ファクタリングの仕訳はこんなに簡単!勘定科目や特殊なケースの対処法を解説

ファクタリングの仕訳はこんなに簡単!勘定科目や特殊なケースの対処法を解説
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ファクタリングとは、売掛金を現金化するサービスのことです。

取引先の支払予定日よりも前に売掛金を現金化できるため、資金調達方法のひとつとして注目を集めています。

では、ファクタリングを利用して売掛金を売却した場合、帳簿上はどのような仕訳になるのでしょうか?

本記事では、ファクタリング取引の仕訳で使用される主な勘定科目や、基本的な仕訳パターンを紹介します。

ファクタリングの仕訳をするときの注意点も解説しているので、経理担当者の方はぜひ参考にしてください。

ファクタリング取引の仕訳で使うことになる勘定科目

ファクタリング取引の仕訳に使用する勘定科目は、主に売掛金・未収金・売掛債権売却損・預り金の4つです。

それぞれの勘定科目について、以下で詳しく説明していきます。

1.売掛金|営業上の得意先に対するツケのこと

売掛金とは、営業取引によって発生したツケのことです。

商品やサービスを提供した後、その代金がすぐに支払われない場合に用いられます。

商品やサービスを同じ取引先に何度も提供する場合、毎回代金を支払う取引形態とすると、自社にも取引先にも負担がかかってしまいます。

そこで、営業において一般的に使用されるのが、売掛金という取引形態です。

たとえば、取引先Aに対して2月1日・10日・22日・28日に商品やサービスを提供し、翌月以降に2月分の代金をまとめて請求するケースなどは、2月分の取引をその都度売掛金として処理します。

そして、代金が支払われたタイミングで借方の売掛金を貸方に仕訳し、売掛金の消込作業をおこないます。

ただし、業種によっては売掛金以外の勘定科目を使う場合もあるため注意が必要です。

たとえば、建設業では完成工事未収金、医療業界では医業未収金という勘定科目が用いられます。

2.未収金|本業以外の取引で発生したツケのこと

未収金とは、営業取引以外で発生したツケのことです。

売掛金が商品やサービスの取引で用いられるのに対し、未収金は商品やサービス以外の取引で用いられます

たとえば、次のようなものを売却し、その代金があとから支払われる場合は、未収金として処理します。

  • 会社で使用していたパソコンやデスクなどの備品
  • 工場や土地などの不動産
  • 業務で使用していたトラクターや会社名義の車などの車両

なお、勘定科目は自由に設定できるため、「ファクタリング」という勘定科目を作って処理することも可能です。

別途勘定科目を設定すれば、そのほかの未収金と混同しないようになるメリットがあります。

3.売掛債権売却損|ファクタリング手数料のこと

売掛債権売却損とは、売掛債権を売却したときに生じた損失を処理する勘定科目です。

たとえば、10万円の売掛債権を9万円で売却した場合は、1万円を売掛債権売却損として処理します。

ファクタリング取引においては、ファクタリングの手数料を処理する際に用いられる場合が多いでしょう。

ファクタリングでは、売掛債権の金額をそのまま受け取れるわけではなく、所定の手数料が差し引かれます。

手数料率はサービスによって異なりますが、おおむね1~10%の範囲に収まるのが相場です。

4.預り金|他人に支払うために預かった金銭のこと

預り金とは、従業員や取引先などが負担する金銭を、会社が一時的に預かる場合に用いられる勘定科目です。

預り金は、その後なんらかの支払いに使用される場合と、本人に返還される場合とがありますが、ファクタリング取引の仕訳では前者のパターンで用いられます。

2社間ファクタリングの基本的な仕訳パターン

2社間ファクタリングとは、利用者とファクタリング会社の間で取引が完結するファクタリング方式です。

ここからは、2社間ファクタリングの基本的な仕訳パターンを紹介します。

ステップ1.売掛金の発生

まずは、売掛金が発生したときの処理からです。

取引先に商品を販売し、代金を掛けとした場合は、貸方に売上、借方に売掛金と記載します。

たとえば、80万円の商品を販売し、代金を掛けとした場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
売掛金 80万円売上 80万円

ステップ2.ファクタリングの利用

ファクタリングを利用する際は、売掛金を未収金に振り替えます。

売掛金は商品の対価として支払われるものですが、売掛金そのものは商品ではなく資産なので、営業取引以外で生じたツケとして仕訳をおこなう必要があるのです。

仕訳のタイミングとしては、ファクタリングの契約締結時となります。

たとえば、80万円の売掛金をファクタリング会社に売却する場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
未収金 80万円売掛金 80万円

ステップ3.ファクタリング会社から入金

ファクタリング会社から代金が入金されたら、貸方に未収金、借方には手元に残る代金と手数料の金額を記載します。

なお、手数料は売掛債権売却損という勘定科目で処理します。

たとえば、手数料6万円が差し引かれた金額が普通預金口座に入金された場合、仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
普通預金 74万円未収金 80万円
売掛債権売却損 6万円

