借地権の更新料はどうやって計算する?適切な金額を算出するための方法を解説

借地権の更新料はどうやって計算する?適切な金額を算出するための方法を解説

地主と土地の借主の間で、更新料を合意している場合、借地契約を更新するタイミングで、借主は、地主に対して、合意した更新料を支払うことが必要です。

しかし、「更新料の金額に納得できない」、「そもそも更新料の合意などしていない」と地主が借主から言われ、更新料不払いのトラブルに発展する場合があります。

このようなトラブルを回避するため、この記事で、借地権の更新料の相場、その計算方法などについて解説します。

この記事を監修した弁護士
玉真聡志
玉真 聡志弁護士(たま法律事務所)
中央大学大学院法務研究科卒業。埼玉県内の法律事務所に入所後、千葉県内の法律事務所へ移籍。たま法律事務所を平成30年9月に松戸駅近くで開所。迅速・丁寧・的確な対応をモットーにしている。

そもそも借地権の更新料とは?

借地権の更新料とは、借りている土地の契約を更新する際、土地の借主が、貸主である地主に対し、借地契約を更新するために支払う費用を指します。

更新料は法律上定められたものではありません。

そのため、土地の借主と地主の間で更新料を支払う合意がない場合、借主は更新料を支払う必要がありません。

借地権の更新方法には、借地契約が終了する時にお互いの合意で借地権を更新する「合意更新」と、借地契約が終了する時に合意なく自動更新される「法定更新」があります。

合意更新であれば、契約終了時の更新条件を話し合うタイミングで更新料の内容も決めておくことが多いですが、法定更新の場合でも、契約が更新される前に当事者間で話し合って、更新料を決めておくことは可能です。

借地権に関する法律は「借地法」と「借地借家法」がある

借地権に関する法律は「借地法」と「借地借家法」があります。

ここでは、これらの法律の違いを解説します。

違い①|契約の成立時期で適用される法律が変わる

契約の成立時期によって、借地法と借地借家法のどちらが適用されるか、決まります。

適用される法律の違い

1992(平成4)年7月31日以前に成立した借地契約借地法
1992(平成4)年8月1日以降に成立した借地契約借地借家法

借地権や借家権は、「借地法」「借家法」と呼ばれる法律が適用されていましたが、土地・建物の借主保護をより強化するため、新しく「借地借家法」と呼ばれる法律が制定・施行されました。

借地借家法が施行された平成4年8月1日に借地法・借家法は廃止されたため、借地法・借家法を旧法、借地借家法を新法と呼ぶことがあります。

本来であれば、借地法が改正され、借地借家法が施行されるまでの間に契約が成立した借地に対しても、法律改正により借地借家法が適用されることになりそうです。

しかし、借地の契約関係は長期間に及ぶ場合がほとんどで、新法である借地借家法を適用してもともとの契約が変更されると、当事者間に多大な不利益を及ぼす場合があります。

そこで、借地借家法の経過規定を設け、同法が施行された平成4年8月1日時点で成立していた借地契約に対しては、引き続き借地法が適用されることになりました。

違い②|賃貸契約の期間

借地法と借地借家法は、借地の契約期間の長さに違いがあります。

法律の種類契約期間
借地法(借地期間を定める場合)

  • 非堅固建物の借地期間を20年と定められる
  • 堅固建物の借地期間を30年と定められる
(借地期間を定めない場合)

  • 非堅固建物の借地期間は30年
  • 堅固建物の借地期間は60年
借地借家法借地期間を一律30年とする(30年未満の借地期間は無効)

