家賃滞納から強制退去までの流れと対処法|オーナー必見の督促方法と注意点
家賃の滞納は不動産オーナーにとって深刻な問題です。
早期に回収すべく、すぐに督促しようと考えている方もいるでしょう。
しかし、オーナーからすると、「具体的にどのように督促すればよいだろう?」「督促しても支払ってもらえなかったら、どうすればいい?」などと不安に思うことも多いかもしれません。
家賃の督促は、基本的に電話か手紙でおこないます。
それでも応じてもらえない場合には、保証会社や連帯保証人へ未払家賃を請求したり、借主へ法的手続きをおこなって家賃の督促をおこなったりします。
それでも家賃が支払われない場合、借主には強制的に退去してもらうことになります。
本記事では、滞納分の家賃を督促するための基礎知識を解説します。
督促状のサンプルや、注意点も紹介するので、実際に督促をする際の参考にしてください。
家賃滞納から強制退去までの大まかな流れ
家賃を滞納された場合には、以下の流れで対処するのが一般的です。
何度請求しても応じてもらえなければ、最終的には強制退去を目指します。
1.電話や手紙で支払いの督促をする
まずは、電話かメールで支払いの督促をしてみましょう。
もしかすると、単純に入居者が家賃の支払いを忘れていただけかもしれません。
1回目の督促では、相手に配慮した伝え方を心がけるとよいでしょう。
1回目の督促に応じてもらえないまま2週間以上経過した場合、2回目の督促をおこないます。
2回目の督促では、電話などの記録が残りにくい手段ではなく、記録化しやすい書面で通知するのがよいでしょう。
「期日までに入金が確認できなければ、連帯保証人に連絡する」など、さらに滞納が続く場合の対応についても言及しておきます。
2.内容証明郵便で家賃の支払いを請求する
本来の支払い期日から1ヵ月が経過しても支払われない場合、内容証明郵便を利用して督促状を送るとよいでしょう。
内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰を相手方として、どのような内容の郵便を送ったかということについて、郵便局でも同一内容の文書を保管することでその証明をしてくれるサービスです。
訴訟や強制執行などの法的措置を取る際には、内容証明郵便は、重要な証拠として用いられます。
また、内容証明郵便は、相手には厳格な印象を与えられるので、相手の危機感をあおり、支払いに応じさせることができる場合もあるでしょう。
3.内容証明郵便で契約解除通知を送付する
内容証明郵便で未払家賃の督促をしても相手が応じないまま3~6ヵ月程度経った場合、賃貸借契約の解除通知を送付しましょう。
契約解除通知を送付後、入居者の同意を得ると相手との賃貸借契約を解除できるので、最終的には強制退去をおこなうことができます。
4.裁判所に対し建物明渡請求訴訟を提起する
内容証明郵便で契約解除通知をしても、相手が何ら応じない場合には、法的措置を講じるしかありません。
裁判所に建物明渡請求訴訟を提起し、相手方には退去を求めましょう。
訴訟では、退去だけでなく、滞納している家賃や滞納家賃に発生した遅延損害金も併せて請求できます。
訴状のひな型は、裁判所のホームページよりダウンロードすることも可能です(但し、簡易裁判所で提訴する場合のみ)
【参考元】建物明渡請求|裁判所
5.裁判所に対し強制執行の申し立てをおこなう
建物明渡請求訴訟で勝訴すれば、判決を債務名義として、部屋から強制的に立ち退かせる強制執行をおこなうことができます。
判決が下されてからある程度時間が経過しても、借主に退去する様子が見られない場合には、強制執行を申し立てることができます。
また、滞納した家賃を支払うよう判決で下されている場合、判決を元に、借主名義の資産を差し押さえることもできます。
家賃滞納をしている入居者におこなえる2つの督促方法
家賃を滞納している入居者には、どのように督促すればよいのでしょうか。
ここでは、電話や手紙で督促する場合の具体的な方法を紹介します。
