ファクタリングの会計処理のコツ|仕訳のやり方や会計上の注意点について

ファクタリングの会計処理のコツ|仕訳のやり方や会計上の注意点について
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ファクタリングは、企業が資金繰りを改善するために、未回収の売掛債権をファクタリング業者に売却する取引です。

ファクタリングによって売掛債権を現金化することで、経営状況を一時的に改善できます。

ファクタリングの取引にあたっては、どのように会計処理をおこなうべきか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

本記事では、ファクタリングを利用した場合に会計処理が必要かどうかや、会計処理のポイント、会計処理(仕訳)の流れなどについて解説します。

ファクタリングを利用した場合も会計処理は必要?

ファクタリングは、企業が取引先に対して持っている売掛債権を現金化するためのサービスです。

ファクタリングサービスを利用すれば、企業は売掛金の支払期日を待たずに現金を得られ、資金繰りを改善できます。

ファクタリングは売掛債権を売却する取引であるため、取引にあたっては適切な会計処理が必要です。

処理を忘れるなど、適切に会計処理がおこなわれなかった場合は、税金の負担が重くなる恐れがあります。

企業が資金繰りのために売上債権を売却する際、売却価格が元の債権額よりも低い場合、差額は売却損として計上できます。

適切な会計処理を怠ると売却損が正確に計上されないので、実際には支払う必要のない分まで企業が税金を負担することになってしまうでしょう。

また、会計処理をおこなわないと、手元の現金と帳簿上の数字が一致しなくなります

ファクタリングによって得た現金は企業の手元にありますが、帳簿上ではまだ売掛金として記載されているため、現金の過不足が発生する点もデメリットです。

ファクタリングを利用した際の会計処理の3つのポイント

ここでは、ファクタリングを利用した際の会計処理にかかわるポイントを3つ説明します。

1.ファクタリングには複数の仕訳が必要になる

ファクタリングを利用した際には、会計処理において複数の仕訳が必要です。

具体的には下記の通りです。

  • 売掛金が発生した際の仕訳
  • ファクタリング契約を締結した際の仕訳
  • ファクタリングの入金があった際の仕訳
  • 取引先から売掛金の入金があった際の仕訳
  • ファクタリング会社に支払いをした際の仕訳

