下のような経験・スキルがあると市場価値が高まります。希望のキャリアを実現できる可能性がいっそう高まるでしょう。

IFRS

IFRS(International Financial Reporting Standards)は、日本語で国際財務報告基準と訳されます。

ビジネスのグローバル化が進む中で世界共通の会計基準が求められるようになり、日本でもIFRSにもとづく財務諸表の作成が認められています。

大企業などのグローバル企業でキャリアを築く場合には、評価されやすい知識・スキルです。

エクイティファイナンス

エクイティファイナンスは、新株発行などによりエクイティ(株式資本)を増加させる資金調達方法です。資金調達の面で選択肢を増やすことができ、原則として返済義務がないため思い切った事業展開なども可能になります。

ただし株主に対する合理的な説明が必要で手続きも煩雑なので、スキルがある方は少数で希少性が高いです。将来的には、CFOなど経営層に進むキャリアプランも実現可能です。

IPO準備の経験

上場を目指す際、適切な財務会計体制や各種規程、労務管理などさまざまな体制を整備しなければなりません。IPO準備は多様な知識・スキルが必要とされる難易度が高い業務のため、経験者の市場価値は高いです。

また、IPO準備に携わった経験自体の希少性が高いので、ほかの財務人材との差別化を図ることができます。

IT・デジタルの活用スキル

ITに対する苦手意識を持っている財務職の方は少なくありませんが、市場価値を高めるならITやデジタルの活用スキルは欠かせません。これらの活用によって、業務改善・効率化や生産性、情報分析力の向上などを実現できます。

そして、IT・デジタルの活用によって空いた時間をマネジメントや経営判断に役立つ新たな情報の提供、事業部への貢献手段の検討などほかの業務に充てられます。

結果的に、財務人材としての評価や価値を大きく上げることにつながるでしょう。

マネジメント経験

財務部門が独立して存在する企業が大企業・上場企業など一部の企業に限定されるため、そもそも財務経験者自体が市場に少ないです。

マネジメント経験者となればさらに少なく、希少性の高い人材として扱われます。マネジメントスキルを磨いておくことは、市場価値を高めるうえで欠かせません。

必ずしも管理職に就いている必要はないので、メンバーのマネジメントや組織パフォーマンスの最適化などに取り組んだ経験があればアピールできます。

財務のキャリアプランの立て方・ポイント

最後に、財務のキャリアプランをどのように立てるのか、立て方やポイントを解説します。

まずはこれまでのキャリアを振り返る

キャリアプランは将来どうなりたいのかという道筋のことですが、まずはこれまでのキャリアを振り返るところから始めます。

そうすることで、自分自身の志向や強み・弱み、行動傾向などが見えてきます。その結果、自分が望まない方向でキャリアを展開してしまうことを回避できます。

現状を把握する

次に、現状把握です。自分の状況なのだからよく理解していると思われがちですが、実際には自分の今をよくわかっていない方が少なくありません。

現時点で保有しているスキルや知識、経験のほかに課題に感じていることや、やりがいを感じている業務などを把握します。頭の中で考えるのではなく、紙に書き出して視覚化することをおすすめします。

現状を把握することで、どういった業務やキャリアが向いているのか、マッチしやすい組織はどんなところなのかが見えてくるようになります。

キャリアのゴールを設定する

次に、キャリアのゴールを設定します。ゴールを設定しない状態でやみくもに「転職するべきか」「どんな資格を勉強するべきか」を考えても、自分の本当の希望は実現できません。まずはゴールを設定することがとても大切です。

財務経験を活かす場合、大きくは「組織内でのキャリア」と「プロフェッショナルとしてのキャリア」の2つがあります。前者は、たとえば大企業の管理職になるキャリア、後者は公認会計士として独立・開業するキャリアです。

できるだけ早い段階で、どちらのタイプのキャリアを築きたいのかを決めておくことが大切です。できれば30代なかばくらいまでにゴールは設定しておきましょう。

これは、年齢が上がってから方向転換することは難しいためです。

たとえば中小企業の経理スタッフとして働きながら40代くらいまで公認会計士の勉強を続けていた人が、勉強をやめてその時点から大企業の管理職を目指すのは難しくなります。

ゴールから逆算して今やるべきことを洗い出す

ゴールを設定したら、そこから逆算して今やるべきことを洗い出します。

たとえばベンチャー企業のCFOを目指すなら、早い段階で経理だけでなく財務もやり、マネジメント経験を含めて多様な経験を積む必要があります。外資系企業やグローバル企業で専門性を極めることをゴールとするなら、今すぐにでも英語力を磨く必要があるでしょう。

ゴールを実現するために必要なスキルや経験は何なのか、そのスキルや経験を得るにはいつまでにどこでどんな業務を担当しておくべきか、といった視点で洗い出していきましょう。

キャリアプランに迷ったら転職エージェントに相談

以上がキャリアプランの基本的な立て方ですが、そもそも自分にどんなキャリアが向いているのか分からない、将来役に立ちそうな経験を積めていないなど悩みや疑問が発生する場合もあるでしょう。

その場合は転職エージェントに相談することをおすすめします。すぐには転職を考えていない場合でも、キャリアプランの相談に乗ってくれるエージェントは多数あります。

財務は専門性が高い職種なので、財務職や公認会計士などのキャリアに精通した転職エージェントに相談するのがおすすめです。

財務の転職に強いおすすめ転職エージェント3社

財務の転職に強い、おすすめの転職エージェント3社をご紹介します。

BEET-AGENT

BEET_経理
公式サイト:https://beet-agent.com/

BEETは、財務や経理の転職に強い転職エージェントです。

大手・上場企業からIPO準備中のベンチャー企業まで、さまざまな規模や業種の求人を紹介してもらえます。経営企画やIR担当、CFO・管理職など提案してもらえるポジションの幅も広いです。

キャリア面談が評判で、個人のスキルや生活、キャリアプランに合った求人紹介やキャリア相談を対応してくれるそうです。

公式サイト:https://beet-agent.com/

ハイスタ会計士

ハイスタ会計士
公式サイト:https://hi-standard.pro/cpa/

公認会計士・USCPA・税理士の資格を持っているなら、ハイスタ会計士の利用がおすすめです。試験合格・科目合格者の転職支援も行っています。

有資格者向けの転職支援サービスのため、求人の質の高さに定評があります。最終的にプロフェッショナルとしてのキャリアを目指すなら、ハイスタ会計士に相談してみましょう。

公式サイト:https://hi-standard.pro/cpa/

MS Agent

ms-japan
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/

MS Agentは、管理部門・事業に特化した転職エージェントです。

経理・財務の求人も多数保有している、特化型エージェントの老舗です。できるだけ多くの可能性を見出したいなら、求人数が業界最大級のMS Agentがおすすめです。

公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/

まとめ

財務は企業にとって極めて重要な役割を担う、専門性の高い職種です。業務の難易度が高い分、その経験やスキルをもとに多様なキャリアを選択できます。

まずはこれまでのキャリアの振り返りから始め、ゴール設定を行いましょう。そこから必要な経験やスキルを洗い出すことで、現時点で何をするべきかが見えてきます。

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