【不動産売買で弁護士は必要か?】トラブル例を交えて依頼時の費用や弁護士の選び方を解説
「不動産売買を行う際に弁護士は必要か」と悩んだことはありませんか。
現在では、不動産売買に弁護士は必要ないという意見も多くありますが、弁護士が果たす役割は広く、さまざまなトラブルに対応できるという利点があります。
しかし、弁護士を依頼したほうがいいケースや弁護士費用、そしてどんな弁護士に依頼すればよいのかは難しい問題でもあります。
本記事では、不動産売買において弁護士に依頼する必要性や、弁護士が果たす役割、依頼時の費用相場などを解説します。
「売却を検討しているが法務的手続きの仕方がわからない」、「売買を行っている最中にトラブルに巻き込まれて困っている」など、不動産売買に関するお悩みを持つ方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
不動産売買における弁護士の必要性
不動産売買において、必ずしも弁護士に依頼する必要はありません。
司法の資格を持っており、不動産売買に詳しい方は、自分で手続きをおこなうこともあります。
しかし、不動産取引は非常に複雑であり、多くの法律的な問題が発生する可能性があります。
契約書をはじめ全ての書類は一言一句が正確であることが求められます。
過去にはわずかな誤字が大きなトラブルにつながったこともありました。
不動産売買の知識や手続きに不安を感じる方は、のちのトラブルを防ぐためにも弁護士への依頼をおすすめします。
不動産売却するとき弁護士の立ち会いは原則不要
過去には、悪質な不動産会社が多く、違法な取引を防ぐために弁護士が立ち会っていました。
また、支払いの方法が現金から口座振り込みが主流になったことも、弁護士の立ち合いが不要になった一因です。
口座振込の場合は、即時にデータで金額と受領が確認できるため、弁護士のチェックが不要になりました。
現在では、悪質な不動産会社の減少、口座振込による正確な金銭の移動ができるようになったため、不動産売却時の弁護士の立ち合いは原則不要となりました。
しかし、現在でも以下のように、後のトラブルを防ぐために弁護士が立ち会うことはあります。
- 契約締結までになにかしらの問題があった場合
- 契約の金額がとても大きい場合
- 契約書の内容を確認する場合
- 所有権変更に立ち会う場合
- 現金で代金を受け渡す場合
弁護士の視点で、立ち合いが必要な場合には依頼主にアドバイスがあるので、それに従うのがよいでしょう。
不動産の権利関係が複雑な場合は弁護士に相談
一般的な不動産の売買においても慎重におこなう必要がありますが、「権利関係が複雑な不動産」の場合にはより細心の注意が必要です。
不動産には「所有権」に加えて、「区分所有権」「賃借権」「抵当権」といった権利が存在し、一つの不動産に複数の権利が関連していることがあるためです。
売買する不動産の権利についても、正しく対処しなければ予期せぬ負債を抱えることになるかもしれません。
ここでは、不動産に生じる権利について簡単に説明します。
所有権
所有権とは、法令の制限の範囲内で、物を所有する権利であり、その所有物を自由に使用、収益化、処分できる権利(民法206条)です。
不動産の場合、1つの土地や建物につき、原則として所有権は1つだけになります。
区分所有権
区分所有権とは、マンションや共同所有物において、それぞれの部分に対して所有権を持つ権利のことです。
たとえば、マンションの一室を購入する際には、その部屋に対する区分所有権を取得します。
区分所有権者は、共有部分については他の所有者と共同で所有権を持ちます。
また、区分所有権者は、自分が所有する部分について、自由に使用や処分をすることができます。
区分所有権が発生する場合は、登記が必要です。
賃借権
賃借権は賃貸借契約によって得られる借主の権利です。
賃借権者は、不動産を借りた際に支払った賃料に対する権利を持ちます。
賃借権は家主との契約という人に対する権利なので、債権ではありますが、賃貸人に比べて弱い立場である賃借人を保護するために例外として物権化した権利です。
土地を貸している賃借人の立場からすると「土地を返してほしい時に簡単には返してもらえない」ということを意味します。
つまり、新たに土地を購入しても賃貸人が地代の値上げに反対し、立ち退きを拒否された場合には、思うように土地を活用できなくなります。
そういった土地は売却しにくいこともあるので、早めに弁護士に相談して双方が合意できる取り決めを交わしておくことをおすすめします。
抵当権
抵当権とは、金融機関が不動産を担保に貸し付けをする場合に設定される権利のことです。