電話|双方向で現在の状況などを確認できる
電話は、比較的気軽に相手へ連絡できる手段です。
さらに、会話によって双方向でのコミュニケーションを取れるため、相手の状況も確認できます。
何度かけても相手が電話に出ない場合、留守番電話にメッセージを残したうえで、直接訪問してみましょう。
手紙|一方向だが督促した事実を証拠化できる
書面で相手に通知することで、督促した事実を証拠化できます。
この場合、内容証明郵便を使うとより良いです。
相手が支払いに応じず、オーナー様が法的措置に踏み切らざるをえなかった場合、この手紙類は役立ちます。
未払家賃の支払いを確認できない場合、支払期日から半月以上経過したころ、再度手紙を送って相手の様子をみます。
家賃の支払いを求める督促状のサンプル
督促状は、次のような文面で作成するとよいでしょう。
【1回目の督促状】
令和●年●月●日 アシロ 太郎 様 〒●●●‐●●●● 賃料についてのご連絡 平素は●●(物件名)の●●●号室をご利用いただき、ありがとうございます。●●(物件名)の●●●号室の賃料につきまいて、お支払い期日を過ぎておりますが、ご入金の確認ができておりません。 つきましては、下記振込先へ入金のうえ、上記記載の電話番号までご連絡いただけますようお願いいたします。 なお、本状と行き違いで、すでにご入金済みの場合はご容赦ください。ご不明な点がありましたらご連絡ください。よろしくお願いいたします。 記 1.物件名:●● ●●●号室 以上 |
【2回目の督促状】
令和●年●月●日 アシロ 太郎 様 〒●●●‐●●●● 賃料の支払いについて 令和●年●月●日付の文書でご連絡させていただきましたとおり、●●(物件名)の●●●号室の賃料が滞納となっており、現在もご入金の確認ができておりません。 未納とされている賃料につきまして、令和●年●月●日までに下記振込先へ入金いただけるようお願いいたします。 なお、令和●年●月●日までに入金が確認できない場合は、連帯保証人へ連絡させていただきますので、ご承知おきください。 記 1.物件名:●● ●●●号室 以上 |
督促で家賃滞納を解消できない場合の解決策
入居者本人へ督促しても、一向に家賃を支払ってもらえそうにない場合、以下の方法を試みるとよいでしょう。
保証会社や連帯保証人に連絡をする
入居者が家賃を支払わない場合には、保証会社や連帯保証人へ未払家賃を請求できます。
法的手続を使って債権回収をおこなう
連帯保証人に請求しても応じてもらえない場合、法的措置を講じるしかありません。
借主を相手方とする建物明渡請求訴訟を提起し、それでも家賃の支払いに応じない場合には、強制執行手続きを見据えて判決を獲得しましょう。
次に紹介する手続きは、裁判手続の仲でも簡便な方法なので、検討されることをおすすめします。
支払督促|相手から反論がない場合におすすめ
支払督促を利用すれば、訴訟ほど複雑な手続きを踏まなくても、相手に家賃の支払いを求められます。
支払督促とは、請求理由さえ認められれば、裁判所に支払い命令を発布してもらえる制度です。
発布から2週間以内に相手方から異議申し立てがなければ、支払督促に仮執行宣言が付与され、強制執行をすることが可能になります。
書類審査のみで終わるため、裁判所に出頭する必要はなく、比較的簡易に強制執行のための債務名義を手に入れることができます。
相手が反論してくる見込みがないと思われる場合、おすすめの手段といえるでしょう。
【参考元】支払督促 | 裁判所
少額訴訟|60万円以下の債権回収の場合におすすめ
滞納家賃の総額が60万円以下である場合は、少額訴訟を利用するのもよいでしょう。
少額訴訟とは、原則として1回の審理で判決を得られる手続きで、60万円以下の請求額の事件に限って利用できます。
ただし、少額訴訟は、同一の裁判所であれば1年間での利用回数は上限10回、とされています。
【参考元】少額訴訟 | 裁判所
滞納家賃の回収を弁護士に相談・依頼するメリット
滞納された家賃を回収したいなら、早い段階で弁護士に相談、または依頼するのがおすすめです。
