家賃滞納のリスクと対策|オーナー必見の防止策と対応策

家賃滞納のリスクと対策|オーナー必見の防止策と対応策

不動産オーナーにとって、家賃滞納は深刻な問題です。

「家賃滞納をされないためにはどうすればよいのか」「万が一されてしまったときには、どう対処すればよいものか」事前に知って、備えておきたいという方も多いでしょう。

家賃滞納は滅多に起こらないトラブルとはいえません。

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が2021年6月に発表した「日管協短観」によると、2020年度の家賃滞納率は5%程度でした。

つまり、20件に1件の割合で起こる可能性があり、楽観視できない問題といえるでしょう。

家賃滞納は、不動産オーナーにとって深刻なトラブルです。

大きなダメージを受けないためにも、あらかじめきちんと対策しておきましょう。

本記事では、不動産オーナーが自分でできる家賃滞納の防止策を中心に紹介します。

安心して不動産経営をするための参考にしてください。

この記事を監修した弁護士
玉真聡志
玉真 聡志弁護士(たま法律事務所)
中央大学大学院法務研究科卒業。埼玉県内の法律事務所に入所後、千葉県内の法律事務所へ移籍。たま法律事務所を平成30年9月に松戸駅近くで開所。迅速・丁寧・的確な対応をモットーにしている。

家賃滞納はオーナーにとって深刻なトラブル!

家賃滞納が起こると、オーナーは大きな負担を強いられます。

具体的には、以下のような事態が起こる可能性が高いでしょう。

  • 強制退去をさせられず、家賃を滞納する状態が続き、その間家賃を回収できない
  • 家賃滞納から5年が経過し、消滅時効が完成した場合、滞納家賃を事実上回収できない
  • 滞納家賃を回収するための裁判手続には、多くの時間や労力、費用がかかる

賃貸借契約について定めている借地借家法は、借主側を強く保護しています。

入居者が一度家賃を滞納したからといって、すぐに退去させることはできません

そのため、滞納が続く可能性があるでしょう。

退去命令を出すには、オーナーと入居者との信頼関係が破綻したことを示さねばならず、その目安は、過去の裁判例からみても3ヵ月以上の家賃滞納が発生した事実がある場合を指します。