不動産を担保にしているため、抵当権が設定されている場合は、その不動産を売却することができません。
売却する場合には、抵当権を解除する必要があります。
また、1つの不動産に複数の抵当権が絡んでいることも少なくありません。
不動産売買の際には全ての抵当権の抹消が必要です。
また、住宅ローンの完済したのちも抵当権抹消登記は必要になります。
多額の損失が発生しうる場合には弁護士に相談
一戸建てやマンション、土地などの不動産を売却したときに必ずしも利益が出るとは限りません。
よほどのことがない限り、新築同然の住宅でも購入価格より売却価格が下回ることが多いものです。
また、売却の際には不動産会社への仲介手数料や印紙税などの費用も発生します。
できるだけ、損失を少なくするために弁護士のアドバイスが役立ちます。
譲渡所得がマイナスになる場合は「譲渡損失」と見なされ、不動産を売却した年のその他の所得と相殺して所得税や住民税を減らすことができます。
売却した年の所得よりも譲渡所得が大きくなり、相殺できない場合は翌年以降の所得からも繰り越して差し引ける「繰越控除」を利用できる場合があります。
こうした手続きには、法律の知識が必要になるため、不動産売買で多額の損失が発生しうる可能性があるとわかったら、すぐに弁護士に相談してください。
売買取引でトラブルの予防に弁護士への相談を検討
一般的な不動産売買取引では、信頼できる不動産を見つけ売買をする当人同士が良識をもって契約を締結できればトラブルのない取引は可能です。
しかし、不動産の売買は一生に一度あるかないかの大きな契約です。
弁護士への依頼が必要かどうかも含めて、契約前に相談だけでもしておくと安心です。
相談の時点で、弁護士が契約上の問題に気づいたために不利な売買取引を防げた事例も多数あります。
取引について少しでも不安や疑問を感じた際には、弁護士への相談を検討しましょう。
不動産売買で弁護士が必要な実際の事例
不動産売買で弁護士が必要な実際の事例としては以下のような事例が挙げられます。
- 契約書に不備がある場合
- 不動産を購入後に抵当権が実行されてしまった場合
- 購入した土地に地中埋設物があった場合
- 隣地所有者と境界について対立してしまった場合
ここではこれらのトラブルがあった際の弁護士の対応について解説します。
不動産売買契約書に不備があった場合
不動産売買契約には、高額取引が含まれるため、取り決めや手続き、段取りなどが複雑になりがちです。
売主と買主の両者がトラブルなく売買契約をおこなうために、不動産売買契約書には、取引する不動産の詳細や条件が明文化されます。
不動産仲介会社が仲介をおこなう場合、宅地建物取引業法によって、宅地建物取引士が記名押印した不動産売買契約書が売買契約成立時に交付されることが義務付けられています。
不動産売買契約書は注意深く作成されていますが、完全にミスがないわけではありません。
とくに、以下の項目には注意が必要です。
①対象面積と売買価格の算出方法について
登記簿の面積と実際の面積が異なる場合、売買価格はどちらの面積を基準に決めたのかを確認しましょう。
②手付金と手付金解除について
手付金の解除には期限があります。
期限は、「売主・買主のどちらが契約の履行に着手するまで」と決められることが多いです。
もし、双方どちらかが契約を解除する必要がある場合、契約の履行に着手しているかによって違約金が発生するかが変わるので、事前に確認しておきましょう。
③所有権の移転手続きについて
売買契約を締結したのち、不動産の所有権移転登記をおこないます。
その際の費用を売主と買主のどちらが支払うか明確に示されているかを確認しましょう。
これらの問題は、通常、不動産仲介会社が対応してくれますが、その不動産会社に不信感を抱いた場合や、不動産仲介会社では対処しきれない問題が発生した場合には、迷わず弁護士に助けを求めましょう。
弁護士が法に則った解決策を提案してくれます。
不動産を購入後に抵当権が実行されてしまった場合
不動産を購入する際には、抵当権の有無を確認することが重要です。
抵当権とは、不動産を担保として金融機関から融資を受ける際に設定される権利です。
抵当権を設定することで、貸し付けた金融機関が不動産を競売にかけ売却代金から優先的にお金を回収できるようになります。
住宅ローンで購入した不動産には抵当権が設定されるのが一般的です。
通常は、不動産の売買契約と同時に抵当権の抹消もおこなわれます。
しかし、不動産の購入後に身に覚えのない抵当権が行使される可能性はゼロではありません。
もし、不動産購入後に身に覚えのない抵当権が行使された場合には、真正な文書の推定(民事訴訟法228条4項)と反証のもと、執行意義の申し立てと執行停止の仮処分が必要になります。