これらの仕訳を適切におこなうことで、ファクタリングによる財務状況を正確に反映させられます

適切な会計処理は、企業の決算書・財務諸表を正確に作成するうえでも重要です。

2.ファクタリングは営業外の活動である

ファクタリングによって得たお金は、会社の営業活動ではなく、営業外活動の一環として扱われます。

営業外活動の取引によって未回収のお金が発生した場合は、帳簿に未収入金として計上しなければなりません。

未収入金とは、企業の本来の営業活動以外で生じる収入のうち、期末時点でまだ現金化されていないお金を指します。

取引先から回収できていないお金以外にも、固定資産や有価証券を売却した場合などが対象です。

ファクタリングによって得たお金は、通常の営業範囲外で発生するため、未収入金として会計処理しなければならない点を押さえておきましょう。

ファクタリングによって売上債権を売却した後、取引先から債権を回収するまでは未収入金としての計上が続きます。

3.ファクタリングは非課税の取引となる

ファクタリングでは、売掛債権の売却自体に消費税が課されることはありません

これは、ファクタリングが債権の譲渡という形を取るからです。

国税庁は、ファクタリングにおける債権の譲渡を、有価証券の譲渡と同じであると定めています

有価証券の譲渡に消費税がかからないのは、有価証券取引が資本の移転とされているためです。

具体的には、株式や債券、投資信託の証券など、金融商品の売買は消費税の課税対象外と定められています。

ファクタリングも同様の考えが適用されるので、非課税の取引となるのです。

2社間ファクタリングを利用した場合の会計処理(仕訳)の流れ

ここでは、2社間ファクタリングを利用した場合の会計処理(仕訳)を、流れに沿って解説します。

1.商品やサービスを販売したとき

取引先(A社とする)に対して商品やサービスを販売し、売掛金100万円が発生した場合の仕訳は、以下の通りです。

借方貸方摘要
売掛金1,000,000円売上1,000,000円A社への売上

2.ファクタリング契約を締結したとき

A社からの売掛金回収を待たず、現金を確保するためにファクタリング業者(B社とする)とファクタリング契約を締結した場合の仕訳は、以下の通りです。

借方貸方摘要
未収金1,000,000円売掛金1,000,000円A社の売掛金につき、B社とファクタリング契約を締結

3.ファクタリングの入金があったとき

B社とファクタリング契約を締結し、契約に基づいてB社からファクタリングの入金があった場合の仕訳は、以下の通りです。

ファクタリングに必要な手数料10万円を、売上債権売却損として計上します。

借方貸方摘要
普通預金900,000円未収金1,000,000円B社からファクタリング代金が入金される
売上債権売却損100,000円

4.取引先から売掛金の入金があったとき

B社からの入金後、売掛債権を持っていたA社から売掛金の入金があった場合の仕訳は、以下の通りです。

借方貸方摘要
普通預金1,000,000円預り金1,000,000円B社から売掛金が入金される

5.ファクタリング会社に支払いをしたとき

A社からの入金後、B社に対して支払い(弁済)をする場合の仕訳は、以下の通りです。

借方貸方摘要
預り金1,000,000円普通預金1,000,000円A社からの売掛金をB社へ弁済

【関連記事】ファクタリングの仕訳はこんなに簡単!勘定科目や特殊なケースの対処法を解説

ファクタリングを利用する際の会計処理上の注意点

ここでは、ファクタリングを利用する際の会計処理上の注意点について見ていきましょう。

1.消込処理を忘れないようにする

売掛債権をファクタリング業者に売却したことを帳簿に記録する際には、消込処理を適切におこなう必要があります。

消込処理は、企業が正確な財務状態を把握し、管理するためのものです。

企業はファクタリング取引も含め、売掛金や買掛金などの取引に関する記録を正確に照合し、帳簿上の残高が実際の金銭の動きと一致していることを確認しなければなりません。

消込処理により、ファクタリング業者にお金を返しているか、取引先から売掛金を回収できているかなどが明確になります

また、帳簿にズレがあるかどうかを早めに発見できるので、財務上のリスクを減少させられるでしょう。

また決算時には、正確な損益計算書・貸借対照表を作成するために決算整理仕訳をおこなわなければなりません

決算整理仕訳においては、未収入金があるかどうかを確認する必要があります。

ファクタリング業者に売掛債権を売却して得たお金は未収入金に分類されるので、この点も間違いなくチェックしておいてください。

2.領収書などは必ず保管しておく

ファクタリングを利用する際は、領収書や振込明細書など取引にかかわる書類を必ず保管しておきましょう。

取引の事実を示す書類は、取引の事実を証明するための証拠となり、法人税を申告する際に必要となります。

実際の取引内容と会計記録が一致していることを確認できるよう、慎重に保管しておくことが重要です。

しかし、悪徳ファクタリング業者と取引してしまった場合は、取引の際に領収書を発行してくれないケースもあります。

トラブルを避けるためにも、支払いをする際には領収書を相手方から必ず受け取ってください。

また、取引の事実を示す書類としては、銀行の振込明細書も有効です。

領収書に比べると効力は多少弱いものの、証拠として十分に使えます。

もし領収書が発行されない、あるいは紛失してしまった場合は振込明細書の活用をおすすめします。

法人税法上、法人税申告に用いた領収書は7年間の保管が義務となっています。

税務調査がおこなわれた場合、領収書がなければ追徴課税の対象となる恐れもあるため、間違いなく保管しておきましょう。

3.一度決めた仕訳のルールは変えない

ファクタリング取引を含む会計処理において、一度確立した仕訳ルールは基本的に変えてはなりません

処理方法を途中で変更すると、決算書や財務諸表の信頼性を損ない、企業の財務状態や業績の正確な把握が難しくなります

一度決めた会計処理の方法を継続して使用しなければならないことを「継続性の原則」と呼びます。

ファクタリング取引でも、売掛債権の売却や消込処理などにかかわる仕訳の方法を一貫して適用するよう注意しましょう。

仕訳のルール変更は、正当な理由がある場合に限ります。

正当な理由としては、下記などが挙げられます。

  • 会計基準などの改正によって会計方針を変更する場合
  • 決算書への適切な反映を理由に変更する場合

変更は慎重におこない、変更の理由を明確にしましょう。

さいごに|会計処理に困ったら税理士などに相談しよう

ファクタリングを利用する際の会計処理は複数のフローに分かれていますが、流れが認識できていれば、適切に処理ができます。

会計処理上の注意点を踏まえたうえで、正しく仕訳を進めていきましょう。

もし会計処理に不安がある場合や、どう進めていいのかわからない場合には、税理士など会計の専門家に相談することをおすすめします。

ファクタリングの処理方法に精通しているだけでなく、さまざまな観点から適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。