【弁護士監修】サブリース契約の正しい理解|契約前に確認すべき注意事項

【弁護士監修】サブリース契約の正しい理解|契約前に確認すべき注意事項

不動産オーナー様の中には「サブリース契約を持ちかけられた」という経験がある方もいるのではないでしょうか。

不動産の管理契約形態として知識はあるけれど、実態がよくわからなかったり、メリット・デメリットが不明確であったりと、正しく理解できないと感じている方もいるでしょう。

本記事では、サブリース契約に関して、メリット・デメリットを含めた多くの人が疑問に思っていることを、網羅的に解説をします。

サブリース契約に関する理解を深め、上手に活用できるようにしていきましょう。

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当社在籍弁護士(株式会社アシロ)
この記事は、株式会社アシロの「法律相談ナビ編集部」が執筆、社内弁護士が監修しました。

不動産管理会社への一括管理の委託が魅力的なサブリース契約

サブリース契約とは、不動産オーナー様が所有している賃貸物件を不動産管理会社(以下、サブリース会社)に一括管理してもらい、毎月定額の家賃保証が受けられる契約を指します。

空室リスクに頭を悩まされることなく、建物管理・入居者管理まで委託できるため、非常に魅力的に映るのではないでしょうか。

しかし、良い面にだけに目がいって契約内容をしっかりと確認せずに契約してしまうと、後になってトラブルの元となる危険性があります。

実際、サブリース契約によるトラブルが多発したことにより、2020年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)」が国会で可決成立し、同年12月にも「サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約(特定賃貸借契約)の適正化に係る措置」が施行されました。

では、賃貸住宅管理業法について説明します。

同法は、賃貸住宅の管理方法を適正化するために可決成立した法律で、第28条から第32条において、サブリース業者に対する規制が定められています。代表的な規制は、以下の2つです。

第二十八条(誇大広告等の禁止)

特定転貸事業者又は勧誘者(特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいう。以下同じ。)(以下「特定転貸事業者等」という。)は、第二条第五項に規定する事業に係る特定賃貸借契約の条件について広告をするときは、特定賃貸借契約に基づき特定転貸事業者が支払うべき家賃、賃貸住宅の維持保全の実施方法、特定賃貸借契約の解除に関する事項その他の国土交通省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

第二十九条(不当な勧誘等の禁止)

特定転貸事業者は、次に掲げる行為をしてはならない。 一 特定賃貸借契約の締結の勧誘をするに際し、又はその解除を妨げるため、特定賃貸借契約の相手 方又は相手方となろうとする者に対し、当該特定賃貸借契約に関する事項であって特定賃貸借契約 の相手方又は相手方となろうとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に 事実を告げず、又は不実のことを告げる行為 二 前号に掲げるもののほか、特定賃貸借契約に関する行為であって、特定賃貸借契約の相手方又は 相手方となろうとする者の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるもの

引用:国土交通省「サブリースに関する主な論点」

「誇大広告等の禁止」は、国土交通省による具体例でいくと「家賃減額リスクがあるのにもかかわらず、『支払い家賃は契約期間内確実に保証!一切収入が下がりません!』と表示」するなど、著しく事実に相違する表示をしたり、「特別な契約条件があるわけでもないのに『30年間家賃保証付きの特別な契約」と表示」と、実際よりも著しく優良・有利であるよう誤認するような表示をしたりすることを禁止する法律です。

「不当な勧誘等の禁止」では、国土交通省による具体例では「将来の家賃減額リスクがあることや将来的に契約解除の可能性があること、オーナーの維持保全の費用負担があることなどについてあえて伝えず、サブリースのメリットのみを伝えるような勧誘行為」や「将来の家賃低額リスクがあるのに家賃収入が将来にわたって確実に保証される、大規模修繕費用はオーナー負担にもかかわらず、維持修繕費用は事業者負担であるなど、事実と異なることを伝え、サブリースにメリットがあるよう伝える勧誘行為」を禁止しています。