この際、抵当権設定契約の有効性について金融機関と争うことになるので、弁護士の力を借りて解決しましょう。
購入した土地に地中埋設物があった場合
地中埋設物とは、土地や建物の下に埋まっている水道管、電気ケーブル、ガス管、下水道管などの施設や設備のことです。
以前、建っていた建物の基礎部分やコンクリート片などの建築資材、井戸なども地中埋設物になります。
購入後に、地中埋設の存在が発覚し、その処理費用と損害賠償をめぐり売主と買主が対立する事例があります。
民法では、売買の目的物が、種類・品質・数量のいずれかの点で売買契約の内容と適合しない場合には、売主が「契約不適合責任」を負うことになっています(民法562条以下)。
買主が契約不適合を理由に売主に対して、追完請求や代金減額請求、損害賠償請求、契約解除を求めることができます。
訴訟や裁判になることもあるので、購入した土地に地中埋設物があった場合も弁護士に依頼して解決しましょう。
隣地所有者と境界について対立してしまった場合
買主と隣地所有者が、土地の境界をめぐって対立する事例も多数あります。
不動産会社が仲介する場合には、トラブルを避けるために土地家屋調査士が、土地の実測や隣地との境界を確認したうえで売買契約を締結します。
それでも、土地の引き渡し後に隣の家の塀や壁が境界を越えていることが発覚するケースや、公図と現地の整合がとれていないために、両者が譲らずトラブルに発展することもあります。
こういった問題は、境界確定訴訟や所有権確認訴訟、筆界特定制度などの法的手続きで解決を目指しましょう。
当人同士では感情的になり、その後の関係が修復できなくなる恐れもあるので、第三者である弁護士に依頼するのが良策です。
不動産売買で弁護士の主な役割と相談するメリット
不動産売買に関するトラブルは、不動産売買に見識のある弁護士に依頼することで未然に防げるケースがほとんどです。
売買取引をつつがなく終え、その土地で平穏に暮すため費用と考えれば、弁護士費用はそれほど高いものではありません。
ここからは、不動産売買で弁護士が担う業務について解説します。
土地・建物の現地調査や用途制限の確認
不動産売買において、弁護士の主な役割の一つは、土地や建物の現地調査や用途制限の確認です。
売買対象となる土地や建物の実態を調べ、その物件が法的に問題はないかどうかを弁護士が判断します。
具体的には、登記簿と照らし合わせて、不動産の権利関係や用途制限が適切に登録されているかどうかを確認します。
弁護士は土地家屋調査士や建築士などの専門家と協力して現地調査をおこないます。
登記簿上における権利関係の確認や整理
不動産売買において弁護士は、不動産の権利関係を確認・整理します。
この作業には、以下のような手順があります。
- 不動産の登記事項証明書の取得
- 不動産の登記簿の閲覧
- 登記簿上の権利関係の把握
- 権利関係の整理
登記事項証明書は、登記簿の内容が記載された証明書であり、弁護士はこれを取得して登記簿の内容を確認します。
登記簿は公的な書類であり、弁護士は登記簿を閲覧して権利関係を把握します。
そして、権利関係を整理し、売買契約に影響を与える権利関係を特定します。
この作業は、不動産売買におけるトラブルを回避するために欠かせないものです。
抵当権など権利関係の整理や助言
弁護士は、不動産売買において抵当権などの権利関係の整理や助言をおこないます。
1つの不動産にいくつもの権利がある場合や、権利者が複数いる場合には売買契約を慎重に進めなければなりません。
とくに抵当権の抹消をせずに、所有権を移転してしまうことで買主にとって重大な損害を及ぼす場合があります。
弁護士は不動産売買時の権利の確認だけでなく、不動産の管理がしやすいように権利関係の整理についての助言もおこないます。
契約締結時の書面へのリーガルチェック
リーガルチェックとは、法律の専門家が法律的な問題がないかを確認することです。
不動産売買においては、契約書の作成や書面のリーガルチェックをおこなうことで、不動産取引におけるリスクを最小限に抑えることができます。
税理士・土地家屋調査士等専門家との連携
不動産売買に強い弁護士には、税理士・土地家屋調査士・不動産鑑定士などの専門家同士のネットワークがあります。
不動産売買の前後には、専門家による確認やサポートが必要になる場合も多々あります。
信頼できるネットワークを持つ弁護士に依頼をするだけで、必要に応じてそれらの専門家と連携して手続きを進めてもらうことができます。
不動産売買取引を弁護士に依頼する際の費用相場
