公認会計士が大手企業へ転職するには?採用状況や業務内容などについて詳しく解説

編集者
佐藤達也
【キャリアアドバイザー】国弁護士・公認会計士・税理士等の士業や、管理部門特化の転職サポートを行う人材紹介会社に在籍。士業・バックオフィスに特化した転職ノウハウ・企業調査を担当しています。分野特化だからこその、勘所を押さえたリアルな情報を発信できるよう心がけています。
公認会計士からコンサルへの転職
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公認会計士のニーズは非常に高く、経理業務経験がなくても、大手企業に転職できる可能性が高いです。

しかし、大手企業への転職はライバルも多いため、どのようなことに注意しておくべきか分からないという方は少なくありません。

本記事では、公認会計士の大手企業への採用状況や業務内容、メリット・デメリット、転職に成功するためのポイントについて解説していきます。

目次

公認会計士を採用する大手企業は増加傾向にある

公認会計士および、公認会計士を採用する大手企業は増加傾向にあります。

日本公認会計士協会が提供する「組織内会計士ネットワーク」によれば、2014年12月末時点の組織内会計士ネットワーク会員数は1,292人でした。

組織内会計士ネットワーク会員数の推移

しかし組織内会計士ネットワーク会員数は年々増加し、2023年12月末には2,927人、上場企業勤務者は約4割にあたる1,179人、非上場企業や官公庁を含めると約7割にあたる2,418人が一般企業に勤務しています。

以上の点から、転職市場では公認会計士の需要が非常に高く、経験・スキル次第では転職成功率が高いことが伺えます。

公認会計士が大手企業に転職した場合の年収

公認会計士が大手企業に転職した場合の年収は、課長職で700万~1,100万円程度、部長職・役員で1,000万~1,500万円程度が目安です。

ここでは、公認会計士の求人をピックアップしながら、実際に大手企業の年収をみていきます。

A社

年収

500万~700万円

職種

経理担当/連結決算

必須経験

【下記いずれかに該当する方】

  • 事業会社での連結決算・開示業務経験
  • 監査法人での連結決算導入企業に対する会計監査経験

【資格】

日商簿記2級、または同程度の知識・業務経験をお持ちの方

業務内容

連結での決算業務を中心に、経営政策・戦略に対するプロアクティブな会計的検討や助言の提供をお願いします。

  • 個別決算業務
  • 連結決算・開示業務
  • 会計監査対応
  • 国内外の子会社のファイナンスマネージャとの連携(英語力次第で相談)

参考元:BEET-AGENT-国内大手広告代理店での経理担当/連結決算(東京)

B社

年収

700万~1,090万円

職種

財務経理(リーダー候補/ フリーポジション募集)

必須経験

生成AI(最新のIT技術・ツール)への興味関心がある方で、下記いずれかに該当する方

  • 事業会社での3年以上の経理実務経験がある方
  • 会計事務所や監査法人での3年以上の実務業務経験がある方

業務内容

単体決算

  • 月次決算
  • 税務関連業務
  • 決済代行支払業務
  • 監査法人対応業務
  • 財務業務
  • 業務フロー変革

連結IFRS決算

  • 決算業務(IFRSパッケージ作成を含む)
  • 連結決算業務
  • 監査法人対応業務
  • 新規取引検討
  • グループ会社管理業務

予算管理

  • 予算作成
  • 予実分析及び着地管理
  • KPI管理

参考元:BEET-AGENT-プライム上場のインターネット事業会社の財務経理(リーダー候補/ フリーポジション募集)

C社

年収

550万~950万円

職種

財務部経理課

必須経験

下記いずれかに該当する方(即戦力希望)

