【弁護士監修】不動産オーナー向けの弁護士の選び方|不動産トラブルの早期解決
不動産は高額な資産であるがゆえに、売買や賃貸の不動産取引・不動産契約にはトラブルが発生しやすく、今まさにお困りの不動産オーナー様もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、いざ不動産トラブルの解決を試みようと思っても、「法的措置を取りたいが、どの弁護士に頼めばいいのかわからない」「費用相場がわからず弁護士との契約に踏み切れない」と悩まれる方もいるでしょう。
そこで本記事では、不動産オーナー様に向けて、弁護士の選び方や、よくある不動産トラブルとその対処法、弁護士費用の相場などについて詳しく解説します。
不動産トラブルの早期解決にお役立てください。
不動産トラブルに強い弁護士を選ぶ際の観点
まずは、「不動産トラブルを解決したいが、強力な味方となる弁護士の選び方がわからない」という方に向けて、弁護士選びの際におさえるべき観点を4つご紹介します。
不動産問題の解決実績が豊富であること
1つ目は、不動産問題の解決実績が豊富なことです。
都市部の弁護士事務所では、離婚問題や相続問題、借金問題、知的財産といった特定の分野に特化しているケースもあります。
また、幅広い分野を扱っている弁護士でも、相談内容に近い事案を多く扱った実績を持っている方が、解決方法の提案やその後の対応でも的確かつスムーズに対処してもらえるでしょう。
不動産売買のトラブルなら法律の知識だけでなく税金の知識も求められますし、相手方が不動産会社なのか入居者等の個人なのかによっても適した弁護士は変わってきます。
依頼先を決める際は、その弁護士の得意分野や実績を調べた上で判断するようにしましょう。
地元の地理情報に精通していること
2つ目は、地元の地理に精通していることです。
不動産トラブルの内容によっては、現地の状況を的確に把握していることが求められることもあります。
特に不動産売買における土地の境界に関するトラブルや、日照や騒音などの環境的瑕疵に関するトラブルでは、地元の地理情報に詳しい地元の弁護士に相談できると解決がスムーズになるでしょう。
不動産鑑定士・土地家屋調査士など専門家の連携ができること
3つ目は他の専門家と連携ができるかです。
不動産トラブルの中には、弁護士だけで解決できる問題もありますが、不動産の登記や価値評価が関わってくる場合には、各専門家の協力を必要とするケースもあります。
不動産トラブルで関わることも多い専門家には以下が挙げられます。
- 不動産鑑定士:不動産の経済的価値を鑑定評価する専門家。不動産の利用価値や資産価値を金額換算して示すのは、不動産鑑定士の独占業務。
- 土地家屋調査士:不動産の表示に関する登記の専門家。不動産の表示に関する登記の代理や、土地の境界に関する紛争を解決する業務は、土地家屋調査士の独占業務。
また、トラブルの内容によっては税理士や司法書士が関わることもあります。
こうした各専門家と連携できる体制を構築している弁護士に相談することで、解決がスムーズになることも多いといえます。
複数の弁護士に相談を持ちかけ相性を見極めること
4つ目は相性を見極めることです。
弁護士も、考え方や個性は人それぞれ異なります。
例えば、話し合いを重視して当事者の納得を重視する考えを持つ弁護士もいれば、訴訟などの法的手続きを活用して法的な権利の実現を重視する考えを持つ弁護士もいます。
不動産オーナー様の側にも、途中経過を細かに報告してもらいたい方もいれば、求めるゴールにスピーディに到達してくれればよいという方もいるでしょう。
そのため、複数の弁護士に顔を合わせて相談を持ちかけたうえで、自分の考え方と合うかといった相性を見極めて判断することも重要になります。
不動産トラブルの解決を弁護士に依頼するメリット
不動産トラブルが起きた際に、その解決を法律の専門家である弁護士に依頼するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは主なメリットを3つご紹介します。
法律的根拠をもとに個々の問題に沿う解決方法の提案をもらえる
トラブルが起きた際に不動産オーナーがまず知りたいのは、どのような解決方法があるのかではないでしょうか。
どのようなトラブルにも解決方法には選択肢があります。