また、消滅時効によって、滞納家賃が発生しても、滞納した時点から5年経過すれば、実質的に回収はほぼできなくなります

そのため、何の対応もしない場合、滞納家賃を回収できなくなるという、大きな損失を被る可能性があります。

滞納された家賃を回収するには、かなりの時間や労力、費用を要します。

入居者本人に支払いを求めても応じてもらえない場合、訴訟や強制執行などの法的措置を取らざるをえません。

この場合には、解決までかなりの時間や労力がかかるうえ、弁護士に依頼すれば相当な額の弁護士費用の負担をおこなわざるを得なくなります。

しかし、滞納者に資力がない場合には、滞納家賃を回収できない可能性もあります。

オーナーは滞納家賃分以上の損失を被るため、経済的に深刻なダメージが発生します。

そのため、あらかじめ滞納家賃が発生しないよう、しっかり事前対策を立てておくことが望ましいのです。

家賃滞納の主な理由|うっかりミスや不測の事態

入居者が家賃を滞納する理由を知れば、より有効な対策を立てやすくなるでしょう。

ここでは、家賃滞納の主な理由について紹介します。

うっかりミス|口座の残高不足や支払い忘れなど

口座の残高不足や振込手続き忘れなどが原因で、入居者が意図せず家賃を滞納する場合はあります。

この場合には、家賃が支払われていないことを本人に伝えれば、家賃滞納を回避できるでしょう。

不測の事態|急な入院や会社によるリストラなど

病気やけがによる入院やリストラなど、借主が突然不測の事態に陥ったために家賃を支払えない場合もあります。

本人と連絡が取れる場合には、督促したり今後の契約継続について相談したりできますが、連絡がつかない場合、家賃滞納が続くことになります。

支払意思の欠如|家賃を払うつもりがないなど

家賃を滞納している方の中には、今後も家賃を支払うつもりがないという方もいます。

家賃を滞納しても強制退去させられないだろうと楽観視していたり、「払えないものは払えない」など開き直ったりする場合もあります。

この場合には裁判手続を見据えて対応する場合が多いです。

家賃滞納損失を発生させないための防止策5選

家賃滞納による損失を発生させないため、あらかじめ対策を施し、未然に防ぐことは重要です。

以下では、家賃滞納を予防する効果の高い対策を5つ紹介します。

1.口座振替やカード支払いを利用する

家賃の支払い方法を口座振替やカード払いにすることで、入居者がうっかり家賃の支払いを忘れることをある程度防げるでしょう。

特にカード支払いの場合には、口座の残高不足で支払えない場合を回避できます。

2.保証会社を使う、連帯保証人を求める

入居者に連帯保証人を求めたり、保証会社に加入してもらったりすることで、本人が支払えない場合に家賃を回収できます。

特に保証会社を利用すると、家賃滞納が起きた場合に保証会社へ連絡するだけで、滞納家賃分を保証会社に支払ってもらえるので、より安心です。

さらに、本人への督促や回収業務を保証会社がおこない、保証料は入居者が支払います。

オーナーにはメリットの大きい方法といえるでしょう。

3.入居者審査を適切におこなうようにする

家賃をきちんと回収するには、入居審査を適切におこなうことも大切です。

入居審査は賃貸管理会社がおこなうのが一般的ですが、入居審査の基準にオーナーの意向を配慮してもらうことも可能です。

入居希望者の支払能力や与信といった一般的指標のほかに、ご自身の経験から損失を被りそうな可能性が高いと考える条件があれば、賃貸管理会社へ伝えておきましょう。

不利益を被らないためにも、入居審査はしっかりおこないましょう。

4.家賃3ヵ月分程度の敷金を取る

入居者から最初に預かる敷金は、家賃3ヵ月分相当額を納めてもらいましょう。

家賃滞納が起こった場合、3か月分の家賃相当額の敷金を確保しておくことで、対策を講じる時間を確保できます。

法的措置に踏み切る場合は、裁判所から判決が下されるまでに時間がかかります。

また、家賃滞納が3ヵ月以上続いていない場合、賃貸借契約の一方的解除が認められない場合もあります。

そこで、家賃3か月分相当の敷金を預かっておくことで、損失を出来る限り抑えるようにしましょう。

最近では、敷金・礼金とも0円とする物件が増えていますが、礼金は0円として、敷金は家賃3ヵ月分程度を預かっておくのが無難でしょう。

5.信頼できる不動産管理会社に委託をする

不動産賃貸業務を営む場合、不動産業者へその管理を委託する場合が多いと思います。

不動産会社へ賃貸管理を委託することで、入居者の募集や賃貸借契約、家賃の支払い管理といった入居者管理業務のほか、日常的、定期的な清掃や点検など建物管理業務も任せられます

ただし、委託する不動産管理会社はきちんと選ぶ必要があります。

家賃滞納などのトラブルに巻き込まれないためにも、不動産会社を選ぶ際には、以下のポイントをチェックするとよいでしょう。

【不動産管理会社を選ぶときのポイント】

  • 入居者を確保できる力が高い
  • 担当者の対応が丁寧で信頼できる
  • 社内での情報共有ができており、担当者がいない場合でも代わりの従業員が対応できるなど、対応に安心できる
  • 管理費用が高すぎない

家賃滞納の被害を拡大させないための防止策3選

家賃の滞納が起きてしまったら、できるだけ被害を拡大させないことが大切です。

早い段階で適切に対処すべく、次に紹介する対策を実践しましょう。

1.入居者の支払い状況をこまめに確認する

被害を最小限に留めるためには、家賃滞納にいち早く気づくことが大切です。

入居者の支払い状況はできるだけこまめにチェックし、滞納が起こったらすぐに気がつけるようにしておきましょう。

2.家賃滞納を確認したらすぐに連絡を取る

支払期日から時間が経過したタイミングで督促すると、「急がなくてもよい」という印象を入居者に与えてしまうおそれがあります。

そのため、家賃滞納が起きたら、督促をできるだけ早くおこなうことが望ましいです。

3.家賃を支払う旨の念書や確約書を作成する

話し合いの末、入居者が滞納家賃の支払いに同意した場合、必ず念書や確約書など書面化しましょう。

法的手続きに移行した際、念書などの書面を証拠として活用でき、勝訴判決の獲得に繋げやすくなります

さいごに|法的手続きが必要な場合は弁護士に相談しよう

家賃滞納は、不動産オーナーに深刻な損害を与えます。

被害を発生させないこと、仮に被害が発生した場合にはそれを最小限に抑えるため、可能な対策を事前に施す事が大事です。

万が一、家賃を滞納されてなかなか支払いに応じてもらえない場合、家賃の回収や立ち退きを求めて裁判手続をおこなうことが必要です。

ご自身で裁判手続をおこなうことも可能ですが、多大な時間と労力を要するだけでなく、ご自身の主張を認めさせるためには、法的な専門知識は不可欠です。

滞納家賃を回収できる可能性を高めるためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

【参考】
家賃滞納は3ヶ月以内に強制退去?払えない場合の行動をチェック – 中山不動産株式会社MAGAZINE
家賃滞納を続けるとどうなる?リスクと対処法を詳しく紹介! – Homeee Magazine

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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