  • 上場企業における経理実務経験(5年以上)
  • 監査法人での監査業務経験

業務内容

スキル・経験に応じて以下の業務を担当

  • 個別・連結決算業務
  • 開示資料作成関連業務
  • 損益進捗管理
  • 税務対応など

特定の業務に特化するよりは、徐々に業務の幅を広げて、会計・税務の専門性を軸にM&A案件の経理財務サポートや海外駐在経験などのキャリアパスを想定。

将来的には財務部や会社の中核を担う人材になっていただきたいです。

参考元:BEET-AGENT-大手食品メーカーでの財務部_経理課

大手企業で働く公認会計士の業務内容

大手企業で働く公認会計士の業務内容は次の4つです。

  • 経理業務
  • 内部監査業務
  • IR業務
  • 経営企画業務

それぞれ詳しく解説します。

経理業務

経理業務では、連結決算や管理会計、決算書(国際財務報告基)の作成などを担います。

また、上場企業の場合は適切な会計基準やルールに沿った処理ができるのは当たり前で、決済開示スケジュールに則った実務、監査法人への対応力などが求められます。

また、メーカーの場合は原価計算にも対応せねばなりません。そのため、大手企業の経理として転職するためには、大手企業での経理経験が非常に重要視されています。

しかし、経理実務経験がない場合でも公認会計士は会計知識や専門性が高く評価されるため、ニーズが高く、積極的に採用するケースが少なくありません。

内部監査業務

内部監査業務は、企業の各事業活動が法律や会社の規定などに沿って運営されているか、内部統制・リスクマネジメントプロセスが機能しているかを確認したり、内部統制報告書を作成したりします。

内部監査は法令によって上場企業では設置が義務化されていますが、専門人材は多くありません。また、コンプライアンスおよびガバナンス強化の意識が向上したことで、よりニーズの高い職種となっています。

IR業務

IR業務は、株主・投資家といった利害関係者へ発信する広報業務であり、投資判断に欠かせない企業の経営状況を公平に開示する役割を担っています。

公認会計士の知識・経験と、税務申告書・決算書をもとに分析・解説するIR業務は非常に親和性が高いため、転職市場でも高い評価を得られやすいです。

大手企業の多くはIR部門として独立させていますが、企業によっては経理・財務部や広報部などがIR業務を担っている場合もあります。

経営企画業務

経営企画業務は、予算・経営戦略の策定や経営会議運営など、経営に関わる業務を担います。経営企画業務に携わる場合、市場優位性の確保に向けて、競合他社のデータ分析なども実施しなければなりません。

円滑に業務を遂行するためには、M&Aやマーケティングなど、監査・会計以外の知識も習得する必要があります。

公認会計士が大手企業に転職する5つのメリット

公認会計士が大手企業に転職するメリットは次の5つです。

  1. 経営内部の運営(ビジネス)に携われる
  2. ワークライフバランスが整っている
  3. 管理職として採用される可能性がある
  4. 長期的に安定したキャリアを積める
  5. CFO(最高財務責任者)を目指せる

それぞれ詳しく解説します。

経営内部の運営(ビジネス)に携われる

監査法人で勤務している場合、企業活動に携わるのは監査業務のみです。しかし、大手企業に転職した場合は従業員として、経営内部の運営(ビジネス)に携わり、企業に貢献していきます。

ビジネスの渦中に身を置くことで、マーケティングや競合他社の調査・分析など、監査法人では携われなかったさまざまな業務に携われます。

ワークライフバランスが整っている

監査法人はクライアント都合による休日出勤や急な残業が多いため、ワークライフバランスが維持しにくいです。

一方、大手企業は比較的業務量が安定している他、働き方改革の推進もあって、休日出勤や急な残業は少ないです。

そのため、監査法人と比べると、ワークライフバランスが整っているといった特徴があります。また、住宅手当や退職金などの福利厚生も充実している傾向にあるため、安心して働ける環境が整っています。

管理職として採用される可能性がある

大手企業は即戦力として公認会計士を募集している傾向にあるため、管理職として採用される可能性があります。

仮に管理職として採用されなかったとしても、開示や決算といった会計業務のエキスパートとして雇用しているため、将来的に管理職として活躍できる可能性が高いです。

大手企業へ転職する際は、自分のスキル・経験を洗い出し、どの業務で活躍できるかしっかりと見極めることが大切です。

長期的に安定したキャリアを積める

長期的に安定したキャリアを積めるのも、大手企業へ転職するメリットとして挙げられます。監査法人で勤務している場合、精通するのは監査業務のみのため、監査法人以外のキャリアの選択肢は狭まってしまいます。

一方、大手企業へ転職すれば監査業務以外の業務を経験できるため、監査法人で働き続けるよりも長期的に安定したキャリアの形成が可能です。

CFO(最高財務責任者)を目指せる

CFO(最高財務責任者)を目指せるのも、公認会計士が大手企業に転職するメリットです。

CFOとは、CEO(最高経営責任者)に次ぐ役職で、財務戦略の策定・実行や資金調達など、企業活動を財務面で支える最高責任者のことです。

公認会計士がCFOを目指すのは難しいと思われがちですが、ベンチャー企業などを中心に公認会計士からCFOに転身する方も増えています。

また、近年は他社からヘッドハンティングしたり、CFO候補として人材を募集したりする企業も増えているため、公認会計士が大手企業のCFOを目指すのは決して難しいことではありません。