弁護士に相談することで、個々の状況に応じた解決方法を提案してもらうことができるため、不動産オーナー様の意に沿った形でのトラブル解決につなげることができるしょう。
法的対処で相手の心理的な誠意を引き出せる
不動産トラブルの多くは相手方が存在します。
内容によって、入居者のような個人が相手の場合もあれば、不動産業者などの法人が相手の場合もあるでしょう。
特に不動産業者のような専門家を相手にする場合には、オーナー様個人で交渉を試みても、下に見られて軽く受け流されるようなケースも多いのではないでしょうか。
そういった時にも弁護士の力を借りることが有効です。
例えば、内容証明などを弁護士名義で送付することで、相手にトラブルの重要性やこちらの本気度を伝えることができます。
それによって、相手の誠意も引き出しやすくなるでしょう。
当事者同士に比べ、弁護士の介入により早期解決が見込める
トラブルの当事者同士の話し合いでは、お互いの主張をぶつけ合うだけになったり感情的になったりと、話が前に進まないことも少なくありません。
事態を進展させ、早期に解決する上でも弁護士に介入してもらうことは有効です。
法律の知識を持って、オーナー様の意思や主張を相手に伝えることができますし、状況に応じてベストな手段をアドバイスしてもらうことができます。
不動産オーナーが悩む主なトラブル事例
ここで、不動産賃貸・不動産売買でよくあるトラブルとその対処法についてご紹介します。
(賃貸)家賃滞納に関するトラブル
入居者の家賃滞納に関するトラブルは、賃貸経営において重大な問題です。
「家賃滞納者にすぐに退去してもらいたい」と思われるでしょうが、家賃滞納による契約解除や立ち退きは簡単ではありません。
家賃滞納者には段階を踏んだ対応が必要になります。
まずは電話や口頭、書面で督促をおこない、それでも支払いに応じない場合は、内容証明郵便で契約解除の予告通知を送付しましょう。
3ヶ月以上にわたって滞納されている場合には、法的対応も可能です。
最終手段としては、明け渡し訴訟や強制執行をおこなうことになります。
(賃貸)契約違反に関するトラブル
契約違反に関するトラブルとしては、同棲、又貸し、ペットを飼うといった内容が考えられます。
この場合も段階を踏んだ対応が必要です。
まずは、契約違反をした入居者に注意をおこない、自主的な改善を求めます。
改善されない場合には、注意の程度を段階的に厳しくしていきましょう。
最も厳しい対処方法は契約解除ですが、入居者が同意しない場合には、家賃滞納と同様に明け渡し訴訟をおこなうことになります。
(賃貸)騒音や喫煙など迷惑行為に関するトラブル
入居者の迷惑行為に関するトラブルとしては、騒音、悪臭、嫌がらせ行為、ゴミの出し方などがあります。
迷惑行為をおこなう入居者がいた際、貸主が適切な対応を取らないことで他の入居者から損害賠償請求を受けるケースもあるため注意が必要です。
まずは正確な事実関係を把握し、直ちに迷惑行為を是正するよう請求しましょう。
それでも改善されない場合には、弁護士に介入してもらい内容証明を送付してもらったり、賃貸借契約違反による契約解除を求めたりといった対応を進めましょう。
(売買)仲介手数料のトラブル
不動産売買の契約締結時に仲介会社に成功報酬として支払う仲介手数料のトラブルは、不動産売買時に多いトラブルのひとつです。
成功報酬ですので報酬額は売買価格によって変動しますが、その計算方法や支払い時期は、仲介会社と媒介契約を締結する際に決定します。
しかし、仲介手数料について十分な説明がなかったり、コンサルタント料などの別項目で高額な費用を請求されたりしてトラブルに発展するケースが見られます。
仲介手数料は宅地建物取引業法によって上限額が定められていますので、払い過ぎている場合には取り戻すことができます。
(売買)土地の境界に関するトラブル
土地や戸建ての売買における、土地の境界のトラブルは不動産の代表的なトラブルの一つです。
通常、土地の境界は境界杭によって定められ、それに基づいて作成された測量図が法務省に備え付けられます。
しかし、測量図が古い場合や、災害等で杭がなくなってしまっている場合があります。
売主には境界明示義務があり、売却前に境界を確定しておくことが必要です。
そこで売主は引き渡し前に確定測量をおこない、土地家屋調査士の立ち会いのもとで境界を明示しますが、隣地の所有者に納得してもらえないこともあります。
