立ち退き料の相場は?|ケース毎の相場や計算方法について解説

立ち退き料の相場は?|ケース毎の相場や計算方法について解説

不動産オーナーの方で物件のリフォームなどの理由から立ち退きを賃借人にお願いしたいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

こうした立ち退き交渉にあたっては、立ち退き料が必要となるケースがあります。

しかし、立ち退き料に関わる交渉には以下の様な難点があります。

  • 立ち退き料の相場がお互い分らないため交渉が進まない
  • そもそも立ち退き料が必要なのか分らない
  • 立ち退き料はどうやって計算すれば良いのか分らない

こうした点を把握しないままに立ち退き料に関する交渉をおこなっても、お互いに着地点が分らないため、交渉は進みません。

そこで、ここでは立ち退き料の相場や計算方法について分りやすく解説するとともに、立ち退き料に関する交渉を弁護士へ依頼するメリットも解説します。

立ち退き料についてお悩みの方は本記事をぜひご覧ください。

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当社在籍弁護士(株式会社アシロ)
この記事は、株式会社アシロの「法律相談ナビ編集部」が執筆、社内弁護士が監修しました。

立ち退き料の内訳と計算方法

立ち退き料とはそもそもどういった費用が含まれていて、どのような計算方法で算出するのか疑問に思われる方は多いのではないでしょうか。

そこで、立ち退き料の内訳と計算方法について解説します。

立ち退き料の内訳

立ち退き料には以下のような費用が含まれています。

なお、後ほど詳しく説明しますが、立ち退き料には、法的にこのように計算すべきという決まりはありません。

以下の内訳は一般的に立ち退き料に含まれている内容です。

  • 引っ越し費用
  • 転居先の仲介手数料
  • 転居先の敷金・礼金
  • 家賃の増加分
  • 電気・ガス・水道の開設費用
  • 営業補償(店舗の場合)
  • 慰謝料

立ち退き料の計算方法

立ち退き料の計算方法には前述のとおり決まった計算方法はありません。

そのため、裁判などでも事案ごとに妥当な立ち退き料が算出されています。

一般的には裁判所は以下のような数式に基づいて立ち退き料を計算しているといわれています。

立ち退き料=(転居先の家賃-現在の家賃)×1~3年分+引っ越し費用+新規契約金

上記は、必要最低限の補償を含む計算式になります。

この数式からもわかるように、立ち退き料の大半は家賃の差額分になります。

ただし差額はどのようなケースでも認められるものではありません。

あくまでもこれまでの住環境と同等の場所へ引っ越した場合の家賃が、上記計算式のベースとなる点は覚えておきましょう。

【参考記事】春田法律事務所

立ち退き料の相場は?

では、具体的に立ち退き料はどのくらいの金額になるのでしょうか。

ここからは立ち退き料の相場について解説します。

居住用物件の場合

前述の計算式からもわかるように、立ち退き料は物件の賃料に大きく影響されます。

賃料が5万円~10万円程度の家賃の物件の場合には、立ち退き料は100万円~200万円程度とされるケースが多く見られます。

一般的といわれています。

ただし、立ち退き料を提供すれば立ち退きが認められるというものではない点は注意しましょう。

ここで、東京地方裁判所令和元年12月12日の事例をご紹介します。

築57年で家賃2万3,000円の物件を建て替えの必要があることを理由にオーナーが立ち退きを求めた事例です。

裁判の中でオーナーは840万円の立ち退き料を支払う旨を申し出ましたが、賃借人が高齢であり、肺に疾患があることから住み慣れた家を退去した場合生命にかかわる事態につながると判断し、立ち退きを認めませんでした。

このように、相場どおりの立ち退き料を支払っても賃借人の体調や様々な事情を理由に立ち退きが認められない場合がある点には注意しましょう。

【参考記事】一般財団法人 不動産適正取引推進機構ホームページ

店舗用物件の場合

これに対して店舗用物件では、その場所で営業補償が必要となるため居住用物件よりも高額の立ち退き料が認められる傾向にあります。

例として、最高裁昭和46年11月25日が挙げられます。

この事件では、京都市内の繁華街にある店舗が老朽化したため立ち退きを要求されたものでした。

この事件では裁判所は500万円の立ち退き料の支払いと引き換えに立ち退きを認めました。

【参考記事】裁判所ホームページ

事務所用物件の場合

事務所用物件も概ね店舗用物件と同じような方法で立ち退き料が算出されているといわれています。

ただし、店舗用物件と異なり事務所用物件の場合には、改装工事などをおこなわなくてもそのまま業務が可能なケースが多いため、内装工事費などが立ち退き料に含まれにくい結果、店舗用物件よりも安くなる傾向にあります。

例として賃料約5万円の物件について立ち退き料を約312万円とした事例(東京地方裁判所平成24年11月1日)が挙げられます。

この事例は、物件は築50年を経ており、相当老朽化が進んでいいたため建て替えの必要性が高く、他方で賃借人が営んでいた事業は特にその物件でなければおこなえないものではないなど、比較的賃貸人に有利な事情が認められていますが、判決では約312万円もの立ち退き料が認められています。

【参考記事】一般財団法人 不動産適正取引推進機構ホームページ

立ち退き料とは

立ち退き料の相場や計算方法について解説してきましたが、そもそもなぜ立ち退き料が必要になるのかといった疑問を持たれる方や、常に必要なのかといった点について疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。