公認会計士が大手企業に転職する3つのデメリット

公認会計士が大手企業に転職するデメリットは次の3つです。

  1. 転勤や配置換えがある
  2. 年収の低下
  3. 他業務のフォローが発生する可能性がある

それぞれ詳しく解説します。

転勤や配置換えがある

大手企業は全国・海外に支店・子会社を抱えていることが多く、拠点ごとに経理・財務・会計部門があるため、専門職であっても転勤や配置換えのリスクがあります。

同じ拠点で働き続けたいという希望がある場合、転職前に転勤や配置換えの有無について確認しておかなければなりません。

年収の低下

監査法人の平均年収は年齢に対して高めに設定されているため、一般社員として転職する場合は、年収が低下する可能性が高いです。

そのため、監査法人から大手企業へ転職する場合は、転職して得られるメリットの方が大きいか、年収が低くても生活を維持できるかなどを総合的にみたうえで、転職を判断する必要があります。

他業務のフォローが発生する可能性がある

監査法人で勤務している場合、専門的な業務しか対応しません。一方、大手企業をはじめ一般企業に就職した場合は経営戦略など、専門外の分野を任せられる可能性があります。

また、企業のことを深く理解してもらうために、他業務を兼任したり、フォローしたりする可能性もあるため、専門業務に集中したいという方はその点、大きなデメリットといえます。

大手企業に転職して失敗する人の特徴パターン

大手企業に転職して失敗する人の特徴のパターンは次の3つです。

  1. 事業への興味を持っていない
  2. 企業規模の業務量についていけない
  3. 多くの人と関わって仕事をするのに苦手意識がある

それぞれ詳しく解説します。

事業への興味を持っていない

大手企業へ就職すれば、イチ従業員として決算や数字分析に携わらなければなりませんし、公認会計士の経験を活かして、経営陣・現場にアドバイスしていかなければなりません。

的確にアドバイスするためには当事者意識を持つ必要がありますし、経営陣・現場と対等に話すためには事業のことを深く理解しておく必要があります。

モチベーションを長く保ち、企業内で評価される人材になるには、事業に興味を持てるかどうかも転職する際の重要なポイントです。

企業規模の業務量についていけない

企業は大手になるほど取引先が多くなるため、業務量も比例して大きくなりがちです。繁忙期には人員確保が困難となり、業務負担が増加してしまうケースが少なくありません。

また、社内ルールが厳格で意思決定までに多数のプロセスを経る必要があるため、書類作成回数も多くなります。そのため、中小監査法人・中小企業から大手企業に転職した場合は、業務量のギャップについていけなくなるリスクがあります。

多くの人と関わって仕事をするのに苦手意識がある

大手企業は多くの人と関わって、仕事をしなければなりません。

円滑に業務を進めていくためには、信頼関係を築く人間力やチームワーク、多くの人の意見を取りまとめる忍耐力・調整力が必要です。多くの人と関わって仕事をするのに苦手意識がある場合、大手企業への転職は考え直した方がよいかもしれません。

公認会計士が大手企業への転職を成功させる3つのポイント

公認会計士が大手企業に転職への転職を成功させるポイントは次の3つです。

  1. 監査法人とは風土が違うことを理解する
  2. キャリアビジョンを明確にする
  3. ネームバリューや規模で選ばない

それぞれ詳しく解説します。

監査法人とは風土が違うことを理解する

大手企業は監査法人と比べて、保守的だったり、昇格・昇給の基準が年功序列だったりと、組織風土が大きく異なります。

組織の規模が大きくなり、業務内容も大きく変わるだけでなく、業務に携わる方も多くなるため、提案を通すまでに調整や根回しが必要となり、社内稟議が通るまで時間を要すことも少なくありません。

公認会計士が大手企業への転職を成功させるためには、このような違いについても理解しておく必要があります。

キャリアビジョンを明確にする

年収アップや安定したいという理由で、大手企業に転職すること事態は悪くありません。しかし、監査法人とは組織風土が違う大手企業では、業務内容や組織体制が大きく異なります。

