土地の境界トラブルは弁護士に依頼すべき?弁護士に依頼するメリットや相談すべきケースを解説

土地の境界トラブルは弁護士に依頼すべき?弁護士に依頼するメリットや相談すべきケースを解説

取得時期の古い土地を売却または活用する場合、隣地所有者の越境に悩まされるケースが少なくありません。

境界トラブルを放置すると、土地の活用や売却に支障が出たり、自分の土地がほかの人のものになってしまったりするリスクがあるため、弁護士に相談して、早急に解決したいという方も多いでしょう。

しかし、「土地のトラブル程度で弁護士に相談するものか?」「弁護士ってお金がかかるんでしょ?」と、弁護士への相談や依頼をためらっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、境界トラブルにお悩みの方に向けて、弁護士に相談・依頼するメリットを解説します。

具体的なケースを上げて、弁護士に依頼すべき人の特徴も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

この記事を監修した弁護士
三田村 智彦
三田村 智彦西谷・三田村法律事務所
京都府・大阪府・滋賀県を中心に、様々な事件の解決に取り組む弁護士。「依頼してよかった」と思っていただける弁護活動を常に目指している。

土地の境界トラブルを解消する方法

土地の境界トラブルを解消するときは、まず隣地所有者との話し合いで解決を目指してください。

隣地所有者から反論があったときは筆界特定制度や調停などの手続きも利用できますが、相手が結果を不服としたときは裁判に発展するケースもあるので、最初から弁護士に関わってもらったほうがよいでしょう。

具体的には以下の流れで境界トラブルを解決するので、自分で対処できないときは弁護士に依頼してください。

話し合いによる解決

土地の境界は隣地所有者もよくわかっていないケースがあるので、まず話し合いで解決を目指しましょう。

境界が明確になるとすぐに納得してもらえる可能性があるため、法務局で以下の書類を取り寄せ、相手に提示してください。

  • 公図:隣地とどのように接しているか判別できる
  • 地積測量図:土地の形状や面積を正確に把握できる
  • 登記事項証明書:所有者や土地面積などを正確に把握できる

作成時期の古い公図は精度が低く、土地の形状が不正確な場合もありますが、隣地や道路との接し方はわかるので、地積測量図や住宅地図の補足資料になります。

地積測量図は土地の形状や面積が正確に記載された図面になるため、公図や登記事項証明書とセットで提示すれば、相手も納得しやすいでしょう。

ただし、地積測量図も作成時期が古いものは精度が低く、合筆や分筆などによって現況と一致していないケースがあります。

また、地積測量図がない土地も珍しくはありません。

公的な資料がない、または現況と合っていないときなど当事者間で解決ができない場合には、以下のように筆界特定制度を利用してください。

筆界特定制度

地積測量図が不正確だったときや、作成されていなかったときは筆界特定制度を利用してみましょう。

筆界特定制度は隣地所有者の立ち合いが必要なく、法務局の登記官が筆界特定してくれるので、裁判に発展した場合も有力な証拠となります。

通常、筆界の確定測量には数十万円の費用がかかりますが、筆界特定制度は2筆(筆とは:登記簿において1つの土地を指す単位)の境界を特定しても数千円程度の申請手数料になるため、高額な費用負担もありません。