弁護士を頼ると、以下のようなメリットが期待できます。
1.家賃回収に向けたアドバイスが受けられる
弁護士に相談すれば、滞納家賃を回収する手順についてアドバイスをもらえます。
問題解決までの目途がつき、それまで抱えていた不安も和らぐでしょう。
また、弁護士に依頼をすると、家賃を滞納している入居者との交渉や裁判手続を任せられます。
ストレスの多い相手との交渉から解放されるだけでなく、弁護士が法律に則って解決してくれるという大きな安心感も得られるはずです。
弁護士に相談・依頼することの大きなメリットといえるでしょう。
2.少ない負担で滞納家賃を回収することができる
滞納家賃の回収を自分でおこなう場合、専門知識や経験がないために、たいへんな労力を要するものです。
内容証明郵便を利用するにしても、手順を調べなくてはなりませんし、せっかく郵便局に持参しても、形式が間違っているため受け付けてもらえず、何度も足を運ぶ羽目になるかもしれません。
訴訟を起こすのも、わからないことが多いせいで必要以上に時間がかかる分だけ、滞納家賃の額が膨らむ可能性もあるでしょう。
専門知識はもちろん、経験も備えた弁護士に依頼すれば、法的に有効な方法をもってスムーズに対処してもらえます。
滞納している入居者も、弁護士が出てきたことでオーナーの真剣さを感じ、途端に素直に応じるケースも少なくありません。
オーナー自身は、ほとんど何もしなくても、スムーズに滞納分を回収できる可能性が高まるのです。
3.訴訟に移行した場合でも対応を任せることができる
訴訟や強制執行といった裁判手続きは、専門知識のない方にとっては、複雑に感じられるものです。
専門用語も多く出てきますし、裁判手続き特有のルールもあり、知らないと大きな負担に感じるでしょう。
また、裁判所にこちらの主張を認めてもらうには、法律や過去の裁判例に即して論理的に主張することが大切です。
弁護士に依頼すれば、もちろん訴訟対応も任せられます。
手続きを迅速に進めてもらえるうえ、的確な主張によって、早々に滞納家賃の回収がかなうでしょう。
家賃滞納に関する督促をおこなう際の注意点
家賃滞納は、オーナーにとって深刻な問題です。
滞納分は、何としても回収したいと思うでしょう。
しかし、以下のことに注意して督促する必要があります。
1.本人・連帯保証人以外には連絡しない
原則として、滞納者本人や連帯保証人以外への連絡・請求はできません。
勤務先や実家など、滞納者や連帯保証人以外の者へ、家賃滞納について連絡したり請求したりすることはできません。
2.常識の範囲を超えた連絡をおこなわない
毎日のように督促状を送ったりすることは控えたほうがよいでしょう。
この場合、嫌がらせ目的と判断されて、のちに裁判へ移行した場合に不利となる可能性もあるので、注意しましょう。
そのほかでオーナーが気を付けるべきこと
ほかにも、督促の際に禁止されている行為があります。
オーナーは以下の点も注意しながら、対応しましょう。
- 滞納者の賃貸物件の使用を妨げるようなことをしてはならない
- 弁護士など法的専門家以外の一般人へ、督促を依頼してはいけない
- 玄関に張り紙をするなど、家賃を滞納している事実を本人以外に知らせることをしてはいけない
さいごに|弁護士を探すなら「ベンナビ不動産」がおすすめ!
滞納家賃を督促、回収したいなら、早めに弁護士へ相談・依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談すれば、法的措置による解決策を提示してもらえるので、先の見えない不安が軽減されます。
さらに、全ての対応について依頼すれば、精神的な負担から解放され、早期解決も期待できるでしょう。
家賃・地代の回収を弁護士に相談するなら、ベンナビ不動産の利用がおすすめです。
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家賃を滞納され、困っているなら、ぜひ早めにベンナビ不動産で弁護士を探して相談してください。