そのため、年収アップや安定したいといった理由で転職してしまうと、思っていたものと違ったという事態になりかねません。

また、年収アップや安定したいという理由では、その企業で働きたい理由が伝わりにくいため、選考自体通過しづらい可能性もあります。

このような事態を避けるためには、転職後のキャリアビジョンを明確にしておくことが大切です。

ネームバリューや規模で選ばない

大企業への転職に失敗しないためには、ネームバリューや企業規模で選ばないことも重要です。

大手企業でも年功序列だったり、市場が縮小傾向だったりする場合もあるため、大手企業だから問題ないと思って転職すると、想定外の事態に直面してしまうリスクがあります。

そのため、ネームバリューや企業規模ではなく、市場傾向や年齢比率、募集頻度などを確認し、キャリアビジョンを実現できる企業を転職先として選択する必要があります。

公認会計士が大手企業へ転職する5つの方法

公認会計士が大手企業へ転職する方法は次の5つです。

  1. 直接応募
  2. 知人からの紹介
  3. 転職サイト
  4. ダイレクトリクルーティング
  5. 転職エージェント

それぞれ詳しく解説します。

直接応募

直接応募とは、企業の公式サイトにある中途採用ページから直接求人に応募する方法です。直接応募の場合、会員登録などの手間なく、すぐに求人へ応募できます。

また、トヨタ自動車やパナソニックなどの大手企業は、キャリア採用枠として特設ページを設けている場合が少なくありません。

そのため、大手企業への転職を希望している方や、転職したい業界がすでに決まっている方におすすめの転職方法です。

知人からの紹介

知人からの紹介で転職する方法を「リファラル採用」といいます。リファラル採用とは、既存社員が自社と相性がよさそうな知人・友人を紹介し、採用する手法のことです。

リファラル採用により、企業は潜在的な転職希望者との接点をつくれるだけでなく、既存社員による振り分けによって、企業風土やスキルに合った人材を確保できるため、採用コストを下げられます。

転職希望者は紹介者を通じて、労働環境・働き方・制度などの実態を把握できるため、ミスマッチを防ぎ、転職の失敗リスクを低減できます。

特化型の転職エージェント

転職エージェントとは、企業と転職希望者の間に立ち、マッチングを支援するサービスです。経歴やスキル、希望条件をもとに転職希望者に合った求人のみを選定してくれます。

選定してくれる求人の中には非公開求人や独占求人もあるため、想定よりも好条件の求人案件に出会える可能性があります。

転職相談や応募書類の添削、条件交渉をはじめとする企業とのやりとり代行など、さまざまな面でサポートしてくれるため、転職活動が不安な方や採用確率を少しでも高めたいという方におすすめです。

転職サイト

転職サイトで公開されている求人に、サイト経由で応募する転職方法です。スカウトメールや検索機能などを活用し、多くの求人情報の中からどの求人に応募するかを検討できます。

どんな求人情報があるのか確認したい、自分のペースで転職活動を進めたいという方は転職サイトの利用がおすすめです。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、企業がSNSやイベント、スカウトサービスなどを活用し、求職者に直接アプローチして人材を採用する方法です。

転職したいと思う大手企業がある場合、SNSやイベントなどの情報をこまめに確認し、企業との接点を増やすことをおすすめします。

まとめ

大手企業の経理は適切な会計基準やルールに沿った処理能力や実務力などが必要なため、転職する際には「大手企業の経理経験」が重要視されます。

しかし、公認会計士の場合は会計知識・専門性が高く評価されているため、ニーズが非常に高いです。そのため、経理事務経験がなくても、積極的に採用されており、多くの公認会計士が大手企業に勤務しています。

監査法人から大手企業に転職するのはメリットが多い一方、デメリットも少なくなく、キャリアビジョンなどが明確でない場合、転職に失敗するリスクも高いです。

そのため、今後のキャリアや自分の特性をしっかりと把握したうえで、大手企業に転職するかどうか決断する必要があります。

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キャリアアドバイザー

佐藤 達也

弁護士・公認会計士・税理士等の士業や、管理部門特化の転職サポートを行う人材紹介会社に在籍。士業・バックオフィスに特化した転職ノウハウ・企業調査を担当しています。分野特化だからこその、勘所を押さえたリアルな情報を発信できるよう心がけています。