隣地所有者が遠方に住んでいるときや、筆界確定に立ち会ってくれないときは利用を検討してみましょう。

ただし、越境している相手を撤退させる拘束力はないので、以下の民事調停や境界確定訴訟なども視野に入れておく必要があります。

民事調停

土地の筆界が確定しても隣地所有者が撤退しないときは、簡易裁判所へ調停を申し立ててみましょう。

調停は裁判官が判決を下す手続きではなく、調停委員を交えた話し合いによる解決方法です。

なお、調停を申し立てるケースは相手にも「自分の土地だ」などの主張があるため、越境した部分を分筆して相手に売却するなど、何らかの妥協が必要になる場合もあります。

また、調停では自分の主張を裏付ける証拠も必要なので、事前に筆界特定しておくと有利な展開になりやすいでしょう。

境界確定訴訟

境界確定訴訟を起こすと、裁判所の判断によって隣地との境界が確定します。

勝訴・敗訴を決める裁判ではありませんが、境界確定後は異議申し立てできないため、相手も越境部分を自分の土地だとは主張できなくなるでしょう。

ただし、訴訟を提起すると隣地所有者との関係は破たんする可能性が高いので、ほかに解決手段がないときの選択肢にしておく必要があります。

判決が出るまでに2年近くかかるので、解決を急ぎたい方は話し合いによる解決を目指しがほうがよいでしょう。

所有権確認訴訟

境界トラブルには自分側が越境しているケースもあり、先祖代々の土地だと思っていたところ、実は違っていたという例も少なくありません。

所有権を主張できる範囲の所有権界が問題になったときは、所有権確認訴訟も検討してみましょう。

所有権確認訴訟は自分が原告となり、隣地所有者を被告として争う民事訴訟であり、裁判官の判決は訴訟の当事者だけに影響します。

したがって、私法上の境界トラブルは解消されますが、第三者に判決の効力は及びません。

所有権確認訴訟は十分な証拠を準備して所有権を主張しなければならないため、弁護士にサポートしてもらったほうがよいでしょう。

境界トラブルを弁護士に相談すべき人

境界トラブルが発生すると土地活用や売却に影響します。

トラブル解決を放置すると隣地所有者の土地になってしまう可能性もあるので、以下のような人は弁護士に相談したほうがよいでしょう。

土地活用や売却に支障をきたしている人

境界トラブルが発生している場合、調停や訴訟が決着するまで越境部分に手を付けられないため、自分の所有地であっても有効利用できません。

ある程度の面積があれば賃貸物件を建築して収益化できますが、境界トラブルが発生していると銀行融資の審査に通過しないでしょう。

不動産仲介によって売却するときも、不動産会社から「まず境界トラブルを解決してください」といわれてしまいます。

物置などを建てて自分の所有地であることを主張するケースもありますが、筆界特定された筆界でも、裁判によってくつがえる可能性があるので注意しなければなりません。

土地活用や売却に支障をきたしている場合、使えない土地の固定資産税だけを払い続ける可能性もあるでしょう。

土地売却などを検討している人は、できるだけ早めに弁護士へ相談してください。

取得時効で隣地所有者の土地になる可能性が高い人

越境部分の取得時効が成立すると土地は隣地所有者のものになってしまうため、弁護士に相談してすぐに対策してもらいましょう。

取得時効とは、以下の要件を満たして10年間土地を占有、または20年間占有した場合、その土地の所有権が相手のものになってしまう制度です。

【占有期間が10年の場合】

  • 相手に所有の意思があること
  • 他人の土地を平穏かつ公然に占有していること
  • 占有開始時に善意かつ過失がないこと

【占有期間が20年の場合】

  • 相手に所有の意思があること
  • 他人の土地を平穏かつ公然に占有していること

所有の意思は所有権を行使する意思のことであり、賃貸借や使用貸借契約に従っている場合は、所有の意思があるとはいえません。

また、取得時効における善意は「親切心」の意味ではなく、他人の土地だとは知らずに占有している状況を指しています。

これが条件となるのは10年の場合で、20年経過すると、他人の土地だと知りつつ占有した場合でも取得時効が成立することになります。

取得時効が間近に迫っている場合、調停などの申し立てで時効を中断させる必要があるため、すぐにでも弁護士にサポートしてもらいましょう。

境界トラブルを子どもや孫の代に引き継ぎたくない人

境界トラブルを子供や孫に引き継ぎたくないときは、できるだけ早めに弁護士へ相談してください。