こういった法律が制定されたとはいえ、完全に不動産オーナーが守られるわけではありません。

しっかりとサブリースのメリット・デメリットをご自身で把握し、ご自身の資産を守れるよう知識をつけていきましょう。

不動産オーナーから見る一般管理契約の違い

サブリース契約と一般的な物件管理契約との違いをみていきましょう。

サブリース契約はサブリース会社と入居者間の賃貸契約

通常は不動産オーナーと入居者の間で賃貸契約が行われますが、サブリース契約された不動産においては、サブリース会社と入居者の間で、賃貸契約が行われます。

それに伴い、お金の流れも通常の賃貸契約とは異なり、入居者から支払われる家賃はサブリース会社に入ります。

その中から、不動産オーナーに対して契約された金額が支払われます。

一般的な管理委託契約はオーナーと入居者間の直接賃貸契約

一般的な管理委託契約との最も大きな違いは契約主体者です。

  • サブリース契約:サブリース会社と入居者による契約
  • 一般的な管理委託:不動産オーナー様と入居者による契約

家賃が支払われる流れも変わります。

サブリース契約では入居者からサブリース会社に支払われていますが、一般的な管理委託の場合、入居者から不動産オーナーに支払われることになります。

不動産オーナーがサブリース契約を結ぶ主なメリット

不動産オーナー様がサブリース契約を結ぶ上でのメリットを紹介します。

毎月一定の収入を確保できるという安心感がもてる

賃貸物件を所有する不動産オーナー様にとって、最初にやってくる不安は空室問題ではないでしょうか。

サブリース契約を結ぶことで、サブリース会社が契約で定められた「家賃から手数料を引かれた金額(以下、家賃保証)」が、不動産オーナー様に毎月支払われます。

毎月、家賃保証によって収入を確保できることはオーナー様にとって精神的安定のメリットが大きいでしょう。

家賃滞納のリスクを回避できる

空室問題の次に発生する不安点は家賃滞納です。

空き室はなくなったものの、家賃の滞納者がいると対応に苦慮してしまいます。

サブリース契約では、入居者はサブリース会社に家賃を支払い、不動産オーナー様はサブリース会社から家賃保証として家賃相当分のお金を受け取るため、滞納リスクを回避することが可能です。

クレーム処理など管理運営を一任できる

入居者によるクレーム処理などの管理運営も、不動産オーナーにとって頭の痛い問題です。

しかし、サブリース契約をしていれば、不動産管理運営は全てサブリース会社に任せることができます。

よって、不動産オーナーは面倒なクレームなどに一切関与せずに、不動産を所有し続けることができます。

収支報告を活用することで確定申告の手間から解放される

サブリース契約をしている不動産に関する収支報告は、経費としては減価償却費と固定資産税などがあります。

収入はサブリース会社から支払われる家賃保証が毎月1回のみなので、確定申告がシンプルにできるため、年度末の煩わしい手間から解放されます。

不動産オーナーがサブリース契約を結ぶ主なデメリット

では、サブリース契約を結ぶ上でのデメリットはどんなものがあるのか、こちらもしっかりと確認しておきましょう。

入居者を選ぶことができないことへの不安がつきまとう

サブリース契約されている不動産に関する入居者審査は、サブリース会社が行うことになっています。

不動産オーナーでありながら、入居者を選ぶことができない点では不安があるでしょう。

自主管理に比べ家賃収入に対し手数料がかかる

家賃収入から手数料が引かれるため、自主管理をする場合に比べて手数料がかかってしまいます。

例えば、月10万円の家賃のアパート8室が満室になったとしましょう。

ご自身で自主管理している場合は毎月80万円の家賃収入が手元に入ります。

不動産管理のみを委託している場合、管理料は一般的に家賃の5%が標準なので、その料率で計算すると80万円から管理料として4万円を管理委託先に支払うことになります。

サブリース契約の場合、料率分を差し引いた金額が不動産オーナー様の収入となります。

料率はサブリース会社によってまちまちですが、ここでは15%と仮定して計算すると、12万円がサブリース会社へ、残り68万円が不動産オーナー様に支払われます。

このように、管理を委託するメリットはあるものの、負担と反比例するように収入が減ってしまうというデメリットが生じてしまいます。

修繕・工事費が割高になる可能性がある

設備の入れ替えや入居退去に伴う内装修繕・リフォーム、そして外装の定期診断・修繕など、不動産物件は維持管理するためにさまざまなお金がかかります。

この工事にかかる費用は一般的に不動産オーナー様が負担しますが、基本的にサブリース会社が指定した業者にお願いすることになります。

それにより、工事費が割高になる可能性があります。

突然の契約解除がなされる可能性がある

サブリースの契約を自社都合で途中解約を申し込んでくるサブリース会社があります。

そういった会社に当たってしまい、途中解約となった場合、不動産オーナー様はご自身で物件を管理しなくてはいけません。

物件の立地や年数などの条件によっては、他のサブリース会社と再度サブリース契約ができる場合もありますが、契約先探しや契約手続きなどに手間と時間がかかるため、最初に契約をする段階で、自社都合で契約解除をしてくることがないようなサブリース会社を選ぶように気をつけましょう。