借地法の「堅固建物」とは、コンクリートやレンガなどで作られている丈夫な建物(簡単に解体できない建物)を指します。

旧法である借地法では、建物の丈夫さの程度によって、借地期間の長さが区別されていました。

しかし、借地借家法では、借地期間について、非堅固建物や堅固建物の区別はありません。

借地借家法では、一般の借地契約の期間は一律30年とされています。

借地期間を30年未満とする借地契約は無効とされ、この契約の借地期間は30年に引き上げられます。

借地契約が終了した後に更新した場合、借地期間は、1回目の更新で20年間、2回目以降の更新では都度10年間とされます。

借地権の更新料の相場と計算方法

更新料を実際に支払ってもらうとしても、更新料の相場やその計算方法がわからないと、更新料の額に争いが起きるおそれがあります。

そこで、更新料の相場や計算方法を確認しましょう。

更新料の目安は借地権価格の5%程度

更新料は、借主(借地権者)と貸主(地主)の合意で決まりますが、一般的な更新料の相場は、借地権価格の5%程度とされているようです。

【参考】国土交通省「定期借地権の解説」

但し、都心と郊外では、借地契約の更新料の金額には差がありますし、今までの取引経過、地主との関係性などの契約に関する諸事情も、更新料の額に影響を及ぼすと思われます。

そのため、更新料を決める場合には、当事者間の合意を優先しつつ、相場価格を一つの目安として考えておくのがよいでしょう。

借地権の更新料の計算式(具体例)

国土交通省は、「更新料の額は借地権価格の5%前後」と捉えていますが、具体的な計算方法は以下のとおりとなります。

借地権の更新料の計算式

更新料=更地価格×借地権割合×5%

※更地価格は、路線価×土地の面積×1.25(路線価が実勢価格の80%で出されることを基準とする)で算定されることが多いです。

借地権価格は、更地価格に借地権割合を乗じた価格を指します。

更地価格とは、いわゆる「地価」を指し、土地の市場価値が反映された土地そのものの価値をいいます。

路線価とは、道路(路線)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことを指し、国税庁によってその価額が定められています。

国税庁が路線価や借地権割合の数値を公表しています。以下のサイトをご覧ください。

【参考】国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」

ここで、上記の計算式を利用して、具体的に更新料を計算してみましょう。

具体例

【事例】
路線価50万円、土地の面積300㎡、借地権割合40%の場合【更新料の相場】
更新料の相場=路線価50万円×土地面積300㎡×1.25×借地権割合40%×概ね5%=375万円

実際に更新料を計算する場合には、借主の毎月の支払状況、地主との関係などさまざまな事情を考慮してお互いの合意を形成するので、上記の計算例はあくまで目安として捉えるとよいでしょう。

借地権の更新料を支払ってもらうための措置

更新料について、地主と借主の合意が成立している場合には問題ありませんが、更新料の取り決めがない場合、「更新料が高い」「そもそも更新料を支払う義務などない」と言われてしまい、更新料が支払われない可能性があります。

ここでは、借主に更新料を確実に支払ってもらう方法を解説します。

借主に更新料支払いの合意を求める

当事者間で更新料支払いの合意がなく、その地域では更新料を支払う慣習がない場合、借主との間で、更新料支払いの合意を定めることで、更新料が支払われるようになります。

更新料の合意がない場合には、更新料が支払われなくても、法定更新によって同じ条件で借地契約が更新されます。

このような場合に借主から確実に更新料を支払ってもらうには、まずは、前もって更新料について話し合いをしておくことが重要です。

契約書に借地権の更新料支払いに関する規定を設ける

借地契約書に、借地権の更新料支払いに関する条項を設けておくと、借主に更新料の支払いを請求できます。

借地契約を締結する場合、借地契約書の更新料の支払いに関する条項を説明したうえで、「契約更新時には更新料を支払います」といった内容の書面に借主の署名捺印をもらっておくと、後のトラブルを回避できるでしょう。

なお、契約締結時に更新料の合意を得なかったとしても、契約期間中に更新料支払いの協議を借主に求めて別途取り決めることは可能です。

過去に更新料が支払われた書面を残しておく

前回更新のときに更新料が支払われたことを証明する書面は、更新料の合意があったことの有力な証拠になるので、保管しておくことをおすすめします。

現在、借地権の契約期間は30年が原則です。

そのため、例えば前の契約者が亡くなったために、前回更新の際に更新料が支払われたかわからない場合もあるでしょう。

このような場合でも、過去に更新料が支払われた書面が保管されていれば、借主に更新料の支払いを請求しやすくなります。

更新料が支払われなかったら借地契約を解除できる?