世代交代が起きると相手との関係性が希薄になるため、問題解決の難易度が上がってしまいます。

子供や孫が遠方に住居を構えた場合は、境界トラブルの解決が負担になってしまうでしょう。

また、境界トラブルが発生している土地は相続登記がスムーズに完了しないため、「誰が相続するか」でもめてしまう可能性もあります。

問題のある土地は負の財産にしからないので、弁護士に相談して早めに解決するべきでしょう。

境界トラブルの解決を弁護士に依頼するメリット

土地の境界トラブルを解決する場合、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。

知り合いの弁護士がいない人は、無料相談を活用してみましょう。

土地問題を無料相談できる

弁護士に相談すると相談料がかかりますが、初回のみ無料にしている弁護士が多いので、まず相談だけでもしてみましょう。

無料相談の時間は弁護士によって異なりますが、30分または1時間になっているケースが一般的です。

要点をまとめておくと短時間で相談内容が伝わるので、以下の資料を準備しておくとよいでしょう。

  • 住宅地図
  • 公図と地積測量図
  • 登記事項証明書
  • 登記識別情報
  • 過去の経緯や相手の主張内容などのメモ書き
  • 越境が発生している場所の写真

なお、取得時効が迫っているときは弁護士も緊急対応してくれるので、越境が発生した時期はできるだけ正確に把握してください。

相手とのやりとりも記録しておけば、善意・悪意のどちらなのかも判断してもらえます。

最適な境界トラブルの解決方法を提案してもらえる

境界トラブルを弁護士に相談すると、最適な解決方法を提案してもらえます。隣地所有者とのやりとりを伝えておけば、話し合いで解決できるのか、調停を申し立てたほうがよいのか判断してくれるでしょう。

自分1人で考えると結論が出ないケースが多いので、専門家の意見は必ず参考にしてください。

資料の収集を依頼できる

忙しい方や、境界トラブルになっている土地が離れた場所にあるときは、弁護士に資料収集を依頼すると事務負担が軽くなります。

また、調停や裁判は証拠が多いほど有利な展開になるので、境界トラブルの関連情報はできるだけ多めに弁護士へ提供してください。

昔の写真を整理すると、越境の発生時期がわかる可能性もあります。

隣地所有者との交渉を任せられる

話し合いで解決を目指したいときは、弁護士に交渉を依頼してみましょう。

弁護士が関わると、相手も「本腰を入れて解決する気だな」と判断する可能性が高いので、交渉が進みやすくなります。

すでに隣地所有者との関係が悪化しており、自分から交渉を持ち掛けにくいときは、弁護士に依頼するメリットが大きいでしょう。

訴訟手続きをすべて依頼できる

弁護士には訴訟手続きをすべて依頼できるので、多忙な方でも裁判を起こせます。

境界トラブルの裁判は長期化するケースが多く、専門知識も必要になるため、弁護士のサポートが欠かせません。

弁護士は法的な理論構成もしてくれるので、筆界や所有権の主張も認めてもらいやすくなるでしょう。

境界トラブルの解決にかかる費用

境界トラブルを解決する場合、少なくとも100万円以上の費用がかかります。

ただし、トラブルがなくなれば土地活用や売却が可能となり、増築なども自由にできるので、十分な費用対効果を得られます。

具体的には以下の費用がかかるので、不足がないように予算を組んでおきましょう。

測量費用

隣地との境界がはっきりしていない場合、一般的な確定測量を土地家屋調査士に依頼するケースがあります。

土地面積や形状にもよりますが、測量費は40~80万円程度かかるでしょう。

筆界特定制度を利用すると数千円程度で済みますが、6ヵ月~1年程度の期間がかかるので、トラブル解決を急ぎたい方は確定測量を依頼したほうがよいケースもあります。

弁護士費用

弁護士費用は着手金が30万円~50万円、成功報酬は60万円~100万円程度が一般的な相場です。

なお、弁護士が事務所以外で活動するときは日当や交通費が発生するので、所有地または自宅に近い弁護士に依頼すると出費を抑えられます。

裁判費用

訴訟によって境界トラブルを解決する場合、裁判所に支払う費用は印紙代や切手代などを含めて5~11万円程度になります。

ただし、鑑定測量をおこなうと40~80万円程度の費用が発生するので、予算は多めに見積もっておいたほうがよいでしょう。

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
    弁護士の方はこちら