そこで、立ち退き料とは何なのか、また立ち退き料が必要なケースとその理由について解説します。

立ち退き料とは

そもそも立ち退き料の支払い義務は、法律で定められたものではありません。

それにもかかわらず、立ち退きに当たって、裁判所が立ち退き料の支払いを命じている理由は、居住用物件等の賃貸借契約には借地借家法が適用されているためです。

借地借家法では賃貸借契約の更新を拒否する際のルールについて以下のように定めています。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

引用元:e-gov「借地借家法」より

このような法律上の定めを前提にすると、立ち退きを求める際のルールは以下のように整理することができます。

  • 債務不履行以外のケースで立ち退きを求める際は、更新の拒絶を検討する
  • 更新を拒絶するためには「正当事由」が必要
  • 「正当事由」の有無を検討する際に、立ち退き料の有無が検討される

そのため、立ち退き料の有無は「正当事由」を検討する際の考慮要素となるだけなので、理由が無い場合には、立ち退き料を支払っても立ち退きは認められません。

立ち退き料はあくまでも、建物の老朽化等の立ち退きを求める理由がある場合に、正当事由を補強するものであるという点は押さえておきましょう。

立ち退き料が必要となる場面

賃貸人から賃借人に対し立ち退きを求める場面は大きく分けると以下の2つの場面となります。

  • 賃貸人の都合で立ち退きを求める場合
  • 再開発などを理由に立ち退きを求める場合

以下で詳しく解説していきます。

ケース①賃貸人の都合で立ち退きを求める場合

建物の老朽化や耐震性の問題等を理由に建て替えやリフォームなどをおこなうために賃借人に立ち退きを求めるケースがこれに該当します。

こうした賃貸人の都合で立ち退きを求める場合には原則として立ち退き料が必要となります。

ケース②再開発などを理由に立ち退きを求める場合

この場合は厳密には賃貸人の都合ではありませんが、原則として立ち退き料が必要となります。

なぜならこの場合にも賃借人にとっては何ら落ち度がないにも関わらず住居を明け渡す結果になるため、賃貸人の都合で立ち退きを求める場合と変わりがないからです。

立ち退き料が不要な場面

家賃滞納や無断での建物の改造工事など、賃借人の債務不履行を理由に立ち退きを求めるケースがこれに該当します。

軽微な債務不履行である場合を除き、こうしたケースでは立ち退き料の提供は必要ありません。

立ち退き料の交渉を弁護士に依頼するメリット

立ち退き料の交渉に当たっては、これまでの裁判例を踏まえ、立ち退き料の相場を理解しておく必要があります。

これらを踏まえずに交渉した場合、賃借人から不相当に高額な立ち退き料を請求され、それに応じざるを得ないといったケースに陥ることも想定されるためです。

こうしたリスクを避けるために有効なのが、交渉を弁護士へ依頼することです。

そこで、ここからは弁護士に依頼するメリットについて解説します。

適切な立ち退き料の金額が設定できる

立ち退き料の交渉では、当事者双方が立ち退き料の相場を知らないために交渉が難航するケースが少なくありません。

弁護士であれば立ち退き料の相場を知っているため、適切な立ち退き料の金額を設定し交渉に臨むことができます。

弁護士が提示した金額であれば、適切な金額だろうと賃借人からの信頼を得やすい点も大きなメリットです。

また、立ち退き料を適切な金額に抑えることで、弁護士報酬を支払ってもなお、本人が交渉するよりも安価に済ませることも可能になります。

本業や家事などに集中できる

立ち退き料の交渉を賃貸人自身でおこなう場合、当然ですが交渉に関する連絡や事務手続きをすべて自身でおこなう必要があります。

弁護士へ交渉を依頼すればこうした手間からは解放されるため、その時間を本業や家事などに集中し、余った時間を自由に使えるようになります。

立ち退き料が必要なのか判断してもらえる

立ち退き料は賃借人の債務不履行の場合には不要となるケースがあります。

しかし、どのような債務不履行でも良いわけではありません。

軽微な債務不履行を理由とする場合には立ち退き料が必要となる可能性もあります。

こうした、立ち退き料の要否を適切に判断することができるという点は弁護士へ交渉を依頼するメリットの一つといえます。

長期化した場合の機会損失を最小限に抑えられる

立ち退き料の交渉は、賃借人にとっては住居などを失う可能性があるため、難航しやすい特徴があります。

交渉が長期化すると、得られるはずだった家賃収入が得られなくなるなど様々な機会損失が生じる可能性があります。

弁護士へ依頼することでこうした長期化を避けることで、損失を最低限に抑えることが可能です。

まとめ|立ち退き料の交渉は弁護士へ依頼を

スムーズな立ち退き料の交渉には過去の裁判例や相場に関する知識が不可欠です。

弁護士へ依頼することで立ち退き料を最低限に抑え、弁護士への報酬を支払っても本人が交渉した場合よりも安価で済みます。

また、他にも本業に集中できる、交渉の長期化を避けて損失を抑えられるなど様々なメリットがあります。

無料相談をおこなっている弁護士も多いので、立ち退き料の交渉はまず弁護士へ相談しましょう。

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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