更新料支払の合意があるにもかかわらず、借主が更新料を支払わない場合、借地契約を解除できるのでしょうか。

判例では、以下のような基準が示されています。

契約解除できるかどうかの判断基準

  • 更新料が支払われなくても法定更新されたか否か
  • 契約成立後における当事者双方の事情
  • 更新料の支払合意が成立した経緯

→その他諸般の事情を総合考量したうえ、具体的事実関係に即して判断する

 具体例

【解除を肯定する事情】

  • 更新料が、借地料と同様に更新後の借地契約の重要な要素として組み込まれ、更新料を支払うことが、当事者の信頼関係維持の基盤をなしている場合
  • 借地契約を締結する際に更新料の支払いを同意し、契約書に署名押印しているにもかかわらず、更新について連絡した際に、借主が一方的に更新料の支払いを拒絶し、話し合いにまったく応じてくれない場合
  • 更新料の不払い期間が長期に及び、不払いの額も少額ではなく、合理的な理由なく不払いを継続しているケースで、今後も更新料を支払う見込みは低く、当事者間の協議で更新料不払いの事態を解消することを期待できない場合

【解除を否定する事情】

更新の際、更新料を支払う具体的な約束をした証拠がない場合

具体的な事実関係の下で、「当事者間の信頼関係を維持できない行為」、いわゆる信頼関係破壊の法理が適用される事情がある場合、借地契約の解除が認められることが多いようです。

借地権の更新料に関する手続きを弁護士に依頼するメリット

借地契約の更新料の手続きについて、更新料の相場や計算方法、更新料に関する規定を定めた借地契約書を作成する際には、法的知識がない場合、ご自身で対応するのは難しいことも多いかと思います。

これらの対応については弁護士に依頼することをおすすめします。

ここでは、弁護士に対応を依頼するメリットをご紹介します。

正しい金額で更新料を算出できる

更新料の計算方法はすでに述べたとおりですが、具体的な更新料を計算する際には、借主の毎月の地代の支払状況、借主と地主の関係性、過去の裁判例などさまざまな事情を総合的に考慮して算出します。

また、路線価や借地権割合などの日常であまり耳にしない用語が多いので、スムーズに更新料の計算をすることは難しいかもしれません。

不動産トラブルに強い弁護士は、さまざまな具体的事情を考慮した適正な更新料を算出できます。

更新料の額が妥当であれば、借主とのトラブルにもなりづらいです。

仮に更新料で揉めても、借主との交渉、場合によっては裁判対応まで弁護士に依頼できるので、弁護士を介入させることで、借主が更新料を支払う可能性が高くなります。

借地契約書の作成、契約書のリーガルチェックを任せられる

更新料を支払ってもらうには、更新料に関する当事者間の合意が重要なポイントになりますが、その合意の証拠として、契約書に更新料の条項を盛り込むことは必須です。

借地契約書に更新料の条項が抜けている場合、法的根拠がないために、更新料を請求できません。

弁護士であれば、更新料を請求できる借地契約書を作成できますし、貸主ご自身で作成した契約書や同意書などの各種書面の法的有効性を確認してもらうことができます。

更新料を確実に回収するためにも、弁護士に依頼して有効な借地契約書を作成しておくことをおすすめします。

まとめ|借地権の更新料の支払いを受けるための措置を講じよう

借地権の更新料は、当事者間の合意がある場合に限って支払義務が生じます。

更新料の相場は、更地価格の3〜5%程度が目安とされていますが、法律や裁判例で決められた金額があるわけではないため、当事者間で更新料の額を合意しておくことが必要です。

この場合、更新料の条項を盛り込んだ借地契約書の作成、更新料を支払わない借主との交渉などのトラブルについて、お一人での対応が難しい場合、法律知識を携えた交渉のプロである弁護士に、一度相談してみることをおすすめします。

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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