不動産オーナーがサブリース契約時に注意すべき点

サブリース契約をする際に気をつけるべきポイントについて見ていきましょう。

サブリース契約の賃料相場と家賃保証の割合

まずは所持している不動産の適正賃料を知るために、オーナー様の物件周辺の相場をリサーチして把握しておきましょう。

契約時の交渉に使えます。

また、家賃保証の割合についても契約前の段階で確認する必要があります。一般的なサブリース契約では80〜90%程度の家賃保証率が相場とされています。

とはいえ、サブリース会社や物件によって保証率は異なりますので、もしご自身の物件が相場より低く設定された場合、その理由や根拠をしっかりと提示してもらうようにしましょう。

契約期間における賃料見直しの期間や免責期間

賃料の見直し期間や免責期間は必ず確認したいポイントです。

まず、賃料の見直し期間について説明します。物件は年数が経つごとに価値が下がるとされ、賃料も下がっていきます。

したがって、サブリース契約でも同じように空室リスクに備えるために一定期間ごとに賃料が下がります。

一般的には契約更新の度に賃料が下がっていくことが多いです。

次に免責期間とは、サブリース会社から不動産オーナー様への家賃保証の支払いを免除する期間です。

物件で空室期間が続いた場合に免責になると契約書に記載されている場合があります。

記載がある場合に、その免責期間についてしっかり確認し、納得した上で契約するようにしてください。

設備更新や原状回復費用の負担者

入居者が退去した後の設備更新や原状回復にかかる費用に関して、不動産オーナー様が負担するのかサブリース会社が負担するのかも事前に確認しておきたい事項です。

一般的には簡易的な修繕はサブリース会社が負担をし、経年劣化部分など大掛かりなものは不動産オーナー様が負担することが多いです。

どのような内容の場合、どちらが負担するのか、想像し得るパターンを洗い出しておき、後々トラブルとならないよう負担者についてあらかじめ設定しておきましょう。

中途解約の可否や契約解除条件

サブリース契約は不動産オーナー様が貸主、サブリース会社が借主という賃貸借契約で結ぶことが多いのが実情です。

基本的に建物の賃貸に関する法律では借主の方が保護されていることから立場が強く、中途解約についても貸主側からは難しくとも借主側からは簡単に進められるといった違いがあります。

中途解約の条文の内容次第で、不動産オーナー様側からの中途解約希望を通すことが難しい場合もありますので、契約書をしっかりと読み込むようにしましょう。

サブリース契約による不動産トラブルはすぐに弁護士へ相談

サブリース契約は前述したように、不動産オーナー様が貸主、サブリース会社が借主という賃貸借契約で結ぶことがほとんどです。

賃貸借契約は借り手側がより強く法律に守られているため、借主であるサブリース会社側が契約上有利になります。

一般的な賃貸借契約で考えると分かりやすいのですが、例えば、入居者が不動産オーナー様に対して賃料の値下げを要求してきたとしましょう。

もし、オーナー様が値下げはできないと決めた場合、入居者が不満に思えば他の物件へと移ってしまうかもしれません。

「不満に思った」という感情だけで途中で契約を破棄できるのが借主側です。

これを逆にし、値下げを要求するなら出て行ってくれと不動産オーナー様側が要求することはできません。

この決定的な違いがサブリース会社と不動産オーナー様の間にも存在します。

このように、サブリース契約はサブリース会社が優位な立場にあり、不動産オーナー様は立場が弱い契約となるのですが、この前提をしっかりと把握していなかったために契約後にトラブルとなるケースが増えています。

契約時にはしっかりと契約書に目を通して不明点をなくしておくことが大切ですが、それでもトラブルに発展してしまうこともあるでしょう。

そういった場合、不動産トラブルに詳しい弁護士に早めに相談することで早期解決・損失を最小限に抑えることができる可能性があります。

サブリース契約に関するトラブルを抱えている不動産オーナー様は、まずは弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

この記事の調査・編集者
アシロ編集部
本記事は法律相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。※法律相談ナビに掲載される記事は、必ずしも弁護士が執筆したものではありません。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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