境界トラブルの解決方法としては、法務局の筆界特定制度を活用する方法や、簡易裁判所による調停を利用する方法、境界確定訴訟を起こす方法などがあります。
(売買)地下埋設物のトラブル
地下埋設物とは地中に残った廃棄物のことです。
以前の建物を解体した際に、地下階をそのまま埋め戻して残ったコンクリートの躯体や、大きな岩石などのケースがあります。
地下埋設物が残っているかは見た目にはわかりません。
知りうるのは売主だけであり、売却後に地下埋設物が見つかればトラブルの元となります。
地下埋設物を撤去しなければ新たな建築ができないような状況であれば、契約不適合責任を問われ、損害賠償や契約解除、履行の追完、代金の減額を請求されることもあります。
(売買)物理的・環境的瑕疵のトラブル
建物の傾きや雨漏り、土壌汚染、シロアリの発生といった物理的瑕疵や日照、騒音などの環境的瑕疵、設備の故障も売買時のトラブルの元となります。
いずれの場合も、地下埋設物の場合と同様に契約不適合責任を問われ、損害賠償や契約解除などを請求されることがあります。
不動産トラブルを弁護士に依頼した場合の費用相場
不動産トラブルの解決を弁護士に依頼する際に、不動産オーナー様が最も不安に感じるのが費用でしょう。
弁護士費用は、着手金、成功報酬、相談料、その他実費の4つに分けることができます。
ここでは、不動産トラブルに関する弁護士費用の相場を、4つの費用項目別に紹介します。
案件の難易度に前後するが着手金は10万〜30万円程度が目安
着手金は弁護士と委任契約を結んだ時点で発生する費用です。
仮にオーナー様が望む解決に至らなかった場合でも返還はされません。
着手金は、案件の難易度やトラブルが解決した際の経済的利益の額によっても変動しますが、不動産トラブルの場合はおおむね10万円〜30万円程度が目安といえます。
ちなみに、かつては日本弁護士連合会が規定する基準によって、案件の種類ごとに弁護士費用は一律化されていました。
その基準では、民事事件は最低着手金を10万円とし、事件の経済的利益の額が300万円以下の場合はその額の8%、3,000万円以下の場合は5%+9万円、3億円以下の場合は3%+69万円、3億円を超える場合は2%+369万円とされていました。
現在では、弁護士費用は自由化されていますが、当時の基準に基づいて設定している事務所も多いため、相場の参考にすると良いでしょう。
弁護士によるが成功報酬は経済的利益の10〜20%が目安
成功報酬は、トラブルが解決した際に、その成功の程度に応じて支払う費用です。
解決に至らなかった場合には成功報酬は発生しません。
成功報酬の額も、着手金と同様に案件の難易度や解決によって得られる経済的利益の額によって変動しますが、おおむね経済的利益の10%〜20%程度が目安となります。
ちなみに以前の弁護士報酬基準では、経済的利益が300万円以下の場合は16%、3,000万円以下の場合は10%+18万円、3億円以下の場合は6%+138万円、3億円を超える場合は4%+738万円とされていました。
1時間あたり5,000〜1万円程度の相談料
相談料は、弁護士に法律相談をおこなう際に発生する費用です。
相談料の相場は、1時間の相談に対して5,000円〜1万円程度となっています。
また、初回相談は無料としている弁護士事務所も多くあります。
ご自身に合った弁護士を探す際に活用するとよいでしょう。
その他、印紙代や郵送代、交通費などの実費
上記の他に、事件処理に際して発生する費用に関しては実費請求されることが多いです。
具体的には、裁判所に納める収入印紙代や郵便切手代、コピー代、交通費、宿泊費などがあります。
これらの費用を着手金に含める弁護士事務所もあります。
詳細は弁護士事務所ごとに異なりますので、直接問い合わせて確認しましょう。
不動産トラブルの相談の専門家はなぜ「弁護士」であるべきか
不動産トラブルの際に相談できる専門家には、弁護士の他に、司法書士や行政書士、土地家屋調査士などがいます。
士業によって対応できる業務範囲は決められており、最も広範囲にわたって対応できるのは弁護士です。
特に不動産トラブルの多くは相手方が存在するため、代理人として相手方との交渉をしてもらえることや、裁判となった場合に出廷してもらえるメリットは非常に大きいといえます。
不動産トラブルでお困りの場合は、無料相談などを活用して早めに弁護士に相談するようにしましょう。