ステップ4.取引先から売掛金の回収

2社間ファクタリングでは、取引先はファクタリングに関与しません。

そのため、売掛金は請求書記載に記載された自社の口座に入金されます。

取引先から回収した売掛金は、そのあとファクタリング会社に支払う必要があるため、いったん預り金として計上します。

たとえば、取引先から普通預金口座に売掛金が入金された場合、仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
普通預金 80万円預り金 80万円

また、このとき摘要に「A社(取引先)から売掛金の入金」といったように記載しておくとよいでしょう。

ステップ5.ファクタリング会社への支払い

回収した売掛金をファクタリング会社に支払うときは、以下のように処理します。

借方貸方
預り金 80万円普通預金 80万円

また、このとき摘要に「A社(取引先)からの売掛金をB社(ファクタリング会社)に弁済」などと記載しておくとよいでしょう。

3社間ファクタリングの基本的な仕訳パターン

3社間ファクタリングとは、利用者とファクタリング会社だけでなく、取引先(売掛先)も含めた3社間で取引をおこなうファクタリング方式です。

ここからは、3社間ファクタリングの基本的な仕訳パターンを紹介します。

ステップ1.売掛金の発生

売掛金が発生したときは、2社間ファクタリングと同じ方法で仕訳します。

たとえば、80万円の商品を販売し、代金を掛けとした場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
売掛金 80万円売上 80万円

ステップ2.ファクタリングの利用

ファクタリングを利用する際も、2社間ファクタリングと同様に売掛金を未収金に振り替えます。

たとえば、80万円の売掛金をファクタリング会社に売却する場合の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
未収金 80万円売掛金 80万円

ステップ3.ファクタリング会社から入金

ファクタリング会社から代金が入金されたら、借方に手数料を売掛債権売却損として計上し、手元に残る代金の金額も記載します。

たとえば、手数料6万円が差し引かれた金額が普通預金口座に入金された場合、仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
普通預金 74万円未収金 80万円
売掛債権売却損 6万円

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの仕訳で最も大きな違いは、ファクタリングを利用したあとの処理です。

3社間ファクタリングでは取引先に承諾を得たうえで売掛金を売却し、ファクタリング会社が取引先から直接売掛代金を回収します。

そのため、ファクタリング会社から入金があったあとは、それ以上ファクタリングに関する仕訳は必要ありません。

特殊なケースでのファクタリングの仕訳ポイント

ファクタリングの基本的な仕訳パターンを紹介したところで、ここからは少し特殊なケースを取り上げていきます。

具体的には、次の4つのケースにおける、ファクタリングの仕訳のポイントを解説します。

  • 即日ファクタリングを利用した場合
  • 保証型ファクタリングを利用した場合
  • ファクタリングの利用で債権譲渡登記をした場合
  • 将来発生する売掛金でファクタリングに利用した場合

それぞれ一般的なケースとは仕訳の方法が異なるので、ポイントを押さえて正しく処理しましょう。

1.即日ファクタリングを利用した場合

ファクタリング会社のなかには、即日入金に対応しているところもあります。

売掛金の即日現金化が可能なのは、取引先の承認が不要な2社間ファクタリングを利用するケースです。

3社間ファクタリングと比べて手数料は高くなりやすいものの、スピーディーな資金調達を実現できるというメリットがあります。

売掛金の買取額が即日支払われた場合は、売掛金の売却と入金を同時に計上することが可能です。

ファクタリング会社からの入金を待つ期間が発生しないため、売掛金を未収金に振り替える処理が必要ありません。

たとえば、100万円分の売掛金をファクタリング会社に売却したケースを考えてみましょう。

まずは通常どおり、売掛金の発生の処理として、貸方に売上、借方に売掛金を計上します。

借方貸方
売掛金 100万円売上 100万円

次に、売掛金を売却する処理と、ファクタリング会社からの入金の処理を同時におこないます。

未収金への振り替えをしなくてもよいので、ファクタリングを利用する仕訳のステップを省くことが可能です。

たとえば、手数料10万円が差し引かれた金額が普通預金口座に入金された場合、仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
普通預金 90万円売掛金 100万円
売掛債権売却損 10万円