ここまで、弁護士が不動産売買取引に関するトラブルに対応できることを紹介してきました。
しかし、大きな契約には法律の専門家のサポートが必要だと感じても、弁護士に依頼する際の費用が気がかりで一歩を踏み出せない方もいらっしゃるでしょう。
不動産取引を弁護士に依頼した場合に発生する主な費用は以下の4つです。
不動産売買取引を弁護士に依頼する際の費用の相場をご紹介します。
相談料の相場は1時間あたり5,000~1万円ほど
弁護士に依頼する前に、まずは相談を行います。
相談料は弁護士や弁護士事務所によって異なりますが、一般的には1時間あたり5,000円から1万円程度です。
また、「初回相談無料」の事務所もあります。
これからおこなう不動産売買取引に問題がないかだけでも弁護士に相談することで、不動産売買に対する不安の解消につながります。
着手金の相場は10万~30万円ほど
正式に依頼する場合は、相談後にまず着手金を支払います。
弁護士によっては、金額の交渉も可能です。
不動産売買の場合の着手金相場は10万~30万円ほどです。
基本的には、取り扱う金額が多いほど着手金も高くなります。
ただし、着手金は弁護士が着手金はトラブルを解決できなかった場合、途中で解任された場合、または裁判で負けた場合でも返却されません。
成功報酬の相場は売却額の4~16%ほど
着手金とは異なり、依頼内容が無事に解決した際にのみ発生するのが報酬金です。
その金額は、依頼人が得た利益に応じて決められます。
売却を依頼した場合は、売却額が高ければ高いほど弁護士への報酬金も上がります。
反対に、トラブルが解決できなかった場合や裁判に負けた場合には、原則的に報酬金は支払う必要はありません。
しかし、敗訴しても主張が一部認められた場合は、それに応じて報酬金も発生します。
不動産売買の場合は、売却金額が事前にわかっているので依頼の際に報酬額の目安を把握できます。
実費として日当や交通費などもかかる場合も多い
相談料、着手金、報酬は弁護士の業務に対して支払う費用です。
それ以外に、業務に関わる実費も依頼者が負担することになります。
具体的には以下のような費用があります。
- 交通費
- 切手代
- 通信費
- 輸入印紙代
- 謄写料
不動産売買に強い弁護士選びの着眼点
弁護士にも、それぞれ得意分野があります。
不動産売買をおこなう場合には、不動産売買に強い弁護士を選ぶことが重要です。
不動産売買に強い弁護士は、契約書の作成やトラブル解決において、専門的な知識を持っているため、不動産売買トラブルの解決に貢献することができます。
また、不動産売買の仲介業者や土地家屋調査士とも密な関係を保っているため、専門的なアドバイスが期待できます。
弁護士に相談する段階で、経歴や不動産売買に関する実績などを調べておきましょう。
不動産案件を専門的に取扱業務としている
不動産売買取引に関する依頼は、不動産案件を専門的に取扱業務としている弁護士を選びましょう。
ホームページなどで検索する他にも、法テラスからの紹介や不動産仲介会社と懇意にしている弁護士を紹介してもらうのもよいでしょう。
自身の取り扱う物件の種類や地域への知見がある
不動産案件を得意とする弁護士の中でも、取り扱う物件の種類や地域に精通している弁護士を選ぶのが理想的です。
自分が相談したい案件と近い分野を得意とする弁護士を選びましょう。
また、弁護士が活躍する地域も考慮に入れましょう。
地域に精通しているのは大きな強みです。
たとえば、あなたが東京在住で大阪の不動産売買取引の件で依頼したい場合、東京の弁護士ではなく、大阪を拠点としている弁護士を選ぶことをおすすめします。
地域の事情にもくわしく、その地で専門家のネットワークを築いているのでさまざまな課題をスムーズに解決できます。
相談時に不動産売買のプロセスを明確に示してくれる
不動産売買には非常に多くの手続きが必要であり、それに伴う書類作成も欠かせません。
しかし、経験豊富な不動産弁護士であれば、プロセスにそって明確に示してくれます。
たとえば、弁護士費用がどの程度かかるかを教えてくれ、売却成立までの流れについても詳しく説明してくれます。
不動産売買の際には不要なトラブル回避のために弁護士に相談
不動産売買には多くの手続きが必要であり、小さなミスや見落としが大きなトラブルにつながるリスクがあります。
現在では、不動産売買取引には弁護士の立ち合いは必要ないとされていますが、不要なトラブルを回避するには不動産売買に詳しい弁護士がいると安心です。
不動産売買をお考えの方は、ぜひ、お近くの弁護士にご相談ください。
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