2.保証型ファクタリングを利用した場合

保証型ファクタリングとは、取引先の売掛金の支払いをファクタリング会社に保証してもらうサービスです。

ファクタリング会社に保証料を支払うことで、万が一、取引先が倒産して売掛債権を回収できなくなった場合も、あらかじめ設定した金額を上限とする保証が受けられます。

ここまで紹介してきた買取型ファクタリングとは異なり、売掛金を現金化するのではなく、売掛金の回収不能リスクを軽減するサービスです。

そのため、買取型ファクタリングと保証型ファクタリングは、仕訳の方法も大きく異なります。

例として、100万円分の売掛金について、保証型ファクタリングを利用するケースを考えてみましょう。

初めに通常どおり、売掛金の発生の処理をおこないます。

借方貸方
売掛金 100万円売上 100万円

次に、ファクタリングを利用する際は、ファクタリング会社に保証料を支払う処理をおこないます。

保証料の支払いに使用されるのは、支払手数料という勘定科目です。

たとえば、保証料1万円を普通預金口座から支払った場合は、次のように仕訳します。

借方貸方
支払手数料 1万円普通預金 1万円

もしも取引先から売掛金を回収できなくなった場合は、ファクタリング会社から保証金が支払われます。

まずは、売掛債権を貸倒損失として処理しましょう。

借方貸方
貸倒損失 100万円売掛債権 100万円

ファクタリング会社から保証金が入金されたときは、その金額を雑収入として計上します。

借方貸方
普通預金 100万円雑収入 100万円

3.ファクタリングの利用で債権譲渡登記をした場合

債権譲渡登記とは、債権を譲渡したことを証明する手続きのことです。

ファクタリングを利用すると、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することになります。

しかし、売掛金は目には見えない資産なので、権利の保有者が曖昧になりがちです。

そこで、債権譲渡登記をおこなえば、売掛債権をファクタリング会社に譲渡した事実を公的に証明できます

債権の所在が明らかになり、二重譲渡をはじめとするトラブルの防止につながるのです。

ただし、債権譲渡登記の情報は誰でも閲覧できるため、取引先にも譲渡の事実を知られる可能性があります。

取引先から「資金繰りが悪いのかもしれない」という印象を持たれるリスクが高まるため、債権譲渡登記するか否かは慎重に検討したほうがよいでしょう。

また、債権譲渡登記には登録免許税という税金が課せられるため、ファクタリングとは別に処理する必要があります。

登録免許税の仕訳に用いられるのは、租税公課という勘定科目です。

たとえば、登録免許税10万円を現金で納付した場合は、以下のように仕訳します。

借方貸方
租税公課 10万円現金 10万円

4.将来発生する売掛金でファクタリングに利用した場合

ファクタリング会社によっては、将来発生する売掛金の買い取りに対応している場合もあります。

このような将来債権を含むファクタリング取引では、現在発生している債権は売掛金、将来発生する債権は前受金として処理します。

たとえば、ある取引先に毎月50万円分の商品を掛けで販売しているケースを考えてみましょう。

当月と翌月の2ヵ月分の債権をファクタリング会社に売却する場合、当月分は売掛金、翌月分は前受金として処理します。

ファクタリングの手数料を2万円とすると、仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
普通預金 98万円売掛金 50万円
支払手数料 2万円前受金 50万円

売上が確定した際は、それぞれ以下のように処理します。

借方貸方
売掛金 50万円売上 50万円
借方貸方
前受金 50万円売掛金 50万円

ファクタリングの仕訳をするときの注意点

ファクタリングの仕訳をするときは、次の2つのポイントに注意しましょう。

  • ファクタリング取引は「非課税取引」となる
  • 一度決めた仕訳のルールは変えないようにする

1.ファクタリング取引は「非課税取引」となる

ファクタリング会社から受け取ったお金は、非課税として扱われます。

ファクタリングのような債権譲渡は法律上、非課税取引にあたるため、ファクタリングで得たお金には消費税が課せられないのです。

ただし、ファクタリングの利用時に債権譲渡登記をおこなう場合、司法書士への報酬や交通費などには消費税が課せられます。

2.一度決めた仕訳のルールは変えないようにする

会計処理で使用する勘定科目は、比較的自由に設定できます。

そのほかの未収金と区別するためファクタリングという勘定科目を設定したり、ファクタリングの手数料を売掛債権売却損ではなく支払手数料で処理したりすることも可能です。

ただし、一度勘定科目を決めたら、それ以降はルールを徹底して守る必要があります

自由に設定できるからと仕訳の度に異なる勘定科目を用いていると、帳簿を正しく作成できず、税務署から指摘を受ける原因にもなりかねません。

ある程度の自由が認められているからこそルールを明確化し、会計担当者全員で共有することが大切です。

さいごに|仕訳に悩んだら税理士などに相談しよう

ファクタリングは比較的新しい資金調達方法なので、簿記の知識がある程度身に付いていても、仕訳の方法に悩んでしまう方は多いでしょう。

また、ファクタリングは2社間方式か3社間方式かによって必要な処理が異なるほか、即日ファクタリングや将来債権を含むファクタリングなど、特殊なケースの仕訳も理解しておく必要があります。

本記事を参考に、使用する勘定科目や仕訳のルールを理解し、ファクタリング取引の流れを正しく記録しましょう。

ファクタリングの仕訳に悩んだときは、税理士をはじめとする専門家に相談するのがおすすめです。

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。